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今週のひとこと

部下は自分を理解してくれる上司のもとで、

働きたいものだ。あなたは部下のフルネームが

書けるか。長所を10個あげられるか。

常に部下への愛情と感心を忘れてはならない。

☆ 百の人材に百の長所あり

 筆者は、3年前から登山を始めました。日本は、周りを見渡せば山々が連なり、登山には不自由しない環境です。まずは、高さが200mにも満たない山から登り始め、500m級、1,000m級、2,000m級、そして富士山の登頂もできるようになり、延べ60の山の頂上を経験しました。

 「百の頂きに百の喜びあり」。
 この言葉は、山をこよなく愛し、読売文学賞を受賞した著書『日本百名山』の著者であり、登山家でもあった深田久弥(ふかた きゅうや)氏の言葉です。
 高い山・低い山、険しい山・緩やかな山がある中で、それぞれに素晴らしい特徴や個性があり、登るたびに感動を覚えます。山という存在は常にそこにあるだけで、それを素晴らしいと感じるのは、感動する「何か」を発見しようとする主体性が働いているのではないかと思います。


 これは、「部下育成」でも言えることではないでしょうか。能力の高い人・レベルアップが必要な人、活発な人・おとなしい人...。人にもそれぞれに特徴や個性があります。得意なこと、苦手なことがあるのは当然です。
 部下育成で大切なことは、良いところ、得意なことを見つけ、それを育むことができるかどうかです。メンバーそれぞれに長所・強みが必ずあります。「百の人材に百の長所あり」。興味を持って観察し、接してみてください。


 人材の多様化が益々進む中で、それぞれが持つ良さを見つける。見つけたら、その人の存在を生かすことができる環境は何か。そして、それをどのように整えていけばよいのかを考え続けることを部下育成の楽しみとする必要があるのではないでしょうか。

コンサルティング戦略本部
チーフコンサルタント
浅田 陽士

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大企業病は大手企業だけの病ではない


企業には、「大企業病」と呼ばれる病が存在する。

とはいえ大企業だけではなく、社員数が数十名の企業もかかる。人間で例えるなら加齢とともにかかりやすくなる生活習慣病のような、厄介な病である。

大企業病にかかると、安定した業績によって「会社はつぶれないものだ」という錯覚が社内にはびこり、事なかれ主義、前例主義、手段の目的化、セクショナリズム、仕事のスピードの鈍化、社員の自己啓発不足といった症状が現れる。

30年、60年がたてば企業を取り巻く環境は変わる。企業のかじ取りを行う経営陣の世代も引退。必然的に創業の苦しい時代を知っている人が少なくなったり、会社のことを真剣に語り合う機会が減ったりする。徐々に環境不適合が進展し、やがて衰退、倒産軌道へと落ちていく。まさに諸行無常である。

大企業病とは企業風土の病ともいえる。かかる前に予防するのが望ましいが、かかってしまったと感じたら早く手を打つことが重要だ。しかし、これは人間でいうなら体質改善の治療であり、時間を要する。

大企業病の払拭に取り組んだ企業の事例を紹介する。疑似的な危機的状況を社内につくり、社員に健全な危機感を持たせるというやり方である。

製造業A社では、経営理念を全社員が咀嚼し、自分の仕事レベルに落とし込む教育を、役員から一般社員までの全員に対して段階的に行った。「経営理念の実現に向けてはまだまだ道半ばだ」という不足の認識(=健全な危機感)を植え付けることから始めたのだ。

さらに、「組織活性化委員会」という大企業病払拭のための推進組織をつくり、5S運動、コミュニケーションアップ運動など、緩んだ職場の空気を刷新する活動を展開していった。

東京オリンピック・パラリンピックまでの好景気と2020年以降の経済の落ち込みに備えて、全社・自部門・幹部・個人が「変化」に挑み、まい進しているかを問い掛け、大企業病に陥らないよう、全力で取り組んでいただきたい。

あなたのミッションは、企業理念の実現と、業績達成による持続的成長である。


■筆者プロフィール
タナベ経営 中四国支社
支社長代理 戦略コンサルタント
北島 康弘 Yasuhiro Kitajima
「業績向上と社員活性化を両立させる風土づくり」をコンサルティングの指針に掲げ、事業戦略や収益構造改革、組織改革、風土改革、人事制度改革、営業改革などをテーマに数多くの企業を支援している。特に企業風土の活性化を軸にしたコンサルティングに定評があり、「自ら考え、自ら行動する」新たな風土を構築することで、社内改革を多数実現している。

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自ら考え、行動できる人材を育て
100年企業を目指す 東海光学



社員の成長なくして会社の成長はあり得ない

東海光学は愛知県岡崎市に本社を置く、創業78年を迎える眼鏡レンズの専門メーカー。眼鏡の新たな価値として、紫外線などの光から目を守る「アイケアデザイン」をコンセプトに、独自技術を駆使した高品質なレンズ製品を国内外の眼鏡市場へ幅広く提供している。

