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今週のひとこと

今日の繁栄は過去の遺産である。

明日の繁栄は今日の企業努力に

かかっている。





◆企業のチャンスは、毎年、毎月そして、毎日

リオデジャネイロオリンピックで、日本選手団が獲得したメダルの数は過去最多の41個。皆さんの記憶にも新しいことでしょう。

メダリストのインタビューでは、他の競技でメダルを獲得した選手の姿を見て、「勇気を貰った」「刺激を受けた」と語っている人が多かったのが印象的で、以前、ある経営者から、似たような話を聞いたことを思い出しました。


「異業種から学ぶこと、刺激やヒントをもらうことが本当に多いよ。 今まで、この業界しか見ていなかったから、その時間がもったいなかった。もっと早く異業種からヒントを得ていれば今の事業も、早く市場のニーズに合わせることができたかもしれない。」



「垂直統合」という言葉は普通に使われるようになりましたが、これこそ、異業種・異業態を知ること(例えば、メーカーが卸売業や小売業を見ること)によって、生み出された生産性向上策と言えるでしょう。

市場に価値を提供している我々は、現状の足元を固めることと併せ、目線を上げ、異業種からヒントや刺激を得ることで、持続的に提供価値を高めていく必要があると感じます。

普段は、目先のことに追われることが多く、異業種から学ぶことは、後回しにされがちですが、目先と未来は両輪であり、どちらかが欠けてしまっても、企業は勝ち残っていけないでしょう。

4年に1度のオリンピックとは違い、企業は毎年、毎月そして、毎日がチャンスです。一つひとつのチャンスを見逃さないようにしてまいりましょう。


コンサルティング戦略本部
コンサルタント
真鍋 祐磨





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中村 敏之 Toshiyuki Nakamura
「次代の経営者育成なくして企業なし」をコンサルティングの信条とし、100年発展モデルへチャレンジする企業の戦略パートナー。豊富な現場経験に基づく「ビジョンマネジメント型コンサルティング(VM経営)」は具体的で、クライアント企業から分かりやすいと大きな信頼を得ている。関西学院大学卒。


少子高齢化に歯止めが掛からない。「消滅可能性都市」(日本創成会議「増田レポート」)など衝撃的な発表でその深刻な問題が浮き彫りとなっただけでなく、空き家問題や高齢者世帯増による家庭内事故発生率の上昇など、現実の「暮らし」のさまざまなゆがみが顕著になってきた。

一方、50年が耐用年数とされる社会インフラも高齢化ならぬ老朽化が著しい。道路橋やトンネルは、10年後に約4割が耐用年数を超える「2025年問題」との対峙が求められている。まさに「社会課題解決」時代の到来である。この課題解決の一翼、いや主役を担う産業、それが「建設業」であると私は考えている。

しかし、多くの建設事業者が、従来型のハコモノ・公共中心の受注型事業運営から変化できていない。地域差こそあれ、東日本大震災の復興需要や2020年の東京オリンピック需要に対応する必要があるからだ。

とはいえ、そうした特需は必ず終息し、その後に反動減がやって来る。結果、従来型ビジネスモデルの企業は生き残りが難しくなり、社会課題を解決する「地方創生」の担い手がいなくなるという危機感を私は持っている。それ故、建設事業に従事する経営者に、こう提唱している。「今こそ変化と成長を」と。

「土木業こそモノづくり思想」と考え、開発土木という形態を確立。インフラ老朽化と向き合い、持続的成長に挑む100年企業である建設会社A社。また、ブランディング活動で「食品工場建設のファーストコール」を確立し、高付加価値モデルへと変身を遂げたB社。先進の中堅・中小建設会社は、従来型モデルから「変化」し、持続的「成長」を実現している。

では、持続的成長のモノサシは何か。一言で言えば「1・10・100」である。

1は「ファーストコールの確立」だ。一番に選ばれる企業(事業)しか存在価値を発揮できない時代である。10は「経常利益率10%の実現」。業績堅調なスーパーゼネコンですら、経常利益率5%の壁を越えられていない。だからこそ、地域の要たる中堅・中小建設会社は、経常利益率10%の高付加価値モデルを実現する必要がある。最後の100は「100年発展への挑戦」である。

100年先の地図に残る仕事。それが建設業だとするならば、100年先にも一番に選ばれる企業を目指す必要がある。「1・10・100」の志で、新たな「コンストラクション価値」を創造していただきたい。





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竹内 建一郎 Kenichiro Takeuchi
大手メーカーで商品開発の生産マネジメントに携わった経験を生かし、経営的視点による開発・生産戦略構築から現場改善まで、多くの実績を挙げている。モットーは現場・現実・現品の「三現主義」。



