2017.11.03







「船旅の楽しみ」を打ち出し、リピーターを創出
フェリーさんふらわあ × タナベ経営 SPコンサルティング本部


関西と九州を航路でつなぐフェリーさんふらわあは、移動手段を超える「カジュアルクルーズ」として船旅の新たな魅力を発信し、顧客層を大きく広げている。

3航路を生かした独自商品で差別化に成功

真っ白な船体に描かれた水平線から昇る大きな太陽――。特徴あるデザインが印象的なフェリー「さんふらわあ」は、本州と九州・北海道をつなぐ定期船として海上輸送・旅客の両面から日本の発展を支えてきた。商船三井フェリーが関東〜北海道を運航するのに対し、関西~九州間は商船三井グループのフェリーさんふらわあが運航している。

フェリーさんふらわあは、神戸~大分、大阪~別府、大阪~志布志(鹿児島)という3つの航路を持つ。旅客営業部営業企画室課長代理の小野剛氏は、「3つの航路を持つことが他社との差別化につながっている」と分析。特に、3航路を組み合わせて関西~九州間を往復できる「舟遊プラン」は、利便性の高さと往復8280円からというリーズナブルな価格設定で幅広い層の支持を集める。また、1万円で関西~九州間を往復できる「弾丸フェリー」も人気が高い。

さらに乗客全体の半数超を占めるリピーターの多さも、同社の大きな特徴。その要因は、商品力の高さや付帯サービスにある。

「単なる移動手段としてではなく、旅の魅力をいかに打ち出すかが大事。九州は温泉や観光地が豊富ですから、現地の情報を集めてモデルコースを提案したり、周辺の提携店舗で割引や特典が受けられたりするなど、船旅を満喫するための『コト』づくりに力を入れています」と小野氏はプランの付加価値を強調する。

魅力あるプランや情報発信によって旅が充実すれば、顧客の満足度は上がる。そうした体験がリピーターやクチコミを生み、利用者の増加という善循環をつくり出している。

フェリーのイメージを変える「カジュアルクルーズ」

出航時に紙テープを投げ、航海を楽しむ「カジュアルクルーズ」を演出
出航時に紙テープを投げ、航海を楽しむ「カジュアルクルーズ」を演出

単なる移動手段を超えて「旅」の充実に着眼した同社は今、航海そのものを楽しむ「カジュアルクルーズ」を戦略の中心に据える。

具体的には、出航時に紙テープを投げてドラを鳴らす船旅ならではの演出のほか、船内でのジャズ演奏やジャグリングショー、星空教室などを開催。レストランでは幅広い年代が楽しめるバイキング形式を採用し、月替わりで季節の料理を取り入れるほか、ファミリー層に人気のチョコレートファウンテンを導入するなど、「船内をいかに楽しんでもらうか」に趣向を凝らす。

中でも、カジュアルクルーズの代表的なプランが、「昼の瀬戸内感動クルーズ」である。島々が点在する瀬戸内海の美しい景色を船上から堪能できるプランで、船内でクラシックコンサートや、海を見ながら有名料理店の懐石弁当が楽しめる、ワンランク上のクルージングを提供。非日常を演出するリッチな船旅が評判となり、今や関西圏だけでなく関東からも予約が入るほどの人気商品へと成長した。

旅客営業部営業企画室課長代理の髙木俊彦氏は、「究極は、船に乗ることが旅の目的になること。クルージングは日本で一般的ではありませんが、瀬戸内海など世界的に見ても美しい景色はまだまだある。そういった資源を生かして、もっとカジュアルクルーズを打ち出していこうと考えています」と、市場の拡大に期待を寄せる。

フェリーさんふらわあ 旅客営業部 営業企画室 課長代理 小野 剛氏
フェリーさんふらわあ 旅客営業部 営業企画室 課長代理 小野 剛氏

フェリーさんふらわあ 旅客営業部 営業企画室 課長代理 髙木 俊彦氏
フェリーさんふらわあ 旅客営業部 営業企画室 課長代理 髙木 俊彦氏

2018年新船竣工ワンランク上の船旅を提供

新造船「さんふらわあ さつま」「さんふらわあ きりしま」が2018年に就航(写真はイメージ図)
新造船「さんふらわあ さつま」「さんふらわあ きりしま」が2018年に就航(写真はイメージ図)

2018年3月と6月には、大阪~志布志間で新造船「さんふらわあさつま」「さんふらわあ きりしま」が就航する。これを機に、同社は本格的にカジュアルクルーズ市場を広げていく考えだ。

新造船では、よりクルーズに近い船内設備や雰囲気を採用。バリアフリー設計や専用バルコニーが付いたスイートルームをはじめ、プライベートスペースとなる個室を大幅に増やし、全室にシャワー・洗面スペース、トイレを完備する。一方、エントランスや船上レストラン、大浴場などのパブリックスペースを現行船の2.5倍へ増床。これまで以上にゆったりとくつろいだ雰囲気の中で、雄大な太平洋の航海を楽しむことができるつくりだ。

