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今週のひとこと

社員は同志である。一方的な指示命令

だけでは、ヤル気も自立心も育たない。

目標を共に達成してゆくために、意思

疎通を怠ってはならない。





☆ 働き方改革の第一歩は、安心・安全な環境づくり!?
   ~信頼できる上司とサポートし合う風土が若手を伸ばす~

 この度は『2017年度新入社員就活アンケート』調査の結果についてご紹介いたします。
 今話題の「働き方改革」について、多くの方がイメージするのは労働時間の短縮やテレワークなどの制度面かと思いますが、忘れてはならないのが「働きがい」を持てる職場づくりです。


 タナベ経営が今年3月から4月にかけて開催した新入社員セミナーの参加者、約1,900名に"あなたが考える働きがいのある職場とは?"と質問したところ、「成長の機会が用意されている」「チャレンジできる風土がある」といった、いわゆる攻めの選択肢を抑え、「お互いをサポートし合える」「信頼できる上司がいる」といった安心・安全な環境を求める回答が上位でした。

 これまで、互いに切磋琢磨し合う緊張感のある職場や メンバーを引っ張り、やらせきる強いリーダーこそが成果を生み出すと信じ、厳しく取り組んできた方々からすると、「そんな甘いことを言って・・・」と思われるかもしれませんが、そうも言っていられないのが現実のようです。

 他にも、内定時期の悩みや、会社を選んだ理由など、就職活動に対する新入社員の率直な意見を分析したものをレポートにまとめました。ぜひ、ご覧ください。

レポートの詳細はこちら



戦略総合研究所
藤坂 賢年





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丸和運輸機関 代表取締役社長 和佐見 勝氏(左)と、タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(右)
丸和運輸機関 代表取締役社長 和佐見 勝氏(左)と、タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(右)

物流価値で小売業の商流を変える流通革命
- 低温食品物流のファーストコールカンパニーへ挑む -


「桃太郎便」のブランドで全国展開する丸和運輸機関は、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)の先駆者としてマツモトキヨシやイトーヨーカ堂をはじめ、数々の企業の経営効率化に貢献してきた。他社が手掛けていないホワイトスペースの創造によって物流ビジネスの可能性を大きく広げてきた同社が、次なる成長マーケットとして注力するのが低温食品物流事業だ。同市場のスケールは3400億円とも推定される。トラック1台から創業し、年商603億円、従業員数約1万名(パート含む)の東証1部上場企業へと育て上げた代表取締役社長の和佐見勝氏に、事業戦略と展望を伺った。


低温食品物流でナンバーワン企業を目指す

若松 タナベ経営との長いご縁に感謝します。丸和運輸機関は、企業の物流を丸ごと請け負う3PL事業を強みに事業を拡大。2015年には東証1部上場を果たすなど、強固な経営基盤を築いていらっしゃいます。

和佐見 今、当社が選択集中している事業が「低温食品物流」です。国内の市場規模は、スーパーマーケットとコープ(生活協同組合)を合わせておよそ17兆円。そのうち仕入れ費用は2分の1、つまり8.5兆円です。われわれが狙う物流費はその約4%ですから、市場規模はおよそ3400億円となる。その市場においてシェア50%を目指しています。

若松 現在も保冷・保温物流はありますが、常温物流というのが実情です。そこに一歩踏み込んで、低温食品物流を手掛けるわけですね。

和佐見 日本は少子高齢社会です。高齢化するほど人は食に「おいしさ」を求めるもの。おいしさの命は「鮮度」であり、それには「温度管理」が不可欠です。きちんと温度管理された商品を売ることで、「このお店の商品は鮮度が良い」とお客さまから言っていただけるような新たな小売業モデルになっていただくこと。おいしさをお客さまに届けるロジスティクスの構築が、われわれの役割だと考えています。

