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今週のひとこと

部下との信頼関係を築こう。

大切なのは、上司が部下から信頼を得る

ことと、部下が「上司から信頼されている」

と感じていることである。

☆ 「いまどきの新入社員は何を考えているのか分からない」と感じていませんか?

 まもなく今年の新入社員が入社してきます。「いまどきの若い世代は何を考えているのか分からない」。このように感じていたり、周囲で耳にする機会が多かったりするかもしれません。
 今回は、考え方だけではなく日常の接し方も含め、いまどきの新入社員たちと、どのように向き合っていけばよいのかを、2つの視点でご紹介します。

 まずは、「社内でのコミュニケーション」です。
 新入社員が入社して、彼・彼女たちが最も気にすることは上司とのコミュニケーション。いわゆる、コミュニケーションギャップです。ただ業務を頼むだけ、ただできないことを叱るだけ、これでは円滑な関係を構築することはできないでしょう。仕事の目的をきちんと説明しているか、日頃の悩みを聞いているか、アフターフォローができているか...。
 そうした小さな積み重ねでコミュニケーションを密にし、新入社員が安心して仕事に取り組むことのできる環境をつくりましょう。

 そして、次に大切なことは「活躍できる場の提供」です。些細なことでも、新入社員が喜びを感じる場を与えてあげることです。社内・外での役割のなかで、責任感や達成感を味わえる場を入社1年目から与えることができるかで、その後の能力の発揮度合いや、成長スピードが、まったく違ってくると言っても過言ではありません。
 「1年目だから、まだ早い」「この仕事はまだ難しいだろう」。
 そう考える前に、まずはやらせてみることに意味があるのです。
 仕事に取り組む様子を見て、できないことをフォローし、教えていくことが新入社員の早期活躍、そして、いま世の中でうたわれている生産性向上にも繋がってくるでしょう。

コンサルティング戦略本部
アソシエイト
井上 真里奈

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部下育成はまず「承認」から


毎年、タナベ経営は「幹部候補生スクール」に参加をいただいた経営幹部を対象に、アンケート調査を実施している。2017年は769件の有効回答を得た。

今抱えている一番の課題・悩みについて聞いたところ(2つまで選択可)、「部下育成」が44.3%と断トツであった。これは前回調査よりも約3ポイント増加している。

若手の考え方が多様化し、部下育成の在り方そのものが変わってきているのは言うまでもないが、教え方や部下育成の方法が分からないという幹部も少なくない。その多くが、上司の背中を見て仕事を覚えてきた人たちだからだ。つまり、教えられた経験が非常に少ないのである。

だから、自分たちが教えられたことのまねをして失敗する。部下育成という環境変化に自分自身が変化し切れていないのである。

入社3年で3分の1の社員が退職するという現実と向き合うには、どうしたらよいか。3年以内に退職していく人を見てみると、アルバイトを辞める感覚で退職しており、また辞める理由がほとんどないことも多い。これまでに叱られたことがほとんどなく育っているため、叱られることに慣れていない人たちは、叱られるとびっくりして拒絶してしまう。

そうなってしまっては人間関係を構築できず、コミュニケーションが取りづらくなる。

上司はどうすればよいか。まずは、部下を認知することが大切である。若手社員たちは、SNSなどで「いいね」と承認されることに喜びを感じる環境で育っている。普段の会社生活の中で、「いいね」=認知することを繰り返し、会社勤めを続けていくための理由を与え続けることが、現在の部下育成にとって最も必要なことである。部下たちは承認されることにより大きな力を発揮するため、小さな達成感をたくさん経験させることが肝要である。

あなたは、この「いいね」に抵抗感を持っていないだろうか。

「いいね」と言うことから始めよう。そして、承認の欲求をうまく刺激しながら、仕事の楽しさ、難しさを教えていただきたい。


福原 啓祐  Keisuke Fukuhara

■筆者プロフィール
タナベ経営コンサルティング戦略本部
副本部長
福原 啓祐  Keisuke Fukuhara
人事、営業、財務戦略のコンサルティングを中心に、上場企業から中小企業まで幅広い臨床経験を持つ。また、企業再建の経験も豊富で、万年赤字のホテルを1年で黒字化。破綻懸念のあった企業を正常化するなど、企業変革の実績も多数。

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「リーダーズコラボ」で人材育成モノづくりの技術を明日へつなぐ

コンテナ船の船倉のふた部分に当たるハッチカバーの生産量は日本一(左上・右) リーダーズコラボレーションの様子。分かりやすい動画にまとめ、後世へ技術・ノウハウを伝承する(左下)
コンテナ船の船倉のふた部分に当たるハッチカバーの生産量は日本一(左上・右)
リーダーズコラボレーションの様子。分かりやすい動画にまとめ、後世へ技術・ノウハウを伝承する(左下)


ハッチカバー生産日本一

愛媛県と広島県を結ぶ瀬戸内海に、7つの有人島と18の無人島が浮かぶ。これらの離島からなる上島町(愛媛県越智郡)に日本一企業がある。1957年創業の「イワキテック」だ。

