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今週のひとこと

教育・研修を受けたメンバーには、

それを活用する場面を提供しよう。

活用させること自体が教育となる。





☆ 外部研修の本当の「価値」とは?!

 一言で「研修」と言っても、やり方は様々です。日頃の実務を通じて行うOJT(On-the-Job Training)や、自社内で実施する研修、セミナーに派遣する外部研修などが主なものですが、皆さんの会社では、どのような目的で研修を実施されていますか。

 筆者は、人材育成において、最も短期間で成果が上がるのはOJTだと考えています。それは、実際にその仕事をできる人が目の前で手取り足取り教えるからであり、OJTを実践していない企業は、おそらく無いでしょう。

 では、なぜ企業は時間やお金をかけて、OJT以外にも研修を行うのでしょうか。その答えは簡単で、OJTだけでは、教える人のレベル以上にはならず、社員の成長に限界があるためです。
 そこで、企業は社内・外で、様々な研修を実施するわけですが、筆者は、それらの価値は、「異質からの学びが成長の壁を突破する」ことにあると考えます。


 社内研修では、日頃接する機会の少ない他部門のメンバー、外部の研修は初対面の人ばかり。つまり、いずれも「異質」です。そして、この二つを比べると、外部研修のほうが、より異質かもしれません。業界の慣習や社内の常識だけで物事を考えていても、新たな発想はなかなか生まれないからです。
 つまり、外部研修には、スキルやノウハウを学ぶということだけではない、プラスαの価値があるのです。しかし、その価値は研修を受講した本人以外は気づかないものなので、社内に浸透しないのが現実です。


 皆さんの会社でも「異質から学ぶ」という視点で、今後の教育計画を組み立ててみてはいかがでしょうか。

コンサルティング戦略本部
アソシエイト
岩﨑 直人





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日本発のハンバーガー、
世界へ挑む「らしさ」をつなぐブランドコミュニケーション


モスフードサービス 代表取締役会長 櫻田厚氏(左)、タナベ経営 代表取締役社長 若松孝彦(右)。 モスのマスコットキャラクター「モッさん」と一緒に
モスフードサービス 代表取締役会長 櫻田厚氏(左)、タナベ経営 代表取締役社長 若松孝彦(右)。
モスのマスコットキャラクター「モッさん」と一緒に

素材や味にこだわった商品を提供し続けるモスバーガー。
「待ち時間がかかっても食べたい」とファンから思われる商品を生み出す戦略とは何か。
ファストフード業界において独自のブランド企業に成長したモスフードサービスの代表取締役会長・櫻田厚氏に聞いた。


創業期を共にした叔父からの事業承継

若松 モスフードサービスは、日本発のハンバーガー「モスバーガー」をはじめとする外食チェーンを運営し、2017年3月に創業45周年を迎えられました。私もモスバーガーファンの1人です。まず、創業の原点と櫻田会長がモスフードサービスに参画した経緯をお聞かせください。

櫻田 当社の創業者である櫻田慧は父の弟で、私の叔父に当たります。叔父の実家は岩手県大船渡市で料亭を営んでいました。猛勉強の末、東京の私学の医学部に合格しますが、高額の入学金や寄付金が捻出できずに経済学部へ転部。そこを首席で卒業して日興證券(現SMBC日興證券)に就職し、米国・ロサンゼルスに駐在することになりました。そこで食べた老舗ハンバーガーショップ「トミーズ」のハンバーガーに感激し、後に事業を興す際に、「あの時食べたトミーズのような商品を日本で売り出そう」と決意。トミーズの創業者トミー・コーラックからレクチャーを受け、1972年にモスバーガーの1号店となる成増店(東京・板橋区)をオープンしたことが始まりです。
私が高校2年の時に父が逝去、生活が一変しました。大学進学を諦め、レストランでアルバイトをして生活費を稼ぎ、卒業後は広告代理店に勤務していました。2年半ほどたって叔父から「飲食の仕事を始めるから、厚に手伝ってもらいたい」と連絡が入り、アルバイトとしてモスバーガーに入りました。当時、がむしゃらに働いたら社員より稼げるので、「アルバイトでやります」と申し出たのです(笑)。

