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今週のひとこと

部下育成の根底にあるものは、愛情である。

「こういうふうに育ってほしい」。

この願いと愛情がなければ、部下は育たない。






◆チームメンバーのやる気を引き出すには?

社員・チームのやる気は、会社の業績や生産性に与える影響が大きい。タナベ経営主催のセミナーなどで参加者にお聞きするアンケート調査でも、例年「人材育成」や「組織活性化」を重要な課題として挙げる経営者・経営幹部の方々が多い。

チームメンバーのやる気を高めようと思えば、当然のことであるが、メンバー個々人の気持ちや、考えていることをどれだけ理解できているかが重要となる。
例えば、皆さんが「自分の部下の長所・短所を5つ以上書いてください」と言われたとしよう。「短所は書けるが、長所は難しい」という方も少なくないのではなかろうか。


誰にでも必ず長所はある。失敗は目につくが、長所はメンバーのことをよく理解していないと見えてこない。これでは、メンバーのやる気も高まらないだろう。

加えて、会社のシステムとして、やる気を高めることを阻害している要因は無いか? いくら適性のある仕事とは言え、長年同じことだけをやっているとマンネリに陥り、やる気は後退する。
毎年1つでも新しいテーマを与え、挑戦し続けることができる環境づくりも必要である。


『精神的なモチベーション』と『会社のシステム』、この両面で  チームメンバーのやる気を引き出し、高めていただきたい。


戦略総合研究所 副本部長
日高 義仁





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「わが社の幹部には危機感がない」 私は全国各地の金融機関で、地域の企業を対象に後継者向け勉強会を実施している。

その際、よく耳にする相談事がこれである。 危機感がないとは、言い換えれば「当事者意識がない」ということだ。 物事を「自分事」ではなく、"他人事"として捉えている。自分には関係ない、あるいは、関係があっても「誰かが考えるだろう」と思っている。

だから、危機感が生まれない。 幹部に危機感を持たせるには、「危機感を持て」と迫るだけではいけない。自分の視点から顧客の視点へ、自部門の視点から全社の視点へ――という「別の視点」で物事を考えさせねばならない。

そのためにも、次の3つの「逆」視点で、物事を捉えさせる必要がある。

①逆側の視点......相手(経営者、顧客)の立場で考える

「自分が経営者ならどう思うか、どうしてほしいか」「私が顧客ならこれが知りたい、こんな資料が欲しい」など。

②逆算の視点......未来の立ち位置から現在を考える

「このままだと○○円足りない」「今のうちにこれをやらねばならない」など。

③逆転の視点......物事を裏側から見る、順序を逆に考える

「コストを減らして利益を出すのではなく、コストを増やして利益を出す」「粗利益率が低下したのは、原価が上がったからではなく、販売単価が下がったからではないか」など。

ただし、これら3つの視点は、自分自身で意識して変えていくことが難しい。経営者が関わって変えていかねばならない。例えば、幹部からの報告・相談に対し、こう質問してみよう。 「あなたが私だったら、どう処理する?」 「あなたなら、どのタイミングで報告してほしい?」 「もし、それと反対のケースが起きたらどうする?」

全社や顧客の視点でなく、自分の視点でしか物事を判断できない幹部は、成長に向かう企業を逆行させる。常に逆側・逆算・逆転という「三逆視点」で物事を考えさせ、それを繰り返すことによって正しい危機感を持たせていただきたい。




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■筆者プロフィール

タナベ経営 マネジメントパートナーズ本部長 三浦 保夫
ネットワーク本部(現マネジメントパートナーズ本部)副本部長を経て2014年より現職。多くの人材を効果的に成長させ、組織づくりを実施する傍ら、全国の金融機関主催の研修会でグループ討議や実習を取り入れ、多くの経営者から「分かりやすい講義」と支持を得ている。また、企業・金融機関・会計事務所が抱える悩みを解決する組織づくりのエキスパートとして、相談が後を絶えない。「人の潜在能力を120%伸ばす」ことを信条に、多くの企業支援を行っている。





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トンボ 常務取締役 経営管理本部長 難波 照明 氏

トンボ 常務取締役 経営管理本部長 難波 照明 氏



育成の重点は幹部候補

変動の激しいアパレル業界。その中で、学生服を核とするユニホーム分野で堅実な成長を続けるのが「トンボ」だ。同社は岡山県を地盤にスクール・スポーツ・ヘルスケアの3つのウエアの製造販売に特化した事業を全国で展開。スクールウエアではシェアナンバーワンを確保し、2016 年に創業140 年を迎える老舗メーカーである。

