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今週のひとこと

「業績を上げる」とは、今の利益を

上げるだけではない。次の利益も

上がる条件・仕組みをつくろう。

☆ その仕事、価値のある「プラスα」ですか?

 「目先の業績を追うことが優先され、新たな取り組みへの活動に乗り出せない」「働き方改革が進むなかで、通常の業務以外にあてる時間を確保できない」。これらは、筆者が経営者や経営幹部の方々から、最近よくお聞きする言葉です。企業を取り巻く環境変化が激しいなか、その変化に対応するための時間を十分に確保できていない様子が伺えます。

 会社を変化させるための時間をどのように確保していけばよいのか。それは、日本の企業に蔓延する「プラスαの仕事」からの脱却ではないでしょうか。これまで、日本の多くの企業では、任された仕事にさらに「プラスα」することが良いとされてきました。もちろん、それが業績や生産性の向上へつながっていれば問題ないのですが、周囲に残業しているように見せるためであったり、上司から良く見られるための報告資料作成であったりなど、社内での自分の評価を高めるための仕事になっていることも少なくありません。

 仕事は大きく、業績に結び付く「付加価値業務」と、そうではない「非付加価値業務」の二つに分けられますが、この境界が曖昧となり、業績へのプラスαではなく、自分の評価を下げないためのプラスαの仕事が行われているのです。会議のための資料作成、上司への報告資料、社内の調整業務など、どれも重要な業務ではありますが、必要以上に時間をかけることは単なる無駄と言わざるを得ません。

 筆者は、日本企業の生産性が上がらない要因の一つとして、この「無駄なプラスαの仕事」があると考えています。ぜひ一度、社内の業務を棚卸し、それぞれの業務に要する時間を計算し、無駄なことをやっていないか確認してみてください。そして、削減できた時間を新たな取り組みに使うことが、次の自社の成長の基盤となるのです。

経営コンサルティング本部
コンサルタント
新島 泰久也

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後継者の"変身"が社風を変える


営業部門から経営企画室や社長室を経て、取締役へ――。私の経験上、企業の事業承継において後継者(20~30代)の3分の1は、このプロセスを踏んでいる。大学で経営学を修めて戦略発想を備え、自社に入る前に他社で武者修行して現場感覚を養っていればなおよい。取締役に就任後、新規事業を任されて成果を残し、満を持してバトンタッチができれば事業承継としては十分、合格点である。

ただ、そんな後継者たちから、私はよく相談を受ける。「社員を信用できない」「社員が動かない」「考え方が古い」。社内での人間関係や取引先との関係、現状維持的な企業風土に対する不満である。事情はよく分かる。ただ、私がここで問題視するのは後継者自身の目線だ。極論かもしれないが、たいていの後継者は社員を"下"に見ている。

後継者本人にそれを伝えても、"のれんに腕押し"。「そんなことはない」と否定する。私はそんな時、後継者と現場ツアーに赴く。例えば、5Sチェックやオフィスの清掃を一緒にする、採用合同説明会に同席する、試食会や試乗会の後の社内反省会に出席する、などだ。これまで見てこなかった現場の働きを目の当たりにした後継者は、現場の努力や我慢を知る。

また、現場側も、わざわざ視察や手伝いに来た後継者に悪い気はしない。むしろ、足を運んでくれたことを喜ぶ。すると、どうなるか。後継者が、「社員に任せてみたい」「社員にもっと挑戦させたい」「私も負けないように頑張りたい」と"変身"するのだ。あとは、その姿勢を習慣化することに努めればよい。

組織が成立する要件のうち、希薄化しやすいのが相手への「貢献意欲」である。判断の軸を相手側に置き、相手の成功を願う。そうすれば相手に気持ちが伝わり、行動が変わり、互いに貢献意欲が高まっていく。後継者も、軸を社員側に置き、社員の成功を心から願う。社員から確固たる信用を得、そこに成果が加われば、次代の新たな社風も心地よいものになるだろう。

