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今週のひとこと

結果を測定する尺度を持とう。

正しい尺度があってこそ、

成功も失敗も把握できる。

☆ データベースと戦略は一致していますか?

 筆者自身、SEとしての経験やIT業界での職務経験はないのですが、これまでに業務系システムの導入プロジェクトをいくつか経験してきました。それらの経験の中で、特に重要性を感じているのは、会社の戦略と紐づいた生きたデータベースを構築するということです。

 データベースには、商品、顧客、エリア、勘定科目といった切り口の視点と、データの粒度、顧客軸で例えると、エリア、売上規模、顧客名、顧客との関係性といった視点を持つことが重要です。例えば、「商品A」「顧客B」という切り口と、「顧客との関係性」というデータの粒度を組み合わせると、「商品Aは、顧客Bに3年間継続して購入されている」という1つの生きた分析対象のデータとなります。
 そして、ロイヤルカスタマー(ある企業や商品やサービスに対しての忠誠心の高い顧客)の定義を定量的にできていれば、顧客Bをロイヤルカスタマーとして自動分類し、今後の関係性をより強固にしていくといったアクションに結び付けることができるでしょう。

 ただし、データベースが会社の戦略と一致していないと、形だけの情報となってしまい、決算資料の作成といった業務的な側面を除けば、データそのものを持つ必要性もなくなります。また、データの粒度が細かくなればなるほど、入力、チェック、承認などのデータベースの作成工数が多くなっていきます。
 生産性カイカクの視点で、戦略からデータベースまでを見据え、オペレーションを設計していくことが重要ではないでしょうか。

経営管理本部
経営企画部
坂本 拓也

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日本的経営を磨き世界への道を拓こう


海外で根付く日本的経営管理

私は以前、東南アジアに出向き、現地に工場進出をしている日本企業や、地元資本の製造業、商業施設などを視察したことがある。ある日本の製造業現地法人では、多様な民族の社員を見事にまとめ上げ、日本製と変わらない高品質の製品を生産していた。

特別な秘訣(ひけつ)があるのかと尋ねたところ、意外な答えが返ってきた。現地法人の社長いわく「海外だからといって特に変わったことはしていません。日本と同じことを徹底するだけです」「企業にはDNAがあります。これを浸透させることに変わりはありません」とのこと。その力強くストレートな言葉に、私は感動すら覚えたのである。

また、他の現地資本のメーカーでは、製造現場に「KAIZEN」が定着している。日本的経営や生産管理手法が世界に広がっていることは知っていたが、実際にこの目で見てみると、日本的経営の持つ普遍的な強みをあらためて確認することができ、誇らしくも思うのである。

中堅・中小企業は、もはや海外抜きに事業戦略を語れない

前述した企業は早い段階で海外進出した、比較的規模の大きな企業である。得意先の大手メーカーの海外進出に同伴して海外工場を立ち上げ、すでにグローバル市場で存在感を確立していた。

現在は大企業だけでなく、こうした中堅・中小企業においても、事業戦略を検討する上で積極的に海外を意識することが求められる状況といえる。

ある従業員50人のメーカーA社の事例を見てみよう。A社の製品は電子製品の製造工程で使用されるもので、多くが携帯電話やタブレット端末、コンピューターの製造工程で利用されている。それほど大きなマーケットではないが、生産性を上げるために欠くことのできない製品として認知されており、大手メーカーの生産ラインにまで幅広く活用されている。結果として、取引先のモデルサイクルに大きな影響を受けるという業績構造上の弱みを持つものの、A社の製品がなければ、世界の携帯電話やタブレット端末の生産に支障が出る可能性まであるという。

ただ、収益力は弱く、内部留保も他社に比べ見劣りする。外部から見て素晴らしい強みを持つにもかかわらず、受注構造が下請け型で、自社独自での営業経験が乏しいこともあって、価格面での主導的地位を確立できていないことにその要因があった。「値決めは経営」とはよく言ったもので、値決め権を商社に握られ、悪く言えば「生かさず殺さず」利用されているのである。

こうした企業は、思い切って海外に広く市場を求めるとよいのではないか。独自のマーケティング活動を通じて、より直接的に顧客へ接近し、自らの価値を広く世界に問うてみてはどうだろう。縮小する国内マーケットに対して、東南アジアを中心に、世界ではまだまだ成長市場が残されている。これまで培った技術と経験をもとに、中堅・中小企業の強みである俊敏性で海外市場にチャレンジできるはずだ。

