"次代へ挑む" ファーストコールカンパニーの取組み

株式会社ハイデイ日高

※2015年2月期時点

株式会社ハイデイ日高

  • 代表取締役会長・執行役員会長 神田 正 氏

タナベコンサルティング

  • 取締役副社長 長尾 吉邦
  • ドメインコンサルティング東京本部 小山田 眞哉

徹底して駅前出店にこだわる

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長尾 タナベコンサルティングの人材育成サービスをご活用いただきありがとうございます。ハイデイ日高は、ラーメン店「日高屋」、中華料理「来来軒」、焼鳥店「焼鳥日高」の3業態を首都圏の駅前に展開し、12年連続の増収増益※、さらに経常利益率12%という高収益企業として成長されています。創業の経緯と成長の過程をお聞かせください。

神田 1973年に埼玉県大宮市(現さいたま市大宮区)に来来軒を出店したのがスタートです。ラーメン店で働いた後に、わずかな手元資金で5坪の来来軒をオープンしました。
 戦後、駅前にはラーメン屋台が出ているものでしたが、次第に見かけなくなりました。しかし、安い値段でラーメンを食べ、お酒も飲むというニーズは必ずあると思ったのです。今では東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、栃木県、茨城県に356店を出店しています。

長尾 ほとんど駅前に出店されています。

神田 ラーメンは販売価格が安いため、同業者は家賃の安い場所に出店します。でも、当社は逆に家賃が高い「駅前」という場所を選びました。結果として、そこには巨大なマーケットがあったのです。
 以前、銀行に融資を依頼したとき、「今後は車社会の時代が到来するのだから、駅前出店など時代錯誤だ」と言われましたが、私は「駅前に出て屋台のお客さんを追う」と主張して妥協しませんでした。ライバルがいない場所を選んだのです。同業他社の逆張りにこそ、宝の山があります。

長尾 まさに逆転の発想ですね。戦略とは、どの山に登るかです。そして誰も登らない山に登ることが大切なのです。
 出店する立地はどのように決められるのですか?

神田 店舗開発の担当者が探し、私が現地を見て決めます。乗降客数や周辺情報は調べれば分かりますが、それだけでは判断できないので、昼・夕方・深夜に足を運びます。一つのポイントはタクシー。昼間、乗客がいないのにタクシーがたくさんとまっている駅があります。そのような場所には、夜間のニーズが多くあるのです。
 こうしたポイントが分かっていても、高い家賃を払ってラーメン390円、ビール310円を提供する商売は、なかなかまねできません。当社が提供する商品は、価格や味に安定感はありますが、目立った特徴がない。それでも儲かる理由は、工場での食材づくりと現場の生産性向上をうまくミックスさせ、低価格でも利益を出せる仕組みを、長い時間をかけてつくり上げたからです。

※2015年2月期時点



経営理念
1.[使命]私たちは、美味しい料理を真心込めて提供します。
2.[挑戦]私たちは、夢に向かって挑戦し、進化し続けます。
3.[感謝]私たちは、常に感謝の心を持ち、人間形成に努めます。

12年連続増収増益※の秘訣は一気に出店しないこと

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長尾 12年連続の増収増益※で、経常利益率も高いですね。

神田 日本の上場企業約3800社のうち12期以上の増収増益※はわずか19社。それができたのは、業界の常識とは逆に、一気に出店をしなかったからです。
 200店舗くらいになった時期、マスコミや銀行に「もっと出店スピードを上げろ」「ライバルに取られてしまう」「一気に攻めないのは事業力がない」とあおられました。でも私は、我慢して1年に約30店舗しか出さなかった。だからこそ、増収増益を続けられたのです。一気に出店すると、必ず増収減益の落とし穴が待っている。もちろん出店しないのはダメですが、1年に30店舗くらいがちょうどいいのです。

長尾 なぜ過度に出店すると増収減益になるのでしょう?

