vol.5 「おさな子」の未来を
100年研究し続ける日本一企業
ジャクエツ 徳本 達郎氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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2016年3月号

 

最良の環境を子どもたちへ提供したい

 

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若松 戦略は理念に従います。経営理念にある「おさな子の為に基準となること」には、どのような思いが込められているのでしょうか。

 

徳本 日本には消防法や建築基準法はありますが、子どものための「規準」がありませんでした。

 

トイレを例に挙げると、公共施設はどこも床にタイルを貼り、汚れたら水で流すウエットタイプの設計が主流。また、男性用の便器は、どの年齢にも対応できるようにストール(床置)式が採用されてきましたが、子どもが使うとズボンが引っかかったり、体を支えるために汚れた便器のふちを手でつかんだりすることになる。子どもの使用環境から考えると、ふさわしい設計とは言えません。

 

そこで、当社ではトイレを部屋や廊下と同等に捉え、床に水を流さないドライ式を採用。便器も、子どもにとって使いやすく、清掃しやすいオリジナル商品を開発しました。

 

若松 子どもたちの体や動き、動線などを価値分析した施設や遊具をつくるのですね。

 

徳本 2007年に「第1回キッズデザイン賞」(キッズデザイン協議会)の大賞「経済産業大臣賞」を受賞しました。その際に評価されたのが、子どもたちの情報を収集した全国の調査データに基づいて開発ができる点です。そうした取り組みをさらに進め、2010年には国の標準的基準を上回る独自の「JQ遊具安全規準※」の策定に至りました。誰かが規準をつくらないと、子どもたちの環境は良くなりません。
※ 国内外の遊具に関する安全基準をベースに、全国の顧客から寄せられた事故につながりかねない「ヒヤリ・ハット」事例を反映し、より安全な製品づくりを行うためのガイドライン。JQはジャクエツクオリティを表す

 

若松 つくる側の理論ではなく、子どもを中心に環境を見直すことが大切ですね。まさに「顧客価値」です。日本では少子化によるマーケットの縮小が懸念されていますが、その影響をどのようにお考えですか。

 

徳本 子どもの数が減っていくのは事実ですが、数が減るほど子どもに対する親の思いは強くなります。都市部では待機児童の問題があり、施設も足りていません。また、これまで行政が振り分けていた保育園ですが、幼保一元化によって親が選ぶようになると幼稚園・保育園の環境や質のレベルが上がっていく。これらは市場が拡大していく要素になります。さらに、教育面ではIT活用が急速に広がっています。紙の絵本はなくならないでしょうが、幼児教育にも入ってくることは間違いない。そういった部分を捉える必要があります。

 

若松 私も「少子化=市場縮小」という、単純な公式は当てはまらないと考えています。その裏には新たな課題、新しいマーケットが必ず隠れ、生まれていますからね。

 

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(株)タナベ経営 代表取締役社長
若松 孝彦(わかまつ たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサ ルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業か ら中小企業まで約1000 社に及ぶ。独自の経営理論で全国 のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの 支持を得ている。 関西学院大学大学院(経営学修士)修了。1989 年タナ ベ経営入社、2009 年より専務取締役コンサルティング統轄 本部長、副社長を経て現職。『100 年経営』『戦略をつくる力』 『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

 

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