"次代へ挑む" ファーストコールカンパニーの取組み

地盤ネットホールディングス株式会社

地盤ネットホールディングス株式会社

  • 代表取締役社長 山本 強 氏

株式会社タナベ経営

  • 常務取締役 中村 敏之
  • 東京本部長 齋藤 正淑

工事を受注せず地盤解析に特化

中村 日ごろからタナベ経営のコンサルティングサービスをご活用いただき、ありがとうございます。まず、グループの中核となる地盤ネットを創業した経緯を教えてください。

山本 私は起業して社長になる夢を持ちながら、証券会社や住宅会社、地盤調査会社に勤務していました。その後、子どもができたのをきっかけに独立を決意し、2008 年6月に地盤の解析や調査を行う地盤ネットを創業しました。当初の事業は、地盤調査データを公正な立場から再度解析する『地盤セカンドオピニオン®』というサービス。第三者的な立場から公平に分析することで過剰な地盤改良工事を未然に防ぎ、住宅建築費のコストダウンに寄与しようと考えました。(【図】参照)

jiban-holdings-image-1.jpg

中村 当時、医療の世界ではセカンドオピニオンという概念が一般化しつつありましたが、住宅・建築業界では聞き慣れない言葉でした。それを事業として選んだ理由は何ですか?

山本 父ががんの手術を受けた際、医師のセカンドオピニオンの重要性を痛感しました。そして、自分が属する業界とよく似ていると思いました。地盤の調査だけでは儲けが出ないため、同一の地盤調査会社が過剰な改良工事まで行い、中立性が疑われるケースが数多く見受けられたのです。そこから地盤セカンドオピニオン®というビジネスモデルが浮かびました。

中村 創業当初はご苦労されたと聞いています。

山本 起業のタイミングとネーミングまでは「時流に乗っているな」と思いました。地盤改良工事にストップをかける事業は前例がなく、顧客価値が大きいと判断したからです。ところが、「改良工事不要という判定の信頼性」という事業のポイントを立証する術を持っていなかったため、創業から2年ほどは、売上げが全く上がりませんでした。会社を辞めていたので、もう引き返す道はありません(笑)。独自の仕組みをどのようにビジネスモデルにして、世の中へ訴求するかの模索を続けました。さらに、差別化・異質化をテーマにしたセミナーに参加して、他社とは違うポジションで戦わないと生き残れないと痛感したことも大きな転機になりました。当初は、公平なセカンドオピニオンをうたいながらも、判定時に工事会社を紹介していたのです。

中村 差別化でなく、独自化でないと選ばれない時代です。顧客には地盤ネットと他の工事会社が同じに見えたでしょうね。

山本 その通りです。このようなポジションだと当社の独自化は図れないと気付いて、地盤改良工事からは一切手を引きました。「工事をやらないこと」を他社との違いにしたわけです。不退転の志を込めて「改良工事を受注しない唯一の地盤解析専門会社」と銘打ちました。受注が伸び始めたのは、それからです。この転換によって、実質的な創業を果たしたといえます。

中村 「やらないことを決める」。この覚悟がオンリーワンポジションの確立につながり、経常利益率15%超のビジネスモデルをつくり上げる起点になったのですね。



企業理念
"生活者の不利益解消"という正義を貫き、安心で豊かな暮らしの創造をめざします。

地盤ネット10箇条
1 お客様の視点で考え、お客様の安心と満足のために行動します。
2 商品・サービスをつねに進化させ、お客様の感動につなげます。
3 セカンドオピニオンビジネスのパイオニアとして、唯一無二を生み出します。
4 失敗を恐れず、より良いものをめざして果敢にチャレンジします。
5 目標に向かって全社一丸となり、スピード感を持って行動します。
6 グローバルな視点を持ち、住生活ブランドNo.1 をめざします。
7 自分の仕事に対して、逃げず、あきらめず、最後まで全力を尽くします。
8 お互いの成長とチームワークを大切にし、活気に満ちた職場をつくります。
9 お客様、お取引先様、株主様に信頼されるよう誠実かつ公正に仕事をします。
10 高い倫理観を保ち、責任ある社会の一員として行動します。