若松 創業期を創業者と共に過ごされたわけですね。アルバイトから社員になり、そして、後に1997年に急逝された創業者の後を継がれました。

櫻田 創業者が亡くなった時、私は海外事業担当役員として台湾に駐在していました。当時、私より上位の取締役は多数いましたが、他の取締役からの説得もあり、悩み抜いた末に私が社長になる決意をしました。

若松 アルバイトから社員、幹部、役員、そして海外事業担当と、これからのモスフードサービスに必要な職務を経験されていましたが、経営者になられたときにはまた違ったご苦労があったのではないでしょうか。

櫻田 創業者が急逝したこともあって、47歳で社長に就任した時は自分が経営に関して無知だったこと、自分の人脈には経営に関する相談ができる相手がいないことをあらためて認識しました。そんな私に、創業者とご縁のあった、大正生まれや昭和1桁生まれの経営者の方々から「困ったことがあったらいつでも訪ねてきなさい」と言っていただいたのは、本当にありがたかったですね。
大手芸能プロダクションのある創業者からは、「あなたは力を入れ過ぎ。はっきり言って創業者は楽なんだ」と言われました。「創業者はゼロかマイナスから起業して会社を大きくするから、たとえ失敗しても元に戻るだけ。その会社をあなたがもっと立派にしても『やっぱり創業者がすごかったからだ』と言われるし、業績を落とそうものなら『やっぱり後継者は駄目だった』と非難される。あなたにとって良いことなんて1つもない。だから、創業者を意識しないで、自分が正しい道と納得できる方向性を見つけ、それをやり抜けばいいんだよ」と。それを聞いて、すごく気が楽になり、肩の力がスッと抜けました。素晴らしい人脈から、何ものにも代え難い貴重なアドバイスをたくさん頂戴したことを覚えています。

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顧客を幸せにするのが目的

売り上げはその後についてくる

若松 私はよく「創業は新築、承継はリフォーム」と言います。後継者は、創業者とは違う技術で新たな事業のデザインに挑戦しなければなりません。どのようなポリシーや経営スタイルで、経営を進めてこられたのでしょうか。

櫻田 創業者は、自分1人のリーダーシップでステークホルダーを牽引するタイプでした。しかし、私は能力もキャラクターも年齢も創業者とは異なります。そう考えた時、みんなの知恵を集めたチーム力で物事を進化させた方が良いと気付きました。それなら自分でもできるのではないかと。

若松 組織経営ですね。どのように組織経営へ転換されたのでしょうか。

櫻田 株主総会の変革が挙げられます。私は株主総会の議長を18回務めましたが、5回目ごろから会場を見渡せる余裕が出てきました。株主の表情を見ていると、質問や要望、意見を述べたがっているように感じました。そこで「もっとコミュニケーションを取った方がいい」と考え、6回目からは株主からの質問を、私がそれぞれの役員に割り振って答えさせ、最後に必ず私からも考え方を伝えるようにしました。すると、株主と役員との掛け合いが温かいムードを醸し出しました。当社の株主は店のお客さまであるケースも多いので、7回目以降は「株主総会は大事なコミュニケーションの場」と捉え、血の通ったコミュニケーションの発展に努めました。その結果、株主の数は3万人ほどの規模になっています。

若松 B to C ビジネスで株主と顧客が重なると、株主総会は顧客が経営に参画する場になりますね。「モスの企業カルチャーを応援したい」と言ってもらえるようなブランド構築にもつながります。櫻田会長ご自身は、モスバーガーの強みは、どのようなところにあるとお考えなのでしょうか。

櫻田 現在、モスグループで働く約2万6000名(パート含む)の皆が、「善意」という言葉を大好きであるということです。「人間社会の中で善意あふれるモスバーガーでありたい」と願い、「正直」や「真心」、「一生懸命」であったり「ひたむき」、「親切」といった善意を形成するファクターが共通語になり、会議や懇親会や飲み会などで飛び交います。それによって「お客さまを幸せにしたい、仲間を大事にしたいという思いを、店舗を媒体にして実現させる。その結果、売り上げが上がる」という流れができています。