とはいえ、中堅・中小企業にとって海外とのビジネスは、まだまだハードルが高い。さまざまなリスクを回避しながら業績基盤を構築するためには、海外においても通用する製品やビジネスモデルを確立しなければならない。自社の価値を貫く、ぶれない経営スタイルや思想も必要となる。


世界は多様化からカオスへ

グローバルスタンダードの波が日本を襲って何年たっただろうか。バブル経済が崩壊してからの約20年は、米国型のグローバルスタンダードや価値観が重視され、"ジャパンスタンダード"は自虐的なまでに否定されたと感じる。

しかし、リーマン・ショックやそれ以降の中国の世界的台頭、また昨今のブレグジット(英国EU離脱)などの混乱を経て、欧米型市場経済に基づく価値観も、もはや色あせて見える。

そして自国主義、ブロック経済指向の強いトランプ氏のような人物が米国の新大統領に選ばれるに至り、世界経済がどのように変容していくのか、また、これを受けて企業を取り巻く経営環境や価値観がどのように変わっていくのか、非常に不透明な状況となっている。

日本企業にとってグローバル化の進展は、欧米型経営システムの再学習を迫ったが、多様な価値観を受け入れたことにより、経営システムとそのバックボーンとなる思想に変化をもたらし、日本企業を成長させた側面もあるだろう。しかし今では、その欧米型の経営思想の体現者ともいえるトランプ氏自身が、自らに富をもたらした自由主義経済の前提を否定するかのような発言をしている。もはや何が起きても不思議ではない。多様化ではなく、「カオス」である。

日本企業はもっと世界で戦うことができる

このような環境下において、われわれ日本企業は再び原点に立ち返るべきではないだろうか。儒教的思想や八百万(やおよろず)の神に対する畏怖、これらの思想を背景とした日本的経営は、顧客を大切にして公器としての役割を果たし、質素倹約に努め、長期的視野で物事を判断するという、ジャパンスタンダードを古くから有している。

近江商人の家訓として知られる「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」や、江戸時代の思想家・石田梅岩による「二重の利を取り、甘き毒を喰ひ、自死するやうなこと多かるべし」「実(まこと)の商人は、先も立、我も立つことを思うなり」など、商人の判断基準を説いた言葉が多く伝えられているのは、周知の通りである。

今こそ、こうした日本的経営や自社の強みを見直したい。そこには世界に通用する素晴らしい競争の源泉が存在しているはずだ。中堅・中小企業においても、こうした文化的風土に基づく競争優位は必ず存在している。日本的価値観を大切にしながら、これに縛られることなく、世界的視野と柔らかな発想で自らを見直してみよう。

「わが社が世界で取引するなんてできない」という先入観を捨てよう。ゼロベースで考えることができれば、必ず自社ならではの素晴らしい価値を発見できるはずだ。そしてその強みを新たな市場にぶつけてみよう。多くの日本企業はもっと世界の中で輝けると信じている。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長 戦略コンサルタント 北東 良之
  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部 部長 戦略コンサルタント
  • 北東 良之
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  • 経営理念やビジョン策定、中期経営計画策定を軸に、方針管理制度、予算管理システム、人事評価賃金制度構築など、中堅・中小企業を主なクライアントに経営システム構築を支援。事業承継案件も多数手掛け、「会社をつぶしてはならない」の信条のもと、持続的成長企業づくりを目指し、改革・改善に取り組んでいる。中小企業診断士。

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「品質は人質(じんしつ)」にこだわり、
屈強な企業をつくる

2016 年オープンした鳴海モデルハウス(愛知県名古屋市)。暮らしの5 つの目的(遊ぶ、眠る、くつろぐ、学ぶ、食べる)を満たす住まいを提案
2016 年オープンした鳴海モデルハウス(愛知県名古屋市)。暮らしの5 つの目的(遊ぶ、眠る、くつろぐ、学ぶ、食べる)を満たす住まいを提案

スキージャンプ界のレジェンド、葛西紀明選手が所属することで知られる土屋ホームは、北海道を代表する住宅メーカーであり、全国展開を果たしている。
土屋グループ(土屋ホールディングス)を在来工法のトップ企業に育て上げた創業者・土屋公三氏は、「品質は人質(じんしつ)」という言葉を胸に人づくりへまい進。
社内外の人材育成を通じて磨き上げた人生哲学を次代に伝えている