セカンドオピニオンからデファクトスタンダードへ

jiban-holdings-1

齋藤 具体的なビジネスモデルを教えてください。

山本 地盤改良工事を受注しない地盤解析専門会社というスタンスから、いくつかの商品が生まれました。まず、前述した地盤セカンドオピニオン®という判定サービスです。ところが、地盤調査を行う機械は、メーカーによって性能や精度がバラバラで、同じ土地を調査しても違った結果が上がってくるケースがありました。これでは厳正な判断は下せません。そこで数値の統一化を図るために、JIS規格に沿った機械を自社でつくることにしたのです。半自動地盤測定機『Ground Pro(グラウンド・プロ)』を開発し、これまで全国に150 台ほど納品しました。
 このグラウンド・プロによる信頼度の高い調査データを、関係法令や各指針・基準に基づいた高度地盤解析で判定し、最適な基礎仕様・軟弱地盤対策を提案。さらに、当社の判定を損害保険会社が補償する「地盤ロングライフ補償」までを提供するのが『地盤安心住宅®』です。最近は、これに地震による地盤液状化へ対応した調査・補償をプラスした『地盤安心住宅®プラス』を発売しました。

齋藤 消費者への提案は、どのように行うのですか?

山本 当社が住宅会社へ営業活動を行い、そこから顧客である一般消費者に紹介してもらいます。地盤調査の結果は、住宅会社から顧客へ伝えられます。

齋藤 入り口は、地盤セカンドオピニオン®なのですね。

山本 そうです。創業から約2年は地盤セカンドオピニオン® 事業のみを手掛け、3年目に地盤調査から請け負う地盤安心住宅®をスタートしました。しかし、当初の売上比率が、地盤セカンドオピニオン®:地盤安心住宅®で8:2くらいだったものが、現在は3:7くらいの比率になりました。理由は、当社の地盤セカンドオピニオン®によって過剰な改良工事が減り、地盤業界が適正化したこと、また「地盤安心住宅®」ブランドの需要が増えてきたことが挙げられます。セカンドオピニオンから、デファクトスタンダード(事実上の標準)になったわけです。将来、地盤セカンドオピニオン®の売上げはゼロになるでしょう。

齋藤 2014 年、地盤ネットホールディングスを設立してホールディング経営へ移行されましたが、どのような狙いでしょうか?

山本 地盤調査の最大のメリットは、住宅建築に関連する固有情報を一番初めの段階で入手できることです。その固有情報に基づき、課題解決に向けたさまざまな商材を提供することができます。情報の入り口に当たる地盤調査のシェアを高めると、多彩なビジネス展開が可能になるため、このシェアを高めるのが最大のテーマです。ホールディング会社を設立し、社名にも、実績のある「地盤ネット」を使っています。そこに各種のサービス会社が連なる形態です。

人材の大切さを痛感した1年

jiban-holdings-tanabe-1.jpg

中村 企業には「成長の1・3・5の壁」があるとタナベ経営は提唱していますが、地盤ネットは創業わずか7年で年商30 億円の壁を突破するタイミングを迎えています。その鍵は「組織経営」です。山本社長が大切にする組織・人づくりへの取り組みを聞かせてください。

山本 2014 年は創業以来、最も厳しい年でした。当時、ストックオプションを28人に付与していましたが、同年3月に行使期間が到来したこともあって、うち18人ほどが12月までに会社を辞めてしまったのです。創業当時のメンバーや事業の中心メンバーが抜けてしまい、人材が固定するまでの約1年間は事業のアクセルを踏めない状況でした。
 その間、「企業は人なり」という言葉をかみ締めました。以前は「社員が辞めても、会社は大丈夫」という妙な自信があり、辞めたい人を無理に引き留めても仕方がないと、強気で辞職を承諾していたのです。その後、優れた人材を補填しましたが経験が足りないので、質的には以前の組織レベルに達していません。

中村 苦境を体験されて、人に対する考えは変わりましたか?

