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今週のひとこと

「人を活かす」とは、その人の価値を

発見することだ。一人ひとりの長所や

個性を見抜き活かしてこそ、人も会社

も伸びてゆく。





☆ 同じ思い出を共有できる仲間

来春入社の新卒採用活動において、6月から経団連加盟企業の選考がはじまりました。すでに内々定を出されている企業も少なくないのではないでしょうか。売手市場や早期離職など、課題も山積の新卒・若手社員採用を、各社が熱心に行う理由は何なのでしょうか。

社員は毎年1歳ずつ年齢を重ねていきますので、組織の若返りはその理由のひとつではありますが、今回は、その他の4つの理由についてお伝えします。

 一つ目は「育成する風土の醸成」です。新卒社員が、入社早々に活躍するということは期待できません。恐らく社内で使われている言葉も理解できない状態でしょう。そこで必要になってくるのが周囲のサポートです。人に教えることで、教える側にも更に頑張ろうという意識が芽生え、分かりやすく伝えるために頭も整理されるので、自身の成長にも繋がります。

 二つ目は「コミュニケーション」。新人が入社した場面を想像してみてください。教えるために周囲のメンバーが協力したり、時には愚痴を聞いたりすることもあるでしょう。いずれにしても互いが興味を持つと共通の話題ができ、コミュニケーションが活発になります。

 三つ目は「組織の活性化」。周囲の協力で成長した若いメンバーは、組織内での貢献度が高まってきます。先輩社員に匹敵する結果を出すメンバーも出てくるでしょう。そうなると社内に良いライバル関係が生まれ、互いが切磋琢磨するようになります。

 最後、四つ目は「採用活動への展開」です。仕事で良い結果を出している若いメンバーには活力があり、入社を考えている学生は自身の将来像をイメージすることができます。モデル社員として、採用活動に関わってもらうとよいでしょう。

皆さんも自分自身の新人時代を思い出してみてください。忘れられない思い出がたくさんあるはずです。彼・彼女たちの新人時代に関わり、いつの日か同じ思い出を共有できる仲間になることは、会社にとってこの上ない財産なのではないでしょうか。

コンサルティング戦略本部
コンサルタント
堀部 諒太





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ウェルネスドメインで成長エンジンを創造する

2019年は消費税の再増税、世帯数のピーク、東京オリンピック・パラリンピック特需のピークというトリプル経済インパクトが重なる年となる。それ以降の成長戦略をどう描くか。2017年からの3年間が重要な期間になることは間違いない。

2019年以降の成長戦略を考える上で提言したいのが、健康関連分野の事業領域であるウエルネスドメインでの"新・成長エンジンづくり"である。この分野は、政府の「日本再興戦略2016」において、2020年に市場規模を26兆円に拡大するとの目標が掲げられており、社会的課題解決型のビジネスチャンスがある市場だ。このチャンスを自社の新たな成長エンジンとして取り込んでほしい。

新・成長エンジン開発の成功キーワードは、「バリュー」「トレンド」「フロンティア」の3つである。1つ目の「バリュー」は、「社会から喜ばれる事業であること」。事業に社会的価値がないと、20年、30年と長く事業を続けられない。ウエルネスドメインは社会的課題を解決するビジネスであるため、社会的価値は大きい。

2つ目の「トレンド」は、「時代の流れに合っていること」。無理に逆張り発想でビジネスモデルを考えるのではなく、顧客が求める商品・サービスを提供する。健康増進や病気予防によって「健康寿命」を伸ばすことは、時代が求めるニーズでもある。

3つ目の「フロンティア」は、「誰も手を付けていないホワイト(空白)スペースで、新しい事業を行うこと」である。これから急拡大が見込まれるウエルネスドメインは、既存ビジネスの視点を変えるだけでもホワイトスペースになり得る。

そのため近年は、異業種からの参入企業やホワイトスペースを狙った新ビジネスモデル型企業が、ウエルネス分野に続々と登場している。中でも好調な企業は、業界の常識を覆して顧客価値を進化させたり、新たな価値を創造したりして、顧客から真っ先に指名される「ファーストコールカンパニー」となっている。

今ならまだ遅くはない。2019年以降の成長戦略として、大きな成長が見込まれるウエルネスドメインでの新・成長エンジンづくりを、ぜひ検討していただきたい。


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タナベ経営 取締役/
ウェルネス・イノベーション研究会 アドバイザー

仲宗根 政則 Masanori Nakasone
1990年タナベ経営入社。2014年取締役就任。中小企業から上場企業まで数百社のコンサルティング・教育実績を持つ。特に事業戦略、収益構造改革、組織・経営システム革新に関するコンサルティングや次世代幹部人材育成で実績多数。著書に『未来志向型経営』(ダイヤモンド社)。