若松 まさに「モスらしさ」であり、ブランドですね。思いや意志が形になって店舗、人材、サービス、商品に表現されることは、とても大切です。この「モスらしさ」は、商品のおいしさや店舗オペレーションにも、ブランドコミュニケーションとして色濃く表現されているように感じます。

櫻田 商品については、モスバーガー、テリヤキバーガー、テリヤキチキンバーガーという長年にわたる人気商品を有していること。これは創業者の遺産です。それらを大切にしながら「新商品」を提案しています。商品戦略としては、作り置きをせずに注文をいただいてから調理する「アフターオーダーシステム」や、だしや発酵などを取り入れた「日本の食文化を表現」すること、バランスよい食事で健康維持を目指す「医食同源」という考え方を大切にしています。
顧客を含めたステークホルダーとの正しいコミュニケーションから、ブランド価値がつくられるのです。

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独自のカテゴリーを確立し「モスに行きたい人」を増やす

若松 2016年に中村栄輔社長へ経営のバトンを渡されました。次代へ期待されていることは何ですか。

櫻田 事業承継には後継者の能力や人柄、時流、環境など多様な要素が複合して影響を及ぼします。しかし、承継のポイントは「ステークホルダーからどれだけの共感や支持を得られるか、どれほどの要請に応えられるか」を見極めることだと思います。後継者はスキル以上に"人間力"が優れていないと、承継は難しいでしょう。われわれの商売は100円、200円の積み重ねが億単位の収益を築きます。そのため、経営者が100円、200円のありがたみや価値を真摯に受け止めないと、スキルに頼って数字を見ているだけという状態に陥ってしまいます。ステークホルダー全員がサポーターになって「一緒にもっと会社を成長させたい」と思ってくれるような人間力が不可欠です。

若松 成長の原動力の1つに、FC(フランチャイズ)システムがあります。FCオーナーの皆さんにおいても、事業承継が大きな課題にはなっていませんか。

櫻田 2017年4月末時点で国内のモスバーガー店舗は1361店、そのうちFC店舗は1309店を占め、約430の個人・法人が経営していらっしゃいます。「もう現場は厳しいので、次の代に経営を譲りたい」という声の高まりに対応し、2004年から「次世代オーナー研修」というカリキュラムを実施しています。この研修を卒業すると後継者になる試験を受ける権利が与えられ、それに合格すると事業を承継できます。これまでに約160名が受講し、約60名が事業承継しています。
また、独立する際の資金支援も行っています。モスストアカンパニーという子会社でも導入。将来は独立したいと希望する中途社員もおり、現場業務を積んでから、独立して店を持つという道もあります。
このような取り組みによって、FCの活性化を推進しています。

若松 社員やFCオーナー社員の皆さんと共に持続的成長に取り組むシステムを構築されているのですね。
続いて、競争激化の時代に勝ち残る戦略をお聞かせください。

櫻田 ハンバーガーの国内マーケットは約6000億円。マクドナルドとモスバーガーでマーケットの9割を押さえています。ここまで寡占化が進むと、たとえ高級ハンバーガーが売りの米国チェーンなどが参入したとしても、入れ替わりは難しいでしょう。消費者は回遊しますから、チキンやドーナツ、牛丼などの他業種チェーンもある中で、個性化や差別化が確立・評価されないと選んでもらえません。われわれは売り上げを競うのではなく、モスというブランディングをより一層高めて独自のカテゴリーを確立し、「モスに行きたい」という人を増やすことを大きな戦略としています。

若松 日本発のハンバーガーブランドとして、海外にも店舗展開をされています。

櫻田 台湾、シンガポール、香港、中国、韓国などで展開し、335店を数えます(2017年4月末現在)。私が現地で事業促進に取り組んだ台湾が247店と圧倒的多数を占めます。欧州マーケットも視野に入れ、2015年にはミラノ国際博覧会に出店。その時、評判の良かったライスバーガーを戦略商品にして、欧州進出を果たしたいと考えています。そして最終的には、ハンバーガーのメッカであるニューヨークに出店したいですね。

