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今週のひとこと

経営者の人に対するポリシーの

ないところに、人材は育たない。

☆ 新卒者は企業のどこに魅力を感じるのか?

 昨今、どの業界においても経営者から人手不足の声を耳にしますが、採用活動を行っているが良い人材が集まらない、応募はあるものの求める人材が少ない、入社してもすぐに辞めてしまうなど、その課題は様々です。

 毎年一定数の新卒採用ができているものの、入社3年までの退職率が5割以上というA社のトップに話を伺うと、「わが社は計画どおりの採用ができている。退職者が多いのは仕方なく、残った社員に期待している」と、新卒社員の離職について割り切って考えている様子でした。
 そのような考え方もあるかもしれませんが、大卒の新卒社員の入社3年目までに離職する確率は3割以上と言われて久しいですが、A社は、その数字を大きく上回っているのです。
 仮に、入社3年目で離職する場合、支払った給与をはじめ、採用や教育にかかった費用も考えると、少なくとも一人あたり1,000万円は超えるでしょう。この現実と今一度しっかりと向き合い、離職率の低減に取り組まなければなりません。

 その有効な方法のひとつに教育体系の整備があります。学生から見れば、自らがスキルアップできる環境や制度が整っている企業に魅力を感じ「この会社なら自分は成長できる」と、入社を決めるケースは少なくありません。自社の採用戦略を策定する際には教育体系を見直し、それを学生に対してしっかりとアピールする、ということを実行してみてはいかがでしょうか。

経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント
井上 禎也

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カタカナに踊らされずに確かなマーケティングを


コンテンツマーケティング、マーケティングオートメーション、SEO――デジタル化が進むにつれ、マーケティングに関する手法もあふれている。果たして自社では、どんなマーケティング手法を活用しているであろうか。

マーケティング領域は「売れる仕組みづくり」であるが、各施策が分断しているケースをよく見かける。担当領域や販売ルートが違う、専属の部署がないなど理由はさまざまである。「メール発信のみ」「名刺情報が活用されていない」「動画を見てもらえていない」「SNS発信の商品が実際の店頭に並んでいない」といった悩みに接する機会は多い。

「SNSは流行りだから早く導入しなくては」といった戦略なき実行が根本原因と考えられる。かつて、インターネット黎明期に数々の企業ホームページが立ち上がった際に「デザインが粗雑で内容が不明瞭」なものが散見していたのと同様のケースであろう。

片や、過度な広告や販促を実施しなくても、またホームページに頼らなくても成功している企業がある。少人数で効果的にマーケティングを展開している企業もある。ブランディングがしっかりしているから、と言えばそれまでだが、確かなマーケティング計画とそれに連動した施策が実行されているからであると推察できる。

昨今、ネット閲覧時間の増加が顕著であり、マーケティングの一環としてのインターネット関連手法は外せない状況にある。ネットマーケティングは、B to C 企業を対象にした視点が目立つものの、B to B 企業においても喫緊の課題であることは否めない。マーケティングは企業の中心活動に移行しつつあり、どうやって自社を選んでもらうかを顧客視点で検討した上で計画し、実行レベルまでしっかり運営しなくてはならない。

デジタル化のおかげでさまざまなマーケティング手法がすぐに実行できる環境にある。情報があふれ、売れにくい時代においては、活用する側が「情報に埋もれないようにする」という確かな考えと実行力を持つことが問われている。


脇阪 佳人  Yoshihito Wakisaka

■筆者プロフィール
タナベ経営SPコンサルティング本部
副本部長 兼 商品部長
脇阪 佳人  Yoshihito Wakisaka
中堅・中小企業の営業および販促プロモーション支援を中心とし、売り上げ拡大・ブランド力向上に貢献。SFA・CRM構築などの顧客管理や、実践的な商品開発など自身の幅広い経歴から、製販一貫のセールスプロモーション企画立案・展開を得意とする。

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「角弘大学」で人づくりに注力
100年先も発展し続ける

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創業134年の多角経営企業原点は"モノづくり"にあり

「建設から暮らしまで」をスローガンに、地域に根差しながら多角的に事業を展開する角弘。創業は1883年と古く、旧津軽藩家老が有志を集い、共同出資で「弘前農具会社」を設立したのが始まりである。

粗悪な鉄製品が多かった創業当時、「良い商品を少しでも安く供給し、地元・弘前の農家に使ってもらいたい」との思いから、地元で鉄を調達して農機具を製造した。このモノづくりこそ、角弘の事業の原点となっている。

多角経営の「角」と弘前の「弘」が社名の由来。その名の通り、時代の変化に柔軟に対応しながら、その都度必要とされるものを手掛けて成長を遂げてきた。今では建設資材の製造加工や情報処理関連、店舗・住宅設計施工・リフォーム、燃料の仕入れ・販売などへ事業を拡大。グループ9社、1300名の社員を擁し、東北5県に幅広いネットワークを持つまでに成長している。

