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今週のひとこと

自社の商品・サービスはなぜ売れるのか、

また、なぜ売れないのか?

とことんまで突き詰め、それを解決する

ところに、事業の使命がある。





☆ 今どきの消費者とのコミュニケーション

先日、友人に誘われて数年ぶりに魚釣りに行くことになりました。
以前使用していた釣具は家にあったのですが、せっかくの機会なので楽しく釣りをしたいと思い、釣り竿を買い換えることにしました。


最後は、Amazonで購入したのですが、そこに至るまでの自らの購買意思決定のプロセスを分析すると、まさに(※)ZMOT(ジーモット:Zero Moment Of Truth)でした。Google検索で口コミを収集し、Twitter・FacebookなどのSNSで使用者のプレビューを確認。メーカーのWEBサイトでスペックを比較し、そしてAmazonで購入です。
結局、一度も店頭に行くことも試すこともなく購入しましたが、満足できる買い物だったと思っています。


ここで特筆すべきは、釣り竿メーカーのオウンドメディアの作りが秀逸だったことです。欲しい情報にアクセスしやすく、製品ごとの比較がしやすいことはもちろん、機能的価値と情緒的価値がうまくまとめられた構成になっていました。それらに触発された私は、当初の予算の製品より、上位ランクの製品を購入することになりました。

これらを整理すると、次の3つのポイントが購買に繋がっていることが分かります。
 ・消費者が本当に欲しい情報とは何なのか?
 ・消費者のコトの価値は何か?それをどう刺激するのか?
 ・それらの情報は見つけやすい状態にあるか?
自社と消費者とのコミュニケーションのあり方を今一度チェックしていただきたい。


(※)ZMOT:2011年にGoogleが提唱した購買行動を示す概念。消費者が商品を購入する際、実際に商品を手に取る前に事前にインターネットで情報を収集し、購入の意思決定をしているということ。

SPコンサルティング本部
課長
川口 公太郎





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物流はコストではなく価値である
-物流を後回しにする企業は負ける-



「買い方」が変わっても物流はなくならない

EC(電子商取引)によるB toC 国内市場規模は、2014年時点で12兆7970億円(前年度14.6%増)へ拡大した。それでもEC化率はまだ5%未満であり、伸び代は大きい。18年には20兆円を超えるとの予測もある。また、日本・米国・中国の3カ国間越境EC規模は14年の2兆2573億円から、18年には4兆円を突破すると予測されている※。
※ 経済産業省『電子商取引に関する市場調査』(2015年5月)

半面、14年に住友商事がネットスーパー事業から撤退した事実もある。ネットスーパーと実店舗間で商品価格に大きな差はなく、配送コストを収益でカバーできなかったことが要因とされている。このように近年、ECでは物流戦略の重要性が高まっている。

例えば、通販大手アマゾンは注文当日に商品が受け取れる「当日お急ぎ便」を514円(税込)で提供。また家電量販店のヨドバシカメラは、オンラインショッピングサイトで数百円程度の商品でも無料かつ迅速に届けるサービスを展開し、人気である。

商品や価格の差別化が難しい現在、物流は軽視することのできない重要な機能といえる。消費者が商品に感じる価値は、商品の品質や価格だけではなく、いつ、どこで、どのような形で手に入るかまで含まれる。従って、商品自体には問題がなくても、梱包資材に破損や汚れがあればクレームにつながる。自社の物流品質が他社と比較して劣る場合、リピートオーダーされないと認識すべきだ。

自らネットで自社商品を購入してみたり、ネット上のクチコミを確認して自社商品がどんな状態で届いているかを知り、年々高くなる顧客の「当たり前レベル」に対応していく必要がある。「自社商品への思いとお客さまへの感謝」が物流品質を決める。物流に対する見方をコスト業務から価値創出業務へと改め、いかに物流で価値を提供していくかを考えねばならない。

物流をコストから価値に変えるための条件は、次の5つだ。

物流をコストから価値に変える5条件

1.顧客に提供する「物流価値」を決める

顧客に対し、物流を通じてどのような価値を提供するかを決めることだ。これには次の3つの視点がある。

①納期対応

「翌日配送」「当日配送」「時間指定」など、納期の対応レベルを他社よりも高くする。より早く届くことを望む顧客もいれば、受け取る日時を指定したい顧客もいる。自社の顧客が価値を感じるのはスピードか、タイミングか。物流部門だけでなく、顧客との接点がある営業部門と連携し、物流拠点(配送センター、デポ)を展開することが必要となる。

