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今週のひとこと

正しい危機感を共有しよう。

現状否定の精神が、企業成長の

土台をつくる。





☆ やりきることで見える景色

みなさんの周りには、実行する前から不平や不満ばかりを言っている人はいませんか。

数年前、A社にて営業時のアポイントの取り方を改善するためのコンサルティングを行った時の話です。当時のA社の営業マネジャーたちは、実行する前から、
 「うちの社風には合わない」
 「いまのやり方の方が効率が良い」
――という反対意見が多く成果はあがりませんでした。


しかし、今年になって、従来のやり方ではアポイントが取れなくなってきたという理由で、数年前の見直し時に最も反対していたマネジャー(現在は営業本部長)のB氏をリーダーにアポイントの取り方の見直しに再度チャレンジすることになりました。自らが中心となって進めてきたB氏の最近の言葉をご紹介します。

 「内田さん(筆者)、本気で考え工夫して一生懸命取り組んで、
 数年前に内田さんが言われていたことがようやく理解できました。
 当時の自分は、やる前から諦め、変化を嫌っていただけでした」。


何かを変える時に反対意見は付き物です。しかし、自ら変化に挑み実行し、やりきることで、見える景色が変わってくるものです。実行する前から不平・不満を言うのではなく、積極的に変化に挑み、様々な気付きを自分のものにしていきましょう。

コンサルティング戦略本部
コンサルタント
内田 佑





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戦略的物流でビジネスモデルを変える

グローバル環境の変化やコストアップ、業種・業態のボーダーレス化が進む中、2020年の東京オリンピック・パラリンピック以降は、さらに厳しい優勝劣敗の競争環境が待ち受けていると考えられる。他社と同じレベルの成長では、この競争に勝ち残れない。

国内マーケットを見ると、加速していく人口減少に加えて、世帯総数も2019年をピークに減少へ転じる(※)。モノを買う「消費マーケット」は縮小し、それに伴って国内物流市場(輸送量)も縮小していく。「モノを売る」「モノを運ぶ」という従来のビジネスモデルでは、成長が見込めない時代に突入しているのである。
※ 国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』2013(平成25)年1月推計

このような経営環境下において、いかに自社の競争力を高め、高付加価値化を実現していくか。これが持続的成長に向けたキーファクターとなる。その1つとして有効なのが、自社の製品を顧客まで届ける「物流」だ。

現在、物流に求められる視点は、「機能」から「課題解決」へと変化している。調達物流、生産物流、販売物流などから、必要なモノを、必要な時に、必要な量だけ配送するJIT(ジャスト・イン・タイム)物流、物流の管理や運営を包括的に行う3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)、即日配送・無料配送といったニーズへと多様化しているのだ。

すなわち、製造業や卸売業は、「モノを運ぶ」から「価値を運ぶ」へ、「コスト重視」から「付加価値重視」へ、「機能的価値」から「戦略的価値」へ、企業活動における付加価値創造の手段としての物流へと、自社のビジネスモデルを変革させていく必要がある。

企業の事業活動における物流を、自社のビジネスモデルの中の圧倒的な差別化要素(ブランディング要素)として位置付け、競争優位の源泉となる「戦略的物流」を実現していただきたい。


タナベ経営 取締役/
戦略ロジスティクス研究会 アドバイザー

藁田 勝 Masaru Warata
立命館大学大学院修了(経営学修士)。金融機関勤務を経て、2000年にタナベ経営に入社、2014年より現職。志の高い経営者とともに理想を追い続けるコンサルティングの実践が信条。赤字企業の再建から成長戦略の構築まで数多くの実績を誇る。





