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今週のひとこと

持っている情報は、たえず部下と共有

しよう。上司と部下が同じレベルで

判断できる基盤をつくろう。





☆ 組織のIQが高まれば、チーム力もアップする

今回のメルマガでお伝えする「組織IQ」。ここでは、組織のナレッジをいかに昇華し、自社の強みとしていくか。その能力のことを、組織IQと定義させていただきます。

組織IQを上げるポイントは次の3点です。

1つ目は、社員同士のナレッジシェアの精神です。その名のとおり、各自が持つナレッジを自分のものだけにせず、オープンにする精神のことです。そして、一方的ではなく、全社員がこの精神を持ちシェアすることで、組織IQは高まります。

2つ目は、組織間のコミュニケーションです。そして、その機会が半ば強制的に設けられているかが重要です。例えば、全社員参加の研修会や他部署の業務を体験する制度、社内留学制度などがあります。こうした機会の経験から、全社視点を持つ社員が増えていきます。社員が「全社」という同じ視点でコミュニケーションを図ることは、組織IQを上げるための効果的な方法です。

最後3つ目は、デジタル(Web)をいかに有効に使えるかです。
デジタル化されたナレッジは風化せず、利用用途は無限に広がります。


組織IQを高め、チーム力もアップさせましょう。

経営管理本部 経営企画部
坂本 拓也





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3つの課題を克服し、顧客と地域に貢献を

2016年上半期(1~6月)の訪日外客数が1171万人(前年同期比28.2%増)(※1)と、初めて半年で1000万人を超えた。同期間の訪日外国人旅行消費額も1兆8838億円(同18.0%増)(※2)と好調だ。が、必ずしももろ手を挙げて喜べる状況ではない。構造的な3つの課題と向き合う必要がある。
※1 日本政府観光局『訪日外客数(2016年6月推計値及び上半期推計値)』
※2 観光庁『「訪日外国人消費動向調査」平成28年4-6月期の調査結果(速報)』


1つ目は「国内を旅しない日本人」。日本人の国内旅行(宿泊・日帰り)消費額は2015年で20.4兆円(※3)。2006年の27.2兆円(※4)から6.8兆円も減った。好調なインバウンド(訪日外国人旅行)消費額が国内観光消費全体に占める割合は14%(※5)にすぎず、「国内旅行がくしゃみをすれば、観光業は風邪を引く」。
※3 観光庁『「旅行・観光消費動向調査」平成27年年間値(確報)について』
※4 観光庁『平成24年(2012年)の旅行消費額(確定値)』
※5 観光庁『平成27年(2015年)の旅行消費額について』


2つ目が「旅館の"100日構造"」。国内宿泊施設の53%(※6)を占める旅館の客室稼働率(全国平均)は37%(※7)。70%超のシティ/ビジネスホテルに比べ大きく見劣りする。旅館業は土・日・祝日(年間約100日)が黒字、平日(265日)は赤字といわれる構造を引きずっている。
※6 厚生労働省『平成26年度衛生行政報告例の概況』
※7 観光庁『「宿泊旅行統計調査」平成27年・年間値(確定値)


3つ目が「低賃金・高離職率」。宿泊・飲食サービス業の月額賃金は男性27万円、女性19.6万円(※8)と共に全産業で最も低く、常用労働者の離職率は31.4%(※9)と全産業で最も高い。待遇に不満を持つ人が多い中で、「おもてなし」を発揮できるとは思えない。
※8 厚生労働省『平成27年賃金構造基本統計調査の概況』
※9 厚生労働省『平成26年雇用動向調査結果の概況』


これらの課題克服に向け、3つの提言をしたい。1つ目が「既存客と地域を大切に」。老舗旅館A社は、地域の人が日常使いできる施設として愛され、常時7割台の稼働率を維持している。地元のリピーターを増やす活動を続ける企業は、業績が堅調である。

2つ目が「高付加価値モデル」。JR九州は豪華なクルーズトレインを開発し堅調である。高価格でも未体験のコトに対価を払う顧客が確実に増えている。

3つ目は「多能工化」。外食業B社は観光客をターゲットに設定、カウンター越しの対話によるおもてなしに注力している。B社は合宿施設を完備し、徹底した教育訓練によって調理や接客、演出まで1人のスタッフが担い、高生産性と高リピート率を実現している。

