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今週のひとこと

信用とは、毎日の経営活動結果の積み重ねである。

約束を守る、あらゆるミスをなくす、よい仕事をする。

職場における仕事のやり方すべてが信用につながる。

☆ その仕事、期限はいつですか?

 皆さんは一つひとつの仕事に対して、明確な期限を設定していますか。日々忙しい中、とりあえず目の前の仕事から着手し、締め切り目前には残業ということも少なくないのではないでしょうか。

 期限とは超えてはならないデッドラインです。そして、デッドラインがない仕事は終わらないと言っても過言ではないでしょう。
 例えば、クライアントに提案するのが25日だとすると、提案書の部門責任者への確認は20日まで、直属の上司への確認は18日、自身は16日までに作成する、といった具合です。


 デッドラインを決めて、実行できたのか、できなかったのかを確認することに意味があるのです。そして、できなかった際は、その原因を追究していきます。多忙な時であれば、デッドラインの設定が厳しく自分自身を追い込み過ぎているのかもしれません。デッドラインを上手く設定することも必要でしょう。

 期限を意識して仕事を行うことは、生産性向上にもつながります。
 成果を上げている社員を見ていると必ずと言ってよいほど、期限設定と即時対応を上手く組み合わせて多くの業務をコントロールしています。
 期限をなかなか守れない方、上司から頻繁に仕事の進捗を確認される方は、デッドラインを設定してみてはいかがでしょうか。仕事を積み上げるのではなく、期限から逆算する業務スタイルを確立し、生産性を高めていきましょう。


マネジメントパートナーズ本部
小野 樹

新しい人づくりモデル「企業内大学」に挑戦しよう
生産性と働きがいが向上する「全員活躍」のすすめ


日本の1人当たりの労働生産性(2015年)は、OECD(経済協力開発機構)加盟35カ国中22位。1位のアイルランドの半分以下、3位の米国の6割程度にすぎません。20位イスラエル、21位ギリシャ、そして22位が日本。天然資源が乏しい日本は、人こそ財産であり競争力の源泉――と思っていたのは昔の話。日本企業はこの現実を直視し、人材の働き方、働きがい、そして生産性と真正面から向き合う必要があるのです。

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「働き方改革」は「学び方改革」から始まる

働き方を抜本的に改革して長時間労働の抑制を図る動きが活発化しています。労働時間の短縮は生産性を向上させることが絶対条件になります。ただし、これらは国の政策以前に、民間企業の積極的な取り組みが大切なのです。タナベ経営創業者の田辺昇一も「生産性なくして分配なし」と言っていた通り、生産性を高めない限り社員に分配できません。労働時間を短縮するには、単純なコストカットや時間削減ではなく、生産性の向上が不可欠です。

ところが近年、日本の労働生産性が振るいません。日本生産性本部が発表した2015年のデータでも、OECD 加盟35カ国中22位(7万4315ドル)。1位のアイルランド(15万3963ドル)の半分以下、3位の米国(12万1187ドル)の6割程度にとどまっています。しかもイスラエル、ギリシャより低いのです。国際競争力を高めるためにも、生産性の向上は必須です。

働き方改革と生産性向上を両立させるキーワードは何か。それは「全員活躍経営」に他なりません。イキイキと活躍する社員の数が多いほど、職場環境が整備され、生産性も高まるのです。ある一部の部門や人材で生産性を上げているようでは、組織の生産性は二極化して全体の生産性が上がりません。

私は労働分配率を「プロ化比率」と呼んでいます。随所に主となれる非凡なプロ人材の数が増え、彼ら・彼女らが活躍できる組織へ近づくほどに付加価値が高まり、労働分配率も改善するからです。労働分配率は、人件費を下げれば一時的に改善しますが、それでは持続しません。社員一人一人が学び、成長し、活躍する組織を目標にするのです。現在は、人材やチームに対する考え方が180度変わっているのです。

そのためにも、財産である人材の「学び方」から改革し、各人の潜在能力を引き出し、活躍できるチームをつくる。そうしたチームに投資し、職場環境を整備する戦略が求められています。これが、日本の中堅・中小企業の生産性を高める重要なアプローチなのです。

世界ナンバーワンの総合モーターメーカー・日本電産の永守重信氏は、「機械に設備投資をすると生産性は1.5倍程度になるが、人に投資すると生産性は2倍、3倍に高まる」と言っています。人材投資によって組織生産性は飛躍的に高まります。新たな価値観へ組織全体が向かっていくべき時なのです。