神田 店長の養成が間に合わないし、出店の判断も甘くなります。30店だと、全て自分の目で見て判断できるから、9勝1敗くらいになります。大切なのは、全勝しないこと。失敗を恐れると、絶対に儲かる場所にしか出店できなくなる。多少の失敗を覚悟すると、賭けもできる。だから10%は失敗した方がよい。失敗は経費ですよ。
 また、1店舗への投下資本を低く抑えること。そうすれば、失敗しても痛手は小さい。当社では1店舗当たり3000万円くらいです。格好良くはないけど、小さい店を出し、ダメだったらやめてしまう。今期も7店を閉めましたが、赤字撤退はほとんどありません。

長尾 既存店の売上高が伸び続けることが、増収増益の条件だと思います。

神田 既存店が伸びないと、怖くて新規出店はできません。そのため、季節に応じた新商品開発が欠かせないのです。また、円安で原材料費が高騰し、ライバルが値上げをしても、当社は一切しない。利益が出ているので、値上げの必要がないのです。

※2015年2月期時点

経費をとことん使わず経常利益率12%を達成

長尾 これまで持続的に着実に成長されました。株式上場を決断された理由は?

神田 ゼロからスタートした時、担保もなく金融機関からお金を借りられませんでした。だから、株式を公開し、マーケットから資金を集めようと思ったのが第一です。ジワジワと会社を成長させ、安定的に配当すればよいのですから。今では株価も少しずつ上昇し、14年12月末には時価総額600億円を超えて、外食産業でも上位に位置しています。

長尾 経常利益率12%はどのように達成しているのですか?

神田 さまざまな要因がありますが、一つは利益が出ても経費をとことん使わないから。役員用の社用車は1台もありません。私も電車で移動する。経費を使うなら従業員の給料を上げた方が良いと思っています。

長尾 本社の総務・経理部門のスタッフ数も少ないですね。

神田 立派な本社ビルを建てたり、運転手付きのベンツに乗ったりすることも可能です。でも、一切しない。本社がそうなので、現場にも無駄なことをする人はいません。

長尾 ホールとキッチン両方の業務ができるように、現場の人材を教育されています。

神田 昔は、厨房の担当者は何があってもフロアに行きませんでした。逆に、ホールに人が余っていても、洗い物をしない。それでは生産性が上がらないので、5人いれば2人はフロア、2人は厨房で、1人は両方で動けるようにしています。

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長尾 食材を工場でつくり、現場のオペレーションを少なくする工夫もされています。

神田 これは難しいところです。合理化が過ぎるのは良くない。「ここは手づくりをする」という部分はなくさないようにしています。全て工場でつくり、店ではアルバイト店員が皿を並べるだけではダメ。売上げが必ず落ちます。

長尾 現場の技術も大事にされているのですね。

神田 「これだけは現場がやる」という部分は守っています。

高い家賃でも売上げを上げれば利益は出る

長尾 家賃の高い場所に出店し、深夜まで営業されています。場所が良いから深夜まで回転し、家賃効率は高いですね。

神田 家賃比率は、良い場所に出しても10%前後。高い家賃でも、売上げが良いから可能なのです。昼間はサラリーマンが、午後は学生が、夕方はまたサラリーマンが、そして深夜は別の店で1杯飲んだ人が来てくれる。朝も、夜勤明けの飲食店の人や警察官、消防士などが来てくれる。高い家賃でも、1日中お客さまが来てくれれば利益は出ます。

長尾 通常なら家賃比率を抑えるために安い場所を選びます。しかし、売上げを上げればよいのですね。

神田 問題はどれくらい売れるかです。売上げが上がるのであれば家賃が高くても出店する。逆に家賃10万円でも、売上げが見込めなければ出店しない。同業他社は、家賃200万円と聞けば「ラーメン屋では無理だ」と諦めます。しかし、十分に利益を出せますよ。駅前の牛丼やハンバーガーのチェーン店が成功し、ラーメン店にできないわけがないですから。

小山田 アルコール類の販売比率が非常に高いですね。

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神田 「ちょい飲み」は私が創業時から狙っていたこと。今は牛丼店などで、かなりまねされていますけどね。お酒のつまみをたくさん置き、1杯飲んでラーメンも食べてもらう。アルコールの売上げ比率は15%ほどです。当社は店の前に提灯を掲げてやっています。提灯は哀愁があっていいですよね。

小山田 外食産業で働くのは、年齢を重ねると厳しくなります。その点に関して、どのような手を打っておられますか?

