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今週のひとこと

経営者は常に自分の考え方を明示し、

全社員に徹底しよう。「自分の考え方」

とは、経営者の価値判断基準のことで

ある。

☆ 経営者の思いは簡単には伝わらない
   ―目指す姿のチャンスとリスクの共有

 例えば、あなたは経営者で、あなたの会社の営業利益率が現在2%だとします。営業利益率5%を目標に掲げ、その達成に向けて会議などで幹部社員たちを何度も叱咤したとしましょう。その真意は全員には正しく伝わらず、一部の社員は、あなたの意図を汲み取ったとしても、「赤字ではなく、きちんと2%の営業利益を出しているのだから、これ以上努力する必要があるのか」、「いまでも部下たちは毎日残業続きの状況で余裕がないのに」と言う、現状維持派は少なからずいるでしょう。

 あなたは経営者として、「なぜ営業利益率5%を目指すのか」ということを、丁寧に説明する必要があるのです。その目標を達成し、今よりも利益が増えた場合、それがどのような形で社員に還元されるのか、利益をもとに投資を行い将来どのような会社にしていきたいのかといったチャンス(プラス面)と、震災などの自然災害や、マーケットの変化、ライバルとの競争状況によって、売上が激減した場合に、現状の営業利益率ではいかに危険な水準なのか、というリスク(マイナス面)の両方を共有できて、目指す姿としての営業利益率5%の必要性が初めて社員に伝わるのではないでしょうか。

 「とにかく稼いで来い!」「とにかく利益を出せ!」と言うだけでは、一時的には成果が上がるかもしれませんが、長続きはしないでしょう。社員と共に更なる高みを目指すのであれば、思いを共有することは必要なプロセスではないでしょうか。

経営コンサルティング本部
部長代理
中島 望

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迷わぬ意思を持ち、迷わず語り継ぐ


崇高な理念・ビジョンは戦術のミスを駆逐する

「企業はトップの器以上に大きくならない」とよくいわれるが、器とは「志(こころざし)」と同義だと私は考えている。経営資源配分が経営者の意思決定項目である以上、時流を読んで適時適切な投資ができる経営者と、守りに徹し、あるいは意思を持たずにヒト・モノの置換投資だけをこなしている経営者とでは、その先の航海がどうなるかは語らずとも明らかである。

明確な意思は理念・ビジョンとして経営者個人の行動に表れ、多少の戦術のミスであれば、圧倒的なエネルギーとパワーですぐにマイナスをカバーすることができる。決断を促す源泉は理念に他ならない。

ビジョンを語る経営者の目は輝いている

タナベ経営が標榜(ひょうぼう)する「100年後も一番に選ばれる会社=ファーストコールカンパニー」の条件は、①顧客価値のあくなき追求、②ナンバーワンブランド事業の創造、③強い企業体力への意志、④自由闊達(かったつ)に開発する組織、⑤事業承継の経営技術の5つである。⑤の本質は、「志」を次代に承継することである。

経営の志ともいえる自社の理念を熱っぽく語る経営者の目は、いつも輝いている。

私がリーダーを務めている「戦略アグリ・イノベーション研究会」では、成長企業の経営者の話を聴く機会が多い。講師は創業から100年を超える企業経営者もいれば、一代で中堅企業に育成した企業経営者もいるが、いずれも、何かしらのファーストコールカンパニーである。

例えばA社は、生産から加工、流通、販売まで手掛ける、いわゆる6次産業化を自社グループで実現している中堅企業である。垂直統合型のモデルであるため、上流から下流へのモノの流れで発生する外部流出コストを抑え、また消費者との接点における自社ブランドの訴求により、高収益を実現している。もちろん、地元農家、自治体、金融機関とも密接に関わる社会価値の高いビジネスモデルは、簡単に模倣できるものではないが、驚くのは創業者でもあるトップに「迷いが一切ない」ことである。

A社の創業時の志は「地元の畜産業を発展させたい」だ。従って、地元と自社の双方にとってメリットがある事業、連携、投資には非常に積極的であり、共に成長発展するためのアクションには努力を惜しまない。逆に、志にそぐわない取り組みに対しては迷わず捨てる決断をするため、大胆に見えて、堅実な成長曲線をたどっている。