②作業対応

単に出荷するだけでなく「組立・梱包出荷」など、物流の対価をもらえる作業対応(サービス)を行い差別化を図る。ただ、中には差別化と称して、荷主や顧客に言われるまま無償で組立・梱包作業を行う企業もある。

これは「価値のない仕事」を従業員にさせていることになる。そうではなく、きちんと対価を受け取れるサービスを行うべきだ。自社のサービス技術を高めつつ、対価を払ってもらえる顧客の新規開拓を進める必要がある。

③受注対応

注文を受け付ける時間を延長する、あるいは年中無休で注文を受け付けるといったことである。顧客からすると、当日出荷の受付が午後3時までよりも、午後7時までの方が便利だ。もっとも、受注側は延長する4時間のコストが発生するため、効率化や付加価値サービスの提供などによって利益を残せる体制を構築する。

2.「在庫はお金」の全社認識を持つ

在庫は「お金」であり、経営に与える影響が大きいことを全社員が認識する必要がある。発注担当者の勘に頼り過ぎず、会社としての在庫基準を設定することが必要だ。しかし、多くの経営者、部門責任者がこの必要性を認識しているにもかかわらず、社内での優先順位が低い傾向にある。

3.仕入れ先との情報共有とルール設定をする

顧客に対する価値だけでなく、仕入れ先との物流価値も決めたい。自社が欠品、コストアップに陥らないよう、納期対応や加工サービス、受注対応時間などを仕入れ先と明確に決めておく必要がある。

そして、定期的に「ロジスティクス・ミーティング」を開催し、よりレベルの高い物流体制の構築に向けた課題共有や改善活動をお勧めする。場合によっては、仕入れ先(もしくは仕入れ先の協力物流会社)を見直す必要があるかもしれない。

発注をファクスやメールで行うのか、システムで自動発注するのか、EDI(電子データ交換)で受発注を行うのかも重要な要素である。人の手を介する回数が多ければ多いほど間違いが起こる。受発注から出荷までにおける手書きや転記を減らすほど、間違いが少なくなるのは当然だ。

4.輸送手段を確保する

「陸(トラック、鉄道)」「海(船舶)」「空(航空機)」の輸送手段を組み合わせ、物流の差別化につなげる。

5.物流現場での改善・効率化を継続する

物流現場での改善・効率化の成果は、コストダウンと生産性の向上である。

①物流コストの算出

コストダウンに結び付けるには、物流費を「販売における物流費」「社内における物流費」「仕入れにおける物流費」に分けて算出し、それぞれ改善目標数値を設定する。ただ、物流費は変動要素が大きいので、金額だけでなく割合(率)も設定したい。

②物流KPI(重要業績評価指標)の設定

現場での改善成果を確認するには、KPIの設定が有効だ。KPIは「品質KPI」(誤出荷率、欠品率、商品破損率、納期順守率など)と、「コストKPI」(管理人件費、資材費、工程における時間当たりの人件費、実車率、積載率など)に分ける。設定に当たっては、現場担当者が理解して取り組む必要がある。データ収集が定期的に可能であること、設定指標の改善成果を確認できることが重要なポイントだ。

いずれにしても大事なことは、どのような物流価値を提供するにしても、自社にきちんと利益が残る体制づくりを行うということである。顧客の要望に応えようとするあまり、自社の能力以上の物流サービスを手掛けてしまい、赤字になっている企業も見受けられる。戦略を持って物流に取り組み、顧客に支持される仕組みを築いていただきたい。


  • タナベ経営 コンサルティング戦略本部 本部長代理
  • 戦略コンサルタント
  • 土井 大輔
  • Daisuke Doi
  • 大手システム機器商社を経てタナベ経営に入社。製造業、卸売業、小売業、サービス業、建設業など幅広い業種に対し、事業戦略立案や新規事業開発などの戦略テーマから営業力強化、マニュアル整備などの戦闘テーマまで対応する。2020 年までには各業界において「物流・ロジスティクス」が企業競争力を高めると確信し、「戦略ロジスティクス研究会」のリーダーとして活躍中。





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チームワーク経営で「一世紀経営」を目指す
C-Plan(中期経営計画)を旗印に、「社員満足」と「期待を超えるモノづくり」に挑む

自動車用シートの製造販売を中心に成長を続ける東洋シートは、創業70周年を前に組織経営へと舵(かじ)を切った。
改革の中核となるのが、経営大義(理念)と中期経営計画「C-Plan」だ。社員のベクトルを合わせ、「一世紀(100 年)経営」に向かって経営基盤を固める。



