vol.5 「おさな子」の未来を
100年研究し続ける日本一企業
ジャクエツ 徳本 達郎氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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2016年3月号

 

子どもの可能性を広げる関連性・連続性のデザイン

 

若松 創業110年、120年、そして200年に向けての展望をお聞かせください。

 

徳本 2015年、子どもたちの環境を総合的に見直してみようと、各専門家を集めて「プレイデザインラボ」という研究を始めました。当社は従来、椅子やブロック、建物などを別々に開発していましたが、これは関連性・連続性に着目した研究です。

 

若松 中堅企業は自社の専門的価値を打ち出した「研究所(ラボ)」という部署づくりに挑戦すべきであると提言しています。顧客は多様化する以上に専門化しているからです。関連性・連続性のデザインとは、どのようなものですか。

 

徳本 例えば、遊具を園庭のどこに置くか、どの遊具の隣に置くかで子どもたちの遊び方は全く変わってきます。従来は、「こうして遊んでください」と大人が遊び方を決める遊具が多かったのですが、当社がプロダクトデザイナーの深澤直人氏とコラボレーションした遊具『DONUT(ドーナツ)』(下写真)を検証すると、面白いことが分かりました。直径2mほどの、ドーナツを輪切りにしたような形の回転する遊具を園庭に置くと、最初、そこに集まって回して遊んでいた子どもたちは、はずみを付けて園庭に散って行き、それぞれ違う遊具で遊び始めます。ぐるぐる回ったり滑ったりという遊びは、子どもたちをワクワクさせてエンジンをかけるのです。

 

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幼児向けFRP 製回転遊具『DONUT(ドーナツ)』。
お菓子のドーナツのようなリング型の座面が特徴。 子どもたちから自由な遊びの概念を引き出すことを目的に開発された

 

若松 なるほど。周辺の遊具も含めて「遊ぶこと」の価値が広がっていくわけですね。

 

徳本 その通りです。子どもはいろいろな遊び方を発見します。親が考える通りに遊ぶわけではない。遊具だけでなく、何かをつくる際には、それが子どもの行動にどう影響するか、どのような相乗効果を生み出すのかといった研究がもっと大事になってきます。総合的にデザインしないと、子どもにとって最良の環境にはならないのです。

 

若松 子どもの研究は奥が深いですね。従来型の子どもマーケットと捉えていては、これまでの枠を超えた商品は生まれない。デザインや環境、ライフスタイル、社会の課題など、切り口を変えて見てみないと。プレイデザインラボが先頭に立って変化に挑み、革新を起こしていただきたいです。

 

徳本 最良の「こども環境」をつくることがより良い社会をつくる一番の近道だと、社員に言っています。そこに投資することで、絶対的に豊かになる。昔から「三つ子の魂百まで」といわれますが、幼児期の環境がその後の人生を決めますからね。

 

若松 「日本は人でできている国」です。ソニー創業者である井深大氏も、晩年に0歳児教育に注力されたことは有名です。子どもへの投資は未来への投資。待機児童解消に向けたハードばかりが注目されていますが、ハードとソフトを一体化することで、大きな価値が生まれてくると思います。ミッションを追求し、「次の100年」を目指してください。本日は本当にありがとうございました。

 

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