2017.10.27





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事前体験の場を提供する「iアカデミー」の設立へ

井上 代表取締役社長 井上 大輔氏(左) サポートディビジョン 業務支援室 部長 桐村 徹氏(右)
井上
代表取締役社長 井上 大輔氏(左)
サポートディビジョン 業務支援室 部長 桐村 徹氏(右)

理念の浸透でピンチを脱して成長軌道へ

京都府福知山市に本社を置く井上。電気設備に関わる多様な課題にワンストップで対応できる「電気のトータルソリューション企業」という独自の業容を築き、2017年に創業70周年を迎えた。

同社を率いる代表取締役社長の井上大輔氏は、電気機器の卸業から電気総合業へと事業の幅を広げた3代目経営者だが、就任当時は逆風が吹き荒れた。事業を継承して社内をチェックすると、財務状態をはじめ、社員のモラルや職場の雰囲気など、あらゆる悪い面が目立ったという。

窮地からの脱出を懸け、井上氏は「何のために人が集まって仕事を行うのか」に主点を置いて、会社経営の意味を考えた。そして、「幸せになろうとしている人を精いっぱい応援できる会社にしていこう」と決意。2011年には「i Standard(アイスタンダード)」と呼ぶ理念体系を定め、それを掲載した小冊子「i Standard Book(アイスタブック)」を全社員に配布。常備させることで、理念の浸透を図った。

「ピンチから脱して会社を成長軌道に乗せられたのは、社員一人一人に理念が浸透した成果」と井上氏は明言する。

若手社員の背中を押す社内アカデミーを設立

井上は理念に基づく「人づくり」にも力を注いでいる。その基本となるのが、「INOUEの成長エンジン4原則」である。自分を大切にする「個の尊重」と、他人をいたわる「相互支援」が充実すると自主的な改善を行う環境が整い、「戦略的計画」などが推進される。そして、「お客様への顧客価値創造活動」「アライアンス企業、地域社会への活動」が加速するという概念である。

「その背景となるのが、全社にわたる価値観の共有」と井上氏は言う。価値観共有の促進に大きな成果を上げているのが、「ワット会」という自由参加の勉強会。「愛」といった抽象的なものから「粗利益」や「回収」といった実務に直結したものまで多彩なテーマが設定され、ベテラン社員と新入社員が真剣に語り合い、定義をブラッシュアップしながら価値観をすり合わせる。

井上氏は「人づくりの根本は主体性。幸せは他人から与えられるものではないから、主体性を発揮できないと幸せの芽は育ちません」と述べる。その主体性の伸長に大きな役割を果たすのが「i デア提案」。部署や会社のためになると思ったことであれば、何を提案しても構わない制度だ。提案書は社内のグループウエアで共有し、経営者宛ての提案は部署や部門でとどまることなく井上氏へ直接届く仕組みになっている。1つの提案につき、「グッジョブポイント」が1つ与えられ、賞与時に1ポイント500円として換金できる。提案総数は、年間800件に達するそうだ。

人づくりの基本は主体性へのこだわり

社員の主体性を優先する同社の姿勢は、昇進制度にも表れている。同社のリーダー職(課長代理と課長)は立候補制なのだ。

「当社はチームワークを重視するため、リーダーに求められるのはチームを支援する能力です。価値観の共有化が進み、最近では他の人と目線を合わせて話ができる優しい性格の社員が立候補するようになりました」と、サポートディビジョン業務支援室部長の桐村徹氏は語る。リーダーをタナベ経営の幹部候補生スクールに参加させ、経営のいろはを修得させる。経営が分からないと、リーダーとして社員への支援に厚みが出ないと考えるからだ。

人づくりの新たな取り組みが、タナベ経営と共に推進する「i アカデミー」の設立である。すでに先輩社員がマンツーマンで指導するチューター制度や、自分が勉強したいことに会社出資で取り組める研修制度などを整えてきたが、今の若手社員はもう少し背中を押さないと鍛えられないと気付いたのである。

「アカデミーでは、現場業務をリアルに再現した『事前体験の場』を用意しようと思います。擬似的な体験を積ませることで、若手が自信を付けて実際の現場で能力を十分に発揮できるようにしたい」と井上氏は期待する。

「脱・競争」をテーマに掲げる井上氏。価格競争など、質の悪い競争は徹底的に排除し、会社のクオリティー向上に結び付くような取り組みに特化すべきだと考えている。「そうすれば、必然的にファーストコールカンパニーになれるはずです」(井上氏)

PROFILE

  • 井上株式会社
  • 所在地 : 〒620-0055 京都府福知山市篠尾新町3-3
  • TEL : 0773-22-5171(代)
  • 創業 : 1947年
  • 資本金 : 4000万円
  • 売上高 : 38億1100万円(2016年4月期)
  • 従業員数 : 89名(2017年2月現在)
  • 事業内容:電気設備資材の卸売業、各種制御盤の設計・製作・設置工事およびコンサルティング、通信監視システムの提案・設計・構築など、各種省エネコンサルティングほか
  • http://www.inouekabu.com/


 タナベ コンサルタントEYE  
1947年、京都府福知山市で電気設備資材卸売業者として創業し、現在では電気設備システム開発から施工、メンテナンスまでを手掛ける電気のトータルソリューション企業として成長を続けている。
その原動力は、社員一人一人の幸せと成長の実現だ。自社の理念体系「i Standard」を軸とし、全社員のベクトルを統一するためにさまざまな研修や社内での取り組みを実施。人材力・チーム力を高めている。同社が「電気のファーストコールカンパニー」となる日はそう遠くないだろう。

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