自動車用シートを中心に海外6カ国で事業展開

南川 まず、東洋シートグループの事業概要からお聞かせください。

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東洋シート 代表取締役社長 山口 徹 氏
1967年生まれ。91年に京都産業大学卒業後、マツダ勤務を経て95年に東洋シート入社。営業・経理を学び、6年間の米国勤務後は海外事業部や経営企画部など数多くの部門を経験し、2012年代表取締役社長に就任。明るくフラットな関係を好むため、社内でも社長とは思えないほど気さくに振舞う。趣味は家庭料理で、だしからとるこだわり派。

山口 自動車用シート(座席)を中心に、電車やリハビリ機器などのシートの製造販売を行っています。海外については、自動車産業の海外進出に伴って1989年に米国に進出して以来、フィリピン、中国、ハンガリー、メキシコ、インドと6カ国で事業を展開。グループ全体で売上高は約850億円といったところです。一時は約1100億円に達しましたが、近年の国内市場低迷が影響し、現状に至っています。

南川 1947年創業ですから、今年で69周年。現在は、創業100周年を見据えた準備をスタートされています。

山口 私は3代目社長で就任から5年目を迎えますが、それまではいわゆるワンマン経営を続けてきました。「会社は経営者の器以上に大きくならない」といわれますが、当社も器の限界を迎えていました。変革の必要性を感じていたところ、あるセミナーでタナベ経営の若松社長(当時、副社長)に出会いました。100年経営というテーマで講演されていましたが、中でも「カリスマ経営から組織経営への転換」という提言が当社の状況と重なり、タナベ経営の門を叩いたわけです。

南川 創業から50年続く会社は5%、100年続く会社は0.5%ともいわれています。100年経営を目指す上で組織づくりの必要性を感じられたのですね。

山口 グローバル展開を進めながら100周年を迎えるには、ワンマン経営からチームワーク経営への転換が不可欠です。トップの指示で動くのではなく、目的に向かって自ら動く生き物のような組織にしていきたいと思っていましたから、まずは経営大義をつくりました。

南川 全社員が一体となる軸をつくられたわけですね。

山口 困ったときのよりどころとなるものであり、迷ったときに立ち返る原点ですね。たとえ私がいなくなっても会社が自律的に動いていくための判断基準となるものです。形骸化していた経営理念を分かりやすい文章にして発信しました。

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タナベ経営 常務取締役  南川 典大
1993 年タナベ経営に入社(東京本部)。西部本部長、取締役を経て2014 年より現職。 上場企業から中小企業まで数百社のコンサル ティング・教育などに従事し、数多くの実績を誇 る。経営の視点から、仕組みと人の問題解決を 行う"ソリューションコンサルタント"として定評が ある。著書に『問題解決の5S』(ダイヤモンド 社)ほか。

新旧社員でプロジェクトを立ち上げ組織に化学反応を起こす

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タナベ経営 コンサルティング戦略本部
中四国支社長代理 戦略コンサルタント
北島 康弘

「業績向上と社員活性化を両立させる風土づくり」をコンサルティングの指針に掲げ、事業戦略や収益構造改革、組織改革、風土改革、人事制度改革、営業改革などをテーマに数多くの企業を支援している。特に企業風土の活性化を軸にしたコンサルティングに定評があり、「自ら考え、自ら行動する」新たな風土を構築することで、社内改革を多数実現している。

北島 まず経営大義をつくった上で、「一世紀経営」に向けて中期経営計画づくりをスタートさせたわけですね。



山口 当時は、旧来のやり方に固執する考えも根強くありました。その風潮を変えるために中期経営計画の策定という方法を選んだのです。古参社員と若手社員が半々となるようなチームを構成し、私がサポートしながら社員自身が会社のあるべき姿を考えました。新旧の考え方を合わせることで化学反応を起こし、新たなアウトプットを生み出すことに期待しました。

松本 スタート後には紆余曲折(うよきょくせつ)もありましたが、それを山口社長は黙って見守り続け、1年後には中期経営計画「C-Plan」の完成へと導かれました。社員を信じる強い意思と覚悟に感銘を受けました。

山口 米国で学んだコーチングの影響もありますが、人は自ら発意したことでなければ動かないという考えが根底にあります。ただ、当時を振り返っても我慢した記憶はありません。むしろ、メンバーが意見を交わしながら新しいものを生み出していく過程を見るのが楽しかった。

稲岡 メンバーの立場から中期経営計画づくりを振り返ってみて、いかがですか?