若松 スーパーマーケット(SM)にとっても鮮度の良さは大きな競争優位性になります。顧客課題を解決する付加価値の高い物流サービスです。

和佐見 一般的に「物流はコスト」と言われますが、私は「物流は価値」だと言っています。当社は小売業に特化した3PL事業を得意としていますが、他社との最大の違いは商流の提案ができること。物流だけではメリットは限られますが、商流に着眼することでより大きな価値をお客さまに提供できます。例えば、年商1000億円のスーパーマーケットであれば仕入れ額は500億円、物流費は20億円となる。この時、物流費を10%削減しても2億円ですが、仕入れ額を2%削減できれば、10億円のコストダウンにつながる。1%ロスをなくせば5億円となる。商流に着眼すれば、物流よりも大きなコストダウンが可能になります。

若松 物流の仕組みで物流コストそのものを効率化する提案に加えて、商流を変える提案力が他社との違いになっていますね。商流ビジネスへ着眼された点が良い意味での業界の非常識戦略です。

和佐見 2001年にRCC(整理回収機構)から依頼され、福島県のあるスーパーマーケットチェーンの再建に取り組みました。今の会社と業種は違いますが、私自身は運送業を始める前に青果店を営んでいた経験があります。再建期限は5年間。人をリストラしないで立て直すという条件でした。普通なら不採算店の閉鎖から着手するところですが、市場や卸の中間マージンを減らすために、青果物を産地から直接仕入れる方法でコスト消滅に取り組みました。これが商流改革です。
さらに、物流センターを建てて自社物流(卸売の物流から切り替えたシステム)に切り替えたことで、商品が物流センターを通過する際に発生するセンターフィーも省けました。1%ですが大きかったですよ。ここから本格的な立て直しに向けて、現在のネットスーパーの原型となる宅配「ピンポーン便」をスタート。再建への道筋をつくりました。この商流から仕組みを変えて、コスト消滅を実現した経験が、現在の低温食品物流の原点となっています。

若松 一連の再建策は、物流ソリューションからしか発想できないでしょう。私自身も流通業の再建を多く手掛けてきましたが、物流と商流の断層を結び付けて収益力を高めていく発想は、分業をしている小売り企業のテキストにはないはずです。

3PLから「7PL」へ商流提案でスーパーを支援

若松 低温食品物流は、未開拓市場のホワイトスペースとして取り組み方にも独創性がありますね。具体的にどのように取り組んでいらっしゃるのですか。

和佐見 中核となるのが、「AZ-COM 7PL」(アズコム セブン・パフォーマンス・ロジスティクスの略)です(【図表】)。7つのサービスメニューをそろえていますが、例えば「集客力の向上」は、生鮮物流改革によって販売力を強化。具体的には、北海道の夏野菜を低温食品物流によって店舗に提供する産地直送です。ブランド力の高い北海道産の青果物を、関連会社である丸和通運のクールコンテナに乗せて鉄道輸送します。市場を通すと2日かかりますが、当社なら店舗への翌日納品が可能です。

若松 7PLが提供する価値は流通革命のレベルですね。食品の領域において、価格破壊を超える価値をもたらすビジネスモデルになり得ます。

和佐見 物流を生命線に、新しいビジネスモデルを構築した一例がネットスーパーですが、低温食品物流もこれに匹敵するインパクトをもたらすでしょう。今は顧客開拓の段階で、地域ナンバーワンのスーパーマーケットと取り組んでいく予定です。

若松 ナンバーワン企業を狙うのは正しい選択です。どの業界もナンバーワン企業に集約されている。この傾向は地方でより顕著に表れています。私たちの提言しているファーストコールカンパニーが多角化していく時代ですから、どこをパートナーとするかは非常に大事です。

「AZ-COMネット」を通し、全国の物流企業を支援

若松 2017年3月期の第3四半期連結決算を見ると、売上高は507億6800万円、経常利益36億8900万円。自己資本比率が50%近く(48.0%)に達しているほか、収益力(売上高経常利益率)も7%です。私の臨床ケースからひもといても、物流業界でトップクラスの財務体質ですね。

和佐見 ありがとうございます。ただし、物流業界の経営環境は厳しいのです。国内には運送業者が約6万2000社ありますが、そのうち約50%が赤字です。規模別に見ても、車両30台以下が86.5%を占めるなど中小・零細企業がほとんどです。
48年前、私はトラック1台で物流業界に入りました。そこから今日まで何とかやってこられたのは、いろいろな方のご指導があったからこそ。2015年に全国の物流事業者を組織化する「AZ-COM 丸和・支援ネットワーク」(以降、アズコムネット)を立ち上げたのは、「これからは私がそうした企業のお手伝いをする番だ」と考えたからです。