観光消費の経済波及効果は付加価値ベースで23.7兆円(※10)。情報通信業の名目GDP(26.7兆円)(※11)に匹敵し、地方創生のメインプレーヤーとなる潜在力を有する。ぜひ3つの課題を克服する「ツーリズムモデル」へ挑戦し、顧客と地域に貢献していただきたい。
※10 観光庁『旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究(2014年版)』
※11 内閣府『国民経済計算確報(2014年度確報)』経済活動別国内総生産(名目、暦年)



タナベ経営 常務取締役/
観光・ツーリズムビジネス成長戦略研究会 アドバイザー

中村 敏之 Toshiyuki Nakamura
「次代の経営者育成なくして企業なし」をコンサルティングの信条とし、100年発展モデルへチャレンジする企業の戦略パートナー。豊富な現場経験に基づく「ビジョンマネジメント型コンサルティング(VM経営)」は具体的で、クライアント企業から分かりやすいと大きな信頼を得ている。関西学院大学卒。





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観光マーケットに強みをぶつける

タナベ経営 コンサルティング戦略本部 東北支社長代理
観光・ツーリズムビジネス成長戦略研究会 リーダー

日下部 聡
Satoshi Kusakabe

「現場第一、先行思考、情熱主義」をモットーに、各企業の業績改善・体質改善に取り組み、多くの実績を残している。専門分野は経営戦略構築、営業強化、人材育成による組織活性化。観光・ツーリズムビジネス成長戦略研究会リーダーとしても活躍中。

成長産業・観光マーケットの現状

「日本観光、限界への挑戦」ともいわれる意欲的な目標が、2016年3月、安倍晋三首相を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」によって示された。2020年に2000万人としていた訪日外国人旅行者数の目標を上方修正し、2020年に4000万人、2030年で6000万人と倍増させたのである。同時に、訪日外国人および日本人の旅行消費額や地方部(※)での外国人延べ宿泊者数、外国人リピーター数も大きく増やす目標を掲げている。(【図表1】)
※ 三大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫)以外の地域

【図表1】新・観光ビジョン目標数値
【図表1】新・観光ビジョン目標数値

この構想で最も注目すべきは、都市圏に集中している外国人旅行客を地方部へ誘致しようとしている点だ。地方部における外国人延べ宿泊者数の目標は、2020年で7000万人泊、2030年には1億3000万人泊。三大都市圏と地方部の比率を2020年に50:50へ、さらに2030年には40:60へと逆転させ、観光によって地方創生を加速しようとしている。

国土交通省の『観光交流人口増大の経済効果(2014年暫定値)』によると、定住人口1人当たりの年間消費額(125万円)は、外国人旅行者9人分、国内旅行者(宿泊)27人分、国内旅行者(日帰り)84人分の旅行消費額に相当するとしている(【図表2】)。旅行者や短期滞在者などの「交流人口」を増やすことができれば、宿泊や食事、土産品の購入などにより、地域経済が潤うことが期待される。特に、外国人旅行者をターゲットとすることは有効といえよう。

【図表2】観光交流人口増大の経済効果(2014 年 暫定値)
【図表2】観光交流人口増大の経済効果(2014 年 暫定値)

インバウンド(訪日外国人旅行)は、人口が減り続ける日本の経済にとって大きなインパクトであり、救世主の役割を担う可能性が高い。今後は日本に呼び込むという段階から、どのように受け入れるかという段階に入っていくだろう。

一方で、2015年の国内旅行消費額24.8兆円に占めるインバウンド消費額(訪日外国人旅行消費額)は14%(3.5兆円)にすぎない。残り86%(約21兆円)は日本人旅行者による消費額である(観光庁『平成27年(2015年)の旅行消費額について』)。観光・ツーリズムという成長マーケットは、裾野が広く参入しやすい半面、誰をターゲットとするのかをよく考える必要がある。

観光マーケットの課題と取るべき対策

観光マーケットには解決すべき課題が大きく2つある。

1つは「低収益体質」の企業が多いこと。これは、年末年始・ゴールデンウイーク・盆休みなどの長期休暇や週末(年間約100日)に顧客が集中し、稼働状況に波があることに起因する。稼働率が落ちた際、固定費が収益を圧迫するのを避けようとして最低限の人員しか雇わないと、稼働が増えたときにサービス品質が落ちてしまう。

この課題への対策の1つは「多能工化」だ。ホテルや旅館であれば、受け付けや清掃、食事の準備など複数の業務を1人が行えるように育成し、生産性の向上を目指す。1つの施設内だけでなく、グループ企業全体で季節・曜日・時間帯などに合わせてシフトコントロールを行い、生産性を上げているところもある。

