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今週のひとこと

人は自ら育つものだ。

より良く「育つ」よう支援するのが上司の役割である。

考え方や、やり方を押し付けるだけではいけない。



◆ 「自学力」で会社を伸ばす


成長企業にも、信用できる成長と、信用できない成長がある。信用できる成長企業とは、人が「成長」している企業だ。一方、信用できない成長企業は、人が〝膨張〟している企業である。

膨張企業は人を育てるより、人を入れることにご執心だ。売上げの伸びと共に人の頭数を増やしていく。外からは業容が拡大しているように見えるが、内から見れば何のことはない、水ぶくれ組織である。教育をおろそかにした企業は重いツケを払わされることになる。環境が悪くなると簡単に倒れてしまう。

逆に、信用に足る成長企業は頭数がさほど増えない。外から見ると控えめな成長だが、内を見れば筋肉質の強固な組織が出来上がっている。よって、環境の変化に左右されずに伸びていく。

人が伸びる成長企業には、トップを筆頭に全社員が自己啓発に努めており、学びたい、能力を伸ばしたいという社員の意欲を、大切に扱っているという共通項がある。人材育成に失敗する企業は、こうした視点が抜け落ちている場合が多い。人材育成では、社員が自ら学んでいく「自学力」をいかに養成するかがカギとなる。
 
伸び悩んでいる社員を揺り起こし、自己変革を促すのは誰か。それは経営者やリーダーに他ならない。自己啓発は勝手に社員がするものだと放置していないだろうか。
 

株式会社タナベ経営 戦略総合研究所
パブリッシング 課長
吉永 亮




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私は、黒田博樹投手のピッチングを見るのが好きである。特に、試合の立ち上がりから、自分のペースをつくるまでの何ともいえない緊張感。これが、野球というスポーツの素晴らしさを教えてくれる。

だが、黒田投手には、あまり好ましくないジンクスがある。 「クオリティ・スタート(6 イニング以上、自責点3 以下)で良いピッチングをしても勝てない」というものだ。データを見ても、そうした事実があるように思える。私はこれを「残念なこと」と認識していた。

ところが、である。某選手の発言で、その認識は覆された。 「黒田投手が投げると相手のピッチャーに良い影響を与えてしまい、相手のピッチャーもつられて良い投球をする」と言うのである。 つまり、試合に勝つという目標を達成するために投げる投手が、試合全体の質を向上させてしまうわけだ。こうなると黒田投手は、「広島東洋カープの名ピッチャー」というブランド人材どころではなく、「日本野球界の宝」なのではないかと思う。

では、彼の素晴らしさは、どこから生まれてくるのか。そのヒントを、黒田投手の著書『決めて断つ』(ワニ文庫)から探ってみた。 そこには、彼の良心や信念が、思いを込めて丁寧に書かれていた。普通の人間なら甘えやおごりが出てしまう場面においても、自分の役割をじっくりと見つめ、その役割に必要なことをやり切る黒田博樹像が表現されていたのである。

中でも、「チームのために投げる」という思いは強烈だ。その思いをマウンドで表現する姿(ピッチャーライナーを手で止めるなど)には心が震える。チームのために全身全霊を捧げるからこそ、黒田博樹という選手はアスリートとして美しく、多くの人々の感動を呼ぶのであろう。

ブランド人材は、チームに貢献したいという思いを努力につなげて成長する。換言すれば、チームによってブランド人材は育つ。一度、黒田選手の投球を見てほしい。明日につながる勇気が得られる。本物のブランド人材とは、周囲に勇気を与える人材なのである。


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タナベ経営 戦略総合研究所 本部長 福田 季三志 Kisashi Fukuda

タナベ経営コンサルティング部門で、人事全般・人材成長支援・講演を中心に活動。東京本部長などを経て、2011 年より現職。戦略総合研究所部長としてラインサポートや人材育成に取り組む。強みに焦点を絞った個別指導により、コンサルタントの成長を支援している。座右の銘は、「我以外皆我師」。




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商品や価格は真似されても、人材は他社に真似できない
敷島住宅 株式会社



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敷島住宅 取締役・総務部長 奥谷 又雄 氏 


心のベクトルをそろえる

住宅1戸を建てるには、約3000 社・計6 万点の部品が関与するといわれる。それらを組み合わせ、価値を生み出すのは人材だ。ホームビルダーは施主に満足してもらえる家を建て、さらに未来の会社も建てる人材を、いかに数多く育て上げるかが重要となる。

