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今週のひとこと

なりゆき任せの教育は効果がない。

全社の方針に基づいた教育計画を作成し、

成長目標をクリアするようアドバイスしよう。

☆ 3年以内に離職? 3年以内に活躍!

 大卒の新入社員が入社3年目までに離職してしまう割合は、長年30%台で推移しています。採用環境が厳しい中、3年以内に3人のうち1人が離職するということは、非常に痛手です。
 自社の風土にあった人材を採用することができれば、離職率は改善されるかもしれませんが、そのような人材を確保することは難しいのが実情です。
 では、どうすればよいのか。
 「採用した人材を、どのように育てていくか」です。


 タナベ経営が主催する「幹部候補生スクール」の参加者に対して昨年5月に実施したアンケート調査では、自身の抱える課題について「部下育成」(44.3%)が5年連続の首位でした。また、自部門における一番の課題についても「目標意識に個人差がある」(37.1%)が最多となり、いずれも「人材の活躍」に課題を抱えるという結果でした。

「幹部候補生スクールアンケートレポート2017」の詳細はこちら

 人手が不足する中、一人ひとりが多忙になっているのは事実ですが、いずれにしても、若い人材が活躍できていない職場環境であると言えそうです。そこで、重要になってくるのが人事・採用担当者の役割です。現場の受け入れ体制は整っているか、誰がどのように育成し、成長度合いをチェックするか、など定期的に確認しなければいけません。
 また、新入社員にとって、採用担当者は自分の採用に尽力してくれた身近な存在として「良き相談相手」と考えている人も多いです。採用時や内定期間だけでなく、入社後も現場に任せきりにせず、フォローをしていきましょう。
 人事・採用担当者、現場(教育担当者)、新入社員が一体となって、関わり合うことで、人が活躍する風土がつくられます。


 御社は、若い人材の育成を現場だけに任せていませんか。
 現場の教育担当者は、忙しいことを理由に育成が不十分ではありませんか。
 もうすぐ、今年の新入社員が仲間に加わります。彼・彼女たちが、3年以内に活躍できる環境づくりに注力しましょう。


コンサルティング戦略本部
アソシエイト
小菅 大貴



LTVを最大化する

LTV(Life Time Value = 顧客生涯価値)というマーケティング用語をご存じだろうか。企業やブランドに対して、顧客(1人・1社)が生涯でもたらす累計損益を算出した指標である。

例えば、あるブランドの商品を、顧客が11歳から50歳まで毎年20万円分購入したとすると、生涯売り上げは800万円だ。その顧客獲得の初期コストに10万円、毎年の維持コストに1万円かかるとすれば累計コストは50万円。従って、「生涯売り上げ高800万円-生涯コスト50万円(10万円+40万円)= 750万円」がLTVとなる。LTVは「(顧客単価×リピート回数〈年数〉) -(新規顧客獲得コスト+維持コスト)」の計算式で算出することができる。

LTVは、ファンづくりによって安定的に成長と収益を獲得するための指標である。LTVを最大化するポイントは、まず新規獲得・維持コストを抑えること。次に、ファンになってもらうことで、定期購買などリピート率を上げること。さらに、顧客のニーズと自社のシーズを発見して新たな価値を既存顧客に提案し、顧客単価を上げることである。

リピート年数を最大化する

もう1つ、LTV を最大化する方法がある。継続年数を最大化することである。誤解を恐れずに言うと、60歳の顧客と10歳の顧客ではどちらのLTVが高いだろうか。どちらが、企業やブランドの持続的成長を可能にするだろうか。答えは明白である。

子どもの頃に家族で楽しんだテーマパークのブランドは、何十年も顧客の心の中に存在し、リピートされる。さらにその子どもが大人になって家族をつくり、3世代のファンとなり、さらに次世代へとブランドが受け継がれることになる。

小学生以下は1263万人の巨大マーケット

日本は人口減少、少子高齢化社会である。そうすると、高齢者が有望なマーケットであると考える視点もある。しかし、ここでもう一度考えていただきたいのがLTVの視点である。