山本 組織経営の重要性を痛感しました。社員を会社に定着させる文化づくりが、最大の課題です。まず、褒める文化をつくりたいと、「地盤ネット10 箇条」にのっとる行動を取った社員を表彰する制度を実施。社員のモチベーションも上がり、地盤ネット10 箇条を意識した行動を取るようになりました。

中村 組織経営で大切になるのが、「自分たちの会社の未来は、自分たちがつくる」という風土と、それを根付かせる仕組みです。ビジョンづくりから社員が参画し、推進にも責任を持つやり方は、誰もが主役という意識づくりに役立ちます。これは、私が提唱している「VM(ビジョンマネジメント)経営」です。

山本 とても重要なポイントだと思います。

中村 地盤ネットが社会課題を解決する企業だと社員が認識すれば、数字がノルマではなく、使命感に変わります。共通のキーワードを自社のビジョンとして具体化することが、組織経営に変わる絶好の機会になるはずです。

齋藤 山本社長の志という面で、「40's(フォーティーズ)エンジェル」という取り組みについてお聞かせください。

山本 創業して成功した経営者は特別な才能があるといわれることもありますが、私の場合は40歳まで会社勤めを続け、地盤調査の仕組みがよく理解できていたことが成功の大きな要因です。働く人たちの特性や業界の仕組み、課題もよく分かりますから。そのような意味で、キャリアを経て40代で独立すると、成功する確率が比較的高いといえるでしょう。
 そこで、ビジネスモデルや事業計画をつくったり、顧客を紹介したりする支援を行うことで全国の40 代の方の起業を促し、成功に導こうというのが、40,sエンジェル(15 年1月に一般社団法人として設立)です。サラリーマン経験のある40 代の起業家が次々に誕生すると、異質化したサービスが創出され、社会を活性化できるのではないかと思います。

齋藤 会社勤めで習得した事業の経験を生かし、業界の常識に風穴をあけるビジネスをバックアップする仕組みですね。

「地盤革命」から「国土強靭化」支援へ

jiban-holdings-tanabe-2.jpg

中村 今後の事業の方向性を聞かせてください。

山本 事業を通して世の中にどれほど貢献したかで、会社のリターンが決まると考えます。当社は現在、政府が主導する「国土強靭化」というテーマに取り組んでいます。これは、起こり得る震災に対する手を打ち、発生後のリカバリーも事前に策定しようというもの。当社のビジネスは、地盤安心住宅®プラスに代表されるように、リスクを事前に把握して万一の災害に備えるサービスが中核をなします。これを販売することが国土強靭化につながることをさらに浸透させ、「国民の安全・安心のため」という使命感を社員に植え付けたいと考えます。
 これからは地盤分野に限定することなく、住宅・不動産市場の不利益解消を目指したい。ポイントになると考えるのは「住生活」です。この領域は、利害関係が複雑に入り組んだブラックボックス。ここを本気で変えられるのは当社しかないと自負しています。
 その一環として、土地の地盤・災害リスクを天気予報になぞらえて点数化する『地盤カルテ』というサービスを開始しました。駅前の一等地の点数が悪くなったり、駅から離れた郊外の住宅地の点数が高くなったりするので、不動産業界は衝撃を受けています。15 年6月、朝のテレビ情報番組で紹介されてから3日間で1万件の診断を行うなど診断数は大幅に増えており、15 年1月のリリース以降、2万件超の診断実績を上げました。世間が災害に対する関心を深めている昨今、診断数はこれからも伸びるでしょう。実は地盤カルテでは、約3割の土地が「液状化リスクが高い」と診断されています。その場合でも、液状化に対応した『地盤安心住宅®PLUS』という新サービスにより、安心な住宅地盤を提供できます。この地盤カルテを突破口にして地盤安心住宅®PLUSを軌道に乗せるのが、15 年の重要課題です。
 さらに、日本国内だけでなく、海外進出へも積極的に取り組んでいます。特にアジアの成長著しいエリアは造成工事の基準がバラバラなので、"災害大国"日本の事例をもとにリスク対策の必要があると、市場へアピールしています。現在はベトナムのホーチミンを拠点に事業を展開。ここは地震が非常に少ないので、BCPの観点から各種データの保管場所として最適ですし、優秀な人材もそろっています。また、さらなる足がかりとして、15 年2月にハワイにも子会社を設立しました。

中村 地盤ネットが標榜する"住生活エージェント"成功のキーファクターは、「ビジョン実現型人材づくり」にあると判断しています。人材投資で社会課題を解決する企業へと変貌することが、持続的成長につながるでしょう。本日はありがとうございました。

PROFILE

  • 〒103-0027 東京都中央区日本橋1-7-9 ダヴィンチ日本橋179ビル2F TEL:03-6265-1803
  • 資本金:4億9040万円 創業:2008 年 売上高:25 億4200万円(連結、2015 年3月期)
  • 事業内容:地盤解析サービス、地盤調査サービス、地盤補償サービス
    http://jiban-holdings.jp/