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今週のひとこと

先輩社員が新入社員を指導・アドバイス

する習慣を根付かせよう。そして、新入

社員の成果が上がったら、先輩も評価しよう。

☆ 新入社員の受け入れは若手社員の成長のチャンス

 この時期、若い社員の皆さんは後輩が入社してくることへの喜びと同時に、不安も感じていることでしょう。これまではチームの中で最も若く、周りの先輩や上司に教えてもらう立場であったのに対し、はじめて後輩が入ってくることで、教える立場に変わることがプレッシャーや不安につながっているのかもしれません。

 新入社員を受け入れることだけに意識が集中してしまいがちですが、立場が変わることで不安を感じている若いメンバーのことも目をかけ、悩みごとや困っていることを把握できるようなコミュニケーションをとっていきましょう。

 筆者に初めて後輩ができたとき、当時の上司から「新人に伝えて欲しい内容」と「私への期待の言葉」を具体的に聞くことができました。その結果、どうしたらもっとわかりやすく教えることができるか、教えようとしていることに間違いがないかについて考え、事前に勉強もしました。そうすることで責任感が芽生え、後輩が入ってくるという環境の変化が、自分自身の成長へ繋がったことを今でも覚えています。

 新入社員の入社と成長を、若いメンバーの成長のチャンスへとつなげていきましょう。

マネジメントパートナーズ本部
芝原 宏典

「経営の見える化」×「IT」で現場力を高める

タナベ経営が主宰する「経営の見える化研究会」では、「経営の見える化」とは、単に見えないものを見えるようにすることではなく、「役員から従業員までが取り組むべきさまざまな課題を顕在化し、当事者が自主的・自発的に解決に導くことがその本質的価値である」と定義している。そして、その課題解決の鍵を握るのは人材であり、目指すべき姿は「自律型企業風土」をつくり上げることに他ならない。

その自律型企業風土づくりのために、取り組むべき経営の見える化の主な項目は次の9つ。「理念」「ビジョン」「年度方針・計画」「業績」「財務・収益構造」「顧客」「自社(自社の強みが顧客から見える)」「人材(人材成長)」「知恵」だ。役員および従業員が、9つの項目の見える化を通じて、自主的・自発的に改善行動を起こす仕組みをつくり上げ、それを風土として根付かせることが求められる。

これまで経営の見える化研究会では、さまざまな業種や業態の企業視察を実施してきた。その中から、ITを活用することによって、あらゆる面で効果を高めている事例を紹介したい。

ある老舗旅館A社では、「仕事を効率化し、お客さまとの接点を増やす」ために、ITによって顧客行動の見える化に取り組んでいる。A社は顧客満足度を高めるために、ハードの清潔さや快適さを追求するのはもちろんのこと、従業員による気配り・心配りの顧客接点が大事であると考えており、顧客接点を増やすためにITによる顧客行動の見える化を推進した。

例えば、各宿泊部屋の出入り口にセンサーを設置することで、宿泊客の動きを察知。食事会場へ着座してからの待ち時間の短縮や、チェックアウト時に部屋ごとの担当者が見送りをしたりと、顧客行動を先回りした対応につなげている。これは無駄な待機時間の削減にもなるのである。

A社の顧客接点を増やす取り組みは、タナベ経営が発信している「100年先も一番に選ばれるファーストコールカンパニー宣言」の顧客価値を高める活動そのものである。そして、ITの活用によって顧客行動の見える化をすることは、現場の従業員の業務効率化につながり、現場力も高まるのである。

「経営の見える」×「IT」で、現場力を高めていただきたい。


タナベ経営 取締役/
経営の見える化研究会 アドバイザー

仲宗根 政則 Masanori Nakasone
1990年タナベ経営入社。2014年取締役就任。中小企業から上場企業まで数百社のコンサルティング・教育実績を持つ。特に事業戦略、収益構造改革、組織・経営システム革新に関するコンサルティングや次世代幹部人材育成で実績多数。著書『未来志向型経営』(ダイヤモンド社)。著書に『問題解決の5S』(ダイヤモンド社)ほか。

