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今週のひとこと

自部門に人材がいないと嘆くのは、上司の思い上がりか、

部下の潜在能力に気づいていないかのいずれかである。

客観的に自分と部下の能力を見つめ直そう。





◆幹部・リーダーの悩みは業績よりも・・・
  ~頭を悩ませているテーマのトップは「部下育成」~

今回は、タナベ経営が毎年5~11月に開催しております幹部候補生スクールの受講生、約750名に回答いただいた『幹部・リーダーの意識調査』の結果をご紹介いたします。

Q. 今、抱えている一番の課題・悩みは?

「部下育成」が4年連続で首位、他にも、「チームワークの推進」「部下とのコミュニケーション」といった『ヒト』に関する内容が増加傾向にあります。

Q. 上司からの期待に応えられていますか?

上司から求められていると感じている能力の上位は「実行力・率先垂範力」「指揮・統率力」「部下育成力」でした。
一方、同じ選択肢で、自分が自信を持っている能力を聞いたところ、「責任感」「コミュニケーション力」「調整力」といった項目が上位を占め、上司から求められているであろうトップの「実行力・率先垂範力」は7位という結果でした。


Q. マネージャーとプレーヤーとしての仕事の時間の割合は?

この問いに対しては、
「マネージャー(20):プレーヤー(80)」の割合が最も多い結果となりました。プレイングマネージャーと呼ばれているものの、まだまだ、プレーヤーとして日々の業務に追われているようです。


その他、「自信がある能力・不足していると感じる能力」や「今後、目指したいポジション」など、幹部・リーダーの率直な意見を分析したものをレポートにまとめました。
今後の幹部・リーダーの育成に、ぜひご活用下さい。


レポートの詳細はこちら




戦略総合研究所 戦略サポート
藤坂 賢年





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「2025年問題」は国内最大の課題マーケット

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南川 典大 Minamikawa Norihito

1993年タナベ経営に入社(東京本部)。西部本部長、取締役を経て2014年より現職。上場企業から中小企業まで数百社のコンサルティング・教育などに従事し、数多くの実績を誇る。経営の視点から、仕組みと人の問題解決を行う"ソリューションコンサルタント"として定評がある。信条は「知要先行」「瞬間一生」。著書に『問題解決の5S』(ダイヤモンド社)ほか。



「2025年問題」をご存じだろうか。いわゆる「団塊の世代」2200万人がこの年までに75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護需要の高まりから社会保障財政バランスの崩壊、病床不足などが懸念されている問題である。4人に1人が75歳以上、65~ 74歳を含めると3人に1人が高齢者(※)という「超高齢社会」の到来は、わずか9年後だ。官民一体で取り組まねばならない最大の社会的課題である。

※ 厚生労働省『平成27年版 高齢社会白書』

国の社会保障という視点ではピンチだが、これをビジネスの視点から捉えるとどうか。一転してチャンスになる。高齢者の増加に伴い、医療・介護市場規模は国内最大の100兆円に成長するとの予測がある。食品市場(約80兆円)や自動車市場(約50兆円)と比較しても、その巨大さが分かる。

こうした社会の構造転換は、企業の構造転換をもたらす。事実、医療・介護分野においては、新たな社会的課題を解決するための企業が多く誕生している。しかも、競合企業がいないホワイトスペース(未開拓分野)での起業のため、創業10年で上場を果たした企業も少なくない。

そうした中には、ITや異業種のノウハウを持ち込み急成長している企業や、規制が強い医療・介護保険対象外でビジネスモデルを組み立てている企業も多い。また、医療法人においても、民間企業のノウハウを取り入れる動きが目立つ。

医療・介護は、保険や税金で賄われているという公的な側面もあるため、非営利であることが義務付けられていると捉えがちである。だが、これは「配当をしてはいけない」ということであり、"利潤を追求してはいけない"というわけではない。

医療でいえば、医業収益(売上高)は価値を提供して患者に満足・支持された奉仕高であり、医業利益(利益)は患者のために行う次なる投資の未来経費となる。よい医療は、よい経営から。そのためにも、患者(顧客)・職員・社員・社会など、ステークホルダー(利害関係者)に対する使命の明確化と経営の効率化が不可欠である。

「医療・介護」×「衣・食・住」、「医療・介護」×「製造・卸小売・サービス」、「医療・介護」×「ヒト・IT・情報」――。こうした組み合わせの妙により、自社の経営ノウハウを医療・介護市場に転用できるホワイトスペースは必ず存在する。間もなく訪れる2025年問題に対し、自社ができることから取り組もう。その先に、自社の成長もある。





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参入!ヘルスケア100兆円マーケット

松室 孝明 Takaaki Matsumuro
慶應義塾大学卒業。化粧品メーカー勤務を経て、2005年タナベ経営に入社。ヘルスケア関連の中堅企業を中心に、業績アップに向けた戦略立案・営業力強化、新分野進出・新規事業開発、ビジネスモデル・収益構造改革など、「数字を変える」ためのコンサルティングを中心に幅広く活躍。座右の銘は「結果の出ない努力は無駄である」。




2025年の国内最大産業はヘルスケア産業

「10年後の国内最大マーケットとは?」と聞かれたら、どのような産業を思い浮かべるだろうか。建設業、食品産業、はたまた自動車産業であろうか?