神田 「焼鳥日高」は、そこを考えて生まれました。中華料理やラーメンをつくるのが体力的にきつくなった人には、「70歳まで働いてほしい」と、焼鳥店で働くようお願いしています。焼鳥店は朝まで営業しないし、焼くのに体力もそれほど必要ない。高齢者には、焼鳥店で午後11時ごろまで働いてもらい、現場は若い世代のアルバイト、店長は60歳以上。そういう店舗を約100 店つくりたいですね。

社員の幸せのために当社を犠牲にしてほしい

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小山田 神田会長の思いは、人づくりにも反映されています。

神田 企業は法人と個人で成り立ちます。法人はつぶれなければ永く生き続けますが、働く社員は60歳くらいで交代します。だから、企業のために短い人生を犠牲にしてはいけない。社員の幸せのために、当社を犠牲にしてほしいと考えています。

小山田 社員からお話を聞くと、皆、ハイデイ日高が好きなのだと感じます。

神田 「皆で会社を利用しよう」という姿勢だからでしょう。私の願いは、周囲の住民から「日高屋ができて良かった」と思われること。「遅くまで営業をしていて便利」「価格も適正」「店員さんは皆、良い人」「うちの街にも来てほしい」と思われることが第一です。
 また、社員から「日高屋で働けて良かった」と思われる会社にしたい。社員を物心両面で幸せにしたいのです。

長尾 人材育成も「見える化」されています。高卒と大卒の社員の給料は、入社時こそ差がありますが、ステップが上がれば同じになります。

神田 職位で給料が上がる仕組みで、店長になるまでに50のステップがあり、上がると給料もアップします。しかし、仕組みより大切なのは、人間力や信念です。「欲張っても幸せにならない」など、月1回の店長研修で生き方を説いています。

小山田 経営計画発表会を「夢を語る場」とされています。今はどんな夢を語られていますか?

神田 まず、東京を中心に1都5県で出店できる場所を埋めようと言っています。その他は人間としてどう生きるかなど。両親を大切にしようとか、感謝の心を持とうとかです。

長尾 人材育成は人柄づくり。人柄づくりは人間づくりですね。ハイデイ日高の今後の戦略をお聞かせください。

神田 引き続き駅前に出店します。乗降客3万人以上の駅なら出店できるので、600以上は可能。マクドナルドは1都3県で800以上も出店しています。その横、全てに出店したいですね。

長尾 神田会長の人生観が経営の軸になっています。それをしっかり残さないといけません。

神田 それだけが武器だから、しっかりと継承したい。私はとにかく現場に立つ姿勢です。自室に座っていると、都合の良い話しか聞けません。現場で店長から生の声を聞き、時にはお客さまから叱られることが必要なのです。
 私は特別なことは何もしていません。ただ一生懸命なだけです。だから、誰でもやる気になればチャンスはある。「これはいける」と思えば実行することです。
 誰もが駅前のラーメン屋台を見ていたはずです。しかし、私はアクションを起こした。それだけです。一度きりの人生だから思い切って頑張るのです。

長尾 素晴らしい経営哲学ですね。今後もファーストコールカンパニーとして、持続的成長をされることを祈念します。本日はありがとうございました。

PROFILE

  • 所在地:〒330-0846 さいたま市大宮区大門町3-105 やすなビル6F TEL:048-644-8447
  • 資本金:16億2536万円 設立:1978 年 売上高:319 億9700万円(2014 年2月期) 従業員数:676 名
  • 事業内容:フードビジネスチェーン展開(日高屋、来来軒ほか)現在356 店舗(直営店355・FC1)を運営
    http://hidakaya.hiday.co.jp/

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所