また、A社社長は創業時の思いを、本当に楽しそうに社員や顧客に語る。全く迷いがないのである。その姿を見た周囲もトップを信頼する。そして、取り組みが理にかなっているため、社員も自信を持ち、それをまた顧客・地域に伝える好循環が生まれているのである。多少の失敗があってもすぐに前を向ける環境があり、職場も社員も生き生きとしている。

経営体質の革新には経営者の意志が不可欠

B社は九州に本社を置く事務用品の商社だ。歴史が長く、地元では知らない人がいないほどである。しかし、差別化が難しい商材を取り扱っているため、複数ある地元の同業他社に対する競争優位が発揮できず、ここ2年は赤字決算となっている。さらに、周辺事業への多角化やアフターサービス体制の強化を行ったこともあり、決めたことの実行スピードが遅く、打ち手を決めても成果につながらないという状況に陥っている。

B社には地元の名門大学を出た専門技術者や、大企業出身の同業経験者が多く、同業他社から見てもうらやましいほどの人的資源を有している。にもかかわらず業績が芳しくないのはなぜか。

1つ指摘できるのは、同社では経営者がよく迷うのである。役員会の総意で決議した議案であっても翌日、「もう一度考えよう」と再び会議を開く。また、投資案件が重なってくると過去の投資履歴に目を通し、「ここ最近で一番大きな投資だから、もう1社見積もりを取ろう」と言い出し、決定スピードを遅らせてしまうのである。経営はバランスとタイミングだ。時宜を逃したら、取り組みの意義は確実に薄れてしまう。志を語れない経営者の典型ではないだろうか。

また、私は九州地区を中心に5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)のコンサルティング支援を行うが、その目的は「企業体質の革新」である。目的が単に「空間をきれいにする」ことであれば、日常業務の中で一般社員あるいは外注業者が実施すれば済むだろう。しかし、企業体質の革新ともなると、これは経営トップから一般社員、パート・アルバイトまで含めた時間と労力をかけた全社的活動でなければならない。つまり、経営者のゆるぎない「意志」が必要なのである。

5Sがうまくいかない企業の特徴点を挙げるとすれば、それは、

①トップが自分の部屋(机)だけ5Sをしない

②繁忙期に歩みを止める

③決めたことを守れないことに対して妙に寛容である

――といったところであろう。B社の事例とも共通することであるが、仮に崇高な目的を掲げたとしても、トップがぶれてしまうと成果など出るはずがない。経営体質の改革には、経営者自らが覚悟を持って携わっていただきたい。

ファーストコールカンパニーになるために

経営理念は時代とともにその表現を変えることもあるだろう。しかし、創業者世代、2代目世代、そしてその先に至るまで、「志にこだわった経営」を成し遂げる姿勢は崩してはいけない。

志を信じて疑わないトップの目を見て、周りが不安を覚えることはない。株主、顧客、社員、取引先の全てが自然と前を向き、ステークホルダー全体が享受する価値も結果的に高まる。また、信じて疑わない声を聞いて、津々浦々から情報が集まる。

戦略の成功条件の1つは、「きっかけを生かし切る」ことである。1つの縁やきっかけが、祖業に代わる成長エンジンに進化した事例は枚挙にいとまがない。

企業は継続して発展すべきもの。当代でつぶすようなことがあってはならない。強い会社は負けないから強い。負けないためには志を持つことだ。その志を「盲信」することが迷いをなくす。いま一度、「業界の常識は非常識」くらいの思いを込め、自らの志に立脚した「迷いなき自社のミッション」を描いてみてはいかがだろうか。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 本部長代理 奥村 格
  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部 本部長代理
  • 戦略コンサルタント
  • 奥村 格
  • Itaru Okumura
  • 専門分野は営業戦略、マネジメント力強化、企業体質改善など多岐にわたる。企業ブランド力や粗利益率の向上、営業マネジメント力の強化を行いながら、幹部から若手社員までの育成を手掛けるなど、クライアント企業の業績改善に寄与している。戦略アグリ・イノベーション研究会チームリーダー。