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「一億総活躍社会」の突破口、ウェルネス分野の攻略

タナベ経営 コンサルティング戦略本部 本部長代理
ウェルネス・イノベーション研究会 リーダー
松室 孝明 Takaaki Matsumuro

慶應義塾大学卒業。化粧品メーカー勤務を経て、2005年タナベ経営に入社。
ヘルスケア関連の中堅企業を中心に、業績アップに向けた戦略立案・営業力強化、新分野進出・新規事業開発、ビジネスモデル・収益構造改革など、「数字を変える」ためのコンサルティングを中心に幅広く活躍。座右の銘は「結果の出ない努力は無駄である」。

成長期が未来に待つ超有望マーケット

2016年6月、政府は新成長戦略「日本再興戦略2016」を閣議決定した。その中で名目GDP600兆円を達成するための成長戦略の1つに、「世界最先端の健康立国」を挙げている。具体的には、健康・予防に向けた保険外サービスの活用促進による4兆円市場の創出、ロボットやセンサーの活用による介護負担軽減などにより、健康関連の市場規模を2011年の16兆円から、2020年には26兆円へと拡大させる目標である。

同戦略では、第4次産業革命の実現で医療・介護の姿が一変するであろうと指摘し、健康・予防サービスの成長余力が極めて大きいと分析。「医療・介護費用の適正化効果も見込まれる」とした。その新たな有望成長市場の1分野が、本特集で取り上げたウエルネスドメイン(事業領域)である。

なお、本稿で述べる「ウエルネスドメイン」は、健康増進や病気予防の分野と認識いただきたい。病気に対するサービス分野は「医療ドメイン」、認知症や加齢に伴う身体機能の低下に対するサービス分野は「介護ドメイン」と位置付けている。

これら医療や介護の"上流工程"に当たるウエルネスは、今後、マーケットの裾野拡大が確実と見込まれており、多種多様なサービスの誕生が期待されている。

なぜ今、ウエルネスなのか

では、なぜウエルネスドメインのマーケットが今後有望なのか? 背景には次の3つの理由がある。

Reason1 国の懐事情

社会保障制度(医療・介護保険制度など)の維持が、国の財政上、困難な状況にある。従って「健康をいかに維持するか」「病気をどう予防するか」といった社会的要請が強まるため、確実に需要は拡大する。
【図表1】の折れ線は、高齢世代(65歳以上)1人を支える現役世代(15~64歳)の人数である。1人の高齢者を複数人の現役世代で支えていた「騎馬戦型社会」から、少子高齢化の進展により高齢者1人を現役世代1人で支える「肩車型社会」に移行していくことが見て取れる。人口動態上、社会保障費の受給者(高齢世代)に対し、負担者(現役世代)が足りなくなるのだ。
2016年10月から、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が始まる。財源がないという"国の懐事情"がある以上、社会保障制度維持の観点から見れば、国策がウエルネス重視に進むことは想像に難くない。
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【図表1】高齢世代人口の比率

Reason2 欲求の変化

あらゆる商品が成熟化する中、人々の欲求はモノの(物理的な)所有欲から、ココロの(精神的な)充足欲へと変化している。その結果、「自分らしい豊かな人生を健康に送る」という願望が拡大している。
Reason3 新種の社会的課題の増加
運動機会の減少と身体能力の低下、多忙によるストレス、介護・子育て疲れ、晩婚・未婚に伴う将来不安など、豊かで利便性の高い生活や社会が、別の社会的課題を引き起こしている。この新種の社会的課題の解決が求められている。

これら3つが、ウエルネスマーケットが拡大する背景である。単なる身体的健康にとどまらず、精神的・社会的にもバランスの取れた健康を実現し、維持・伸長させていこうとするのが、ウエルネスに対する基本的な考え方だ。この分野において日本は、体・暮らし・心の充実が遅れている「ウエルネス後進国」といわれており、抜本的なイノベーションが必要とされている。

ウエルネスビジネスで確たる産業が少ない理由

拡大が期待されるウエルネス分野だが、現状は確たる産業が少ない。ウエルネス産業の代表といえば、健康・美容食品や健康機器、フィットネスクラブなどが真っ先に頭に浮かぶ。しかし、市場規模(2015年、推計値)を見ると、健康・美容食品分野(約2兆1529億円(※1))が目立つくらいで、健康機器分野はわずか約2342億円(※2)、フィットネスクラブも約3146億円(※3)と大きくない。
※1 ㈱富士経済『H・Bフーズマーケティング便覧2016総括編』
※2 ㈱矢野経済研究所「セルフケア健康機器市場に関する調査結果 2015」
※3 経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
※4 (公財)日本生産性本部『レジャー白書2016』


