vol.8 奉仕するリーダーの時代
サーバント・リーダーシップが組織経営をつくる
神戸大学大学院 教授 金井 壽宏氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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多様なリーダーシップを生かせる組織デザイン

 

若松 タナベ経営では40代の人材を「戦略リーダー」と捉え、最も成長する年代と位置付けています。

 

金井 確たるリーダーシップを発揮できるようになるのが、入社から20年ほどキャリアを積んだその年代です。リーダーに足るスキルやノウハウの7割はその人自身の経験で積み上げた部分で、2割は先輩リーダーを手本にした部分、残りの1割は会社の研修などで学んだ部分。世の中にはさまざまなタイプのリーダー人材がいますが、どんなリーダーが自社の次のトップにふさわしいのかを見定めることが肝要です。

 

若松 例えば、どのようなリーダーシップのタイプが挙げられますか?

 

金井 ラグビー元日本代表監督の平尾誠二さんから何度となく教えてもらったのですが、チームにはゲームリーダー、チームリーダー、イメージリーダーの最低3人が必要だそうです。ゲームリーダーは嫌われ者でもよいからとにかく試合を勝ちに導く人。チームリーダーはメンバーをまとめる人徳やスピリットを持つ人。イメージリーダーは絶対負けるだろうという相手に臨んだときに、ゲームリーダーやチームリーダーが持たないとっぴなアイデアを上手に効果的に出す人。チームが組織として真の強さを発揮するには、1人のリーダーだけではダメとのことでした。

 

若松 個性を生かしたリーダーシップの役割分担ともいえそうです。多様なリーダーシップを駆使して全体をけん引するスタイルは、これからの組織の在り方に近い気がします。

 

金井 企業におけるリーダーシップには大抵、ビジネス推進のタスク軸と集団のメンテナンス軸という課題が存在します。その両方を1人の人間ができるに越したことはないのですが、もしもそうした人材がいないのなら、組織の機能分担も含めて何人かで分け持てばよいのです。先述したトップの右腕人材、パートナー人材の重要性もそこにつながります。

 

若松 極論を言えば「全社員がリーダーたれ」「随所に主となれ」。多様なリーダーシップの存在を受け入れることが組織を活性化し、会社を100年経営へと導く秘訣なのかもしれません。

 

金井 ですから経営トップとしては、社員個々が持つ「リソースの価値」をきちんと把握し、説明できることが最低限の責務です。例えば、社員に「今の君はこんな状態だけど、ここを磨けばすごく良くなるぞ」と気付きを促すことを繰り返していく。そうすると自然とリーダー人材が増えていくでしょう。トップは「リーダーを育むリーダー(leaderdeveloping leader)」です。

 

若松 私は「長所連結主義」と呼んでいます。サッカーに例えるなら、各選手の長所(技能)を生かしてパスを回さないと、ボールはゴールに入らないということです。企業組織も、一人一人の長所をつないでいかないと、目指すべきゴールにはたどり着けません。私も経営者として、また経営コンサルティングの際に、常々その視点を重視しています。金井先生の言葉から、さまざまな気付きをいただきました。本日はありがとうございました。

 

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神戸大学大学院 経営学研究科 教授
金井 壽宏(かない としひろ)氏
1954年、神戸市生まれ。京都大学教育学部卒業。マサチューセッ ツ工科大学でPh.D.(マネジメント)、神戸大学で博士号(経営学) 取得。神戸大学経営学部教授を経て1999年より現職。リーダー シップやキャリア、モチベーションなど、働く人の生涯にわたる発達や、 組織の中の人間行動の心理学的・社会学的側面に注目し研究を 行っている。著書に『リーダーシップ入門』(日経文庫)、『変革型ミ ドルの探求』(白桃書房)、『企業者ネットワーキングの世界』(白桃 書房)など多数。

 

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