vol.8 奉仕するリーダーの時代
サーバント・リーダーシップが組織経営をつくる
神戸大学大学院 教授 金井 壽宏氏 × タナベ経営 若松 孝彦

2 / 4ページ

1604_100nenmidashi

 

チームビルディングの在り方

 

若松 タナベ経営は、それを「組織経営」や「チーム経営」と呼んで提唱しているので共感します。既存の組織形態では変化の激しいマーケットに対応できず、事業が行き詰まる企業も少なくありません。マーケットへの適応という観点からは、組織をどう考えるべきでしょうか。

 

金井 過去、松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏が製品ごとの事業部制を敷いたことは1つの成功例です。全社戦略と事業部に分権化した組織の形が見事に当時の市場と合致しました。他には、ヤマト運輸の小倉昌男氏が考案した『宅急便』のような、他社に簡単にはまねできないビジネス・システムをつくり上げるのが理想です。ハードルは相当に高いと思いますが、発案者の強い信念を軸に、周りの社員が次々と面白い製品やサービスを仕掛けられる仕組み――発案自体を埋めていくような仕組みをつくることです。

 

若松 タナベ経営が提唱している「ファーストコールカンパニー宣言」の4つ目の宣言に「自由闊達に開発する組織」があります(【図表1】)。製品・サービスからビジネスモデルまでの開発を現場からの声で構築できる組織力、チーム力が求められます。ハードルは高くても、それを乗り越える仕組みづくりが不可欠です。企業は、「社長の寿命<事業の寿命<会社の寿命」でなければ存続できません。

 

201606_100taidan-02

【図表1 】ファーストコールカンパニー宣言 100年先も一番に選ばれる会社

 

金井 ファーストコールカンパニーのような5つの特徴を持った会社に求められるであろう2つ目のポイントは、経営トップをそばでサポートする右腕人材、パートナー人材の役割ですね。小倉氏も、都築幹彦氏という力強い右腕がいたから、宅急便を実現できたと語っています。

 

若松 ソニー創業者の井深大氏と盛田昭夫氏、ヒューレット・パッカード創業者のウィリアム・ヒューレット氏とデビッド・パッカード氏のような感じですね。天才と評価できるような経営者には、必ずパートナーがいます。非常に大切であり、組織経営の始まりでもあります。後継経営者の場合は、急に右腕人材をつくることは無理ですが、社内でジュニアボードを運営し、それに近い人材を選んだり、自らの内閣を育成したりできます。最良のパートナー人材や内閣を見極める方法はありますか。

 

金井 お勧めの方法の1つに「オートパーツ・エクササイズ」というものがあります。これは、社員の役割をエンジンやブレーキ、ステアリングといった想像しやすい自動車部品になぞらえて議論していく手法で、それぞれの社内での行動や役割を自覚したり、周囲が再認識するのに有効です。もし、社長がアクセル型なら、ブレーキになる人を右腕に据えるとよいかもしれません。

 

若松 それは興味深いです。自動車は、どの部品が欠けても目的地まで走行できないわけですから、組織や人材を生かす手法と似ています。後継社長は創業者の経営スタイルをそのまま引き継ぐのが難しいので、そうした組織学習で経営スタイルを見直し、組織経営を自覚することも一手です。

 

金井 創業者が命令で引っ張ってきた会社を、性格の違う子息・息女が承継した場合、「サーバント・リーダー」として力を発揮する方法もよいと考えます。これからの時代は、このリーダーシップ・スタイルの方が適切に機能します。サーバントとは「奉仕」の意味で、旧来の「トップのために社員がいる」という発想を逆転した「社員に奉仕(社員を支援)するためにトップがいる」という考え方の経営です(【図表2】)。この考え方を取り入れることで、社員の自主性が伸びるとともに、トップとの信頼関係やコミュニケーションが厚くなり、目標を達成しやすくなります。ただ、「何のために奉仕するのか」「なぜそのスタイルにするのか」という理念や目的は、常に忘れないように注意したいところです。

 

201606_100taidan-03

【図表2】支配型リーダーとサーバント・リーダー

1 2 3 4