だが一般的に、ホームビルダーの離職率は他業界に比べて高い。新卒社員(営業職)の入社後3年以内の離職率は90%に達するといわれる。入社しても定着しないため、人材育成より「人材獲得」に注力する企業も少なくない。

そんな中にあって、経営理念と人生哲学を軸とした人材育成に注力し、成長を遂げているホームビルダーがある。創業55 年、大阪北部を地盤に新築戸建て住宅やリフォーム事業を展開する敷島住宅だ。

同社は2004 年に就任した川島永好社長のもと、経営革新に向けた取り組みを強化した。

その中で重点課題に定められたのが人材育成だったという。同社は従来より人材育成に取り組んでいたが、OJT が中心で必ずしも一貫性があったわけではなかった。

「まず取り組んだのは、経営理念をもとに管理職の思考のベクトルをそろえること。『敷島経営塾』を立ち上げ、数回にわたって講習を行いました」と、取締役・総務部長の奥谷又雄氏は語る。


「敷島フィロソフィ」

その後、タナベ経営の「戦略リーダースクール」などを活用し、管理職に企業戦略の構築と実践に関するスキルを提供した。経営視点で考え、行動できる人材の育成を目指したのだ。

一方、社内に「統括戦略室」を設置。新商品開発やCS などさまざまなテーマのプロジェクトを立ち上げ、経営課題の解決に取り組んだ。

当初、現場の従業員は戸惑うことも少なくなかったという。

だが、経営陣の熱い思いに応える形で意識改革に真剣に取り組むようになった。その1人、京都支店長の岡田哲朗氏はこう振り返る。「以前は中途採用者が多く、仕事に対する意識がバラバラで、顧客のクレームに十分に応えられませんでした」敷島住宅の人材育成で効果を挙げているのが、「敷島フィロソフィ」の制定と運用だ。これは「動機善なりや、私心なかりしか」(心のフィロソフィ)、「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり」(経営のフィロソフィ)など計62 項目で構成した人生哲学、経営哲学である。

「朝礼時にフィロソフィをもとに話をし、考え方の浸透を図りました。そこからクレームと真摯 に向き合うことの大切さを、全員で共有することができました」と岡田氏は言う。

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敷島住宅 京都支店長 岡田 哲朗 氏


最大の競争優位は人材

両氏は「タナベ経営のオープンセミナーが人材育成に役立った」と話す。「目標達成に向け課題をどう解決するか、従業員一人一人が自発的に考えるようになった」(奥谷氏)、「目先のことだけでなく、経営者視点で先を見据えて物事を考えるようになった」(岡田氏)。

人材育成を充実させる中で、新卒採用も強化している。「商品や価格は他社が真似をしても、人材だけは真似ができない。

ここに競争優位を築く一番のポイントがあります」と奥谷氏。

面接では成績や経歴より、どんな考え方を持った人物かを重視するという。「当社の理念を理解し、同じベクトルで考えて行動できるかが最も重要です」人材育成を起点に経営革新を図る敷島住宅。奥谷氏はこう断言する。「市場縮小時代にあって、古いやり方に固執してはダメ。常に挑戦する組織風土を構築しなければ。ここに新たな事業機会が生まれると確信しています」。同社が目指すのは「常に挑戦し続ける組織」だ。

PROFILE

  • 所在地: 〒570-0027 大阪府守口市桜町4-17 TEL: 06-6992-6733(代)
  • 資本金: 3000 万円 創業: 1962 年 売上高: 97 億5600 万円 従業員数: 93名
    http://shikishima-j.co.jp/



タナベ コンサルタントEYE
次世代幹部や戦略リーダーは自然に生まれるものではなく、「生み出すもの」。お話を伺った敷島住宅では、川島社長の就任後10 年以上、人材育成に力を入れてきた。戸惑う社員が多い中、研修や朝礼で徐々に意識改革を図ったことは特筆に値する。執念で培った土壌から、優れた次世代幹部、戦略リーダーが生み出されていくだろう。



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(左)タナベ経営 コンサルティング戦略本部 副本部長 福元 章士
(中央)タナベ経営 コンサルティング戦略本部 人材開発部 アソシエイト 清水 駿
(右)タナベ経営 コンサルティング戦略本部 人材開発部 アソシエイト 岩﨑 直人

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所