vol.13 イノベーションとコスト・リダクションで継続的成長と高収益体質を実現
カルビー 伊藤 秀二氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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2016年12月号

 

新事業開発には「分権」が必要

 

若松 2011年からアンテナショップ「Calbee+(カルビープラス)」を展開されています。一消費者としての感想ですが、カルビーの印象が変わりました。商品ができる過程を間近で見て、出来たてのおいしさを体験できる「コト価値」のマーケットに着眼した新事業といえます。

 

伊藤 Calbee+は社員の提案から生まれた店舗で、どのような店にするかは社員に全て任せました。開店前は「お客さまが来てくれるだろうか」と心配でしたが、ふたを開けてみると、とても多くのお客さまが並んで購入してくださいました。

 

お客さまと直接、接する機会ができましたし、百貨店で販売するような高価格帯商品の開発にもつながった。何より、並んで買ってくださるお客さまの姿を見たり、声を聞いたりすることは、社員にとって良い経験になっていると思います。

 

若松 私たちは「モノ余りでコト不足の時代」と表現していますが、今はモノが余っている半面、コトとしての新たな価値が不足しています。顧客の声や反応と間近に接することで新しいアイデアが生まれ、カルビーという会社や商品の価値が高まるきっかけになるのではないでしょうか。

 

伊藤 そうした展開に期待しています。新しいアイデアは、現場から生まれるものです。だから、私は得意先や自社工場を回ることに力を入れています。自分の目で現場を見て判断するためです。

 

しかし、判断した後は現場に任せなければなりません。いわゆる「分権」です。現場が自主的に取り組んでいるところにトップが口を出すと、社員はその仕事が自分の仕事だと思えなくなってしまいます。トップのメッセージを現場に伝えつつ、どう任せるかという「任せる技術」が大切です。

 

若松 トップが全てを見ることができない企業規模になったら、分権が不可欠です。「自由闊達(かったつ)に開発する組織」を創るためには、権限と責任を持って事業や商品を生み出す「戦略リーダー」を育成していかねばなりません。これが100年企業の条件でもあります。

 

伊藤 分権化するためのプロセスとして、透明化や簡素化も必要です。トップが持っている情報をオープンにしないまま現場に任せると最悪の事態を招きかねませんし、仕組みや決裁権限などが複雑だと分権できません。自社の判断基準を理解している人材が、現場で感じ取ったニーズやトレンドを踏まえ、自分たちで仕事を進めることができる環境を整えることです。

 

幸い、食品分野は技術革新によって市場が極端に変わることはありません。例えば、携帯電話市場でガラケーがスマートフォンに代わったように、急激に縮小することは少ないのです。しかし、お客さまと融合する努力を怠れば、少しずつ市場は小さくなっていきます。

 

若松 劇的な市場変化がない分、顧客のちょっとした変化を見逃さない努力が欠かせませんね。

 

伊藤 例えば、『じゃがりこ』はおやつとして食べる人が大多数ですが、お湯をかけてポテトサラダ感覚で食べたり、細かく折ってスープに入れて食べたりする人もいます。ジャガイモを蒸(ふか)してつぶし、棒状に固めた『じゃがりこ』は、素材や作り方からすれば、ご飯の代わりに食べてもおかしくありませんが、子どもがそんな食べ方をすると叱られるでしょうね(笑)。しかし、具材のバランスを変えて、時間をかけて食事のイメージをつくっていけば、そうした用途が広がるかもしれません。

 

若松 生活スタイルや食は変化していきます。変化する顧客価値のあくなき追求。そこに軸を置き、恐れずに挑戦されていく姿勢に共鳴します。

 

伊藤 人口減少に伴い国内市場の縮小が懸念されていますが、食の変化に着目して現代の食事に何が必要かを考え続けることで、新たなジャンルが見えてくると思います。消費者が満足していない部分は残されているわけですから、そこをどう捉えるかが大事ですね。

 

若松 ものづくりへのこだわりと、顧客価値に合わせる柔軟なマーケティング。それがカルビーの企業文化なのでしょうね。原材料の生産から直営店の運営まで垂直統合されていますから、ニーズに合わせるバリエーションは豊富にある。商品とニーズをどうマッチングされるのか、今後も非常に楽しみです。

 

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カルビー 代表取締役社長兼COO
伊藤 秀二(いとう しゅうじ)氏

法政大学経営学部卒業後、1979年にカルビー入社。1999年関東事業部長、2002年執行役員(消費者部門担当)を経て、2004年取締役執行役員じゃがりこカンパニーCOO。2006年取締役常務執行役員CMOマーケティンググループコントローラー。2009年代表取締役社長兼COO就任、現在に至る。

 

 

 

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