プロ人材を育成するデジタル「アカデミー」の構築で仕組み作り

私たちタナベ経営は、3年前の2014年、日本初のプロフェショナルコンサルタントを育成するビジネススクールをつくろう」を合言葉に、「タナベコンサルタントアカデミー」を構築しました。

プロフェッショナルコンサルタントが育つためのカリキュラムを再整理するとともに、その専門分野ごとに社内講師を選定。約120 のプログラムをデジタル映像に収録し、セキュリティーを確保したクラウド上で専門プロフェッショナルコンサルタントがノウハウを公開しています。タナベ経営のスタッフであれば、年齢、役職、性別、部門の垣根を越え、誰でも、いつでも、どこからでも学べる環境をつくりました。

もちろん、従来のリアルな集合研修、ディスカッション教育、ケーススタディーメソッド教育、ジュニアボードなどは継続しています。しかし、その頻度や内容は大きく変わりました。現在では、クラウドの映像学習とリアルな集合研修、テレビ会議などを組み合わせて、『タナベFCC アカデミー』をデザインしています(FCC:ファーストコールカンパニーの略)。

クラウドで配信する映像は、パソコンだけでなくスマートフォン、タブレットからでも視聴できます。コンサルティングファームとして、北海道から沖縄まで全国展開し、時には海外へ出掛けて仕事をするコンサルタントにとって、非常に効果的なシステムになったと自負しています。

社員の中からタレントを見つけてマネジメントする

従来からある「e ラーニング」(インターネットを使った学習教材)と「FCC アカデミー」との根本的な違いは何か。それは、私たちが提唱する「アカデミーコンセプト」の中心価値に、「タレントマネジメント」を置いていることです。タレントマネジメントとは、「社員が持つタレント(Talent:能力・資質・才能)やスキル、経験値などの情報を人事管理の一部として一元管理することで、組織横断的に人員配置や人材開発を行うこと」です。

社内の優秀な人材、モデル人材、ナレッジ人材を発掘し、タレントマネジメントによって人材のノウハウを見える化する。それをデジタル映像としてプロデュースするとともに、クラウドによる映像学習とリアルな集合研修(社内や派遣など)の両方で組織共有することにより、「学び方改革」から「働き方」「働きがい」を高めて、プロフェッショナル人材を増やし生産性改革へと導く。こうした経営システムを、私たちは「FCC アカデミー経営」と呼んでいます。

こうした学習手法が「経営システム」となり得るのは、FCC を目指すビジョンマネジメント(VM)、タレントマネジメント、人材活躍のプラットフォームなどのインフラとして成長していくからです。

会社の物語は、創業者や社長だけのものではありません。むしろ、現場や社員、組織の中にこそあるのです。社員が組織や仕事を通じて発揮している才能を、いかに見つけ、見える化し、磨き、つなげるのか。アカデミー経営による人材育成は、社内から人材を発掘し、活躍につなげる(長所連結主義)ことが、重要なスキルとなります。

また、建設業や不動産業の専門スキル、店舗オペレーションスキル、工場の機械加工スキルなどノウハウの蓄積にもつながります。e ラーニングとは全く違う概念であり、従来の教育アプローチとも180 度異なる「未見」の取り組みなのです。

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OJT改革 部下が上司を選べる時代

クラウドで配信する映像は、紙のテキストに代わる存在となります。あたかも「東進ハイスクール」(通信衛星やインターネット回線で授業を配信する大学受験予備校)のように、講師が自分だけに語り掛けてくれる1対1 のコミュニケーションとなるため、受講生は授業に集中できます。また、クラウドを介して一人一人の受講状況を一元管理できるので、きめ細やかなフォローが可能になります。

先日、あるクライアントを訪問した際、社長が「社内アカデミーの動画が完成しました」と見せてくれました。動画に登場するスタッフの講義のうまさに感心されたようです。社長いわく、「うちの社内にもこのような才能(タレント)を持った社員がいたのですね」と。社員が講師を務めることが大きなポイントです。自身の動画が社内で公開され、モチベーションが高まることは容易に想像できます。「今後は、FC の加盟店の教育教材としても使いたい」とおっしゃっていました。

デジタルデータの"作品"として登場する機会を与えられた社員は、張り切って自分のスキルを棚卸しし、効果的な伝達の仕方などを工夫するでしょう。そしてアカデミーを人事処遇や評価制度と連動させ、大学のように単位制にすれば、想像以上のスピードと投資コストで企業内大学を設立することができます。

