"次代へ挑む" ファーストコールカンパニーの取組み

社会医療法人敬和会

社会医療法人敬和会

  • 理事長 岡 敬二 氏
  • 法人本部長 坂本 修一 氏

株式会社タナベ経営

  • 常務取締役 南川 典大
  • 東京本部 本部長代理 松室 孝明

診療所から社会医療法人へ時代変化を見据えて飛躍

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南川 タナベ経営が主催する「ヘルスケアビジネス成長戦略研究会」にご協力を賜り、誠にありがとうございます。まずは敬和会の沿革についてお聞かせください。

創業は1954 年5 月。私の父であり、現敬和会会長の岡宗由が、大分市鶴崎に岡医院という診療所を開院したのがスタートです。63 年に病院となり、89年には医療法人敬和会を設立。2009年に社会医療法人に認定されました。
 現在は、大分岡病院(診療科目:22、総病床数:224)と大分東部病院(診療科目:11、病床総数:84)を中核に、介護老人保健施設の大分豊寿苑など、複数のリハビリ・介護サービスを運営しています。

南川 岡先生が大分岡病院に着任された92 年頃から、医療の方向性に変化が表れたように感じます。

着任当時は、初診の患者さん(新患)も再診の患者さん(再来)も自院で抱え込み、周辺の医療機関との連携はほとんどありませんでした。その中で、最初に目指したのが「開放型病院」。地域のドクターに、施設や設備を開放する病院のことです。近隣の20 以上の診療所や病院と連携し、01 年に大分県から開放型病院の認可を受けました。また、院内に地域連携室という専門部署を設け、紹介患者さんの受け入れを積極的に推進。これが事業を変革するスタートになりました。
 事業変革に取り組んだ要因の一つは、大学が地域に派遣していたドクターを一気に引き上げたことです。その影響で、当院のドクター数も減少。新患と再来の患者さんを多く抱え、入院患者さんの重傷度は上がって、医療現場から悲鳴が上がりました。「このままではいけない。再来の患者さんを減らして、より緊急・重篤な患者さんを中心に治療できる病院への転換を急ぐべきだ」と決意しました。その延長線上にあったのが、地域医療支援です。06 年には「大分岡病院地域医療支援病院」の名称使用許可を取得。大分県の民間病院では最初です。

南川 そのような時代に対応した取り組みは、岡先生が中心になって行われたのですか?

急性期病院(緊急・重篤な状態にある患者に対して高度で専門的な医療を提供する病院)としての機能を高めていく方向性は、私が考えて実行しました。

松室 現在、連携されている医療機関はどのくらいですか?

歯科を含めて174 を数えます。目標は200 です。同時にDPC(包括医療費支払い制度方式)の対象病院になり、創傷ケアセンターや心血管センター、消化器センターといった、高度に専門化されたチーム医療も推進しています。

【経営理念・行動指針】
一人一人に宿る、かけがえのない尊い「生命」に思いを致し、その尊厳性に対して合掌し、人生という大きな輪の中で、また、地域社会の中で、大きく合い和し、共に生きることを根本理念とする。

旧来のしがらみにとらわれず最善の地域包括ケアを目指す

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南川 経営理念はいつ頃、つくられたのですか?

89 年、医療法人になった時に会長が制定しました。敬和会の根本的な理念と言えます。

南川 岡先生が理事長を継がれたのはいつですか?

大分岡病院の院長になったのが03 年、敬和会の理事長になったのが07 年です。09 年、社会医療法人に認定されたのを機に、職員にも「公益法人とは何か」「そこで働く人たちが持つべき考え」などを徐々に浸透させました。

南川 団塊世代が後期高齢者となる2025 年問題が話題になっていますが、超高齢社会が進展して国民の4人に1人が75 歳以上になる時期が迫っています。医療現場の混乱・崩壊が危惧され、社会保障財政の破綻も懸念されます。岡先生の所見はいかがですか?

敬和会の会合で、「14 年は25 年に向かう助走のスタートになる。本格的な高齢社会がスタートする25 年に向かって、少子超高齢社会の医療や介護を提供する体制を準備しましょう」と話しました。
 14 年の医療法改正により、10月から病床の大きな転換が始まります。敬和会としては、回復期ケアから介護ケア、最終的には在宅ケアといった一連の流れで地域を包括的にケアできるIHN(統合ヘルスケアネットワーク)を確立し、2025 年問題に対処しようと考えています。(【図1】【図2】参照)

松室 環境が変化する中で、「医療・介護サービスの地域ワンストップ提供モデル」を目指しておられますね。

高齢者が増える中、急性期の患者さんを治すだけでは、地域医療はうまくいきません。急性期病院で受け入れて治癒したら、リハビリが必要な人にはそれを施し、自宅に帰れる人は在宅ケアを受けてもらうという流れが必要だと考えました。自宅に帰れない人は、老人保健施設でケアを受けてもらい、ある程度よくなってから在宅ケアに切り替えてもいいわけです。

松室 国際的医療評価の認証取得を目指されているとのことですが、その経緯は?