結論から言えば、それは「ヘルスケア産業」である。その規模は2025年に100兆円となる(みずほ銀行推計)。経済産業省の試算によると、2015年の健康・福祉関連サービスの市場規模は60兆円超。つまり、10年間でほぼ2倍に拡大する超有望マーケットが、ヘルスケア産業なのだ。

事実、インターネットの検索サイトで「ヘルスケア中期経営計画」と入力すると、あらゆる業種・業態の企業がヘルスケアビジネスを模索していることが分かる。2015年12月、損保ジャパン日本興亜ホールディングスがワタミの介護事業を完全子会社化したほか、流通大手のイオンやローソン、警備会社のセコムや綜合警備保障、学習産業である学研ホールディングスやベネッセホールディングス、IT関連のNTTドコモやDeNA、リクルートホールディングス、食品会社の永谷園、味の素などが、ヘルスケア分野を今後の重点分野と位置付けている。いずれも異業種ながら本業で培ったコア技術・資源を活用し、参入と事業ポートフォリオ転換を加速している。

【図表1】は、労働政策研究・研修機構が発表した産業別就業者数の推移である。高齢化の進展とともに需要が増大する医療・福祉分野においては、2030年時点で就業者数944万人と推計されている。製造業、卸売・小売業、鉱業・建設業を抜き、医療・福祉というヘルスケア分野が国内最大産業へ成長するとの見通しだ。このことは日本が「ものづくり大国」から「ヘルスケア大国」へと転換する現実を意味する。高齢化という社会構造変化は、国内産業構造の転換をも迫るのである。

【図表1】産業別就業者数の推移
【図表1】産業別就業者数の推移


ポスト2025年、企業に残された参入・攻略猶予は9年

このような無限のビジネスチャンスが存在するマーケットに、あなたの会社はどのような関わり方をしようと考えているだろうか。

先日、私はリフォーム会社と化粧品会社の社長から、ヘルスケア分野への参入後の事業展開や、今後の戦略・展望について話を聞く機会があった。両社は参入後、事業規模が3倍になっており、ヘルスケア事業が既に本業をしのぐ、または匹敵する事業へと育っていた。また、あるリゾートホテルの経営者は、医療機関をグループ化し、インバウンド向けの長期滞在型施設へ転換した。ヘルスケアを切り口に事業ポートフォリオを組み替え、過当競争下にある従来のホテル分野から脱したのである。

2020年の東京オリンピック後は、景気後退が予測される。その上、人口減少の中にあって向こう10年以上、順調に規模が拡大するとみられるマーケットは、ヘルスケア分野以外に存在しないといってよい。

従って、ヘルスケアビジネスを、単にビジネス分野の1つと捉えてはならない。「日本経済全体を大きくけん引する可能性を秘めたマーケット」であることを念頭に置きながら、直接・間接的な関わりを考える時期にきている。

では、企業がヘルスケア分野への参入・攻略に費やすことができる時間的猶予は、あとどのくらい残されているのだろうか。

【図表2】は、高齢者人口の将来推計である。75歳以上の人口の増加は、団塊の世代(1947~49年生まれ)が後期高齢者に突入する2025年を境に潮目が変わることが見て取れる。つまり、拡大一途のヘルスケア分野も、2025年以降は成熟期へとマーケットライフサイクルが変わる。当然、差別化・価格競争を余儀なくされ、他業界と同様に再編時代へ突入すると予測できる。

従って、遅くとも2025年までに、いかに「事業のタネ発見→事業化→事業拡大」を成し得るかが、それ以降の企業の成長・存続を決めるポイントといえよう。企業に残された参入・攻略の時間的猶予は、わずか9年しかないのである。