講師が各分野の社内プロフェッショナル人材なので、従来のOJT(On the Job Training)の構造的な欠点であった「部下は上司を選べない」という状況を大きく改善でき、「OJT 改革」を起こすことができます。

さらに企業内大学は、「採用ブランディング」の向上に有効です。ある中堅規模の建設会社は、「当社は中堅企業ながら企業内大学を持っています」と、就職活動を行う学生にブランディングしました。すると、応募者が増え、優秀な学生を採用することができたそうです。企業内大学をブランディングすることで、「人づくりに熱心な会社」という認知度は、間違いなく高まります。深刻な採用難を打開し、新たな人材を採用する有効な手段としても活用できるでしょう。

経営理念や方針の徹底ビジョンマネジメント

社内に大学を設立することは、「ビジョンマネジメント」においても効果を発揮します。私自身、トップビジョンや経営方針、コンプライアンス強化を図るコンテンツ、人事制度変更のアナウンスなどをクラウド上に映像で公開し、社内ビジョンを調整するインフラとして活用しています。

私が推奨しているのは、創業者の思いやビジョンをデジタルで残すこと。私たちも創業者・田辺昇一の講演の映像を全社員が自由に視聴し、触れることができます。創業者の思いを社内に残し、創業の精神、意志を語り継げるマネジメントです。

ビジョンマネジメントとして活用できる臨床事例は、大きく5 つあります。まず1 つ目は、「ビジョン」「経営方針」です。トップや部門長によるこれらの内容を、分かりやすく解説したメッセージを収録して社内アカデミーのクラウドへアップします。2 つ目は、「経営管理機能コンテンツ」です。例えば、人事制度など深い理解が必要な制度について、人事部長や総務部長が解説する映像コンテンツです。

3つ目は、「組織経営コンテンツ」。全社の各部門が、何をしている部署なのかを知らしめるものです。組織が成長すればするほど、社員が現場を知る機会も少なくなります。結果、コミュニケーション不足が発生します。

4つ目は「商品コンテンツ」です。重点ブランド商品のコンセプトや、新商品プロモーションなどをアップすることで、インナーブランディング価値が創出されます。

そして5つ目は「創業者やトップの思い」をテーマごとに残しておくことです。誰が、どのタイミングで入社しても、同じレベルで情報を共有化できます。

一人一人を早期に活躍させるためには、「新人だから」「若いから」「中途社員だから」と区別せず、自主性を重んじた教育機会を平等に与えるべきなのです。

日本の企業家やリーダーがアカデミーを設立する意義

幕末の私塾「松下村塾」は、吉田松陰が開塾者の叔父(玉木文之進)から引き継ぎ、明治期の日本を主導した人材を多く輩出しました。松下幸之助も「松下政経塾」を開塾し、政治と経済を通じて理想の日本をつくる理念のもと、多くの政治家、経済人を輩出しています。海外では、GE(ゼネラル・エレクトリック)が「世界初の企業内ビジネススクール」として、1956年に米国・ニューヨーク州クロトンビルに「リーダーシップ開発研究所」を設立した例が知られています。GE は年間10億ドル規模の資金を人材育成に投じ、経営トップは総時間の3分の1 を人材育成に費やしているそうです。

また前述した日本電産の永守氏は、2016年に「グローバル経営大学校」を開講しました。創業者の精神や経営理念の理解・浸透、経営者として必要な経営観や考え方・知識を磨き上げることを通じ、経営者を育成することが目的です。

「FCC アカデミー」も、各社のアカデミー同士で学び方改革を切磋琢磨できるネットワークを整備し、「ファーストコールカンパニー宣言」を目指す企業がチームや人材の生産性向上に取り組んでいく。そんな社会的活動に発展することを願っています。そのようなプロフェッショナル人材をつなぐインフラ的価値が、「FCC アカデミー」の意義、使命であると考えています。

デジタル時代になり、企業内大学を設立することが中堅・中小企業でも容易になりました。だからこそ、自社の"松下村塾"を目指し、学び方改革によって人材の能力を高め、生産性改革を進め、人材が活躍する組織やチームを構築する絶好の機会といえます。

企業内大学「FCC アカデミー」を創りましょう。人材不足・採用難の時代、大切な人材育成を公的な機関、学校だけに任せる経営は終わったのです。

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タナベ経営 代表取締役社長
若松孝彦
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所