日本の建設業の許可業者数は2015年3月末で約47万3000社(国土交通省調べ)。就業者数は2014年平均で約505万人(総務省統計局『平成26年 労働力調査年報』)という一大産業であり、地域経済・国内経済に与える影響は大きい。過去を振り返ってみても、琵琶湖疏水事業(1885年着工)、東京オリンピック(1964年)、日本万国博覧会(1970年)など、社会構造の変革期における主役は建設業であり、社会インフラ整備の担い手としても重要な位置付けにある。

しかし、建設投資額の中期的な動向をみると、決して安泰とはいえない。国土交通省『平成27年度 建設投資見通し』によると、1990年代前半には80兆円に上っていたが、2002年度には60兆円を下回り、2007年度には50兆円を切った。2013年度、2014年度は持ち直す見込みだが、2015年度は前年度を下回る見通しである。また、政府建設投資の土木工事は、昨今の財政逼迫(ひっぱく)状況を反映し、2015年度は約17兆9000億円とピーク時(1995年度、約29兆5000億円)の6割程度の水準まで落ち込むとみられている。

東日本大震災の復興需要、国土強靭化、2020年東京オリンピックなどを背景に、現在のマーケットは成長基調にある半面、今後の不透明感は深まっていくと予測できる。

こうした市場環境の中、マーケットが成長期にある現在においては、これまでの経営の延長線上ではなく、専門分野などで新たなソリューションを展開していく必要がある。成長意識が高い経営者の多くは、次の一手をどう打つか、試行錯誤している。

本稿では、建設・土木業における課題を整理した上で、地方創生の立役者として持続的に成長・発展するために何をすべきかについて述べる。

建設・土木業における3つの課題

建設・土木業の課題は、大きく分類すると「市場の失速」「人材不足」「原価の高騰」の3つである。いずれも中長期的な対策が必要な検討項目だ。

日々の経営の中では、短期的な課題解決に注力してしまい、中長期的対策は棚上げされることが多い。しかし、持続的な成長を実現するためには、この3つの課題を押さえた上で、中長期的な対策を検討する必要がある。

1.市場の失速
国交省によると、2015年度の建設投資は前年度比5.5%減の48兆4600億円になる見通しである。さらに、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年以降、建設業界では受注量の減少が懸念されており、建設投資は失速する可能性が高いため、自社の事業モデル強化・再設定が必要である。

2.人材不足
現状においても深刻化している技能労働者不足。実際に、中堅・中小企業の現場では、対応する現場代理人がいないために受注できないといった問題も表面化している。専門工事業においては、職人不足による倒産もあり得るといわれる。
10年後、技能労働者不足はさらに深刻化すると予測される。【図表1】が示すように、技能労働者数は2025年で226万人と、2015年比で約52万人減少すると推計されている。つまり、人材の活用・採用・育成がボトルネックとなる可能性があるため、後述する対策を今から打つ必要がある。


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【図表1】建設技能労働者数の将来推計

3.原価の高騰
人材不足による工賃単価の上昇に伴って労務費が増え、さらには外注単価の上昇によって外注費も、また原材料費の単価も高騰している。
一方、各物件の受注単価はというと、案件はあれど、価格競争による過当競争が断続的に続いており、芳しくない。企業が持続的に成長・発展していくには、経常利益率10%を達成することが要件の1つであるが、利益を捻出しにくい状況にある。
利益を確保するためには、価格競争に巻き込まれないように、自社が何を顧客価値として提供するかを徹底的に追求する必要がある。


水平パートナー型ビジネスモデルの構築

多くの建設会社は、従来の受注型ビジネスモデルで事業を運営している。現状のやり方のままでは、前述したようにライバルとの過当競争に陥る。企業は、新たに出現する社会課題や地域課題を解決することを目的とした「変化と成長」を繰り返す必要がある。建設業も例外ではない。変わらなければならないのだ。

変化の方向性の1つが、下請け重層構造から水平パートナー型モデルへの転換である。この転換のためには、従来の建設業から「コンストラクションカンパニー」へと自社を進化させねばならない。コンストラクションカンパニーとは、強みと強みを結び、需要がある今のうちに専門ソリューションを磨き、新しいコンストラクション価値をつくり出す企業である。新たな価値の創造により、地域ナンバーワン、さらにはファーストコールカンパニー(顧客から一番に選ばれる会社)へと進化することができる。【図表2】の事業モデルを例に詳説する。

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【図表2】 コンストラクションカンパニーの 事業モデルタイプ