「おひとりさまでの旅行はもちろん、家族連れやシニア層まで楽しんでいただけるよう設計しています」と小野氏。さらに、ペット同伴可能な個室を設けるほか、船内にドッグランの設置を計画している。

「今やペットは家族の一員です。しかし、まだ公共交通機関を利用して愛犬と旅行することは難しいのが現状。ペット連れのお客さまをはじめ、さまざまなニーズに応えられるサービスを提供していきたい」と髙木氏。顧客の変化を捉えた新たな切り口で、新規開拓を進めていく。

スイートルームではぜいたくな船旅が楽しめる
スイートルームではぜいたくな船旅が楽しめる

開放感あふれるエントランス
開放感あふれるエントランス

新規顧客開拓に向けたマーケティング戦略

同社が新たな挑戦を続けるのには理由がある。「フェリーを取り巻く環境は変化していますから、マーケットを先読みして顧客創造につなげることが必要」と小野氏。これはマーケティングにも共通する。急速なスマートフォンの普及を受けて、同社は今年から新たに、富士通・富士通総研とデジタルマーケティングの取り組みを開始。ホームページの閲覧情報(個人情報に当たらないもの)やソーシャルメディアの情報などを分析し、顧客のニーズに合わせた情報提供やサービス向上、広告配信などに活用する。

もちろん、従来からの宣伝や販促活動にも重きを置く。とりわけ、新規開拓に向けた販売促進において力を発揮するのがノベルティーの存在だ。

「大規模なイベント時にパンフレットなどを配布しますが、ノベルティーがあると立ち止まっていただけます。手渡しするとき、さんふらわあへの質問やご意見をいただくことも多く、サービスや商品開発において貴重な情報になっています」(髙木氏)

同社はこれまで数多くのノベルティーを開発してきたが、特にタナベ経営と開発したさんふらわあのロゴ入りボールペンは「書きやすい」と評判だ。このボールペン、同社のマーケティングに対するこだわりが垣間見える一品でもある。

「ノベルティーとしてボールペンをよくもらいますが、書きにくいものが多い。せっかく配布しても使っていただけないと意味がありませんから、とにかく滑りがよく書き心地のよいものをタナベ経営に依頼しました」と髙木氏。このボールペンは乗船名簿の記入用として船内に置いているが、以前と比べて持ち帰る人が格段に増えた。だが、小野氏によれば、「それも狙いです。ボールペンを持ち帰ったお客さまに、日常生活の中でお使いいただくことで、さんふらわあの宣伝につながっている」とのこと。ちょっとした違いやこだわりが、広告宣伝の効果につながっている。

日常生活で使いやすいノベルティーが充実
日常生活で使いやすいノベルティーが充実

ソフト・ハードを充実させ本物の「おもてなし」を

今や利用者は学生やファミリー層、シニア世代に至るまで、幅広い年代に広がっている。さらに今後は、「九州や関西圏にとどまらず、中部圏、関東圏の需要を掘り起こしていきたい」と小野氏は意気込みを語る。

カジュアルクルーズの拡大を目指す中、同社は2年前から全社的なCS(顧客満足)向上への取り組みを本格化。全社員に接客の訓練を行うほか、船内の誘導担当や電話受け付け担当の社員に対し、専門研修などを通じてサービス向上を図ってきた。

こうした小さな積み重ねは、乗客からの支持に直結する。実際、「何十年ぶりにフェリーを利用したお客さまから『こんなに良くなっている!』と褒めていただくことも多いですよ」と髙木氏は語る。ハードとソフトの両面で改革を進めた結果、フェリーのイメージは確実に変わっている。単なる移動手段を超えるカジュアルクルーズが、国内旅行の新たなトレンドとなる日は遠くないだろう。

中央左が小野氏、同右が髙木氏
中央左が小野氏、同右が髙木氏

PROFILE

  • ㈱フェリーさんふらわあ
  • 所在地 :〒658-0031 兵庫県神戸市 東灘区向洋町東3-21(本部事務所)
  • TEL : 078-857-5470
  • 設立 : 1884年(現商船三井)
  • 資本金 : 1億円
  • 従業員数 : 251名(2017年4月現在)
  • 事業内容 : 一般旅客定期航路事業(カーフェリー運航)
  • http://www.ferry-sunflower.co.jp/


フェリーを単にヒトとモノを運ぶ「交通手段」「物流便」と捉えると、市場の拡大には限界がある。しかし、「船旅」の楽しみを提供する「コト」軸で捉えると、限りなく市場を創造できる。その点でフェリーさんふらわあは、さまざまなサービスを企画し提供することで、ファンを作り、リピーターを増やすことに成功している。
2018年は新船デビューの節目の年。飛行機・電車などの他の交通機関では味わえない「カジュアルクルージング」という魅力によって、ファンを囲い込む絶好のチャンスであるといえよう。
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