まずは、現場ツアーを企画されてはいかがだろうか。


奥村 格

■筆者プロフィール
タナベ経営
経営コンサルティング本部
九州本部 副本部長 戦略コンサルタント
奥村 格 Itaru Okumura
専門分野は営業戦略、マネジメント力強化、企業体質改善など多岐にわたる。企業ブランド力や粗利益率の向上、営業マネジメント力の強化を行いながら、幹部から若手社員までの育成を手掛けるなど、クライアント企業の業績改善に寄与している。アグリビジネスモデル研究会チームリーダー。

アグリビジネスモデル研究会

アグリビジネスモデル研究会

「つながり」×「拡大」=収益力

正しい価値を届け続けるためには、自社の経営資源の最大限の活用は前提として、大義である"社会価値"を共有し、"顧客価値"を共に高める"パートナー"との協業・連携が非常に大きなファクターとなります。自社に必要な連携先はどこなのか。今期は"プロ連携"による勝てるビジネスモデルの在り方を研究します。

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「古郡アカデミー」で若手を育て、DNAを受け継ぐ

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経営理念をまとめた「クレド」の小冊子(左上)と古郡アカデミーの様子(左下)。人間力と専門力に磨きをかける 古郡建設 取締役 民間営業部長 丸山 勝美氏(右)


創業104年の総合建設企業新入社員を現場で育てる

"日本近代経済の父"渋沢栄一の出身地として知られる埼玉県深谷市。ここに本社を構える古郡建設は、同県北部を地盤とする地域密着型の総合建設会社である。

同社の創業は1914年と古く、2018年で104年目を迎える。創業当時は利根川の砂利を採取し、販売する事業を営んだ。2代目社長・古郡泰二氏の時代に、建設業へ事業を拡大。バブル全盛期の1980~90年代にはゴルフ場造成工事を数多く受注し、発展の途をたどった。現在は医療福祉施設、工場施設や環境設備などの分野で強みを発揮している。

古郡建設は2017年より、新入社員全員の土木・建築工事現場研修を実施している。期間は4~9月までの半年間。「工事屋として専門家になるためには、現場を知ることが一番」と語るのは、自らも豊富な現場経験を持つ、取締役民間営業部長の丸山勝美氏だ。

新入社員は従来、数日間の研修を経てすぐに各部署へ配属されていたが、現場で通用する深い知識が身に付いておらず、業務でつまずくことも多かったという。

また、現場では職人や協力会社の社員から教わることも多い。若手社員にとってはかけがえのない経験になっている。

「すぐに各部署へ配属されないので、一見、遠回りな人材育成方法にも見えますが、長い目で見ると近道」と丸山氏。同じ現場で半年間過ごすことで、新入社員同士の絆も育まれるという。2017年に入社した社員は6名、うち女性は3名。すでにリーダーシップの発揮が目立つ社員もおり、今後への期待は高い。

古郡アカデミー開校「人間力」「専門力」を鍛える

新入社員の現場研修は、人材育成の取り組みの一部にすぎない。人材育成に力を入れる同社では、2017年7月から企業内大学「古郡アカデミー」を開校し、若手社員の育成に本腰を入れている。

現場の主力である60代の大量退職を目前に控える中、3年で若手社員を育て、現場で活躍する戦力にすることが開校の目的だ。対象は入社2~4年目の20人。タナベ経営と今年1月から打ち合わせを重ね、7月に初回講義を開講した。

講義は月1回、土曜日に実施。内容は「人間力」と「専門力」の2本立て。人間力では、小冊子にまとめた「クレド」をかみ砕いて説明し、古郡建設の社員としての在り方、求める人間像について講師が解説する。

一方、専門力では、現場で必須となる工事・建築関係の資格取得を見据えて授業を構成。「若い技術者に何が必要か、何が足りていないのか」を工事長が検討し、必要な知識を分かりやすく解説する。

