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今週のひとこと

トップとの信頼関係を築こう。

もし自分が経営者なら、幹部に何を

望むかを考えて行動しよう。

☆ 求職者の思いに企業はどうこたえるか?

 好業績や人手不足を背景に企業の採用意欲が高まっています。
 2018年3月卒業予定の大卒求人倍率は1.78倍と、ここ数年高い水準で推移し、売り手市場が続いています。ここで企業が気付かなければいけないのは、「求職者が何を求めているか」ということです。
 年収など金銭的な条件も重要ですが、最近の求職者の特徴として、

1.自己実現
2.自我の欲求の達成
3.自分がどれだけ社会貢献できるか

―など、この会社で働くことで自分がいかに幸せになれるか、ということを強く求めています。加えて、福利厚生や就業時間、年間休日、社会保険などの雇用条件も近年は重要な条件に上がります。

 企業が働き方改革やワークライフバランスなどに取り組むなか、求職者は、そのような条件を満たす環境に身を置きたい、そのような環境なら自身のパフォーマンスを十分に発揮できる、という考え方で企業を見極めようとしているのです。
 人材を採用したいと思うのであれば、求職者にとって魅力のある会社にならなければいけません。
 「甘っちょろい奴はいらない」では、この厳しい採用戦線で勝ち残ることは難しいでしょう。


コンサルティング戦略本部
チーフコンサルタント
熊代 一毅

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組織経営を支える幹部人材育成


タナベ経営では、企業経営に関するさまざまな課題解決の支援を行っている。中でも多いのが「幹部人材の育成」の要請だ。創業者から後継経営者への事業承継を見据え、組織経営体制をどう確立していくかに多くの企業が頭を抱えている。これを実践するために不可欠なのが、経営者を支える幹部人材の育成である。

当然だが、経営者は常に会社がどうあるべきか、何をすべきかを考えている。では、「幹部」と呼ばれる人材はどうだろうか。現場を見ていると、社長を支え、会社がどうあるべきかを考えている人は極めて少ないと感じる。

経営者のビジョンを共有し、実践する幹部人材が社内に複数いるかどうかが、組織経営を推進する上で重要なポイントだ。そこで、幹部人材育成という視点から、幹部の目線を上げる(経営的視点で考える)ための取り組みを紹介したい。

A社では、タナベ経営が毎年開催している「経営戦略セミナー」を幹部人材育成のコンテンツとして活用している。まず、セミナーを通して自社を取り巻く経済環境(世界動向、日本動向、業界動向)を把握し、それを踏まえて自社の取るべき基本戦略を決めている。

その基本戦略に沿った戦略実践具体策を、大きく4つの切り口から考える。1つ目はトップマネジメント、2つ目は事業戦略、3つ目は収益構造改革、4つ目が組織戦略である。この4つの切り口から、自社が実践すべき事項を幹部メンバーとディスカッションし、来期にやるべきことを決めているのだ。

最も大切なのは、自社が「目指すべき姿」に近づくためには何をすべきかを幹部メンバーとディスカッションし、共有することではないかと思う。幹部を単なる"部門管理者"ではなく、経営者と共に経営全体を見ることができる人材に育てるためには、より高い目線で「やるべきこと」を共有していく必要がある。

幹部人材のレベルアップを図りたいなら、経営幹部として本来やらねばならないことを明確にし、自社の改善にどう生かすかを考える場を設けることをお勧めする。


■筆者プロフィール
タナベ経営
コンサルティング戦略本部
副本部長
福元 章士 Shoji Fukumoto
経理・財務を専門分野として、建設、住宅、小売、自動車部品製造業、紡績業など幅広い業界でコンサルティングを展開。モットーは「現場で把握する"生きた数字"の意味についての理解を前提に物事を考えること」「1社でも多く経営がうまくいくよう誠心誠意協力すること」。関西学院大学卒。

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開業以来3代のスピード承継
新体制で事業拡大に挑戦へ



親族内での3世代承継を実現

中小企業経営者が、事業承継で最もよく相談する相手は税理士である。だが、その税理士自身が事務所の事業承継に悩んでいるケースは多い。税理士業界でも後継者難による高齢化が進み、事業承継が目下の課題となっている。

そんな中、親族内での3世代承継を実現させた、希少な税理士事務所が京都市内にある。「税理士法人be」だ。同法人は1959年、篠田直也氏が前身の税理士事務所を個人開業したのが始まり。1990年に篠田直明氏(現会長)が承継し、2016年に篠田直大氏が3代目所長に就任。2017年に入って事務所を移転し新たなスタートを切った。

「承継され、承継するという両方を経験しているのは何よりの強み」と話すのは、代表社員税理士の直明氏だ。「息子の代は若い層を狙っていけばいいし、私はシニア層に事業承継などのアドバイスもできる。引き継ぐ方も引き継がれる方も、うまくいくような幅広い指導を行いたい」

現在の目標は「観光に特化した事業の拡大」という。もともと同法人は、全ての業種に対応する総合型事務所として開業した。だが、医業や不動産業など業種特化型の事務所が増え、価格競争も進んだことから、成長分野の観光業に特化することを決めた。観光業界はホテル、旅館や土産物店のみならず、運輸、アグリビジネスなど裾野が広い。また政府は観光立国実現に向けた施策を進めており、市場に伸びしろがある。