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物流を軽視する企業は負ける

タナベ経営 コンサルティング戦略本部 本部長代理 戦略ロジスティクス研究会 リーダー 土井 大輔 Daisuke Doi

大手システム機器商社を経てタナベ経営に入社。製造業、卸売業、小売業、サービス業、建設業など幅広い業種に対し、事業戦略立案や新規事業開発などの戦略テーマから営業力強化、マニュアル整備などの戦闘テーマまで対応する。2020年までには各業界において「物流・ロジスティクス」が企業競争力を高めると確信し、「戦略ロジスティクス研究会」のリーダーとして活躍中。

市場規模24兆円一大産業の物流業界

国内運輸業界の市場規模(営業収入ベース)は約34兆円とされる。このうち旅客運送を除いた「物流業界」は、鉄鋼業(約16兆円)や旅行業(約6兆円)を上回る約24兆円で、日本のGDP(国内総生産)総額の約5%を占める一大産業である(国土交通省『物流をめぐる状況』2015年4月30日)。

日本には、農林水産業の生産者、メーカー、卸売・商社、小売など多種多様な業種が存在し、これらが生み出す財やサービスに対価を払う消費者がいる。業種と消費者の間をつなぐ役割を担うのが物流だ。物流が動けばモノとお金が回り、景気が走り出す。経済にとって物流は不可欠な産業である。

さらに、近年は高齢化の進展と単身世帯の増加、Web通販の拡大や訪日外国人観光客の増加などにより、物流に対するニーズは高まっている。ところが、その物流業務の担い手であるトラックドライバーや庫内作業スタッフなどの人手不足問題が深刻さを増している。物流量の増加に加え、ニーズと国内産業での位置付けが高まる中、この人手不足問題が経済成長を下押しする懸念が指摘されている。

一方、荷主企業側も問題を抱えている。それは「物流機能・部門を軽視」している企業が多いことである。そうした企業の特徴は2つある。1つは、物流機能・部門をコストセンターと捉えており、経営方針で掲げる目標は外部委託費や人件費(残業代)の削減といったコストダウンのみであり、事業戦略に組み込んでいないことが挙げられる。もう1つは、物流部門担当もしくは物流部門出身の役員が少ないことである。

物流コスト削減のインパクトは大きくない

物流のコストダウンには、どの企業も取り組んでいる。日本ロジスティクスシステム協会の調べ(『2015年度 物流コスト調査報告書(概要版)』)によると、企業(全業種)の売上高物流コスト比率は1997年度の6.45%から、2015年度には4.63%と長期的な低下傾向にある。

もちろん、継続してコストダウンに取り組むことは当然の策だ。特に、売上高物流コスト比率が高い企業や、物流施設が複数点在する、また増設を繰り返している企業などでは有効だろう。しかし、多くの企業はコストダウンのために自家物流からアウトソーシング(外部委託)へ切り替えており、削減するにも限度がある。しかも時間とエネルギーを要する割には、物流コストの削減効果はそれほど大きくない。

例えば、先述の調査によると、物流コストの中で最も多くを占める(構成比71.4%)のが「外注物流コスト」(対専業者支払い分)だ。仮に年商10億円の企業が、この外注物流コストを10%ダウンさせても、その削減額は売上高の0.3%程度である。削減率1%のインパクトは、売上高の0.03%分しかない。(【図表1】)

物流の本質は、モノが顧客の手元に届くまでの流れを最適化すること。つまり開発から物流までの、どこをどのように変えれば、顧客価値が最大になるのかを設計することにある。

例えば、あるメーカーが消費者から、Webを通じてサンプル商品の申し込みを受けたとする。届けるまでに1週間以上もかかったら、サンプルの品質がいくら良くても、消費者は待つ間にその商品を購入する気持ちが冷めるだろう。

そこで、より早く、より低コストで届けるために「ゆうメール」(日本郵便)で送ろうとすると、長さ・幅・厚さの合計を1.7m以内、重量を3kg以内に収めねばならない。つまり、商品サイズ、外装、梱包などをどうするかについて、開発、調達、生産、販売、物流などの各部門が連携して検討する必要がある。