藤井 第一次メンバーに選ばれて、初めに言われたことは「私心を捨てる」でした。私自身、ずっと生産管理に携わっていましたから、経営などは門外漢。不安もありましたが、選んでもらったからにはやり通そうと腹をくくりました。最初はチーム名を考えるところから始めました。お酒を飲みながらメンバーや社長(山口氏)と議論するうちに、「革変」という名前が浮かびました。ネーミングは大切ですね。さらに、中期経営計画は「C-Plan」と名付けましたが、CはChange(変える)やChallenge(挑戦する)、Can(成し遂げる)を表しています。手前みそですが、世界でも通用する良い名前だと思います(笑)。

稲岡 C-Planをつくる上で苦労も多かったのでは?

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東洋シート 経営企画室 次長
藤井 武志 氏

1975年生まれ。98年に東洋シート入社。生産管理業務を軸に本社勤務、海外勤務の経験を経て、経営学を学ぶ。持ち前のリーダーシップと仕事の堅実性を高く評価され、2015年経営企画室次長に任命される。「社員一人一人を尊重し、全員が主役として働ける環境づくり」を心掛け、部下と接するときにはいつも笑顔を忘れない。

藤井 特にビジョンづくりには苦労しました。入れたい言葉は思い浮かぶものの、うまくまとまらない。メンバーはそれぞれ業務を抱えていますから、朝7時に集まって議論する日が続きました。最終的にはわれわれの思いを社長が「たがいに成長する喜びを知り、世界で愛されるチームになる」という一文にまとめる形で完成したわけです。

森重 C-Planづくりも大変でしたでしょうが、完成後、社内への浸透という段階での苦労も多かったのではないですか?

山口 C-Plan完成後に大々的にキックオフイベントを開いたり、頻繁(ひんぱん)に情報発信したりとメンバーは積極的に取り組んでいました。ただ、一気に浸透するものではありません。

藤井 それまで、社員が経営を学ぶ機会はほとんどなかったこともあり、「革変」チームに対する社員の不信感は大きかったですね。策定段階から、随時社員に情報発信していたものの、内容が難しいといった反応も多く、すぐには浸透しませんでした。ファシリテーションを組み入れたり、幅広い階層を対象に経営大義をかみ砕いて伝える教育を行ったりと、試行錯誤を続けています。ようやく現場レベルに落とし込まれてきた実感はありますが、浸透にゴールはないというのが正直なところです。

南川 C-Planの落とし込みに時間と労力を惜しまずかけている。そこが重要です。

山口 もともと、当社は「やると決めたらやる」という風土やポテンシャルを持っていましたから、目標が定まれば突進する力は優れていると思います。ビジョンを決めるために朝7時から集まって議論するわけですから、ものすごいパワーです。

北島 C-Planにおける3つのキーワード「I do」「Teamwork」、そして「Open-Minded」が社員から聞かれるようになるなど、社内が変化してきていると感じます。

山口 特に、日常業務の中でそうしたキーワードが出てきているのが良いですね。厳しい状況や自分の能力を超えるような業務に対しても、「『Teamwork』で頑張ろう(笑)」「『I do』だから(笑)」などと冗談交じりで声を掛け合う姿を見ると、成功した手応えを感じます。楽しみながらやっています。

藤井 チームワークが少し違うケースで使われているときもありますよ(笑)。

タナベ経営 コンサルティング戦略本部 中四国支社長 松本 順行
タナベ経営 コンサルティング戦略本部
中四国支社長 松本 順行

「顧客価値を高めて利益が出なければ誰も幸せになれない」を信条に、厳しくも楽しく業績を追っていくことを基本とし、数多くの企業を再建した実績を持つ、タナベ経営のトップコンサルタントの1人。現在、ビジネスモデルを研究テーマとしており、事業・組織・収益の視点から企業の進化に必要な戦略要素をデザインし、実行・推進していくことを得意とする。

機会を与えると人は成長する成長こそが社員満足を高める

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タナベ経営 コンサルティング戦略本部
部長 チーフコンサルタント
稲岡 真一

収益モデルを研究テーマに、数多くの企業の業績構造を分析。その中から新しいビジネスモデルに即した収益構造をデザインし、確立することを得意とする。多くの中堅・中小企業の財務戦略構築や推進、指導などに携わり、クライアントの立場に立った真摯な取り組みが高い評価を得ている。

南川 海外のグループ会社には「革変」メンバーが説明に出向いています。「革変」は既に3期目となっており、「革変」メンバーは30名、つまり30人の伝道師がいることになる。タナベ経営では「戦略リーダー」と呼んでいますが、志が伝承されていないと方法論だけになってしまう。魂とスキルを伝えていける伝道師が30人いると心強いですね。

山口 初めは私も一緒に出向いていましたが、今では彼らに任せて何の心配もありません。メンバー自身のやりがいにつながっていると思います。言われたことをやらされているのではなく、自ら考えて行動できる風土が大事です。自分たちで経営しているな、という実感を持ってもらいたいのです。