教える側の学びにも直結

古郡アカデミーの講師は社員が担当しており、人間力は丸山氏、専門力は工事長が務める。「教わる側も勉強になりますが、人を引き付ける話し方や分かりやすく伝える工夫など、教える側の研鑽にもなっています」と丸山氏。教える側の学びに直結するため、今後はより多くの社員に講師を務めてもらうという。

スキルや知識の強化に加え、会社のDNAを伝える機会としてもアカデミーは有効だ。例えば初回講義では、社歴の長い吉野専務が現場について語り、受講者から好評を博した。11月からは古郡一成会長が同社の歴史を語る授業を行い、若い世代へ古郡建設のDNAを引き継いでいる。

新入社員の現場研修、2~4年目の古郡アカデミーに続き、2018年4月からは中堅社員向けのアカデミークラスもスタートさせる。11月からは外部の講師を招き、管理職向けの研修も開催。各階層の教育を手厚くし、全社員の能力を高めていくという。

人材育成に力を入れる理由について、丸山氏は「東京オリンピック関連工事の影響で今は追い風が吹いていますが、必ず向かい風の時代が来ます。その時、無事に乗り越えて勝ち残っていくためにも、若い人材を育てておくことが必須」と語る。今のうちの若手育成が将来の競争力となり、他社との差別化や自社の強みにつながっていくのだ。

丸山氏は未来を担う若手社員たちに「本当の意味で"家族"になりたいし、一人前になって、会社を背負って立つ人になってほしい」とエールを送る。

同社のクレドには「家族思考」という言葉があり、次のような説明がある。「私たちは、社員のみならずその家族も含めて一つの大家族です。(中略)家族だから信頼し、良いことも悪いことも何でも話し合います。(中略)家族だからみんなが幸せになる努力をします」

何でも話せて互いに成長し合える、家族のような強い絆で結ばれた古郡建設の社員たち。各々が人間力を高め、高い専門性を発揮することで、今後も同社は躍進し続けるに違いない。

PROFILE

  • 古郡建設㈱
  • 所在地 :〒366-0026 埼玉県深谷市稲荷町2-10-6
  • TEL : 048-573-3111(代)
  • 創業: 1914年
  • 資本金 : 3億円
  • 売上高 : 91億円(2017年3月期)
  • 従業員数 : 111名(2017年10月現在)
  • 事業内容 :
    ①総合建設業(土木工事・建築工事・舗装工事・設備工事)
    ②住宅・リフォーム・リニューアル・建築事業
    ③建設と不動産のトータル・プランニングおよびコンサルティング
    ④ホテル事業
    ⑤上記の事項に付帯する事業
  • http://www.furugori.co.jp/

 タナベ コンサルタントEYE  
日本商工会議所の調べ※1によると、「人手不足の影響が出ている」と答えた企業のうち、建設業(81.8%)が最多だった。また、2018年3月卒予定の大学生求人倍率は建設業で9.41倍※2と、10倍に迫る勢いである。
人手不足が深刻な建設業界。しかも高い専門性が求められるため、人が育つには多くの時間と投資を要する。
それだけに、人材育成の成功は大きな差別化要因となり、競争優位をもたらす。タナベのコンサルティング事例を見ても、成功企業の共通点は、人を育てるという信念―人こそ財産で、会社の繁栄を築く競争力になるという、強い思いにある。
まさに、古郡社長、丸山取締役をはじめとする経営陣による育成へのコミットと、人材育成に時間と投資を惜しまない古郡建設の取り組みは、その理想的な事例といえるだろう。
※1 「商工会議所LOBO(早期景気観測)2017年7月調査結果」
※2 リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査(2018年卒)」

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経営コンサルティンク本部 部長 戦略コンサルタント 山村 隆
人を活かし、育てる会社の研究会 リーダー

人を活かし、育てる会社の研究会

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人事制度研究 今必要な、人事のすべて。

基礎と最新事例を学び、全6回のカリキュラムで人事戦略~規程まで全てを学び、自社改善策まで落とし込めます。
最後に御社オリジナルの「人事制度改善ワークブック」が完成。タナベ経営の人事コンサルタントが参画し、アドバイスも実施します。

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所