実行力強化のための見える化

タナベ経営 コンサルティング戦略本部 部長 チーフコンサルタント
経営の見える化研究会 リーダー

武政 大貴 Hirotaka Takemasa
中央大学法学部卒業。財務省関東財務局で金融機関の監督業務を経験後、企業経営に従事。タナベ経営入社後は、主に中期経営計画策定、企業再生・再建支援を行い、企業の収益体質改善に寄与。また5S・VM活動支援では、財務の視点による体質改善を行っている。現実・現場・現品主義を信条とする行動派コンサルタント。

自律型組織を目指して

書籍やWebなどさまざまな場面において、「見える化」という言葉を目にする機会が増えてきた。しかし、言葉自体に触れたことはあるが、その意味するところを正しく理解し、活用できている企業は少ないのではないだろうか。見える化とは、「問題点を顕在化し課題解決する手法」である。あくまで「手法」であり、活用するための「目的」があることが大前提である。

では、目的とは何であろうか。究極の目的は、この手法を活用して一人一人が考え、行動する「自律型組織」を構築することである。環境変化のスピードが加速する現在、良き戦略を描いても実行しなければ絵に描いた餅である。この「実行力」の源泉が自律型組織である。

他社にはない競争優位性のある商品・サービスを世に出しても、いつかは資本力で勝る大企業に模倣され、優位性は時間とともに低減していく。しかし、一人一人が考え行動する自律型組織は、大企業がまねをしようにも、すぐにはまねできない強烈な参入障壁になり得るのである。いわば、どんな環境にも負けない強い企業体質があるということだ。

企業固有の目的を持つ

そして、この究極の目的から企業ごとにビジョン、戦略と連動させ、固有・個別の目的を設定していく。例えば、受注産業であり、どうしても季節的な受注変動に対応しなければならない企業特性がある場合、各人の力量(スキル)、標準作業・標準時間を見える化し、計画的育成を図る。期間工やパート・アルバイトでもすぐに業務をこなすことができるようにするなどの、いわば「誰でも化」の実現を目的として見える化に向き合う、などである。

他には、下請けメーカーであり、製品自体は同業他社からも一定の品質で提供されており、日々現場においては納期対応や価格対応など熾烈な競争になっている場合。工場自体の5Sを強化することで魅力ある工場を作り出し、得意先の担当者などを通常監査とは別に自社工場へ積極的に招致してみる。優れた作業環境はもちろんのこと、働く一人一人の自律的な姿を見せる(魅せる)ことで新たな提供価値を生み出す、いわば「魅せる化」ともいうべき事例がある。

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実行力強化に向けた見える化の8つの着眼

「自律型組織」を究極の目的とし、企業固有の目的を設定して活動を推進していくことになる。タナベ経営では、見える化を大きく次の8つのテーマに分類し、考え方を整理している。(【図表】参照)

1.理念の見える化

理念は経営目的であり、経営のバックボーン(背骨)に当たる最上位概念である。単に掲示し唱和することが目的ではなく、現場で実践してこそ意味がある。よって、理念と現場をつなぐミッションマネジメント体系を見える化し、業務マニュアルなどを作成して日常業務へ落とし込むことが重要である。

2.ビジョン・方針・計画の見える化

単に理念を掲示するだけでなく、ビジョン・方針・目標・計画の全てを連鎖させ、見えるようにする。また、日々の行動を進捗管理することで、全社員のベクトルと熱量を合わせていく。経営指標と現場の業務プロセス指標を関連付け、ボードに掲示し、できるだけシンプルにマネジメントしていくことができる。

3.業績の見える化

業績は過去に打った手の結果であり、未来を保証するものではない。よって、先行管理が重要である。真の目標としての先行累計差額を見える化し、差額に対しての情報管理と先行行動管理をボード上でマネジメントすることで、効果的に未来を創り出すことができる。

4.財務・収益構造の見える化

見える化活動の最終的な成果は、定量的に財務諸表へ反映される。全てオープンにしてもよいが、階層別に責任を明確にし、見るべき(伝えるべき)数値と管理指標を定めて、原因分析と対策立案を行うとよい。

