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今週のひとこと

時間の使い方が結果の良し悪しを決める。

「時間がない」と嘆くのは、知恵のない

証拠である。





☆ 良い仕事のやり方はどんどん真似しよう
   ― 仕事の模倣戦略

 弊社発行の「FCCREVIE(2017年3月号)」の特集、早稲田大学商学学術院教授 井上 達彦氏とタナベ経営 村上との特別対談でも「異分野からの『模倣』」という視点での内容をお届けしましたが、模倣とは、良いものを謙虚に真似して自らが成長していくことです。

 さて、仕事のやり方を模倣することを意識している人はどの程度おられるでしょうか。仕事はブラックボックス化しやすく、また従来からの自らのやり方に固執してしまいがちです。

 生産性を上げるためには、上司や先輩の仕事の進め方を観察し真似したり、若手社員が活用しているITツールやPCスキル・テクニックを公開・共有したりすることが重要かつ、非常に効果的です。

◆考え方:

スキマ時間では仕事はできない、この時間はこの仕事しかしてはいけないなど、考え方の制約をしていませんか。

◆進め方:

この手順でやらなければならない、この手順は省略できないなど、仕事の進め方を固定化していませんか。

◆ツール:

PCスキルはこれ以上伸びない、新しいアプリなどは若手が活用するものだなど、新しいツールの導入や、その用途に壁を設けていませんか。

 これらのように、自らの仕事の考え方や進め方、ツールの活用などに制約をかけてしまうと生産性は上がりません。他者から素直に学び、どんどん真似して、自らに取り入れることで生産性は上がります。今一度、心を素直にし、他者を真似して、生産性向上に取り組んでください。

コンサルティング戦略本部
チーフコンサルタント
清水 哲也





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オーナーシップを引き継ぐ


社長と子のコミュニケーションを巡る課題

中堅・中小企業に「大事業承継時代」が到来している。これは東北地域に限らず、全国的な動向である。

タナベ経営は全国の主要都市に10拠点を構えている。他の大手コンサルティング会社と違い、拠点経営であるが故に、クライアントの95%が同族経営の中堅・中小企業だ。その中で最も多い相談が、事業承継である。

スムーズなバトンタッチは、企業が成長・発展していくための最大の経営戦略と言っても過言ではない。しかしながら、オーナー企業の社長とその子どもである後継者のコミュニケーションは、総じてあまり良くないと感じる。

ある企業の話だ。私が社長と面談しているところに、息子が加わる。すると、社長の機嫌が急に悪くなる。腕組みをして、顔を背け、ややムッとした表情をしている。息子が話しても目を合わせないし、知らん顔をしているように見える。毎回のように同じことが起こるのだ。

この企業は、2年以内の事業承継を予定している。明らかに、この状態が続くことは良くない。息子は社長とコミュニケーションが取れていると思っているが、社長は全くそう思っていない。つまり、社長が聞きたいことを息子が「報告・連絡・相談」できていないのだ。

しかし、社長も、「そんな話を聞きたいのではない」ということを冷静に伝えられず、怒り出してしまう。

このように、親子間のコミュニケーションのギャップがなかなか埋まらず、事業承継の時期が近づいているのに、その現状を変えられないというケースが多く見受けられる。

他人なら、いや、他人だからこそ互いに分かり合うために、よく話し合おうとする。ところが親子はなかなか話し合わないものである。それは、「血のつながりがあるから、互いに言わなくても分かっている」という甘えがあるからだ。また、照れくさくて話しづらいということもある。そこで、あえて互いに意識して話し合うことが必要である。


何を引き継ぐべきか

トップが後継者に引き継いでほしいのは、経営の知識や人脈に加え、「経営の哲学」である。後継者が会社を引き継ぎ、独り立ちすると必ず困難にぶつかる。そのとき、判断に必要なのが経営の哲学だ。大きな意思決定、厳しい判断をする際に、何を大事にしなければならないかという価値判断基準である。