土屋ホールディングス 創業者会長 土屋 公三氏 1941年、北海道生まれ。1969年土屋商事を創業。1976年丸三土屋建設(現土屋ホーム)設立。 2001年土屋ホーム代表取締役会長。2008年土屋ホームから土屋ホールディングスへ商号変更し、2011年同取締役会長、2017年創業者会長(現任)。企業や大学などでの講演多数。著書・監修に『不動産教室』『3KM生涯幸福設計』『使命感経営』など。土屋経営代表取締役社長、ノーマライゼーション住宅財団理事長、人間社長塾主宰。2008年黄綬褒章受章。
土屋ホールディングス 創業者会長 土屋 公三氏
1941年、北海道生まれ。1969年土屋商事を創業。1976年丸三土屋建設(現土屋ホーム)設立。
2001年土屋ホーム代表取締役会長。2008年土屋ホームから土屋ホールディングスへ商号変更し、2011年同取締役会長、2017年創業者会長(現任)。企業や大学などでの講演多数。著書・監修に『不動産教室』『3KM生涯幸福設計』『使命感経営』など。土屋経営代表取締役社長、ノーマライゼーション住宅財団理事長、人間社長塾主宰。2008年黄綬褒章受章。


使命感に目覚め経営を一心不乱に勉強

長尾 土屋会長は1969年に土屋商事を創業し、76年には土屋ホームとして住宅産業に参入。96年には、北海道の住宅不動産会社として、初の東京証券取引所第2部に上場を果たされました。

さらに2008年には、土屋ホールディングス(以下、土屋HD)を中心とする持ち株会社体制へ移行し、経営と事業を明確に分離して、経営資源の集中と再配分を展開してこられました。一代で北海道屈指の企業グループを築き上げた軌跡についてお聞かせください。

土屋 私は1959年に松下電器産業(現パナソニック)の採用試験に落ち、大手包装材メーカーに就職。そこで労働組合の書記長を経験したことが、自分自身の原点になっています。

その会社を辞めて不動産業に携わりましたが行き詰まり、将来の進路に悩んで、毎日、北海道神宮に参拝したこともありました。そんな時、おかしな話と思われるかもしれませんが、自分の名前から「『土』地と家『屋』でお客さま・社会・会社の"『三』つの『公』"のために、物質的・精神的・健康的な住宅を提供するのが使命」という天の声を聞き、使命感に目覚めたのです。そこで事業を立ち上げようと決意し、銀行に融資を申し出ますが、あえなく拒否されました。借金しなくても商売ができる方法を思案した末に、宅地建物取引士と損害保険代理店の資格を取得します。損保代理店の資格取得にはお金がかかりませんし、不動産の仲介は売りたい人と買いたい人をマッチングさせる事業であり、大きな元手は不要だと判断したからです。

その後も借金をしない経営に努め、今でも借入金ゼロ、手形ゼロ、自己資本比率60%です。

長尾 事業の立ち上げ時に借り入れできなかった経験が、健全な財務体質づくりに結び付いたのですね。タナベ経営との関係はどのように生まれたのですか。

土屋 田辺昇一先生の『経営の赤信号』(東洋経済新報社)発刊記念講演を北海道新聞社のホールで聴いたのが発端です。経営は初心者なので難しいことは分かりませんでしたが、商業高校出身なので財務諸表に関する話は理解できました。そこで田辺先生が述べられた「品質は人質(じんしつ)」という言葉を聞いて、「(労働組合での経験があるので)人の問題なら対応できる。財務も多少はできるから、経営をもっと勉強しよう」と思い、タナベ経営を訪ねました。

「イーグルクラブ」(現FCCアカデミー)という経営者向けの勉強会に参加したかったのですが、「法人でないと参加できない」と言われ、有限会社を設立。その後、「社長教室」という、よりハイレベルな勉強会に参加するために株式会社へ改組しました。タナベ経営の勉強会に参加するために、会社をつくったようなものです(笑)。

田辺先生との出会い以外にも、人の縁には恵まれました。例えば、ある競合他社の現場見学会に参加した時、同じ年齢の業界紙の記者と知り合い、「紹介したい人がいるから、会ってみないか」と言われたのがきっかけで、住まいのクワザワ(札幌市)の元取締役建築部長と出会いました。その人柄と博学を見込んで指導を仰ぐようになり、後に専務として迎え入れました。

長尾 土屋会長の行動力が結んだ縁ですね。田辺昇一は「人生は遺伝、偶然、意志、環境」とよく言っていました。土屋会長はそれを体現されています。

土屋 事業は順調に伸び、創業から8年で売上高100億円を達成しました。その勢いでFC(フランチャイズチェーン)を構えて100カ所以上の拠点を設けたり、地元工務店と合弁会社を立ち上げたりしますが、時代を先取りした省エネ提案は当時受け入れられず、不振に終わってしまいます。