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フォークロアで新市場を拓く
企業文化と仕組みを磨きブランドを構築

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フォークロア(民俗文化)をテーマに掲げ、全国に98店舗を展開するアミナコレクション。同社は他にないオリジナリティーあふれる商品と圧倒的なアイテム数で、幅広い年代の支持を集める。新しいものを受け入れる柔軟さと原理原則にのっとった経営が、ライバルを寄せ付けない高い参入障壁を築き上げている。


フォークロアをテーマに卸・小売を展開

大森 アミナコレクションは、フォークロア(民俗文化)をテーマに衣料品や雑貨などのオリジナル商品の企画、製造、販売を手掛けています。現在は、卸事業に加えてエスニック衣料・雑貨を販売する「チャイハネ」、ハワイアン雑貨を扱う「Kahiko(カヒコ)」、モダン和雑貨「倭物やカヤ」、天然石・和雑貨「岩座(いわくら)」など6ブランドを持ち、全国に98店舗を展開するなど事業が広がっています。まずは創業の経緯をお聞かせいただけますか?

進藤 当社は1976年に、父・進藤幸彦が設立しました。もともと父は大学で民俗学を研究しており、1969年にトルコ政府給費生として民俗調査のためトルコに留学。この経験がきっかけとなり、ビジネスを通して世界の民俗文化に関わっていくことを決意します。

当時、すでに5人の子どもがいたにもかかわらず、高校教師という安定した仕事を辞め、多額の借金をして創業したわけですから、使命感に近い気持ちがあったのだと思います。

大森 民俗文化に対する熱い思いが、一貫してフォークロアをテーマとする事業展開に表れています。"WALK WITH THE SUN"という社是にはどのような意味が込められているのでしょうか?

進藤 "WALK WITH THE SUN"は「自然と共に生きること」を表現しています。工業化が急速に進み、昔と比べて便利に暮らせるようになった一方、自然と共生してきた世界各地の民俗文化の価値が失われつつあります。人間がコントロールできる部分は増えましたが、同時に現代人が多くのストレスを抱えていることも事実です。

父は、自然と共に生きる昔ながらの生活や文化(フォークロア)こそ、人間らしい感受性や活気を取り戻させる力があると考え、その価値を伝えるために起業しました。その思いを自分の言葉で表現した社是は、父の最大の遺産だと思います。

松下 詩的な表現で、創業者の思いが込められた求心力のある言葉ですね。この社是に共感して入社される社員が多いのもうなずけます。

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アミナコレクション 代表取締役社長進藤 さわと氏 1998年慶應義塾大学理工学部応用化学科を卒業し、アミナコレクションに入社。貿易部、物流部、システム管理、サポート部部長、仕入委員長、店舗部長を歴任し、2003年に統括就任。2005年に取締役になり、店舗展開戦略、店舗運営組織構築、本部制導入、MD 部・新事業部創設など企業戦略を主導し、2010年に代表取締役社長に就任。
アミナコレクション 代表取締役社長
進藤 さわと氏
1998年慶應義塾大学理工学部応用化学科を卒業し、アミナコレクションに入社。
貿易部、物流部、システム管理、サポート部部長、仕入委員長、店舗部長を歴任し、2003年に統括就任。
2005年に取締役になり、店舗展開戦略、店舗運営組織構築、本部制導入、MD 部・新事業部創設など企業戦略を主導し、2010年に代表取締役社長に就任。

悪い部分ではなく強みに着目して伸ばす

大森 2010年の社長就任以降も、創業者の思いを引き継ぐ形で事業拡大を図っています。経営する上で大事にされていることはありますか?