新事業へのあくなき挑戦

「新規事業への挑戦はいつの時代も必要」と語るのは、代表取締役社長の小田桐健藏氏。その代表例が2000年に開始した、健康・美容商品などに使われる機能性素材「プロテオグリカン」(以降、PG)の研究開発だ。

PGは天然のサケから抽出され、皮膚・軟骨再生、保湿や美白などに効果があるとされる。角弘は弘前大学とPGを量産する抽出方法を研究し、後に文部科学省産学官連携促進事業のPG開発プロジェクトにも参画している。

PGは角弘にとって全くの新規事業であったため、研究に対し、社内から反対の声も上がっていた。なかなか結果が出ず苦戦したが、旗振り役だった小田桐氏は「いつか大化けする」と信じ、諦めなかった。長年の粘り強い研究開発の努力が実り、12年目にしてヒット商品となるPG入りのりんご酢を誕生させた。まさに、モノづくりへの執念が実を結んだ結果といえよう。

現在はPG製品専門店を10店舗展開するほか、大手化粧品・健康食品メーカーに原料を供給している。また、PGの製造過程で発生する廃液から作る農業用資材「カルリン」を製造・販売。無農薬栽培の「奇跡のリンゴ」で知られる農家、木村秋則氏の助言を受けて製品化し、全国に展開している。

角弘 代表取締役社長 小田桐 健藏氏
角弘 代表取締役社長 小田桐 健藏氏

役割・ポジションを与え若いうちに一人前に育てる

角弘とタナベ経営の付き合いは長い。11代目社長の後藤栄一郎氏が、タナベ経営創業者・田辺昇一の考えに共鳴し、経営者の勉強会「イーグルクラブ」に参加したことがきっかけだ。以来、20年以上にわたり社員教育をタナベに依頼してきた。新入社員教育から戦略リーダースクール、幹部候補生スクールまで、受講対象は全方位にわたる。

タナベ経営のセミナーやスクールは「欲しい情報が確実に得られるし、社員はものの考え方を養える」と小田桐氏。外部の協力を得て社内研修を充実する一方、社内では役員が各支店を担当し、本社の方針・考え方を現場へ徹底して落とし込み、社内の統制を図っている。

小田桐氏は「年齢に応じた立場を与え、早く一人前になれるように育てる」という考えのもと、従来50代が大半を占めていた支店長クラスにも積極的に30代を登用してきた。その取り組みは、小田桐氏自身が30代で最も大きな弘前支店の支店長を任された経験に基づいている。「若いうちの経験は、個人と会社の両方にとって、後々大きな財産になる」と、身をもって実感してきた。

現在は、社内大学「角弘大学」の開校準備の真っ最中だ。大学ではリーダーシップなどのカリキュラムを階層・職種別に提供していく。

小田桐氏は「体系的なカリキュラムを通じて社員の知識レベルのばらつきをなくし、人材のレベルアップを図りたい」と言う。社員が知識や技術を身に付けて、じっくりと目の前の仕事に取り組み、会社全体として成長を遂げる。それが、角弘の目指す人材育成の姿だ。

社会のために使ってこそお金の価値がある

「銀行にも企業にも言えることですが、お金は自社にため込むのではなく、社会のために使ってこそ価値がある」。そう語る小田桐氏は、企業を「社会の公器」と捉えており、必要以上に資金を自社にため込まず、今後も新商品や新規事業に積極的に挑むという。投資するためには企業体力はもちろんだが、新しいことにチャレンジできる人材が不可欠。その意味でも角弘大学に寄せる期待は高い。

また、関連会社、関連事業の拡大にも意欲的だ。事業展開エリアは東北に限らず、全国、海外も視野に入れている。各事業の相乗効果の発揮も、これからの課題という。100年先、200年先も勢いよく発展し続ける理想の姿に向けて、道筋は今、定まったばかりだ。

PROFILE

  • ㈱角弘
  • 所在地 :〒030-8543 青森県青森市新町2-5-1
  • TEL : 017-723-2222(代)
  • 創業: 1883年
  • 資本金 : 3億7800万円
  • 売上高 : 300億円(2017年3月期)
  • 従業員数 : 330名(2017年3月現在)
  • 事業内容 : 建設資材の製造加工、情報処理関連、店舗・住宅設計施工・リフォーム、燃料の仕入・販売、プロテオグリカンの研究など
  • http://www.kakuhiro.co.jp/

 タナベ コンサルタントEYE  
134年の歴史を持つ角弘は、その歴史の重みを知るからこそ、継続的発展に対する思いが強い。それゆえ、高卒・大卒、中途入社、男女にかかわらず、学ぶ機会を与えることで、未来に「人」を残したいという、社長の思いが角弘大学には詰まっている。
また「売って、儲けて、嵌るな」という考えが社内に浸透しており、まず第一に「売る」ことを重んじる。そのために必要なのは、顧客のニーズを創造し、自社の商品・サービスを磨き上げ、提供すること。未来を拓くための角弘の挑戦は続く。

コンサルティング戦略本部東北支社 支社長代理戦略コンサルタント日下部 聡
経営コンサルティング本部
東北支社 支社長代理 戦略コンサルタント
日下部 聡

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