南川 自立した社員の定義として3つのキーワードが挙げられると私は考えます。1つ目は「自発」。自分から手を挙げる人物であること。2つ目は「自主」。自らが主人公となり行動できること。3つ目が「自律」。自分を律して謙虚であることです。

藤井 自発については、率先して海外に行くように努めています。海外の現場はC-Planに関して発展途上ですから、直接伝えていくのが私の役割だと感じています。

松本 最初はトップが一緒に行ってやって見せて、だんだんと任せていく。率先垂範で丁寧に指導されていました。

山口 「やってみて、させてみせ」が基本です。自発的な行動が出てくれば、私は前には出ません。自ら考えて行動するから力が付き、すると多様な意見が出て、社員も会社も成長します。

南川 高校野球と同じです。エースや4番打者だけでなく、送りバントができる人や走塁が得意な人も含めて、バランスよくチームをつくらないと勝てません。

山口 改革を断行してよかったことは、社員が先を見て行動するようになったこと。業績の先行管理はその最たるもので、あるべき姿に到達するために今日何をすべきかを考えて行動するようになりました。ビジョンがあり、戦略を立てて組織を変えると、これまでいかに仕事が属人的だったかに気付かされる。C-Planを通して、変化を恐れず、若い人がどんどん挑戦する社風になってほしいと思っています。

南川 経営大義を軸に「革変」によってC-Planができ、組織経営に転換して、経営システムも変えられました。

山口 ワンマン経営でトップダウンだったのが、ジュニアボードで幹部社員が経営に関する意見をまとめ、シニアボード(役員会)に提言するかたちに変わりました。ジュニアボードを通じて幹部の意識が大きく変化しましたね。機会を与えると人は成長します。当社は社員満足第一。そうした成長こそ、社員満足につながると私は信じています。

松本 組織全体が、ボトムアップ型に大きく変わりつつありますね。

山口 タナベ経営の知識や経験があってできたことだと思います。第三者を入れて取り組んだことが成功に結び付きました。

南川 タナベ経営もお手伝いをさせていただきましたが、社長と社員の方々の強い意思と前向きな行動の力です。来年(2017年)は創業70周年を迎えられますが、今後の展望についてお聞かせください。

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タナベ経営 コンサルティング戦略本部
部長代理 チーフコンサルタント
森重 裕彰

「問題解決の鍵は全て現場にある」を信条に、誰もが納得できるように見える化ノウハウを駆使して、クライアントの問題解決の支援を行う。自身の職務経験を生かした現場改善のアドバイスにも定評があり、製造業のクライアントを中心に、経営視点からの具体的な改善策における成功事例を多数持つ。

山口 われわれはモノづくり企業ですから、2020年に向けて「期待を超えるモノづくり」を目指していきます。それを実現するには、「他社にはない東洋シートのモノづくりとは何か」を突き詰めて考えなければいけません。さらに先を言えば、「経営大義を達成するためにできることは何か」まで考える必要があるでしょう。収益を上げて、社員満足を高めてやりがいを持てる仕事とは、もしかしたら、モノづくりの外にあるかもしれません。そこまで立ち返って再度考え直すような議論まで到達することが、100年続く会社になる鍵だと思います。

南川 「モノ余りでコト不足」の時代です。サービスなどのソフトも含めて「座る」価値を問い直していくということですね。

山口 座る人の満足から価値を創出する。当社の規模ではハードの追究だけでは勝てません。量も必要ですが中身が重要であり、目に見えない価値で勝負していかねばなりません。現状では車から派生したモノを新しいマーケットに投入するという流れが多いけれども、車から離れた観点から見て、車にどう生かせるかを考えるという事業展開も今後は必要になってくるでしょう。

南川 課題解決こそ企業のミッションです。組織経営に磨きをかけて一世紀経営を目指してください。本日はありがとうございました。

■ 経営大義
1.社員満足第一主義を貫く
2.温かさと独自性で世界を笑顔にし、子供たちの未来を創造する


PROFILE

  • (株)東洋シート
  • 所在地: 〒736-0002 広島県安芸郡海田町国信1-6-25
  • T E L : 082-822-6111(代)
  • 設立: 1947 年
  • 資本金: 1 億円
  • 売上高: 365 億円(2015 年度12 月期)
  • 従業員数: 711 名(2016 年3 月末現在)
  • 事業内容: 自動車用シート、自動車用コンバーティブルトップ、機構部品、自動車用排気管、ドアトリム、JR列車用シート、スチール家具、健康機器、その他の製造販売
  • http://www.toyoseat.co.jp/
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    06-7177-4008
    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所