進藤 引き継ぐというよりは、"自分からつかみにいっている"感覚です。入社してしばらくは父から価値観を押し付けられている感覚もありましたが、ある時期から自分でかみ砕き、父の真意や自分のやるべき経営をつかんでいこうと気持ちを切り替えました。受け身でできるほど経営は甘くないですから。

大森 自ら価値を再定義することで、自分らしい手法や経営スタイルが見えてくるということですね。

進藤 自分なりに創業の精神やフォークロアをかみ砕いて理解する中で、事業がアジア・アフリカ地域の民俗文化に偏っていることに気付きました。足元に目を移せば、日本にも受け継がれてきた素晴らしい民俗文化があります。そう考えて立ち上げたのが、日本の衣料・雑貨などを扱うブランドです。

父の時代はエスニックを中心に事業を広げてきましたが、もともと日本の民俗芸能の研究が原点。新規事業は父もうれしかったようで、この成功が社長交代の1つのきっかけになりました。会社全体から見ても、当社の強みや深みが増したと思います。創業者の思いを自分なりに捉えて仕掛けていくことは、経営の大事なポイントです。

大森 フォークロアの新たな魅力を発信する一方、それを支える組織改革にも着手されています。

進藤 全国展開を進める中で規模に合った組織改革は必要でした。しかし、社長になる前から、当社独自の雰囲気や社風は守るべきという直感はありました。会社の雰囲気を壊してしまうと、商品開発や販売などにおいて「大事な何かが失われてしまう」という危機感のようなもの。悪い部分ではなく、強い部分に着目して、前向きに組織化を進めました。

大森 2代目に代わるタイミングで組織化を進めるケースは多いですが、急激にシステマチックに変わったことで会社の勢いが失われてしまう例は少なくありません。

進藤 おっしゃる通りで、組織論や一般論を、そのまま導入しては危険です。成功例であっても、自社に合うようにかみ砕いて慎重に導入することが大事です。私自身、いくつかの失敗も経験しながら、自社に合った導入方法を学んできました。

大森 残すべきものと変えるべきものの見極めは非常に難しいです。直感があったのは親子間承継だったことも関係しているのでしょうか。

進藤 会社の雰囲気や風土は、創業者の思いや理想に影響を受けるものです。当社の場合、特に社風に魅力を感じて集まってきた社員やお客さまが多い。ですから、そこを否定しては社員やお客さまを裏切ることになってしまいます。

ファミリー経営の良いところは、後継者が創業者の考え方や感性を理解しやすい環境にあることです。企業文化や理念、思いなど目に見えない部分の承継は、家族が圧倒的に有利です。私自身、幼い頃から民俗文化について父の話を聞いて育ったので、目に見えない感覚的な部分もスムーズに理解することができました。その半面、理念を否定せず、状況に合わせて方法論を変えていくわけですから、難しい立ち位置だったことも確かです。

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タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長 チーフコンサルタント 大森 光二 人事・組織に関する課題解決を中心としたコンサルティングに従事。前職での人事部門責任者の経験から、現場の社員にまで浸透するための仕組みづくりを重視している。「人材が最大の企業価値」であるという考えのもと、企業と個人のWin-Winを目指し、コンサルティングを展開している。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長 チーフコンサルタント
大森 光二
人事・組織に関する課題解決を中心としたコンサルティングに従事。前職での人事部門責任者の経験から、現場の社員にまで浸透するための仕組みづくりを重視している。「人材が最大の企業価値」であるという考えのもと、企業と個人のWin-Winを目指し、コンサルティングを展開している。

業界に先んじてSPAや物流システム化に着手

大森 全国展開する「チャイハネ」の最大の特長は豊富な商品アイテム数だと思います。実に多種多様な商品が並んでいますよね。新しいもの、珍しいものを受け入れる柔軟な社風とも共通しています。

進藤 創業からしばらくは卸専門業者として関東、湘南の小売店に対する民芸品の巡回サービスを行っていましたが、その後、1978年に「チャイハネ」1号店を横浜中華街にオープンして小売業に進出しました。他にないものを求めて取引先をアジアや中近東へと広げる一方、1983年にはインドネシア、ネパールで現地生産を開始。1986年には自主企画商品の製造から販売まで手掛けるSPAに挑戦するなど、もともと先駆的な社風でした。

大森 ユニクロのSPAが話題となったのは、2000年前後でした。業界に先んじた挑戦が、少量多品種の商品展開を支えています。つい立ち寄りたくなる豊富な品ぞろえが店舗の魅力を高めていますが、店側から見れば管理の負担が大きくなる。圧倒的な商品アイテム数を維持する仕組みについてお聞かせください。