いま、小学生以下の人口は1263万人(総務省統計局、2016年4月1日現在)。その両親は20代~40代と、購買意欲の高い層だ。企業やブランドの持続的成長を考えると、「子ども・子育てマーケット」は決して視野から外すことができないドメイン(領域)なのである。


タナベ経営 取締役副社長/
こども・子育てファミリーマーケット成長戦略研究会 アドバイザー

長尾 吉邦 Yoshikuni Nagao
タナベ経営に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、13年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアント先の特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。



ライフスタイルの変化×メリハリ消費

タナベ経営 SPコンサルティング本部 本部長 兼 東京本部長
島田 憲佳 Kazuyoshi Shimada
北海道函館市生まれ。1999年北海道大学理学部卒、同年タナベ経営入社。セールス&プロモーションコンサルティングを通じ、「100年先も一番に選ばれる」ための未来の顧客づくりを中心に、クライアントの顧客づくり、ブランドづくりを支援している。

新たなニーズと消費機会の発生

厚生労働省の「人口動態統計」によると、2016年の出生数(推計)は98万1000人と100万人を切った(【図表1】)。また、50歳までに1度も結婚したことのない生涯未婚率が2015年は男性約23%、女性約14%といずれも5年前に比べ3ポイント超も上昇し、未婚化が進んでいる(国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2017」)。

一方、独身貴族の増加に伴い、甥っ子や姪っ子にプレゼントをする「おじ・おば消費」が増えている。マクロミルの調査(2016年)によると、お年玉をあげる相手で最多だったのは「甥・姪」で、回答割合は54%とダントツだった。

高齢者による「孫消費」も増加が見込まれている。高齢者人口(2016年9月15日現在) は3461万人、総人口に占める割合は27.3%とともに過去最高で、2042年(3878万人)まで増え続けることが予測されている(内閣府「高齢社会白書」2016年版)。また、平均寿命も延び続けており、今後は「ひ孫消費」も増えていくだろう。

3世代消費(祖父母から孫への支出)は年間3.8兆円※に上るといわれる。これに「おじ・おば」や「ひいじじ・ひいばば」(曽祖父母)も加わる。子どもの総数は減っているが、1人当たりに向けられる財布=ポケットの数は10個以上へ増えていく。

子ども・子育て分野はまだまだ成長の余地が大きなマーケットといえるだろう。
※ 三菱総合研究所「数字は語る」2015年8月号

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スマートフォンの普及がインパクトに

そのような中、「子ども・子育て支援法」「女性活躍推進法」の施行により、子育てファミリーのライフスタイルが変化している。共働き世帯の増加と待機児童問題の解消に向け、保育施設や法制度の整備が進みつつあり、「女性活躍マーケット」「保育サービス」などが拡大、異業種からの参入も相次いでいる。

家計を預かるママ(20~30代)の価値観も変わってきた。【図表2】は近年の子育てファミリーマーケットを年代と価値観で「世代」別に分類したものである。現在の子育てママの価値観は、3.0世代から4.0世代へ移行する過渡期の「3.5世代」と位置付けられる。

特に、ここ最近の変化はスマートフォン(以下、スマホ)の普及なしには語れない。2010年に9.7%だったスマホの一般世帯普及率は、2015年は72.0%まで上昇した(総務省「通信利用動向調査」2015年版)。サンケイリビング新聞社「園児とママのデータ2016」によると、子育てママに限れば80%を超えるという。

つまり、今まではパソコンで利用していたサービスが、スマホの登場によりいつでもどこでも利用できるようになった。さらにSNSの活用が浸透したことで、「気になった情報」や「クチコミ」もその場・その時で質問・検索ができるようになった。

「自己表現」や「他者と自分・わが家の比較」が容易となり、子育てママの価値観はより個々に細分化され、「自分らしさ・わが家らしさ=オンリーワン」を追求する"わたしスタイル"が定着してきている。