「眼鏡は視力補正だけでなくファッションとしても用途が広がっていますが、市場規模はさほど大きくありません。国内では業界再編による寡占化や人口減少が進んでいるため、当社も従来路線の経営努力だけでは、今後を楽観できない状況にあります」

そう語るのは2009年から同社を率いる3代目社長、古澤宏和氏だ。代表取締役に就任するや長期的視野をもって自社のかじ取りに乗り出した古澤氏は、「会社の発展には社員一人ひとりの成長が不可欠」と説く。

いかに社内のコミュニケーションを深化させ、個々の自発的な思考、行動力を伸ばしていけるか。古澤氏は、経営サイドから指示を与えるトップダウンだけではなく、現場の社員が自ら課題を設定し、解決に向けて動くボトムアップの必要性を認識。社員の声にも積極的に耳を傾け、よいと判断した取り組みを素早く実行していった。

東海光学 代表取締役社長 古澤 宏和氏
東海光学 代表取締役社長 古澤 宏和氏

独創的な製品開発と販売拡大に貢献する「女子開」

そうした中で2011年に生まれたのが、女性だけの商品開発チーム、通称「女子開」である。自分たちの思いやアイデアを形にしたいと、所属部門の枠を超えて10名ほどの有志が集まった。発足以来、女性ならではの感性を生かしたユニークなレンズ製品の提案が次々と誕生。企画からモノづくり、販促、販売まで一貫してプロジェクトチームが担い、市場へ送り出す流れができているという。

2016年には、体の内側から美しさへのアプローチが期待できるレンズ『美美Pink』が内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の優秀入選アイデアに選定されるなど、着実な実績を重ねている。

「女子開を全社でサポートしようと決めたのは、眼鏡の新しい価値創造やBtoCの新しい販売チャネル開拓など、これまでにない可能性を強く感じたからです。今では見込んだ通りの成果を上げてくれていますし、彼女たちの動きが他の社員の刺激にもなっています。注目を浴び、当社の知名度アップに貢献してくれている点もうれしい限り」と古澤氏。

同社では女子開の他にも、部門横断型の取り組みとして委員会制度を設置。新卒採用、新人教育、5S、社員旅行など10分野に及ぶ活動を、社員が主体的に推進する仕組みを取り入れている。

女性ならではの着眼点を生かし、企画から販売まで一貫して担う「女子開」は東海光学の大きな強み(左) 東海光学のDNAを理解し、引き継ぐために、理念などをまとめた「成長への体系図」や社史を社内教育で活用(右)
女性ならではの着眼点を生かし、企画から販売まで一貫して担う「女子開」は東海光学の大きな強み(左)
東海光学のDNAを理解し、引き継ぐために、理念などをまとめた「成長への体系図」や社史を社内教育で活用(右)

人事制度を一新 若手の挑戦・成長を後押し

古澤氏はさらに、数十年ぶりとなる人事制度の改革を実行。タナベ経営が協力して2015年に導入した新人事制度では、人事制度を冊子にまとめて「見える化」を図るとともに、若手の評価をプロセス重視へと変更した。背景には、若手社員の挑戦や成長を後押ししたい思いがある。

「自分がどう頑張ればどんな等級、どんな給与になるのかが明確に分かれば、社員のやる気もおのずと高まると思いました。人事制度の刷新が、当社の次の成長のベースになると判断し、中堅社員向けのセミナーや研修で支えてくれていたタナベ経営に、新制度づくりでも助力をいただきました」

古澤氏が経営において大切にしているのは「不易流行」。創業以来、受け継いできた企業のDNAは崩さず、有用な変化は果敢に取り入れる。「この姿勢を全社員で共有し、全社一丸で臨むことが自社の未来につながる」と語る古澤氏の眼には、そう遠くはない100年企業への道筋が明瞭に映っている。

PROFILE

  • 東海光学㈱
  • 所在地 : 〒444-2192 愛知県岡崎市恵田町下田5-26
  • TEL : 0564-27-3000(代)
  • 創業 : 1939年
  • 資本金 : 1億円
  • 売上高 : 100億円(2016年9月期)
  • 従業員数 : 400名(2016年9月現在)
  • http://www.tokaiopt.co.jp/


 タナベ コンサルタントEYE  
東海光学は、「一人ひとりの成長が東海光学の成長へとつながる」という信念のもと、人材教育に力を入れている。次世代、次々世代のメンバーを中心に社内マネジメントスクールを実施。また、若い世代にも教育の機会を広げ、会社全体で学ぶ風土づくりを推進している。共通して取り入れているのは、TOKAI-DNAの読み解き。社史『その挑戦、夢にあり』を題材に、「受け継いでいくべきもの」をメンバーが議論し、東海光学の不易流行を進化させ続けている。決して受け身にならず、会社の歴史・伝統に新しい考えを付加し続けるため、社員の一人ひとりが考え続け、挑戦し続ける姿勢こそ、東海光学の成長の源泉である。
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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所