進藤 店舗には常時約3万点の商品が並んでおり、その9割をオリジナル商品が占めています。人による管理を続けると社員の負担が大きく生産性も下がりますから、システム化に対する投資は早い時期から行ってきました。具体的にはコンピューターを導入し、商品の販売状況に応じた在庫管理を可能にする自動受発注システムを構築しました。

大森 アミナコレクションの理念や商品ブランドにはシステム投資と相反するイメージがありましたが、早い段階からITを積極的に活用されていたわけですね。

進藤 民芸品、フォークロアは生活必需品でないという特性上、売り上げを上げて利益を残すことが非常に難しい商品です。つまり、コストダウンに加えて生産性を圧倒的に引き上げないと利益が確保できないということ。そのためには、システムなどによる生産性改革に注力することで競争力を飛躍的に高めたいという狙いがありました。

あれだけの多種多量な商品を扱っている上に、適正な在庫管理を行うことは大変過ぎて誰もまねをしません。だからこそ、そこに徹底して取り組み続けました。その結果が、圧倒的な差別化要因になっています。

また、私が入社したのは1998年ですが、すでにパソコンが1人1台完備されていました。父はコンピューターに強かったわけではありませんが、先見性はあったのだと思います。

野村 当時、同規模の企業であれば部署に1台パソコンがあるかないかといったところでした。今より端末価格も高い時代でしたから、かなり思い切った投資といえますね。

本部オフィスは、モノと文化が行き交うシルクロードに見立てたデザイン。デスクを 蛇行させて机を配置し、一体感を出した ※ 2017 年日経ニューオフィス賞「関東ニューオフィス奨励賞」受賞
本部オフィスは、モノと文化が行き交うシルクロードに見立てたデザイン。デスクを
蛇行させて机を配置し、一体感を出した
※ 2017 年日経ニューオフィス賞「関東ニューオフィス奨励賞」受賞

タナベ経営 経営コンサルティング本部 人材開発部 アソシエイト 野村 侑加 現在、「人を活かし育てる会社の研究会」のチーフとして、多くの企業の人材開発を支援。また、FCCアカデミーチームでの活動で、クライアントの企業内大学の設立を実現している。モットーは「社員がイキイキと働ける会社づくり」。明るいキャラクターとコミュニケーション能力を生かし、人材分野で幅広く活躍中。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 人材開発部 アソシエイト
野村 侑加
現在、「人を活かし育てる会社の研究会」のチーフとして、多くの企業の人材開発を支援。また、FCCアカデミーチームでの活動で、クライアントの企業内大学の設立を実現している。モットーは「社員がイキイキと働ける会社づくり」。明るいキャラクターとコミュニケーション能力を生かし、人材分野で幅広く活躍中。

一連の仕組みで圧倒的な差別化を実現

大森 先行したシステム化によって、会社の競争力は格段に上がりました。全国展開の原動力になったと言っても過言ではありません。仕組みをつくる上で成功させるポイントはありますか?

進藤 そもそも仕組みは1、2年でできるものではありません。当社の場合、本格的に店舗展開を始めたのは2003年ごろでしたが、当時抱いていたのは「このまま事業を広げていけば、いずれパンクする」という危機感でした。

ただし、拙速に事を運んでもうまくいきません。システムについても、ベース部分は専門のシステム会社に作ってもらいましたが、そのまま運用するのではなく、細かな部分までかみ砕いて自社流にカスタマイズする作業に時間をかけました。

大森 細かな部分が自社にフィットしないと、業務の中で修正する手間が必要になります。それが社員の負担となっているケースをしばしば見掛けます。

進藤 システムに合わせるのではなく、現場にジャストフィットするシステムを作り上げることが重要です。当社もオリジナル化には10年以上かけて取り組んできました。

ただ、差別化要因は物流だけではありません。店頭の鮮度を保つ定期的な商品開発の仕組みや、40年以上かけて積み上げてきた世界各地の製造ネットワーク、販売の仕組みなど、それぞれが他社との差別化要因といえますが、全てが一体化している点が最大の強みだと考えています。