若松 櫻田会長は創業の精神を実践されながらも、組織力を活用してステークホルダーとのコミュニケーションを大切にする企業カルチャーを醸成し、中村社長へ経営を引き継がれました。100年企業に向かう道筋です。さらなるご発展を祈念いたします。本日はありがとうございました。

モスフードサービス 代表取締役会長 櫻田 厚 氏(さくらだ・あつし)氏
1951年、東京都大田区生まれ。広告代理店に入社後、 1972年には叔父であり創業者の櫻田慧氏の誘いを受け、モスバーガーの創業に参画。 1977年にモスフードサービス入社。直営店勤務、店舗開発、営業、海外事業部長を経験し、 1998年代表取締役社長就任。日本フランチャイズチェーン協会(JFA)会長の経験も。 2014年4月より代表取締役会長兼社長。2016年6月より現職。

タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ・たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院 (経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。


PROFILE

  • ㈱モスフードサービス
  • 所在地 :〒141-6004 東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark Tower 4F
  • TEL : 03-5487-7371(広報IRグループ)
  • 設立 : 1972年
  • 資本金 : 114億1284万円
  • 売上高 : 709億2900万円(連結、2017年3月期)
  • 従業員数 : 1335名(2017年3月現在)
  • 事業内容 :  フランチャイズチェーンによるハンバーガー専門店「モスバーガー」の全国展開、その他飲食事業など
  • http://mos.jp/








紙×Web×リアルを組み合わせ
ワーキングマザー市場へ多角的にアプローチ
vol.21 サンケイリビング新聞社 × タナベ経営 SPコンサルティング本部


広告を「暮らしに役立つ生活情報」として発信し、地域の生活者とスポンサーをつなぐフリーペーパー。
日本での草分け的存在がサンケイリビング新聞社だ。同社は1971年6月、日本初の本格的フリーペーパー『リビング新聞 中央沿線版』(現『多摩リビング』)を創刊。全国各地の主婦をはじめ、企業で働くOL、幼稚園・保育園児の母親たちから支持を得て、世界最大級のフリーペーパーネットワークを構築している。

独自の配布体制で一人一人へ確実にお届け

サンケイリビング新聞社は、フリーペーパーの『リビング新聞』(789万部、主婦向け)や『シティリビング』(63万部、OL向け)をはじめ、フリーマガジンの『あんふぁん』(70万部、幼稚園児の母親向け)、『あんふぁんぷらす』(38万部、保育園児の母親向け)など数々の媒体を展開。盛衰の激しい業界ながら、ターゲットの細分化による厳選したコンテンツ提供と、独自の配布方法を強みに着実に成長を遂げてきた。

「地域密着の全国ネットワークを持ちながら、長年フリーペーパーを発行する企業は、世界でも他にありません」と語るのは、同社の取締役東京メディアプロデュース担当・植田奈保子氏。全国56エリアで発行するリビング新聞は、各地で主婦を組織化し、一軒一軒の家庭に配布してきた。確実にターゲットの目に触れるため、より高い広告掲載効果が期待できる。

消費力のある住宅を選んで届けている戸別配布は同社の強みであり、他の媒体にも共通する。例えば、オフィスに配るシティリビングの場合、企業各社に配布の可否や女性従業員数を確認した上で届けている。そのため、ターゲット層への配布精度が高く、より効果的なレスポンスが期待できるという。

あんふぁん、あんふぁんぷらすも事前に幼稚園・保育園の承認を受けて、園の先生の協力のもと配布をしている。また、専門のフィールドスタッフが園を巡回しており、その際、保育士や教員から課題と悩みを聞き出し、集めた声を誌面づくりに生かしている。常にコミュニケーションが取れているため、園内でのイベントやプロモーションを行いやすく、広告掲載企業や出展企業に大きなメリットがある。