トンボは早くから人材育成に着眼し、1956 年に当時の社長が始めた育成事業を皮切りに、今日に至るまでさまざまな取り組みを継続・推進してきた。各種研修や通信教育、資格取得支援を幅広く行う「トンボスクール」をはじめ、時代に即した育成制度を着々と取り入れながら、質・量の両面から「人づくり」の充実化を図ってきたのである。

目まぐるしく市場環境が変化する昨今、トンボはこれからの人材育成の課題や工夫をどのように捉えているのか。常務取締役・経営管理本部長の難波照明氏は「現状で最も注力しているのは、10年後の会社をけん引していく幹部人材をどうやって育てるか。幹部がしっかり育てば、末端の社員の成長まで自然につながっていきます」と語る。

経営層への確かなステップ

ただ既存の制度に頼って近視眼的に幹部候補人材の登場を待っていては、確かな会社の未来は描けない。「幹部は生まれるものではなく創るもの」という発想から、トンボはここ数年、次代の経営層を担う30 〜 40 代社員の育成に向けて、社内システムの変革を進めてきた。その代表的なものが、タナベ経営のアドバイスと密な連携のもとで独自に設定した「ビジョンボード」と「ジュニアボード」である。

「ビジョンボードは部門長クラスの人材が長期的な経営戦略について議論や検討を行うボードで、現経営陣への諮問機関。ジュニアボードは幹部の若手クラスが集まり、10年、20年後の自社の経営について討議する会です。どちらのボードも参加者は経営全般を俯瞰する大局的な視点と思考が不可欠になるため、幹部社員の力を磨く場として大いに有効。当初の狙い以上に高度に機能していると自負しています」と難波氏。

これら2つのボードのメンバーになる登竜門とトンボが定めているのが、タナベ経営の主催する幹部候補生スクールだ。ここを修了した社員だけが経営層に入る資格を得るのだという。執行役員・経営管理本部副部長の斎藤寛司氏は次のように話す。

「私も参加しましたが、決算書の読み方や計数の見方など、それまで注視したことのなかった会社全体への視界が開けたことが印象的ですね。約7カ月にわたって勉強と試験を繰り返したことで、実務の視野が広がるだけでなく自分のレベルが上がったことも実感できました」

トンボ 執行役員 経営管理本部 副本部長 斎藤 寛司 氏

トンボ 執行役員 経営管理本部 副本部長 斎藤 寛司 氏



育成に投資は惜しまない

幹部人材の育成に重点を置きつつ、トンボは一般社員に向けた新たな教育手法も実行している。例えば、女性社員が能力を発揮し成長できるよう、2年前に「ウーマンズプロジェクト」を開始。部門や社歴を問わず、意欲と関心のあるメンバーを集めて商品開発を行った。今後も女性社員が活躍できるよう、職場環境や制度の整備、研修を通した育成など、新たな取り組みを検討していくという。

「採用面も含め、従来とは違った考え方・やり方を加えて人材育成への取り組みを拡張させていくことが未来のトンボにとって非常に重要と考えます。これまでと同様に、そのための時間やお金の投資を惜しむつもりはありませんし、育成にはそれが欠かせないと思っています」。両氏はそう口をそろえる。

企業は人なり。継続は力なり。そんな言葉を地でいくトンボの人材育成への情熱は企業DNAとして脈々と受け継がれ、事業と組織を支え続けている。

PROFILE

  • 株式会社トンボ
  • 所在地 : 〒700-0985 岡山県岡山市北区厚生町2-2-9
  • TEL : 086-232-0311
  • 資本金 : 2億6187万円
  • 創業 : 1876 年
  • 売上高 : 255 億7400 万円(2015 年6月期)
  • 従業員数 : 1400 名(グループ全体)
  • http://www.tombow.gr.jp/


タナベ コンサルタントEYE

「企業は人なり」という言葉から、どの会社も人材育成が重要なことは理解しているが、中堅・中小企業では実行できていないところが多いのも事実である。トンボは「人材育成への継続的な投資が自社の5 年後、10 年後をつくる」という思いのもと、人材育成を人事制度と連動させ、人が育つ仕組みを構築している。持続的発展を目指す企業は、場当たり的な教育ではなく、人材育成を未来への投資として捉える必要があるだろう。

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所