若松 アズコムネットの活動内容や支援内容についてお聞かせください。

和佐見 まずはアズコムネットの会員企業が幸福になるために、「経営支援」と「価格革命」の両面からサポートしていきます。一部の例を紹介すると、経営支援としては当社から良質な仕事を提供し、月末の締め日から20日という短い期間で報酬を支払います。これは業界内でも最短ですから、社内からは強く反対されました。しかし早く支払うことで、「キャッシュフローが大幅に改善している」と会員企業の方々には喜んでいただいています。
一方、価格革命としては車両やガソリンをはじめ、さまざまな経営資源を市場価格より30%~50%安い価格で提供しています。他にも、階層別社員教育や経営相談などの多様な支援メニューによって、経常利益率10%以上の高収益企業を目指しています。

若松 入り口を高くして出口を低くすることで、利益が出る体質へ変える。さらに、丸和運輸機関との継続的な取引によって経営を安定させるわけですね。

和佐見 当社は、会員企業を業者や協力会社ではなく、「使命感」と「価値観」を共有しながら目標に向けて行動する「パートナー」と捉えています。使命感とは、至誠惻怛の精神。誠を尽くし、いたわりの心を持って、世のため人のために尽くすこと。価値観は、強固な団結心と利他の心で"考働"することと定めました。一言で言えば、誠を尽くすということです。今後の目標としては、660社(2017年3月現在)の会員を、2020年までに3000社以上に増やしたいと考えています。

若松 このまま進めば十分に可能な目標です。私たちの使命でもある、「全国の経営者を元気にすること」「ファーストコールカンパニーを創造すること」と同様の価値を目指していらっしゃいます。結局、企業の栄枯盛衰はリーダーの志で決まります。アズコムネットはそのためのインフラになり得る。物流ビジネスの根本を変える仕組みだといえます。

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物流はコストではなく価値。 物流を生命線に、小売業の新たなビジネスモデルを提案する
物流はコストではなく価値。
物流を生命線に、小売業の新たなビジネスモデルを提案する

「桃太郎アカデミー」で100人の経営者を育てる

若松 低温食品物流というマーケット開拓やアズコムネットの立ち上げによって、業務の幅が大きく広がっています。事業の拡大に合わせた人材育成が欠かせません。どのように社員教育を行われていますか。

和佐見 全ての基本は「桃太郎文化」にあります。昔話の桃太郎は、犬と猿と雉という従者を連れて鬼退治に行き、宝物を持ち帰ります。丸和運輸機関にとっての宝物は、お客さまからお預かりした大切な荷物。宝物を運ぶには、「犬=考働力」「猿=知識力」「雉=情報力」が必要不可欠です。この3つを習得するための教育制度を構築しており、100人の桃太郎(経営者)づくりを目指しています。

若松 創業者の後の経営は、組織経営でなければいけません。桃太郎(経営者)づくりそのものが、組織経営を目指しているという意味ですね。

和佐見 1997年に「丸和ロジスティクス大学」を社内に開校しました。ここでは入社したばかりの新入社員から幹部まで、幅広い階層の人材が階層別・職群別・テーマ別に必要な知識や技術を学ぶカリキュラムを用意しています。また、社内で足りない部分はタナベ経営をはじめとする外部にお願いしています。同業の中には「教育には金がかかる」と言う経営者もいますが、私は人が成長した分だけ企業は成長すると考えています。

若松 タナベ経営もご支援をさせていただいた企業内大学(アカデミー)が社員教育の中核にあることを光栄に思います。丸和運輸機関がこれらの社員教育の際に大事にしていることは何ですか。

和佐見 物流に関する知識だけでなく、人間力を高める「徳育」に力を入れています。教育の基本は報恩感謝。お客さまに感謝し、仕事を通してお客さまに感動と満足を提供すること。また、お客さまには絶対に「ノー」とは言わず、創業の精神である「何事もやればできる」の精神にならって、お客さまには「やらせてください」と答えるように教えています。