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「メリハリ消費」を取り込む価値提供戦略

スマホで簡単に価格が比較できる時代となった今、よほどの価格競争力を有しない限り、持続的成長は望めない。このマーケットでは、単なる価格戦略ではなく、「メリハリ消費を取り込む顧客価値」を提供できるか否かが重要である。メリハリ消費とは、日用品などの最寄り品は徹底的に価格比較を行い、安価なものを求める節約生活を行う一方で、自らが価値を認めたものについては思い切った支出を行う消費行動である。

つまり「わたしスタイルの価値観」に見合えば、多少値が高くても売れていくということである。【図表3】は、その攻略モデルを示したものだ。私は3.5世代、または4.0世代のメリハリ消費を取り込む顧客価値へのアプローチとして、大きく4つあると考えている。

1つ目は女性活躍推進に関するもので、主に共働き世帯で必要とされる価値の提供である。2つ目は、日常生活の利便性を高めるもの。ITを活用し、時短や効率化を行ったり、今までになかった新たなサービスを提供するものだ。3つ目は、教育的価値の提供。子どもの成長に資する「コト」「体験」「教育的意義」である。そして、4つ目は幸福価値の提供。なりたい自分、憧れるライフスタイルを実現するものだ。

これらの価値観にアプローチする新商品を開発する、もしくは既存の自社商品・サービスのリブランディングを行い、新たな価値を付加することで、ターゲットである子育てママのメリハリ消費のスイッチボタンを押すことができる。

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子育てママの価値観を捉えたナンバーワン戦略

多様化する価値観やライフスタイルをうまく捉えた商品展開により、子ども・子育てファミリーマーケットで成長している2社の事例を紹介したい。

(1)子育て住宅

千葉県の市原市・袖ヶ浦市エリアで、注文住宅販売棟数ナンバーワン(2013年度)のネクストワンインターナショナルが提供する『ウィズママの家』は、名前の通りママが暮らしやすく、家事・子育てのストレスから解放される家をコンセプトに、住宅1次取得層をうまく取り込んでいる。
特徴的なのは、2週間に1度の「ママ座談会」から出てくるアイデアを、商品開発やイベント集客に活用していることである。この座談会のメンバーは、購入顧客であるオーナーからの紹介者5、6名で組織し、半年間で順次入れ替えを行っている。
当然、ママ座談会の参加者は新規購入見込み顧客である。結果、オーナーからの紹介による契約が全契約者の40%を占めており、業界平均の2倍以上という。ターゲット客の声を聞く仕組みに、見込み顧客獲得も組み込んでいるのだ。
また独自のスマホアプリを開発しており、地域限定のクーポンやクチコミ情報、1日1回のスクラッチくじなどを配信。子育てママに普及したスマホを活用し、中長期的な見込み顧客づくりを行っている。
さらには2015年から保育園の運営にも参画。「ウィズママ保育園」の名称で展開し、より長期的な見込み顧客の創造も視野に入れている。

(2)主婦向け生活情報雑誌

ベネッセコーポレーションの20~30代主婦向け生活情報雑誌『サンキュ!』は、1990年代半ばに創刊され、現在は月間38万部超(一般社団法人日本雑誌協会公表値)を発行している。雑誌不況の中、この5年間で発行部数を1万部も伸ばすなど好調である。
その裏側には、主婦層の価値観とライフスタイルの変化を的確に捉えるマーケティング活動がある。同誌では、1号当たりに活用される読者の声が実に2000名に上る。特筆すべきは、そのうち500名が「非購入者」であることだ。なぜ購入しなかったのかを調査し、次号の企画に生かしているのである。
インターネットが普及し、モノ余り・情報過多である時代。「お金を出してでも欲しい情報、商品、サービスとは何か?」――。その答えを自社の顧客が持っているとは限らない。自社の顧客は当然のこと、残念ながら顧客にならなかった人たちの声も上手に吸い上げ、PDCAを回す仕組みがデザインされている。
ターゲット客の生の声から自社が提供すべき顧客価値を的確に見極め、マーケティング戦略をデザインすることは、子ども・子育てファミリーマーケットに限らず、持続可能な成長戦略の重要な要素の1つである。
ぜひ、新たなニーズと消費機会が発生している子ども・子育てマーケットを、自社の成長のための「ホワイトスペースマーケット」として捉えていただきたい。

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所