また、あんふぁんは幼稚園の先生から園児へ配布されるため、子育て系のフリーペーパーの中でも圧倒的な知名度を誇る。同社の調査によれば、あんふぁん、あんふぁんぷらすの母親の認知度は幼稚園で60.4%、保育園は40.8%に上り、2位以下の他誌を大きく引き離す。

サンケイリビング新聞社 取締役 東京メディアプロデュース担当 植田 奈保子氏
サンケイリビング新聞社
取締役 東京メディアプロデュース担当
植田 奈保子氏

サンケイリビング新聞社 植田氏(中央)と あんふぁん事業部主任の伊藤未来氏(右隣)、 左からタナベ経営 石川、東、筒井(右端)
サンケイリビング新聞社 植田氏(中央)と
あんふぁん事業部主任の伊藤未来氏(右隣)、
左からタナベ経営 石川、東、筒井(右端)

働く保育園ママを応援する新媒体『ぎゅって』発刊

ワーキングマザーの増加とともに保育園児が増え続ける中、同社は保育園児の母親向けのあんふぁんぷらすを2017年6月号から、『ぎゅって』へリニューアルする大改革に踏み切った。

ぎゅってという誌名には、「仕事や家事、育児の時間が十分に取れない母親たちに、家事や子育てに役立つ情報を"ぎゅって"凝縮して伝えたい」「捻出した時間で子どもを"ぎゅって"抱きしめてほしい」との願いが込められている。

「幼稚園ママも保育園ママも、子育てに対して同じくらいの情熱を持っていますが、子どもとの向き合い方も、不安に思うことも違います。そこをきちんと見極めて寄り添っていきたい」と植田氏。また、今後ますます増加するであろうワーキングマザーに焦点を当てることで、子育て世代のマーケットを維持・拡大していきたい狙いもある。

保育園児の母親の生活を少しでも豊かにする情報を届けるため、ぎゅってでは同社初の「ウェブ・ファースト(紙媒体よりもWeb媒体での発信を優先する考え方)」を掲げ、1日3回Webで情報を発信していくという。

「仕事と育児、家事をこなす保育園ママにとって『時短』は重要テーマ。時間がない彼女たちにとって、通勤・退勤時間は貴重な情報収集の時間です。スマートフォンなどで情報収集できるように、Webを使って時間帯や季節に合った情報を、短い文章でタイムリーに発信していきます」(植田氏)

一方、紙媒体は持ち運びしやすく、隙間時間で読みやすいよう従来よりコンパクトなB5判へ刷新。内容はWebと差別化し、じっくり読んでほしいテーマを掘り下げていく。Web媒体は、閲覧者が自分の関心のある情報にしかアクセスしないが、紙媒体であればページをめくる際に多様な情報に触れることが可能であり、「啓発したい記事は紙の方が合っている」と植田氏。Webと紙を使い分けながら、効果的な情報発信を目指す考えだ。

リアルでのアプローチを進め企業と読者をつなぐ

母親たちへの情報発信手段として、同社では紙やWebに加え、「リアル」の場も重視する。具体的には、商品やサービスを体験できる園内でのサンプル配布やプロモーションに加え、毎年「あんふぁんフェス」として大規模なイベントを開催し、読者と企業の出会いの場を創り出している。

2016年7月に開催した「夏フェス」には、多数の応募の中から抽選で選ばれた1423家族(5078人)が来場した。2017年1月から2月にかけて大阪と東京で開催した「春フェス」でも、協賛企業のブースに終日行列が続く盛況ぶりだった。

「特に体験型のブースには多くの方が並ばれていました。最近は子どもの自主性を重んじる傾向が強く、さまざまな本格体験をさせて、その中から自分の好きなこと、関心のあることを見つけて伸ばしてあげたいと考える保護者が増えています。企業による体験型イベントに人気が集まるのも、こうした背景が影響しているのではないでしょうか」(植田氏)

子どもが楽しめて、親子の思い出になる体験は、紙やWebでは提供が難しい。子どもの喜ぶ顔は親にとって「プライスレス」(お金で買えない貴重な価値)であり、そうした場を提供してくれた企業に対する親のイメージは確実に増す。