若松 タナベ経営が提唱する「ファーストコールカンパニー宣言」の項目の1つに、「顧客価値の追求」があります。これには顧客の声に謙虚に耳を傾けることが必要なのですが、丸和運輸機関はまさに、これを実践されています。その上で、同じ価値観を持って能動的に行動する社員が増えると、企業の成長は加速します。

和佐見 お客さまの問題や課題を解決するには、われわれが常に成長していかねばなりません。目の前の仕事をこなすだけでなく、「業界ナンバーワンになるにはどうすればよいか?」という目線で、社会のあらゆる動きを見ることが大事です。一方、企業は社員の成長をきちんと評価することが大事。当社では、賞与や奨励金制度といった経済的メリットと、資格や研修、海外勤務といった成長を促すインセンティブを組み合わせています。働く人が夢を持ち、幸せを感じられる会社にすることが人を成長させる近道。これはタナベ経営に教えていただきました。

若松 私は会社の幸せと個人の幸せを限りなく一致させる、と提言してきました。物流はどこまでも人材です。桃太郎(経営者)も育ってきていますから、物流から商流を変える卓越した7PLとアズコムネットのビジネスモデルによって、丸和運輸機関が日本の物流インフラを変える日は遠くないように思います。本日はありがとうございました。

丸和運輸機関 代表取締役社長 和佐見 勝(わさみ まさる)氏
1973年8月丸和運輸機関を設立、代表取締役に就任。青果小売業を経て、トラック1台で運送事業をスタートさせる。1990年代前半に国内でいち早く3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業に参入。以来、小売業に特化した3PL事業で業容を拡大。2014年4月東証2部上場、翌2015年には東証1部に市場変更。

タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ・たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院 (経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

PROFILE

  • ㈱丸和運輸機関
  • 所在地 : 【本社】 〒342-0008 埼玉県吉川市旭7-1 TEL : 048-991-1000(代)
    【本社営業所】 〒342-8505 埼玉県吉川市あさひ桃太郎1-1-1
    【東京本部】 〒100-8235 東京都千代田区 丸の内桃太郎(鉃鋼ビル本館5階)
  • 創業 : 1970年
  • 資本金 : 26億4900万円
  • 売上高 : 671億7900万円(連結、2017年3月期)
  • 従業員数 : 正社員2536名、パート7450名、合計9986名(グループ計)(2016年12月現在)
  • 事業内容 : サードパーティ・ロジスティクス(3PL)事業(低温食品物流、医薬・医療物流、常温物流)、ロジスティクスコンサルティング事業、運輸事業(一般、特別積合、引越、産業廃棄物の収集運搬 他)、倉庫事業・保管庫の賃貸および管理事業
  • http://www.momotaro.co.jp/








デジタルマーケティングが
生み出す新ビジネスの可能性
生活密着情報で顧客の心をつかむ


ライオン 保坂氏(中央)、タナベ経営 脇阪(左)、市川(右)
ライオン 保坂氏(中央)、タナベ経営 脇阪(左)、市川(右)

日用品から化学品まで、さまざまなラインアップで暮らしを支えるライオン。
同社は今、ユーザーに寄り添った独自のポータルサイトで、斬新なマーケティングを展開中だ。

顧客の悩み解決をテーマに生まれた『Lidea』

1891年に創業し、2016年125周年を迎えたライオン。誰もが知るオーラルケア製品やビューティーケア製品、衣料用洗剤など日用品の大手メーカーだ。同社はこれまで商品開発と拡販に向けてユーザーへのダイレクトインタビューやアンケート調査、店頭リサーチのほか、数々のマーケティング手法を駆使してきた。

そうした中、同社は多様化と急拡大を続ける一般消費者のICT活用を考慮し、デジタルマーケティングに着目。2014年秋、既存の製品ブランドサイトやコーポレートサイトとは一線を画するオウンドメディア※『Lidea』を立ち上げた。

Lideaの開設から今日の運用まで携わっているのが、宣伝部デジタルコミュニケーション推進室長の保坂政美氏。保坂氏は、同サイト誕生の背景を次のように話す。

「当社製品は、家事など普段の生活で何らかの悩みを持つお客さまが、それを解決するために買ってくれているはずです。実際に購買されるまでの悩みや心の動きを、幅広く明確に知り、それに応えるサイトを作りたいと考えたことがLideaを構築したきっかけです」