大森 物流だけまねをしても追い付くことはできない。しかし、トータルの仕組みとなると簡単にまねすることはできません。これが高い参入障壁をつくり上げています。

大石 事業承継に際して整理すべき点を外部の目でチェックしてもらおうと考えたからです。タナベ経営とは10年以上の付き合いがありますから、信頼してお任せしました。

大自然と調和する組織づくりを目指す

大森 現在、現場の改善を進めるPDCAを回していますが、当初設定したP(計画)にとらわれ過ぎず、現場の優先順位を尊重する進め方が印象的です。

進藤 現場では突発的なトラブルも起こりますし、お客さまのご要望を優先すべき場面は多々あります。そうした状況の中で当初の「P」にしばられて行動し過ぎると、お客さまが後回しになるケースも起こり得る。そうならないように、お客さま起点である程度は現場の判断に委ねて運用しています。

大森 自分の頭で考えて判断できる。これが社員のやりがいや責任感につながります。

野村 すでに働きがいのある会社づくりにも着手されていますが、今後はどのような社員像、組織像を目指していますか?

進藤 父親が生涯をかけて追究していたのは「人間らしい在り方とは何か?」ということ。その答えをフォークロアに見いだしていました。自然と対峙する生活において、人間はイニシアチブをとって積極的に自分の足場を守ろうとします。社員には、任された現場で自律的に仕事をする、足腰の入った働き方をしてほしいと願っています。そうした社員が互いに切磋琢磨することで、組織全体が動く組織が理想です。

松下 人間にとって自然な生き方、働き方とは何かを追究されている。一方、経営においては原理原則を大事にされていますね。

進藤 経営とは、自然の在り方を追究していくことだと思います。経営には原理原則が存在しますが、一体誰がつくったのかとても不思議です。ただ、最近は時間の流れの中で自然と形成されたのではないかと思い至るようになりました。川が高い所から低い方へ流れるように、原理原則に従えば経営は自然と成り立っていくもの。逆に、そこから外れて経営するには膨大なエネルギーを必要とします。ですから、中小企業こそ原理原則が大事。ただし、そのまま自社に当てはめるのではなく、自分なりにかみ砕いて理解した上で、自社にフィットする形で取り入れることが肝要です。

大森 創業の思いやシステム化と同様、自分でかみ砕いて理解し、自社に合う形にアレンジして導入するスタイルが進藤社長の流儀ですよね。無理のない成長の秘訣を教えていただいた気がします。

進藤 今年の夏季休暇に、外国人旅行者に人気の足立美術館(島根県安来市)を訪ねました。美しい日本庭園もさることながら、背景にある大自然と見事に調和した景色は圧巻です。人工物である庭園と自然を融合させる日本人の優れた感性に感服しました。

タナベ経営にも協力いただき組織改革に取り組んでいますが、人工物である組織が大自然に溶け込むような、原理原則という大自然の産物に調和する経営をこれからも目指していこうと考えています。

大森 自然と融合する企業文化と仕組みの実現によって、ますます発展されることを祈念しております。本日はありがとうございました。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 人材開発部 アソシエイト 松下 健太郎 大学在学中より組織・マネジメント分野を専攻。「最高の人事コンサルタント」を目指し「人を活かし育てる会社の研究会」の運営、人事・人材分野のコンサルティングなどを担当。「お客さまを笑顔にする」を信念とし、日々、真正面から課題解決にチャレンジしている。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 人材開発部 アソシエイト
松下 健太郎
大学在学中より組織・マネジメント分野を専攻。「最高の人事コンサルタント」を目指し「人を活かし育てる会社の研究会」の運営、人事・人材分野のコンサルティングなどを担当。「お客さまを笑顔にする」を信念とし、日々、真正面から課題解決にチャレンジしている。

PROFILE

  • ㈱アミナコレクション
  • 所在地:〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町123 横浜クリードビル7F
  • TEL:045-681-0711(代)
  • 設立:1977年
  • 資本金:2000万円
  • 売上高:71億5000万円(2017年2月期)
  • 従業員数:700名(2017年2月現在)
  • 事業内容:オリジナル商品の企画制作および販売
  • http://www.amina-co.jp/
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    06-7177-4008
    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所