「多様な切り口から攻められる観光業界に入り込んでいきたい」(直明氏)。観光地域づくりのかじ取りを担う「日本版DMO」※でネットワークを広げるほか、タナベ経営の「観光・ツーリズムビジネス成長戦略研究会」に参加するなど、観光分野での事業拡大に意欲的だ。直明氏は、「3代目への承継と人材育成がうまくいっているからできること」と断言する。
※ DMOはデスティネーション・マネジメント・オーガニゼーションの略。経営的視点から戦略的に観光地域づくりを行う法人組織

他の単語と結び付いて意味を成すbe 動詞のように、お客さまと関わりながら存在価値を発揮していく――。「税理士法人be」の名前には、そんな意味が込められている(表札は篠田直大所長の手書き)
他の単語と結び付いて意味を成すbe 動詞のように、お客さまと関わりながら存在価値を発揮していく――。「税理士法人be」の名前には、そんな意味が込められている(表札は篠田直大所長の手書き)

人材育成は「貸借対照表」と同じ

3代目へ所長業務を完全移行した後、サポート役に努める直明氏。同氏が応援する姿勢を見せることで、幹部も互いに協力し合いながら自発的に行動するように変わったという。現在、直明氏は定期的に新入社員教育や生産性アップに関する勉強会を開催し、所長の手が回らない業務をフォロー。タナベ経営のセミナーを活用しつつ、先代の教えを引き継ぎ、揺るぎない信念を持って人材育成を行っている。

「社員・お客さまに対する指導理念は貸借対照表と同じ。左側に書く土地・建物などの"目に見えるもの"(資産)は、右側に書く"目に見えないもの"(負債、純資産)で決まっています。つまり社員の行動そのものは見えますが、その思いまでは見えません。私は常に事務所を良くしたい、社員・お客さまを幸せにしたいという思いを抱えている。その思いが目に見える行動に表れ、周りに伝わり、結果、財政状態にも影響してくるのです」(直明氏)

こうした信念から、人材育成においては「数字を見るだけではなく、その裏を見ることが大切」だと直明氏は教えている。そうした人材を育てるには、人を動かすことが必要とも語る。

「人を動かす方法は"脅迫"と"納得"しかありません。厳しい規律などの脅迫だけではなく、納得して動いてもらうことが大事。そのためには、この事務所で働くメリットややりがいを感じてもらう動機付けが大切です」(直明氏)

また、人は自己中心的な生き物と踏まえた上で、個人の人格と組織の人格のギャップを埋め、この2つをできるだけ一致させることが大切だと直明氏は強調する。

事務所の壁面には36匹の鯉が描かれている。「鯉は天国の竜。
事務所の壁面には36匹の鯉が描かれている。「鯉は天国の竜。"登竜門"を越えると、鯉は竜になる。今は鯉の私たちも、いずれは竜に」と篠田直明会長

混沌とした今の時代理念が経営を決める

「会計事務所ビジネスモデル革新研究会」など、タナベ経営のセミナーを受講するたびに「勉強熱心な参加者から得るものが大変多い」と直明氏は言う。従来は所長が受講していたが、今後は社員にも受講させたい考えだ。「ただ、『行ってよかった』ではなく、仕事のネタをつかんでこられるよう指導したい」

新体制で事業拡大に挑む中、社員の個性に寄り添った人材育成を行う一方、顧客の深い思いをくみ取り、行動し、成果という形にしていくための指導を徹底する税理士法人be。直明氏は「税金の業務はほんの入り口で、会計事務所の枠を超えた仕事をしていきたい。beに関わる全ての人に幸せになってほしい」と言い、最後にこう締めくくった。

「社長の思い、つまり理念が経営を決める。混沌とした今の時代、理念を戦略やブランディングに反映させないと、成長はありません」

税理士法人be 代表社員 税理士 会長 篠田 直明氏
税理士法人be
代表社員 税理士 会長 篠田 直明氏

PROFILE

  • 税理士法人be
  • 所在地 : 〒600-8302 京都府京都市 下京区新町通五条下る蛭子町118-1
  • TEL : 075-361-9500
  • 開業 : 1959年
  • 資本金 : 500万円
  • 売上高 : 1億6000万円(2016年12月期)
  • 従業員数 : 16名(2017年6月末現在)
  • 事業内容 : 税務会計業務、コンサルティング業務、事業承継業務、その他業務、国際ビジネスサポート
  • http://www.shinoda-keiei.com/


 タナベ コンサルタントEYE  
大半の税理士・会計事務所は、事務所が立地するエリアの企業や個人を顧客としているため、業種・業態を問わず対応している。そんな中で、税理士法人beは事務所が立地する「京都」の地域特性から、観光業を今後の成長エンジンとして位置付けた。観光振興という国策を考えると、まさに「機を見るに敏」である。 その新たな戦略を支えるのは人材だ。直明氏は質の高い顧客支援に向け、社員への教育投資を惜しまない。一般に税理士・会計事務所業界は離職率が高く、人材育成投資は十分でない。同氏の人材育成に対する信念こそが、2番目の成長エンジンである。

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マネジメントパートナーズ本部
アソシエイト
西野 陽

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所