商品購入を1つのゴールとすれば、顧客の内面には必ずそこに至るプロセスがある。それをひも解き深層をつかむことが、より確かなマーケティングにつながる、そんな発想でLideaは生まれた。

Lideaのトップページ。消費者の悩みに直接アプローチし、応えるコンテンツが満載
Lideaのトップページ。消費者の悩みに直接アプローチし、応えるコンテンツが満載

ライオン 宣伝部 デジタルコミュニケーション推進室長 保坂 政美氏
ライオン 宣伝部
デジタルコミュニケーション推進室長 保坂 政美氏

「モノ」ではなく「コト」の重視で高い支持を獲得

「新生活情報メディア」と銘打つLideaは、人々の暮らしに役立つ多彩な記事を主要コンテンツにしているのが最大の特徴だ。衣類や住居の手入れの仕方、健康や子育てに関するアドバイス情報など、700本近い記事が配信されている(2017年2月時点)。毎月十数本の新たな記事が登場し、過去のものも随時更新される。各記事はその道のプロ=マイスターの監修のもとで作成されており、高い信頼性を有している。それは、他の同様のポータルサイトにはない、ライオンならではの強みである。

一方、ライオン製品の情報を探すとその数はわずかで、関連記事部分の最後に小さく掲載されている程度にとどまる。

このような構成にした意図はどこにあるのか。保坂氏はこう答える。

「例えば『洗濯』でネット検索するお客さまは、扱いが難しい衣類をどうすれば形崩れさせずきれいに洗えるか、といったことを調べます。洗い方や干し方などさまざまな要素が絡んでくるわけですが、まずは悩みを解決する確実な情報をお届けしてから、当社製品に気付いてもらう流れをつくろうと思いました。洗濯について何か知りたいときに、いきなり洗剤の製品名で検索するお客さまは少ないですから。

また、昨今はひと昔前にあった、家族や近所で洗濯ノウハウを伝え合う文化が薄れているので、そうしたことも継承したい思いがありました」

顧客が最初に求めるのは「モノ」ではなく「コト」の相談や解決。この点に着眼したアプローチはLideaの狙いの柱であり、サイト開設から短期間のうちに多くの支持を獲得した大きな理由となっている。

ユーザー視点で訪れて楽しいサイトづくりにまい進

主婦層を中心に人気を博するLideaには、生活上の悩み解決に焦点を当てた記事以外にも閲覧者の興味をそそるコンテンツが満載だ。トップ画面にはさまざまなコーナーがあり、雑学やイベントレポート、懸賞キャンペーンの告知など、楽しく読める多数の記事をカテゴリーごとに紹介している。

「『暮らしに役立つ』だけではなく、面白くて楽しい記事をたくさん載せることでLideaを訪れる人のリピート率も上がりますし、その方々によるSNSを介した共有と拡散が見込めます。多くの人たちを飽きさせないようにするにはどうすればよいか、作り手として最も力を入れているところです」と保坂氏。

定期的に、Lidea運営スタッフと分野ごとのマイスターが集まって開かれる編集会議では、掲載する記事内容について侃々諤々の議論が交わされる。気を抜くとライオン製品のアピールに陥りがちな意見を、あくまでもお客さま視点で有用な情報提供に方向修正していくことを、保坂氏は何より心掛けている。

「記事作成の1つの指針になるのが、検索エンジンでキーワードを打ち込んだときにどんなコンテンツが上位に入っているかです。時勢や流行をフラットに見つめて、Lideaを常に訪問者の関心を引くような記事の集合体にしたい。そのために、コンテンツのボリュームを一層増やしていきたいと思っています」

バーチャルをリアルに結ぶイベントの仕掛け

気になるのが、Lideaがどのような形で同社の具体的なビジネスに結び付いているかだ。保坂氏はいくつかのポイントを挙げる。

「Lideaに対するアクセス動向を探れば、お客さまが見てくれている時期や時間帯、情報内容などの傾向が分かります。ニーズが高まるタイミングに合わせて店頭プロモーションを行えば自社製品の販売拡大につながりますし、会員登録いただいたお客さまにはメールでその人に適した情報やコンテンツをおすすめできます。データを細かく分析することによって、当社サイドからお客さまや販売店へ能動的かつ効果的なアプローチが図れます」