長尾 そのような逆境を乗り越えて成長してこられました。多産多死の住宅・不動産業界にあってもつぶれず、創業から4代も続いている要因は何だとお考えでしょうか。

土屋 まず、天の声に導かれた使命感があったこと。次にタナベ経営で一生懸命に勉強したことですね。

長尾 手前みそになりますが、『経営の赤信号』を読んで経営に活用された効果は大きいと思います。営業と財務の両方を知っておられたことも大きいですね。そして、正直な経営に徹しておられます。

土屋 父親は近衛兵出身の大変厳しい人でしたから、その影響が強いと思います。「強く、正しく、明るく、美しく、堂々の人生を」という土屋家の家訓の下で、正義感が培われました。正直な経営を標榜する一環として財務面の潔癖さにこだわり、現在は七重に及ぶチェックシステムを設けています。

長尾 事業が成長したポイントは、「使命感」「正直な経営」「健全な財務」であり、それに「人材育成」が加わると思います。土屋会長は人づくりに多大なエネルギーを注いでおられますが、その想いはどこからきているのですか?

土屋 やはり、田辺先生の「品質は人質」という教えですね。正直、学歴へのコンプレックスもありましたから、会社を立ち上げて以来、経営に関しては貪欲に勉強してきました。師と仰ぐ方は100名ほどいらっしゃいますが、その中で田辺先生は一番接点があり、何度も指導を受けました。

お客さま・社会・会社の3つの「人」と「公」を象徴する土屋グループのシンボルマーク
お客さま・社会・会社の3つの「人」と「公」を象徴する土屋グループのシンボルマーク

働き方改革は「生き方改革」

長尾 昨今、重要性が叫ばれる「働き方改革」について、どのような感想をお持ちですか。

土屋 「残業をしなくても、その期の目標を達成した社員には、何らかの形で残業代相当額を還元すべき」と考えています。

というのも残業を減らすと、社員にとっては給料が減る。そんな自分で自分の首を絞めるようなことは、うまく作用しないのではないかと思うからです。

ここで重要なのは、必要な作業量をこなすための能力に関するベンチマーク(基準値)を厳格に決めること。社員は自主的に自己能力をベンチマーク以上に高めることが必須となります。

長尾 残業を減らしながらも収入を維持するために、社員は自己能力を向上させる必要があるということですね。

土屋 松下幸之助は、日本でいち早く週休2日制を導入した経営者ですが、導入する際、「一日休養、一日教養」を社員に促しました。大切なのは、残業を減らしてできた時間を使って生きがいを喚起し、能力を高めることです。

ここで浮かぶのは、日本資本主義の父と称される渋沢栄一の著書『論語と算盤』です。企業は熱心にそろばんをはじきますが、人間の在り方を問う論語についてはさっぱり関心がありません。しかし、昨今、世界中で深刻な問題となっている「格差」を是正するためには、人間の在り方=生き方をコントロールすることが重要。働き方改革は「生き方改革」でもあるのです。

大森 土屋会長は73年から生涯幸福設計プログラム「3KM」を実践されていますね。

土屋 個人の目標達成、会社の繁栄に加え、家庭の幸福も必要だと気付いたのが「3KM」の原点です。個人・会社・家族という「K」で始まる領域で幸せな人生を送るために、目標設定(Mark)および自己管理(Management)を行い、その実現に向けた意欲(Motivation)を引き出すための意識改革や実践手法をまとめたプログラムになっています。この「3KM」は優れた社員を育成する人材教育プログラムとしても好評です。

大森 土屋会長は「人間社長塾」を主宰され、経営者の育成にも力を注がれています。この塾はいつ始めたのですか?

土屋 2009年に、長男を社長にする時、創業3年以上の会社で2代目、3代目に当たる50歳までの経営者を50名集めてスタートしました。当初は息子に言いたいことをレクチャーして1年間で終了しようと思いましたが、好評で8年続いています。受講生がいて、私が話せる間は続けようと考えています。

大工職人の社内養成学校「土屋アーキテクチュアカレッジ」で、社員は生きた知識と技術を習得
大工職人の社内養成学校「土屋アーキテクチュアカレッジ」で、社員は生きた知識と技術を習得

タナベ経営 取締役副社長 長尾 吉邦 タナベ経営に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、13年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアント先の特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。
タナベ経営 取締役副社長 長尾 吉邦
タナベ経営に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、13年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアント先の特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。

哲学や思いを残し、未来へ引き継ぐ

長尾 土屋会長は昨年1月の株主総会において、グループの役職を全て降りられました。ご子息である社長の土屋昌三氏は、土屋会長の思考をしっかり受け継いでいると実感しています。

土屋 継承は4つに分けて考えています。まず、「資本」の継承。法定相続人である息子の土屋昌三に株式を集める仕組みにしていますが、それを除いた第一株主は社員持株会です。