しかし、事業は引き継がれても、残念ながら経営哲学は引き継がれていないことが多い。

会社のミッションは時代とともに変わる。よって、先代と違うことや新しい事業にトライするのは大いに結構だ。しかしながら、経営哲学が引き継がれていないと、奇をてらっただけのように見える。先代に長く仕えてきた幹部は、「先代だったらこんな判断はしないだろう」と感じ、求心力が低下する危険性がある。結果、組織が弱体化し、業績が悪化してしまうのだ。

ミッションキャンプ

タナベ経営のクライアントが抱える課題も、突き詰めれば事業承継に帰結することが極めて多い。そのため、「ミッションキャンプ」というコンサルティングの機会が増えている。「キャンプ」といっても、大層なことではない。現経営者である社長と後継者、タナベ経営のコンサルタントが、会社から離れた場所で数時間、経営の本質について語り合うのだ。場合によっては、打ち合わせの後に食事会を行い、酒を酌み交わしながら本音での会話を進めていく(その時間も議事録を取ることにしている)。

私たちコンサルタントの役目は、テーマを設定し、親子のコミュニケーションを促進し、議事録を取り、冊子にまとめることである。「何だそんなことか」と思われるかもしれないが、そのような場を無理やりにでも設定しないと、経営哲学が引き継がれないことが多いのだ。

誰にも邪魔されない場所で、人材育成、事業、経営者としての姿勢、原理原則を語る場・受け継ぐ場があってもよいのではないだろうか。もし、このプロセスなしに事業承継を行うと、並走期間が長くなってしまい、前述したように企業の成長発展の根幹を揺るがすことにもなりかねない。

ある企業でも、ミッションキャンプを行った。始めはトップ、後継者ともに会話が少なかったが、回を重ねるごとに会話は増え、経営の根幹に関わる話題へと変化していった。経営の根幹とは、人事である。誰を将来のブレーンにするのか、どのように育成し処遇するのか。対する社長のブレーンの処遇はどうするのか。最もナーバスなテーマになっていく。この内容が事業承継カレンダーとなる。

そして、トップの過去の苦労話を聞く。大きな貸し倒れが発生したときにどうしたか、承継時に幹部から総スカンを食らったときにどうしたか、多額の投資をしたときに何を判断基準にしたのか、大企業からの出向者を役員として受け入れた際の基準、人材育成で大事にしていること、幹部に昇進させるときの基準、クレーム対応―。これらの会話中の随所に経営哲学が表れる。議事録を取り、編さんしていくと、一貫した経営哲学が顕著に見えてくるのである。


現経営者の側から機会をつくる

経営哲学を引き継ぐことについて、後継者側からは言い出しにくいものだ。ややもすると親である社長に、「私にさっさと会社を引退しろと言いたいのか」と受け取られることもあるためだ。よって、できればこの話は、現経営者である社長の方から切り出す機会をつくっていただきたい。初めは四半期に1回でも、食事会だけでもよい。徐々に頻度を上げていただきたい。事業承継が迫っているなら、早急にきっかけづくりをお願いしたい。

経営哲学―言い換えればオーナーシップであり、企業のDNAである。その思いは経営理念や社是に凝縮されていることが多い。後継者はしっかりとそれを引き継ぎ、少しでも自社を経営理念に近づけて、さらに次の未来へバトンタッチしていかねばならないのだ。


  • タナベ経営
  • コンサルティング戦略本部
  • 東北支社 支社長代理 戦略コンサルタント
  • 藤井 健太
  • Kenta Fujii
  • クライアントとビジョンを共有し、その実現を支援することを使命とする。特に、全社視点からのストーリー構築、具現化に向けた方針策定から管理までのマネジメントシステム構築を得意としている。また、実行推進においてのきめ細かな指導と着実な支援展開が、クライアントから高い評価を得ている。



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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所