5.顧客の見える化

ここでいう見える化すべき顧客情報は、単なる顧客属性というだけではなく、顧客の声であることが重要だ。顕在化したニーズだけでなく、潜在化したニーズも現場のヒアリングやアンケート調査によって収集していくことが重要である。

6.自社の見える化(強みの見える化)

顧客の見える化とは逆に、顧客から見た自社の強み、固有技術は何かを見える化することである。技術マップなどで自社の強みを洗い出し、項目5 の顧客の見える化と掛け合わせることで、初めて進むべき戦略が明確になるであろう。

7.人材の見える化

あるべき人材像を明確にし、スキルマップにより力量を評価することで、乗り越えるべきギャップ(不足スキル)が明確になる。そして、育成ステップを定めて計画的に育成する。企業は人なり、実行力ある企業の大前提として、育成が重要である。人材育成は、見える化手法と大いに親和性があるところである。

8.ナレッジの見える化

会社が求める標準作業・標準時間を明確にし、バラつきなく全員が作業できるようにする。いわば先人の知恵(ナレッジ)を会社の財産として目録化することが必要だ。そのためにマニュアルを作成するが、作ること自体が目的なのではなく、日々の改善を常にアップデートする「運用ルール」も併せて設定することが重要となってくる。また、書面でのマニュアルだけでなく、特に職人的技能を要する作業については、ビデオマニュアルを活用することも非常に有効だ。

5 S / V M 活動

生産性向上のための見える化

見える化手法は、シンプルなマネジメント手法である。この手法を活用することで、生産性向上を図り、働き方を変えることができる。一例として会議を挙げる。例えば、営業戦略を検討するに当たって、何十枚にも及ぶ業績管理資料を作り込み、長時間会議室にこもって会議をする。会議自体も各部署が時間をかけて作った資料を説明することに多くの時間を割き、結果として今後将来どのように戦っていくかの意思決定の時間が取れていない、といったケースはよく聞く。

これは会議生産性が悪い例である。ここでの生産性とは、少ないインプット(投入:会議であれば時間)で多くのアウトプット(産出:会議であれば未来を決める意思決定)を出すことである。見える化手法を活用し、常に行動・問題点・要因が見えている状況をボードの前で作り出す中で、立ちミーティングなどのわずかな時間を活用し、積極的なコミュニケーションで管理サイクルを増やして、意思決定に多くの時間を割くことで生産性を高めていくことができるのだ(会議時間の削減と効果的意思決定の向上)。

見える化の未来

見える化はあくまで手法であり、生かすも殺すも人次第である。前述の通りのシンプルなマネジメント手法とはいえ、得てして表の作成・更新の負荷に追われ、作成することが目的となり本来的意味での活用に至っていないケースが散見される。意思決定と行動に時間を割くべきであるのに、資料の作成・更新に稼働時間の多くが割かれてしまうからである。

そこで、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の積極的活用がこの問題への解決策として有効だ。センサーを活用して動作分析を自動化したり、過去の販売データから需要予測をAI に行わせるなど、中堅・中小企業でもすでに導入・活用している企業がある。

手書き集計、手書き作成のアナログ的作業から一部IoT、AI を活用したデジタル的作業への移行が、見える化の未来の姿だ。当然、判断・決断、行動の主役は人間であり、全てがデジタル化されるとは思わない。管理ボードの前での積極的コミュニケーションなどアナログ的な強みは損なうべきではない。目的に照らしたアナログとデジタルのバランスを図った効率的な運用こそが、この手法をさらに進化させるヒントとなるのではないだろうか。

また、結果として付加価値の高い業務に人的経営資源を効果的に投入することができ、働き方や生産性が変わってくると思われる。手法の活用目的を常に見失わず、デジタルテクノロジーをバランスよく取り入れていくことで、さらなる成果直結型のマネジメント手法として進化させていくことができるであろう。

私は常々、「戦略は二流でも、実行力が一流の企業が生き残る」とお伝えしている。見える化手法を活用し、「実行力」ある企業(自律型組織)となることで、この目まぐるしい企業環境において生き残ることはもちろん、目的別の見える化、そしてデジタルテクノロジーの活用による進化型の見える化を推進することで、さらなる突き抜けた成長ができると信じてやまない。

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所