同社は地場産業として造船関連製品や大型クレーンなど鋼構造物を受託製造する。しまなみ海道沿いの愛媛県岩城島、広島県因島と向島に工場を有し、設計から製作、据え付け、アフターサービスまで一貫体制を確立している。

主な製造品目は、船倉のふた部分である「ハッチカバー」、自動車運搬船の可動床「リフタブルカーデッキ」、自動車を積み降ろすためのランプウエイ(傾斜路)「Ro-Ro(Rollon - Roll off)装置」など。特にコンテナ船向けのハッチカバーは生産量日本一を誇る。

また、重厚長大産業における"3K"(きつい・汚い・危険)のイメージを払拭すべく、安全・清潔な職場づくりに努めるとともに、近年では地域の同業種企業と協力し、工場や製造現場を一般開放して見学してもらう機会を設けて好評を博した。

「『モノづくりに徹する』をモットーに励み、昨年(2016年)、創業60年を迎えることができました。これを機に『地域と共生し地域の活性化に貢献する100年企業となる』を新たにスローガンとして掲げ、ステークホルダーから必要とされ続ける企業を目指したい」

同社代表取締役社長の山本一郎氏は語る。

次世代のリーダー育成に挑む

「当社の社員は勤勉で真面目。突貫工事などの際の団結力や遂行力は誇れる部分ですが、転勤や職場変更がほとんどない社風だったからか、変化を避けたがる傾向がある」と山本氏。タナベ経営の性格能力判定でも、社員の多くが「受け身型」と判定された。

次世代リーダーの育成に課題を感じていた山本氏は、『実践リーダーガイド』(タナベ経営)を管理監督者に配り、感想を提出させ、さらに、タナベ経営と相談して「中堅リーダー革新セミナー」に管理監督者全員を参加させた。

その後、ジュニアボードの提案を受け、その趣旨に賛同した山本氏は「リーダーズコラボレーション」(以降、リーダーズコラボ)というオリジナルネームを冠して実施に踏み切った。

リーダーズコラボの中心は、各工場や部署で活躍する40代前後の職長クラス。第1期は経営陣から課題を聞き取らせ、メンバーに改善策を提案させた。「人事評価への不満が判明したので、スキルマップを自分たちで作成してもらうことで評価の難しさを理解させ、伸ばすべきスキルや成長幅を明確にしました」と山本氏は振り返る。

第2期の現在は「技術の伝承」をテーマに、今後イワキテックの要となる現場の技術・ノウハウを収録した動画作成などに取り組んでいる。「新入社員や外国人スタッフも一目で分かるクオリティーを目指しています。メンバーは日々の業務と並行しながらよくやっています」(山本氏)

イワキテック 代表取締役社長 山本 一郎氏
イワキテック 代表取締役社長 山本 一郎氏

チャレンジを称賛する社風へ

こうしたリーダー育成の成果は、如実に表れているという。

「『社員自らが悩み、考える』『全社的な視点から物事を判断する』『仕事に興味を持たせる』については、非常に手応えを感じます。積極的に社員が部門や工場の壁を越えて、交流を図るようになりました」と山本氏はうれしそうに笑う。

会議などでも、従来は同氏が一方的に話すことが多かったが、「こうしたいのですが社長の考えを聞かせてください」「こんな選択肢がありますが、どう判断すればよいでしょう」と社員が発言するシーンも増えたそうだ。

「チャレンジすることが称賛される社風にしたい。そのために前向きな失敗はとがめません。外国人就労者も増えていく中、日本人技術者には技術だけでなく、戦略リーダーとしてプラスアルファの付加価値を身に付けてほしい」(山本氏)

山本氏は「今の技術は必ず次につながる」と明言する。その一翼を担うのは、リーダーシップやチャレンジ精神を身に付けて成長した、リーダーズコラボのメンバーであることは間違いない。

PROFILE

  • イワキテック㈱
  • 所在地 :〒794-2410 愛媛県越智郡上島町岩城6017
  • TEL : 0897-75-2121(代)
  • 創業: 1957年
  • 資本金 : 8580万円
  • 売上高 : 77億4000万円(2017年3月期)
  • 従業員数 : 650名(構内専属協力会社や外国人実習生を含む、2017年6月現在)
  • 事業内容 : 舶用関連製品ならびに陸上機械関連製品の製造、建設業
  • http://www.iwakitec.co.jp/

 タナベ コンサルタントEYE  
造船業界を取り巻く市況の変化、ベテラン社員の定年退職や人手不足に伴う外国人実習生の採用拡大など、経営環境が大きく変化していく中、「高めようものづくり力」をモットーに、現場力の強化と技術・技能教育の強化に力を入れるイワキテック。中でもリーダーズコラボの取り組みを通じ、次世代を担う中核社員らは、全社的な視点で各部門と連携しながら会社の課題を判断し、推進する力を身に付けるなど、着実な成長を遂げている。
他社にない熟練の技術、誠実で勤勉な人材という強みを生かしながら、さらに"次世代の力"を育み、未来へのチャレンジを進める同社の今後に期待したい。

コンサルティング戦略本部 部長 チーフコンサルタント 稲岡 真一
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