「すぐには消費につながらなくても、子どもとの体験を通してなじみになった商品・企業は、認知度や親近感は格段に上がります」(植田氏)。こうした理由から、同社は今、リアルでのアプローチを積極的に行っている。

時代に合わせた形で、生活を豊かにする情報を確実に届けるサンケイリビング新聞社。今後もオンリーワン企業としての存在感を放ち続けていくことだろう。

あんふぁん春フェス2017 (写真は東京会場、参加者数は東京・大阪で合計5526名)
あんふぁん春フェス2017
(写真は東京会場、参加者数は東京・大阪で合計5526名)

変化するマーケットを捉え、子育て世代の共感を高める

「5年後には、仕事と家事・育児を両立する保育園ママがスタンダードになり、専業主婦中心の幼稚園ママはプレミアムな存在になります」と植田氏。子育て世代の家族像が大きく変わりゆく中、この層をターゲットとする企業はマーケットを捉え直すべき時期にきている。

その際、「幼稚園ママと保育園ママの違いだけでなく、それぞれの夫婦の役割や、親と子の関わり方などの変化を読み取れるかがポイント」(植田氏)。子育て中の母親たちを一くくりで捉えていては、マーケットから取り残されかねない。

タナベ経営では「こども・子育てファミリーマーケット成長戦略研究会」を立ち上げ、こうした動向を見極めるべく勉強会や企業視察を実施している。2017年2月開催の研究会では「あんふぁん春フェス2017」の視察に加え、同日の講演会で植田氏を講師に迎え、今の時代の子育て世代の特徴や着眼点などを紹介した。受講者から高い評価が寄せられた一方、植田氏も「収穫が多かった」と話す。

「研究会では、お付き合いのなかった業種の事例を聞けて興味深かったです。これまで想定していなかった業種も子育てに深く関連していることが分かり、子ども・子育てマーケットの裾野の広さをあらためて感じました。さまざまな企業とのお付き合いが深いタナベ経営とは、今後も幅広い業界や企業が抱える課題について情報交換していきたいですね」(植田氏)

幼稚園の先生が園児に手渡しで配布する『あんふぁん』。子育て系フリーペーパーでは圧倒的な知名度を誇る
幼稚園の先生が園児に手渡しで配布する『あんふぁん』。子育て系フリーペーパーでは圧倒的な知名度を誇る

保育園児の母親を応援する『ぎゅって』を新装刊 ※写真は制作中の見本誌
保育園児の母親を応援する『ぎゅって』を新装刊 ※写真は制作中の見本誌

PROFILE

  • ㈱サンケイリビング新聞社
  • 所在地 :〒102-8515 東京都千代田区紀尾井町3-23
  • TEL : 03-5216-9211(代)
  • 設立 : 1976年
  • 資本金 : 1億円
  • 売上高 : 6405億7200万円 ※ ㈱フジ・メディア・ホールディングス(連結、2016年3月期)
  • 従業員数 : 444名(2016年10月現在)
  • 事業内容 : リビング新聞およびシティリビングの発行とそれに付帯関連する事業
  • http://www.sankeiliving.co.jp/


フリーペーパーの世界で、サンケイリビング新聞社ほど長い歴史と広大なネットワークを持つ企業は、世界中を見ても類例がない。また、幼稚園・保育園をスタッフが巡回し、現場の声を誌面作りに生かす企業も、同社の他には見られない取り組みだ。
タナベ経営のこども・子育てファミリーマーケットコンサルティングチームでは、時代の流れとともに変化する子育て世帯のインサイト(心の動き、本音)を的確に捉え、クライアントの目的に応じたターゲティングと導入すべき販促手法を提案している。
また、「こども・子育てファミリーマーケット成長戦略研究会」では、今ドキママのライフスタイルや価値観を把握し、他社成功事例を自社へ展開できるよう、さまざまな視点でのポイントやアプローチ手法を学ぶ機会の場を提供しているので、ぜひ活用していただきたい。


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    06-7177-4008
    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所