第三者の認証を取得することが、当院のブランディングにつながると思います。すでに大分岡病院と大分東部病院は、日本医療機能評価機構が審査する「認定病院」の認証を取得しています。世界で一番厳しいと言われる国際医療機関認証JC(I Joint CommissionInternational)も差別化やブランディングに有効ですので、取得に向けた取り組みを考えているところです。
 何よりも、「大分という地方であっても、世界標準の医療を提供したい。また、それを実現することにより、安心して住んでもらえる街づくりに貢献したい」という思いがモチベーションとなっています。

南川 タナベ経営では、「ブランド=顧客との長期的な信頼関係」として、ブランドを、カンパニーブランド・製品ブランド・サービスブランド・テクノロジーブランド・ブランド人材・ビジネスモデルブランドの六つと定義しています。JCI 認証取得は、医療という商品・サービスに関する客観的なブランド評価につながると思います。

松室 私が驚いたのは、大分岡病院が外来の対応をやめたことです。民間企業に置き換えれば、自社のお客さまをライバルに譲るようなものですから。

先ほども申しましたが、地域の医療機関との連携に欠かせないのは、ほかの病院よりもスピーディーに診断ができる、今まで治せなかった病気が治せるといった体制整備です。もう一つは、患者さんの数の抑制。紹介を受けた患者さんが、次から再来に回ると外来数が膨らみ過ぎて対応できなくなる。そこで、「再来の患者さんは近隣の医療機関で見てもらいましょう」と提案したのですが、院内で大反対に遭いました。「なぜ、自分の患者さんをほかのドクターに診せなければならないのか」と。
 しかし、「そうしないと地域連携は進まないし、当院でも対応できなくなる。患者さんを大事に思うなら、近隣のドクターにお任せしましょう」と説得して、当院の再来患者さんをほかの医療機関に紹介し始めました。その結果、地域のドクターの患者さんは増えましたが、当院への紹介数が増加するまでには半年から1年のタイムラグがありました。その間、外来収入は激減し、経営的に苦しい思いをしました。

南川 職員の意識を切り替えるのも大変だったのではないでしょうか?

私の考えにはついていけないと辞めていき、職員の99%が入れ替わりました。しかし、後任の職員は、私の考える方向性に共感し、当院を発展させたいと仲間に加わってくれた人ばかりです。

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ESを充実させつつ効率的なIHN構築に挑む

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南川 戦略経営のためのマネジメントシステム「バランススコアカード」を導入されたと聞きました。収益や利益と関連付けた人材教育への取り組みは?

バランススコアカードでは、四つの視点に基づき数値目標を上げねばなりません。こうして情報・数値目標を共有することで、共通の目標や方向性を定めることができます。また、理事会を年に3回は開催するようにしており、課長級以上はオブザーバーとして全員出席し、議論に耳を傾けます。ドクターも数字に対する拒否反応は少なく、受け入れてくれています。

松室 戦略も数字もガラス張りということですね。

坂本 病院には手術の件数などの多様な実績を貼り出しています。また、ウェブサイトにも同様のデータを掲載しています。

南川 現在の離職率は10%以下と聞いています。医療業界では驚異的な数字ですね。

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職員の99%が入れ替わったことで、ES(従業員満足)をしっかり満たさないと、自分の思ったことはできないと猛省。院長になった時に、職員のほぼ全員と面接を行い、仕事に対する考えや待遇面の希望などを聞いて、作業環境を含めた改善に取り組みました。

坂本 給与面についての指摘が多かった時は20%近い離職率でしたが、そこを変革してからはグッと減りました。それ以降も保育園を設けるなど、ワークライフバランスの改善に向けた取り組みを続けています。

松室 現在、敬和会には900 名を超える職員がいます。組織コミットメントと高いモチベーションがないと、改革は進まないと思います。

業務を行いながら経営にも参画してくれる人たちが必要です。若手のポジションを上げることで、経営への参加を促してきました。若手のドクターを副院長にして、理事も兼任させています。また、マネジメントの分かるドクターを育成するため、大学院で勉強させたりもしています。将来的には私の後継者を育てなければならないので、グループ全体でのビジネススクール開催も視野に入れています。

南川 最後に今後のビジョンをお聞かせください。

米国にはIHN が800 ほど存在します。一つずつが100 万人ほどを対象にしたネットワークです。医療や介護・福祉、保健サービスを提供するところや、3次医療圏※レベルの医療までカバーするところもあります。
 日本でもIHN構想が始まりました。それに先んじて、当院は急性期から回復期、介護、在宅ケアまでのネットワークを14年4月からスタートしています。今後は、訪問看護ステーションの整備とともに、強化型の在宅ケアセンターを立ち上げたいと考えます。急性期病院から地域には帰ったものの、医療が持続的に必要という患者さんは必ず現れます。そのような患者さんを受け入れる医療施設が必要なのです。その施設が訪問看護と密接に結び付くことで、より充実した在宅医療が行えるようになるでしょう。

※3次医療圏:医療法によって定められた、最先端・高度な技術で特殊な医療を行う医療圏。

PROFILE

  • 所在地:〒870-0192 大分市西鶴崎3-7-11 TEL:097-522-3131(代)
  • 事業収入:74億6000万円(法人全体) 開設:1954 年
  • 職員数:918 名 事業内容:病院・介護老人保健施設などの運営
    http://www.oka-hp.com/