vol.11 タクシーの保有台数、日本一。地域密着の生活環境支援モデルへ挑む
第一交通産業 田中 亮一郎氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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2016年10月号

 

第一交通産業の本社にて

第一交通産業の本社にて
(左)第一交通産業 代表取締役社長 田中 亮一郎 氏
(右)タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦

 

2016年3月期(連結)に売上高1000億円を突破した第一交通産業。
M&A戦略で規模を拡大し、タクシー・バスの保有台数が9000台以上(2016年3月末現在)と全国1位になった。
同社は国内の各地方を舞台に、住宅販売や不動産、介護福祉、病院と多彩な事業をコングロマリット化し、地域の快適な生活環境を支える新たなビジネスモデルへ挑んでいる。

 

後継者不足の会社を救うM&A

 

若松 創業者名誉会長(取締役)の黒土 始(くろつち はじめ)氏が創業されてから56年。今や第一交通産業は、タクシー業界で全国1位の規模です。2番手との差はどれくらいあるのですか。

 

田中 1960年に黒土がタクシー5台で創業し、M&Aで拡大して現在は全国約9000台の規模になりました。2番手は4000台くらいですね。私が社長に就任したのが2001年。翌02年にタクシーの数量規制が廃止され、「より自由に事業を展開できる」と思いましたが、2008年の供給抑制策(国土交通省通達)以降は再び規制の局面です。

 

若松 M&A戦略でエリアと事業を拡大されていますが、いわゆる敵対的買収は行わないスタイルですね。

 

田中 規制緩和やその後の再規制で将来に不安があることや、ディスクロージャー制度の大幅な見直し(2000年3月期)で企業の決算が単体から連結中心に変わったことに伴い、大手がタクシー事業の売却に動いたため、結果的に当社のM&Aが増えました。

 

タクシー会社はどこも運賃や売り上げが給料に直結する仕組みなので、強引に買収すれば乗務員は他社に移ります。車両だけ買っても意味がないので、敵対的買収は行いません。

 

若松 M&Aで統合される企業には、業績不振や後継者の問題、マーケットの縮小など、いくつかのパターンがあります。第一交通産業のM&Aはどのケースが多いのでしょうか。

 

田中 圧倒的に後継者不足ですね。社長の子息が他社に就職して戻らないケースが多いように思います。

 

国土交通省によると、ハイヤー・タクシーの法人事業者数は、2002年度の7374社から2014年度で1万5923社と、12年間で2倍以上に増えています。また、ここ10年はタクシー無線のアナログからデジタルへの切り替えや、ハイブリッド車の増加などで大きな投資が必要になり、経営環境は厳しいといえるでしょう。さらに、30台規模の会社では、運行管理者は社長のみで、事故処理や労務管理、顧客対応まで全てが社長の仕事。そんな厳しい状態の会社に、後継者としては戻りにくい。昔のように「運転手が乗りたい時に乗る」ではうまくいかないのです。

 

当社がこうした会社をM&Aすると、出勤時も退勤時も管理職が対応するようになる。まず、その管理職の姿にほとんどの乗務員が驚きます。また、当社の北九州エリアでは、600台に対する1日の無線配車の回数が7000回を超えます。1台平均で約12回ということです。1台の営業回数は1日20~25回なので、半分くらいは当社が提供した仕事になります。無線配車は、全国平均で1日1~2回程度なので、乗務員からすれば仕事が増えるメリットがあるのです。

 

当社がM&Aをすることで、職場環境は大きく変わります。車両が新しくなり、乗務員が休憩や納金をするスペースも広くなります。

 

若松 上場(福岡証券取引所)されており、ガバナンスやコンプライアンスが制度化されていますから、統合された企業の職場環境に良い変化を起こすことができます。その変化を体感してもらうことは重要ですね。労働集約産業は、プラスの社風を体感すると気持ちが離れなくなります。

 

田中 お客さまから感謝されることも、モチベーションアップに欠かせません。介護・福祉タクシーや見守りサービス、買い物代行など多様なサービスを導入し、お客さまから「ありがとう」と言われる回数を増やすことが大切です。

 

私たちは、新しいサービスを始める際、有志に手を挙げてもらいます。新たなサービスに固定客が付いて売り上げが上がるのを見せると、他の乗務員も「私もやってみよう」となる。全員に強制すると逆効果です。

 

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第一交通産業㈱ 代表取締役社長
田中 亮一郎(たなか りょういちろう)氏
1959年生まれ、東京都出身。全国朝日放送(現テレビ朝日)を経て、85年第一交通産業取締役に就任、2001年より現職。福岡県タクシー協会会長、北九州商工会議所副会頭、九州乗用自動車協会会長、福岡経済同友会副代表幹事、北九州市観光協会会長など公職も多数務める。趣味はゴルフ、テニス、読書。

 

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