2つ目は「経営」の継承。俗にいう「ヒト、モノ、カネ」の継承で、土屋HDが担当します。事業会社の社長が皆、土屋HDの取締役となり、土屋HDは貸借対照表の責任を持つことになります。

3つ目は「事業」の継承です。土屋グループの事業会社には営業、設計、施工、アフターサービス、メンテナンスなどの日常業務があり、これを継承します。つまり事業会社は、損益計算書の責任を持つことになります。

4つ目は「哲学(使命感)」の継承です。これは頭と口がまわる限り、私が担当します。新入社員研修やリーダー研修、役員研修などの際、1時間だけ時間を割いて講演しています。

長尾 未来の社員にも、会長が哲学を継承すべきではないでしょうか。デジタルで撮影して残せば、それが可能になります。

土屋 社内だけでなく社外の人にも、当社の哲学を引き継いでもらいたいですね。人間社長塾の講演は年間50時間に及び、ビデオで撮影していますから、それを活用するのもよいでしょう。

生き方には、個人の生き方・家族の生き方・会社や社会での生き方がありますが、社長や目上の人間が「こうやって生きろ」と一方的に指導するのは問題があります。

例えば、土屋グループの社員1000人に「社長になれ」と言うと、999人が挫折感を味わうことになり、「どうせ私は頑張ってもだめ」と自分の可能性を諦めてしまいます。そうではなく、一人一人が自分の価値観や目標、幸せ度合いに基づいた「自分の金メダル」を設定し、獲得に向けた努力を重ねていただきたい。すると全員が金メダルを取れるはずです。そして、自分の金メダルのレベルを徐々に上げていくのが人生の醍醐味です。

人生には「まさか」があり、思うようにはいかないもの。3日間は誰でも頑張れますが、4日目にはそうした「まさか」のアクシデントが発生して中断してしまいがちです。これによって人生を諦めないように目標を書き留め、アクシデントが過ぎた5日目に再チャレンジをする。このようなプログラムが用意できれば、誰でも自分の金メダルが取れるようになると考え、3KM生涯幸福設計研修で発表・実践しています。

ちなみに、現在は「終活6点セット」に取り掛かりました。孫に読ませるための自分史を書き、遺言状は公証人役場で作成し、エンディングノートをつけて、墓は高野山に設けるといった具合です。

長尾 田辺昇一は「事業ができて50点、承継ができて50点、合わせて100点」と言っていましたが、土屋会長はまもなく満点獲得ですね。本日はどうもありがとうございました。

創業以来、経営を猛勉強してきた土屋会長。 テープや書籍は今でも大切に保管している
創業以来、経営を猛勉強してきた土屋会長。
テープや書籍は今でも大切に保管している

タナベ経営 コンサルティング戦略本部 部長代理 チーフコンサルタント 大森 実 「クライアントの成長に向け、ビジネスモデルを共に創造するパートナー」をポリシーに、「顧客から選ばれ続ける」ビジネスモデルやマーケティング戦略の構築を支援。最近では新規事業の構築、ビジネスプラットフォームの構築によるアライアンスなどに従事。また、未来をつくるためのプロジェクトの推進、ビジョンづくり、次世代経営幹部の育成に定評がある。
タナベ経営 コンサルティング戦略本部 部長代理 チーフコンサルタント 大森 実
「クライアントの成長に向け、ビジネスモデルを共に創造するパートナー」をポリシーに、「顧客から選ばれ続ける」ビジネスモデルやマーケティング戦略の構築を支援。最近では新規事業の構築、ビジネスプラットフォームの構築によるアライアンスなどに従事。また、未来をつくるためのプロジェクトの推進、ビジョンづくり、次世代経営幹部の育成に定評がある。

PROFILE

  • ㈱土屋ホールディングス
  • 所在地:〒060-0809 北海道札幌市北区北9条西3-7 土屋ホーム札幌北九条ビル
  • TEL:011-717-5556
  • 創業:1969年
  • 資本金:71億1481万円
  • 売上高:244億8800万円(連結、2017年10月期)
  • 従業員数:790名(グループ計、2017年10月現在)
  • 事業内容:建設業を営む事業会社の支配・管理およびコンサルタント業務
  • http://www.tsuchiya.co.jp/

住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会

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2019年消費税増税・2020年オリンピック開催後の"次の一手"

社会構造や家族構成の変化に伴い、住まいや暮らしに対する価値観がめまぐるしく変化しています。その潮流の中で、躍進し続ける企業はどのような成長戦略を推進しているのでしょうか?
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