さらには、先行で必要数量を把握し(受注販売計画)、生産して(生産計画)、適正在庫でロスなく届けること(配送計画)ができれば、自社の業績は間違いなく向上する。

【図表1】外注物流コストの削減効果は大きくない
【図表1】外注物流コストの削減効果は大きくない

「ロジスティクス」=コスト削減ではない

「作れば売れる時代は終わった。顧客ニーズに細かく対応しなければならない」と多くの経営者は話す。しかし、ニーズに細かく対応し過ぎると、手間とコストが増えて自社の収益を圧迫する。この矛盾を解消できずに苦しむ中堅・中小企業は少なくない。

では、どうすればよいのか。必要なのは「自社の提案が顧客に選ばれること」だ。「誰に」「何を」「どのように」提供するか。このうち2つ以上を変え、顧客が価値を認めて喜んで対価を払うようなビジネスモデルを再構築する必要がある。

その際に重要なのが「顧客から選ばれる理由」である。選ばれる理由は品質や価格などさまざまだが、インターネットやモバイル端末の普及により、顧客が場所や時間に関係なく商品・サービスを購入できるようになった昨今は、すぐに届く、使いたいタイミングで受け取れる場所に届く、使いたい組み合わせで送られてくるといった「届き方」も大きな要素となる。

つまりビジネスモデル再構築の際は、開発や生産、販売だけでなく物流を含めて考える必要がある。そこで登場する概念が「ロジスティクス」だ。ロジスティクスとは、顧客のニーズ(顧客から選ばれる理由)を満たすため、原材料の調達から生産・販売に至るまでの物流を、効率的かつ合理的に計画し、コントロールすることである。

物流を、コスト削減で利益を搾り出す対象としてではなく、いかに価値を提供していくかを考える。物流機能を「価値創出機能」に変えるものがロジスティクスである。ビジネスモデルを考える際は、このロジスティクスを上位概念とすることが望ましい。

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戦略的物流がビジネスモデルを変える

物流の6大機能は「輸配送」「保管」「荷役」「包装」「加工」「情報」である。だが各機能の個別改善には限界があり、対策の範囲や視野も狭まってしまう。6大機能に加えて「全体把握」と「連携・調整」を加える(【図表2】)ことが必要である。

全体を把握すると、輸配送を効率的に行うには、物流委託会社との価格交渉に加えて、包装サイズや素材の変更により積載効率・保管効率を向上させれば、コストダウンや納期の短縮につながるという発想ができる。

また、輸配送や保管を「なくす」ことも考えられる。小売店なら倉庫が売り場を兼ねるような店にする、飲食店ならバックヤードやキッチンをなくして客席を増やし、半製品の納品回数を増やすといったことである。

この物流6大機能の全体を把握する機能と、他部門や取引先と連携する機能を自社に導入するためには、「機能的物流思考」ではなく、「戦略的物流思考」を社内に理解してもらう必要がある。そのために必須の役割が「CLO(Chief Logistics Officer:最高物流責任者)」だ。他部門との連携やコントロールの役割を担うCLOは、全社戦略においてもキーパーソンとなる。

先述した通り、日本企業には物流部門担当もしくは物流部門出身の役員が少ない。だが、製造業や卸売業においてはCLOという役職を設置し、全社を統括できる優秀な人材を任命すべきである。

そして物流業は、荷主に対するCLOの役割を果たしていただきたい。荷主企業の全社戦略の要素としての物流を提言することが価値となる。もちろん、荷主の要求には誠実に対応することも大切だが、その対応の負担を自社の従業員に押し付けていては、今後の成長・発展はない。「商流」では下請けでも、「関係」までが下請けになってはならないのだ。

顧客の日常を支えるのも、日本経済の成長を支えるのも、物流である。物流に携わる方々には、その重要性を再認識し、誇りを持って「戦略ロジスティクス」に取り組んでほしい。

【図表2】戦略的物流の体系 【図表2】戦略的物流の体系



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