vol.8 奉仕するリーダーの時代
サーバント・リーダーシップが組織経営をつくる
神戸大学大学院 教授 金井 壽宏氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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個人の能力よりも組織のケイパビリティーの方が強い

 

若松 「自由闊達に開発する組織」をつくるには、現場に権限を委譲し、顧客と対話をしている社員の意見がトップに入る組織デザインが必要です。米歴史学者のアルフレッド・D・チャンドラーJr. の言葉に「組織は戦略に従う」がありますが、私は自分のコンサルティング経験から、「組織は戦略に従い、戦略は理念に従い、理念は組織で経営されてこそ成果となる」ことを導き、提唱しています。サーバント・リーダーシップは、まさにこれに合ったリーダーシップ・スタイルです。理念(戦略)を実践し、成果に変えるために大事なことは何でしょうか。

 

金井 まずは社員に対する徹底したコミュニケーションです。理念を実践した成功例やチャレンジ例をしっかりと評価すること、理念に沿って社会の役に立っている自社に誇りを持ってもらうことなどによって、経営トップの考え方の浸透を図ることが大切ですね。

 

若松 「宗教は信じた者が救われるが、理念は救われた者が信じる価値観」。すなわち、成果が出ない理念は信じてもらえず、組織では機能しません。そして、人は理念に加えて評価と報酬があってこそ、モチベーションを高めて動くものです。これらの仕組みづくりの課題も、先ほどのパートナー人材のいるチーム組織によって解決できそうですね。

 

金井 個人の能力より組織のケイパビリティー(※2)の方が断然、持続性において強い。そして、後者は簡単には他社に模倣されません。優れた個人の能力は、その人が組織を離れるとなくなってしまいますが、組織能力は違う。何事も組織として見ることが重要なのです。また、経営者個人と組織のライフサイクルを照らし合わせ、ある時点になったら次世代経営者の育成、リーダーシップのバトンタッチを行うべきです。
※2 企業が全体として持ち、持続する競争優位性のもととなる組織的な能力

 

 後継者は40代の人材がよいと思います。その人なりの経営を本当に確立するには10年から15年はかかります。「若いからまだ早い」という感覚は持たない方がよいでしょう。新任経営者の成長期間は、先代社長も共に勉強し続けることが大切です。学びに年齢は関係ありませんから。

 

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(株)タナベ経営 代表取締役社長
若松 孝彦(わかまつ たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタン トとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業ま で約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカ ンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。 関西学院大学大学院(経営学修士)修了。1989年タナベ経営 入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社 長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共 にダイヤモンド社)ほか著書多数。

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