【図表2】高齢者人口の将来推計
【図表2】高齢者人口の将来推計


社会的課題は「医療・介護の隙間を埋める分野」にあり

では、ヘルスケア分野参入に際し、猶予期間9年という時間軸の中で、どのような分野で事業のタネを発掘すればよいのか?まずは、その方向性を示したい。

【図表3】は、全国各地の「急性医療・介護余力」をマッピングしたものである。現状の急性医療需要に対して供給が追いついていないのは、都市部とその周辺、一部の過疎地以外に存在しない。また、未来(2040年時点)の介護需要に対しても、ベッド数が足りていないのは同様の地域だけであることが分かる。

要するに、日本全体を俯瞰(ふかん)すれば、医療にしろ介護にしろ、赤・オレンジ以外の地域は既に需要を満たしている。現状の「住民が安価な医療・介護サービスを、いつでもどこでも享受できるようにする」という課題は解決済みということだ。この現実は、解決すべき課題が、「現状のサービスではカバーしきれない、入院・入所しなくとも常時、住民に寄り添ってくれる医療・介護サービスを、いつでもどこでも享受できるようにする」という1つ上のステージへシフトすることを意味する。

ヘルスケア分野への参入・攻略に際して狙うべき最重点分野は、まさに、この社会的要請の受け皿が産業として著しく未成熟な「医療・介護の隙間を埋める分野」である。事実、政府は崩壊寸前の社会保障制度を維持する観点より、できる限り医療・介護を必要としない健康寿命の延伸や予防・未病を推進している。

企業の使命が、社会の「不」を解決することである以上、国内最大マーケットとなるヘルスケア市場において企業が狙うべき分野は、社会的要請が大きい「王道」に他ならない。

【図表3】需要に対する急性医療・介護ベッドの提供状況
【図表3】需要に対する急性医療・介護ベッドの提供状況


事業のタネが存在する3つの市場セグメント

最後に、ヘルスケア分野への参入を検討している企業のために、ホワイトスペースの発掘と事業化に向け、狙うべき3つの市場セグメントを紹介したい。

(1)課題解決セグメント

既に表面化している課題や、将来に表面化するであろう課題を解決する市場セグメント。労働人口の減少に伴うマンパワー対策や、前述した「医療・介護の隙間を埋める分野」だ。

例えば、精神障害者のサポート。内閣府『平成26年版 障害者白書』によると、2011年の「精神障害者」の数は、人口1000人当たり25人(320.1万人)である。一方、精神障害者を支える場所は、2012年の「精神保健福祉法」改正以降、「入院医療」から「地域生活」へ、つまり"受け皿"未構築の「地域」へと移行した。結果、家族の負担増、医療機関での門前払い、精神障害者へのケア不十分による悲しい事故などが起きているが、こうした社会的課題の解決につながる事業はほとんどない。

また、全国に70万人以上存在するといわれる「潜在看護師」の復職支援、高血圧・糖尿病・脂質異常症などによる食事制限対象者への食事・生活習慣の改善サービスなどは、業界の恒常的なマンパワー不足解消や、国民医療費抑制の観点で社会的要請が強い市場セグメントである。

(2)願望実現セグメント

「◯◯したい」という願望を支援する市場セグメント。「やせたい」「元気で長生きしたい」「家族に迷惑をかけたくない」「1人でも安心して暮らしたい」といった願望を実現する事業・サービスである。

例えば、家族信託。独居状態の高齢者が認知症などで介護施設に入所した場合、土地や建物の資産が放置され、財産管理や相続対策が遅滞する。このような事態をあらかじめ回避するよう、土地や建物、金融などの資産を家族に信託する家族信託の注目度が年々高まっている。

また、住み慣れた家での生活を支援する生活支援サービス、観光しながら健康増進を図るヘルスツーリズム、介護予防が目的の高齢者向けフィットネス、独居高齢者の見守りサービスなども、このセグメントといえよう。

(3)フロンティアセグメント

先端技術・先端商品が切り開く、新たな市場セグメント。介護ロボットによる業務負担軽減分野、ウエアラブル端末などを使用した健康管理分野、ビッグデータ・遺伝子情報を活用した疾病予防分野、ICTを活用した情報・画像共有や遠隔治療分野など、ヘルスケアの各分野に最先端技術を落とし込むことで誕生する新たな市場セグメントである。

例えば、エムスリー、サイバー・バズ、cotree(コトリー)は、オンラインによる健康相談サービスを提供している。このようなサービスの誕生により、消費者は医療機関で受診しなくても健康相談が可能となり、「主治医を携帯電話と共に持ち歩ける」ようになりつつある。

ヘルスケア100兆円マーケットの最大の魅力は、「自動車産業が向こう9年間でもう1つ生まれるレベルのインパクトを日本経済に与えるほどの市場規模・市場成長スピード」にある。本稿で述べた3つの切り口で地域の社会的課題を捉え、解決策の事業化に取り組んでいただきたい。

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