vol.9 「紙を超える紙」を創造する100年企業
阿波製紙 三木 康弘氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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2016年7月号

 

株式上場でマネジメントの強化「紙を超える紙」の開発に注力

 

若松 2012年に東証2部上場を果たされました。ここ数年、上場を目指す企業は増加傾向にありますが、地方の材料メーカーに限れば株式上場にこぎ着けるケースは多くありません。上場後に経営は変わりましたか。

 

三木 資本政策の目的もあって株式上場したのですが、私個人で言えば、オーナーシップの自覚がいっそう増したように思います。自覚とは、株主に対する経営責任です。業績達成への責任感が格段に強くなりました。

 

また、役員や会社全体のマネジメント意識が向上しています。上場前は管理に甘い部分もあったのですが、株式上場へ向けた内部統制の仕組みづくりを通して透明性が向上しましたね。各部署の業務手順などを見える化したことで社内の仕組みを整理できました。

 

若松 私もコンサルティングで多くの上場アドバイスをしてきましたが、株式上場は手段であって目的ではありません。会社によって目的は違うのです。阿波製紙が上場という手段を使って経営改革を進めた意義は大きく、次の100年を目指す上でも節目となりました。今後は海外展開も含めて新たな市場開拓が必要です。

 

三木 エンジン用フィルターはグローバル化が進んでいます。当社は1994年にタイに工場を建設して96年から製造を開始。97年に通貨危機などもありましたが、今は海外に工場があるから成り立っている状況です。

 

日産自動車などはルノーと部材の共有化を図っていますから、より競争力を付けていかなければなりません。付加価値の高いものは国内で製造する一方、それ以外は海外での製造を進めてコスト競争に対応していきます。

 

若松 自動車関連資材、水処理関連資材、一般産業用資材に続く第四の事業の柱づくりへ、どのように取り組んでいらっしゃいますか。

 

三木 今、注力しているのが炭素繊維です。炭素繊維を使った紙では世界でトップクラスだと自負しています。機能としては熱伝導性や強度に優れており、素材も活性炭や黒鉛などさまざまありますから、組み合わせを変えながら新しい機能を開発しているところです。

 

若松 用途開発としての具体的な展開をご紹介ください。

 

三木 新製品の1つ、『CARMIX熱拡散シート』は熱伝導性があり、半導体向けの放熱材料として電子部材市場に期待しています。機能的にも従来材料と同等以上であることに加えて、紙には曲げても折れないメリットがあります。

 

若松 (シートを触りながら)本当に曲げても折れませんね。紙の可能性に驚きます。常識にとらわれず、「これが紙でできるの!?」と“驚き”を与えるという開発精神を感じます。

 

三木 『CARMIX CFRTP マット』は鉄と同等の強度があります。ポリプロピレンやナイロンなどの熱可塑性樹脂繊維と炭素繊維を水中で均一に分散させ固めてマット化したもので、積層してプレスすることで複雑な成型が可能です。世界初の技術で、軽量でさびず、リサイクル繊維が使えるなどのメリットがあり、自動車向けを目指しています。

 

若松 環境配慮への要請はますます強くなっているので、循環型製品は付加価値が高くなります。

 

三木 紙は他の材料と組み合わせることができる中間素材で、限りない可能性を持っています。特殊紙・機能紙という言葉を積極的に使い、「紙を超える紙」をつくろうと日夜挑戦しています。

 

㈱タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ たかひこ)

㈱タナベ経営 代表取締役社長
若松 孝彦(わかまつ たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

 

 

 

 

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