vol.9 「紙を超える紙」を創造する100年企業
阿波製紙 三木 康弘氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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2016年7月号

 

紙の可能性を追求し事業領域を広げる

 

若松 現在は、自動車関連資材、水処理関連資材、一般産業用資材という3本柱で特殊紙事業を展開されています。

 

三木 売上高は自動車関連資材が約102億円、水処理関連資材が約50億円、一般産業用資材が約18億円といったところですが、市場戦略や事業戦略を目指したというよりも「ご縁」を生かした結果です。

 

例えば、自動車関連資材は1960年から開発をスタートしましたが、始まりは祖父の三木與吉郎(第13世)が社長を務めていた徳島バスからの開発依頼でした。当時、導入直後の箱形バスの不具合が続く中、同社の技術者だった祖父の義弟はエンジン用フィルターに問題があると考え、米国では濾紙(ろし)にコットンリンターが使用されていることを突き止めました。そこで当社に相談が持ち込まれ、いろいろと教えてもらいながら開発を進めたのです。

 

若松 その技術が国産車のエンジン用フィルターのスタンダードになっていますね。水処理関連資材への参入のきっかけはいかがでしたか。

 

三木 日本の繊維メーカーがポリエステルの短繊維を開発し、当社にアプローチしてきてくださいました。それを紙に加工したところ、そこそこ良い製品はできたのですが、当時はほとんど売れませんでした。

 

用途展開を模索していたところ、「純水をつくる水処理膜モジュールの歩留まりが悪い」という話を耳にしました。詳しく聞くと、水処理用フィルターの素材として使われている乾式不織布は分厚く目が粗いため、濾過(ろか)面積が少なくて造水効率が悪く、水の純度も不安定とのことでした。

 

この乾式不織布に代わる素材の開発依頼を受け、当社が提案したのがポリエステル100%の合成繊維紙。改良を重ね、これが急速に広まりました。また造水コストを下げることにも寄与し、水処理膜市場が拡大しました。最初からうまくいったわけではありませんが、期待を込めて設備投資を行ってきた成果が出たのです。

 

若松 これらは現在でいうところの「オープンイノベーション」ですね。顧客課題からテーマを設定して、顧客と共に事業開発していることがポイントであると感じます。

 

三木 水処理関連資材も一般産業用資材も、偶然のご縁からお客さまが求めているものを一緒に開発した結果、市場の拡大とともに柱となる事業に成長していきました。今後は偶然の確率を高めていく活動をしていかなければなりません。

 

若松 顧客課題を解決する開発スタイルが風土として根付くといいですね。タナベ経営の創業者・故田辺昇一は、「人生は遺伝・偶然・環境・意志の産物」と言いましたが、ご縁に意志が加わって、現在の事業拡大につながったのだと思います。

 

阿波製紙㈱ 代表取締役社長 三木 康弘(みき やすひろ)氏

阿波製紙㈱ 代表取締役社長
三木 康弘(みき やすひろ)氏
1963年生まれ、徳島県出身。87年慶應義塾大学法学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)に勤務。92年10月阿波製紙入社、同年12月より現職。94年からTHAI UNITED AWA PAPER 会長、2003年から阿波製紙(上海)董事長を兼任するほか、徳島ニュービジネス協議会会長、四国経済連合会常任理事、四国生産性本部副会長・徳島県支部長、四国ニュービジネス協議会連合会会長、日本ニュービジネス協議会連合会副会長を務める。2011年藍綬褒章受章。

 

 

 

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