ちなみに衰退分野であるゴルフの市場規模は、ゴルフ場(練習場含む)だけで約1兆130億円(※4)。成長株のフィットネスクラブですら、市場規模は衰退分野であるゴルフ場の3分の1にすぎない。

次頁の【図表2】は、フィットネスクラブ(売上高上位企業)の売り上げ動向と、会員率(対総人口)の推移である。時系列で見ると、どちらも逓増傾向にあるものの、2015年時点は50人に1人という状況だ。昨今はマンツーマントレーニングのライザップや女性専用のカーブス、24時間営業のジョイフィットなどが人気だが、健康維持に努力や投資をする人は、意外にもごく一部に限られているのが実態である。

【図表2】フィットネスクラブの売上高と対総人口会員率の推移
【図表2】フィットネスクラブの売上高と対総人口会員率の推移

では、なぜ大きく広がらないのだろうか?背景には、次の2つの理由があると考える。

Reason1 つまらない

皆、頭では「健康が大事」だと分かっている。しかし、健康への取り組みが三日坊主で終わり、継続しない。詰まるところ、健康になること、運動すること自体が「楽しくない」からである。
食べるだけでいい健康食品ですら、継続的に摂取し続けるのは一部の愛好家に限られる。ジム通いやマシンを使った運動などは、さらにハードルが高い。長続きしないのは、ある意味当たり前といえよう。先に述べたゴルフは、「仲間と談笑しながらラウンドし、プレー終了後に1杯」という楽しみがある。既存のフィットネスクラブでは、一部を除き、そうした楽しみを感じるケースが少ないと考えられる。

Reason2 得をしない

健康になって"得"をするのは、誰なのだろうか。実際には個人ではなく、保険給付額の抑制という恩恵を受ける「国」と「健康保険組合」ではないだろうか。個人は「健康である」という一時的な実感以外、これといった恩恵を享受することは難しい。
例えば、米国では、医療費が全額自己負担である。従って、不健康は全て財布の痛みとしてわが身に降り掛かる。しかし日本の場合は、「国民皆保険制度」により、誰もが少ない自己負担額で医療を受けることができるため、財布の痛みは少ない。
また米国では、健康度に応じてインセンティブを付与されるサービスが多数存在する。医療保険の新興企業「オスカー・ヘルス・インシュアランス」を例に挙げれば、同社の医療保険加入者は、医師の電話診療、ジェネリック医薬品、予防接種や検査などが全て無料である。さらに健康管理のためのウエアラブル端末も無料配布され、健康目標を達成するとAmazon.comの商品券などがもらえる。
米国と比較すると一目瞭然だが、日本の場合、健康であっても得をしない。だからこそ、生活習慣を変えようと本気になる人が限られるのではないだろうか。
確たる産業が少ないウエルネス分野で、今後、新しい事業・サービスを模索するには、事業主側のシーズ発想ではなく、健康リテラシーの低い日本人の意識・行動を転換させるイノベーションが不可欠である。

その際のキーワードは、「楽しい」「お得だ」「○○しながら」である。「健康であれば、個人の財布の傷みが軽減される」という行動変革を促すインセンティブや、生活習慣自体の見直しを促すための「エンターテインメント的な敷居の低さ(楽しさ)」、そして「サービス利用者に我慢を強制せず、継続させる仕組み(生活しながら、仕事しながら、遊びながらなど)」という視点が重要である。要は、利用者に気負いを強いるサービスでは、続かないということだ。

課題解決業の誕生が期待されるホワイトスペース

【図表3】は、ウエルネスに関わる生活課題を整理したものである。生活者視点で考えれば、解決不十分な「ホワイトスペース(空白の領域)」は多数存在する。また、生活者が抱えるウエルネス課題は、加齢とともに変化する。

ウエルネスという言葉だけに引きずられると、体の健康ばかりに目を向けがちだ。しかしながら、体の健康をつくり出しているのは、心や暮らし(生活習慣)の健全性である。すなわち、「良い健康は、良いメンタルと生活から」なのである。

どのような課題を解決すれば、生活者の役に立てるのか?

加齢ライフサイクル上のどの課題を解決すれば、生活者に喜ばれるのか?

ウエルネス分野には課題が山積しており、自社の存在価値を発揮できる身近なホワイトスペースは無数に存在する。

事業を行う本来の目的に立ち返り、「一億総活躍社会」に寄与する新たな課題解決に、ぜひ取り組んでいただきたい。

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