もう1つの対策は「稼働率を上げる」ことである。日本のアクティブシニアや訪日外国人旅行者を呼び込み、平日の稼働率向上を目指す。観光産業は装置産業である場合が多く、設備投資が必要なため、稼働率の向上は必須である。

「高付加価値化」を目指す企業も増えている。1泊10万円というと高価な宿のイメージだが、富裕層の訪日外国人旅行者をターゲットとした高単価・高品質のサービスを提供する企業はまだ少ない。特に地方部においては、豊かな自然という地の利を生かした高単価サービスにマーケットチャンスがある。

課題の2つ目は「人材不足」である。建設や介護などあらゆる業界が人材不足の現在、観光業界も思うように採用ができない上、育成段階での離職も大きな課題となる。生産年齢人口(15歳以上65歳未満)が減っていく今後も、この状況は続くと見込まれる。

採用難への対策としては「採用ブランディング」がある。自社の使命(ミッション)やビジョンを共に実現したいと思ってくれる人材が集まるよう、自社をブランディングするのである。条件で採用した人材は、条件で去っていく。給与額や休暇日数などの労働条件も大事だが、そこに魅力を感じて入社した人材は、他に良い条件の企業があれば移ってしまう。ゆえに、自社のミッションやビジョンを発信し、共感してくれる人材を採用する必要がある。

離職に関する対策は「育成体系の明確化」である。入社後の育成計画や資格取得、得られる年収などを体系的に示し、人生設計が描けるようにする必要がある。キャリアアップが見えない状況で教育や育成を行うと、負荷がかかり過ぎて辞めてしまう。

離職者が多い場合は、ES(従業員満足)の見直しも必要だ。サービス業は、「ESなくしてCS(顧客満足)なし」。従業員が自分の子どもを入社させたいと思わない企業に人材は集まらないし、顧客満足度の高いサービスも実現できない。

従来の「観光」を超える新たな価値創出モデル

近年、観光産業への異業種参入が相次いでいる(【図表3】)。カタログ通販大手のベルーナは、少子高齢化を背景に通販だけでは成長に限界があると判断し、収益源の多角化を目指してホテル事業へ進出。他にも、貸会議室のティーケーピー(TKP)や外食のひらまつ、住宅のタマホーム、フォントメーカーのモリサワなどが観光関連事業へ参入している。また、タナベ経営「観光・ツーリズムビジネス成長戦略研究会」参加企業の3分の1は、観光マーケットへの参入を目指す建設業、不動産業、印刷業などの異業種企業である。

【図表3】異業種からの新規参入
【図表3】異業種からの新規参入

背景にあるのは、現在の主力事業の市場縮小を見据えた判断だ。例えば、モリサワの多言語情報発信ツールは、インバウンド市場でニーズが高い。多言語への対応というインフラ整備により、外国人旅行客の地方部への誘致が大いに進むことも考えられる。自社の強みを、観光という成長マーケットでどう生かすのかを考えれば、新たな価値を創出することができる。

このように、自社の強みを特定の観光マーケットへぶつけるハイブリッド型ビジネスモデルが増えている。

例えば、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)は、総務省や中国のテレビ局と連携し、2015年に中国向けEC事業をスタート。放送・通信・物流一体型の地域産品海外展開プラットフォームを構築している。日本の各地域に埋もれている魅力的な商品・サービスを海外にPR展開するモデルである。「強み(地域の魅力・特産品)×観光マーケット(中国・ASEAN諸国の中で日本に行きたい層、日本のものを使いたい層)」の仲介を、テレビという媒体を通して行っているのだ。

この事業モデルを活用し、販路を中国やASEAN諸国に展開していく地域企業もある。自社の商品・サービスをオンリーワンに磨き上げ、情報発信手段を活用し、エリアを越えて需要を取り込み、ナンバーワンブランドを築き上げていこうとしている。

ナンバーワンブランドを目指すための強みを磨き、新たな価値創造モデルを模索するには、「何をやるか」も大事だが、「誰と組むか」「誰と連携するか」によって、どのように強みを展開するかが重要となる。

マーケットチャンスは、都心部だけにあるわけではない。例えば6次産業モデルなら、地域の特性が十分に生かせる。日本の経済を元気にする地方創生のためには、地域の企業が地元の観光資源を生かし、成長マーケットを取り込んで、独自のビジネスモデルを確立することが求められる。常にニーズの一歩先を見据えて成長戦略を描き、「ファーストコールカンパニー」を目指していただきたい。

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