さらに、「お客さまに最終的に商品を購入する行動を起こしてもらうためにも、Web上のバーチャルな世界をリアルにつなげることが大切」と続ける保坂氏。この観点から、Lideaでは日常に欠かせない家事を楽しくすることに主眼を置いた体験イベントを提案。有名ミュージシャンの協力を得て家事と音楽、ステージをミックスさせる『家事フェス』、自治体との協同による『夫婦円満プロジェクト』などの取り組みを次々と実現している。

「家事フェスはご家庭のキッチンやリビング、お風呂などを個々のステージと捉えて、オリジナル楽曲や自分の好きな曲にノッて気分よく家事をしましょう、という提案。夫婦円満プロジェクトはご夫婦で家事のやり方や分担などについて話し合う場を設け、イベント参加者に協力し合う大切さを理解してもらうための提案です。Lideaを起点に、こうした提案活動を広く具現化して、製品を使う場である家事そのものへの注目度を高めていきたいと考えています」

顧客が商品を購入するプロセスにおいて、保坂氏は製品が持つ機能的価値、情緒的価値、体験的価値という3つが影響していると捉えている。

これらの体験イベント開催は、情緒と体験の2つの価値を伝える意味があるという。家事という行為とライオン製品の価値を同時に訴求していく、マクロな目標もLideaは内包している。

家事フェス(左)と、宮崎県日南市で開催した夫婦円満プロジェクトの様子(右)
家事フェス(左)と、宮崎県日南市で開催した夫婦円満プロジェクトの様子(右)

他業種とのコラボも踏まえて一層の広がりを目指す

Lideaの今後の展開について、特筆しておきたいことがもう1 点ある。それは、サイトに掲載しているコンテンツは、出典を明記すれば、誰でも無料でリンクや転載が可能ということ。つまり、同社で閉じられたものではなく、対外的に開かれていることだ。その狙いについて、保坂氏がさらに語ってくれた。

「体験イベントと同様、異業種との連携が進めば潜在的な家事や当社製品の魅力がまだまだ発見でき、お客さまに広く伝えられます。それを探るための最前線のインターフェースがLideaなので、できるだけオープンに活用していきたい。タナベ経営からもLideaを通じた多様なコラボレーションの相手先を提案・紹介いただけるように、できる限り協同したいと思っています」

既成概念をはるかに超えたビジネスの可能性を生み出すデジタルマーケティング。Lideaのように、ユーザー目線のコンテンツを軸として顧客の心をつかむことが、成功の秘訣といえるかもしれない。
※企業が自社で所有するウェブサイト(メディア)のことで、コーポレートサイトやブランドサイト・キャンペーンサイトなどを指す

PROFILE

  • ライオン株式会社
  • 所在地 :〒130-8644 東京都墨田区本所1-3-7
  • TEL : 03-3621-6211
  • 創業 : 1891年
  • 資本金 : 344億3372万円
  • 売上高 : 3956億円(連結、2016年12月期)
  • 従業員数 : 6895名(連結、2016年12月末現在)
  • 事業内容 : ハミガキ、ハブラシ、石けん、洗剤、ヘアケア・スキンケア製品、クッキング用品、薬品の製造販売、海外現地会社への輸出
  • http://www.lion.co.jp/
  • Lidea https://lidea.today/


高い信頼性と高度なレコメンド機能で、消費者から高い支持を得ているLidea。モノ軸とコト軸の双方向アプローチにより、関連性の高い商品情報を提供し、納得の高い商品購買を促して、ブランドのファン化を図っている。
DMP(データマネジメントプラットフォーム)を構築し、消費者がどんな広告・情報を見て、どんな商品を購入したかといったデータを、統合したマーケティングにも活用している。「オウンドメディアを運営しているが、思うようにいかない」などの悩みを抱えている企業が参考にすべき点は多いだろう。
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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所