1.ワンストップ型モデル
ワンストップ型モデルは、ドメイン特化型モデルと言い換えることができる。自社の強みを1つの分野に集中し、専門化の後に総合化することにより、ワンストップでソリューションを提案することができる。
中堅の総合建設業A社は、食品ドメインに特化することで事業を展開。ドメイン(事業分野)特化型でブランディングすることで、新設から改修・保全まで特命で案件が舞い込んでくるビジネスモデルを構築している。

2.ものづくり型モデル
自社で工法や製品を開発し、メーカーとして水平パートナーモデルへ転換するモデルである。総合建設業B社は、本社に工場を併設し、ものづくり事業を2本目の柱として展開。産学連携でガラス廃材などを活用した環境製品を開発し、製造・販売している。

3.サービス型モデル
建設市場がフロー型からストック型へ動いていく中、建設業であっても「サービス」の要素を自社に取り入れる必要がある。ストックサービス型の代表的なビジネスが維持・補修分野だ。
保守メンテナンスを展開している中堅総合工事業C社は、24時間対応のカスタマーサービスを行い、年商約280億円、受注件数18万件という実績を挙げている。システムを中心とした仕組みを強化・徹底することで、利益を捻出できるビジネスモデルを構築しているのだ。まさにサービス型モデルといえる。

4.地域ダントツミニスーパーゼネコン型モデル
中堅総合建設業D社は、成長マーケットである介護分野を事業の柱とするため、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)へ事業分野を拡大している。D社は建設設計を主業務とし、サ高住の運営は企業間連携によって別会社が運営している。
事業を多角化する場合、現在保有しているノウハウだけでは実施できる範囲が制限されてしまう。D社のように、ノウハウや技術を持っている会社との連携、またはM&Aを検討することで、多角化に備える必要がある。

5.先進型モデル
人を大切にし、誇りを持てる現場を実現する人材育成システムにおいて、先進型モデルを構築している鉄筋工事一筋の中堅専門工事業E社。同社のCADオペレーターは全員女性であるほか、海外の人材も活躍している。育児期間などでも女性が働きやすい職場風土づくりの推進に加え、ベトナム人技能実習生を採用・育成するなど、まさに人に関する先進型モデルを構築している。

6.開発型モデル
新工法・技術開発を軸とした独自のソリューションを提供するF社。新工法で全国に数々の実績を築き、高い評価を獲得している。F社社長は、開発する風土をつくることが新規開発を続けていくポイントだと言う。開発型モデルの実現で創業100年の長寿経営を実現した好事例だ。

今後の建設市場で自社のポジションを確立するためには、以上6つの事業モデルと、成長市場(環境・ヘルスケア、グローバル、リニューアル)において、自社の強みは何か、どこの分野に特化し、他社と差別化するかなどを踏まえて自社のポジションを再定義し、新たな中期ビジョンを確立することが急務である。


人材の活用・採用・育成

前述の通り、建設技能労働者の絶対数は明らかに不足するため、活用・採用・育成の3つをバランスよく展開する必要がある。

1.人材の活用
大手・中堅ゼネコンが積極的に推進しているのが、先ほど挙げたE社のような女性が活躍できる職場づくりや、海外からの研修生の受け入れである。
一方、無人化・省人化を進める企業もある。機械化することにより、少人数で現場を回せる体制を構築している。

2.人材の採用・育成
建設業における採用と育成は、非常に大切なテーマだ。ここ数十年で、建設市場の縮小に伴い人材が他業界に流出してしまった実情があり、業界全体に"ブラック"なイメージも根付いている。そこで、ある中堅企業は理念の見直しを図り、建設業を想起させないデザインの会社案内を作成するなど、自社のイメージや風土を刷新して発信し、入社希望者の大幅アップにつなげている。
採用と併せて重視されているのが教育である。従来、建設業界においては、現場主義偏重で教育を行っていない企業が多かった。その結果、現場は個人の能力頼みになってしまっている。
この現状を打開し、現場力を強化・維持するためには、人材の底上げと標準化が必要といえる。ある中堅の建設業では、現場代理人の基本業務をマニュアル化、標準化することで、品質・コスト・納期の改善を図っている。

以上、本稿で述べたことを踏まえ、どのような施策を実施するか、短期・中期・長期に区分して戦略を構築する必要がある。これを機に、自社のビジネスモデルについて再考いただきたい。

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左から
サブリーダー/コンサルティング戦略本部 部長代理
百井 岳男
アドバイザー/常務取締役
中村 敏之
リーダー/コンサルティング戦略本部 副本部長
竹内 建一郎
サブリーダー/コンサルティング戦略本部 部長代理
山内 一成

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