vol.15 子どもが夢中になるリアルな世界「キッザニア」
– 学びと遊びの垣根を越える“エデュテインメント”を開拓 –
KCJ GROUP 住谷 栄之資氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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2017年3月号

 

心を揺るがす体験で顧客価値と一体化する

 

若松 昨今は、音楽CDの販売が低迷する一方、ライブやフェスなどでは人があふれ返っています。「モノ余りでコト不足の時代」とタナベ経営は表現していますが、実際に体験した感動や一体感がかつてないほど求められている。まさに「先見性」です。オープンから10年が経過しても多くの人が訪れているのは、キッザニアが提供する職業体験が子どもの心に響いている証拠です。お孫さんが初めて体験したときと同じ感動が、今も続いています。

 

住谷 施設も本物そっくりに作っていますし、パビリオンのスタッフもなり切って仕事をしています。そのせいか、職業体験をサポートするスタッフの中から実際にその職業を志す人まで出てきています。例えば、CA(キャビンアテンダント)役をしているスタッフが航空会社の採用試験を受けたり、消防署パビリオンで毎日消火活動を子どもたちとしていたスタッフが国家試験を受けて消防士になったり。パビリオンの仕事を通して、その仕事のやりがいに気付いたり、「市民を守る」というミッションが自分のミッションと一体化するのでしょう。本来、仕事にはこうした思いが大事だと思います。多少つらいことがあっても乗り越えられる糧となりますから。

 

若松 それは想定外の効用だったのかもしれませんね。やはり、顧客とスタッフ、スポンサーが一体となったライブ感が、時代に求められているのだと感じます。私はこれを「顧客価値との一体化」と呼んでいます。そうした空間をつくる上でスタッフが担う役割は大きいと思いますが、人材育成において重視されていることはありますか。

 

住谷 キッザニアは「エデュテインメント」という言葉を掲げていますが、もっと広く言えば、私たちの事業は「ホスピタリティー産業」だと考えています。ホスピタリティーで大切なのは、お客さまを思う心。多くの人が集まる施設ですから一定のマニュアルは必要ですが、それに頼り過ぎるとホスピタリティーからかけ離れてしまう。スタッフには、もっと個性を出してほしいと思います。最近では、企業内研修の施設としてもキッザニアを使う企業が増えています。ホスピタリティーは共通のスキルなのだと感じています。

 

若松 まさに「教えることは学ぶこと」ですね。マニュアルに沿った画一的なサービスでは、顧客満足度を高めることは難しく、状況に応じた対応や心遣いに人は感動するもの。最近注目を集めているビジネスを見ても、「高い心の揺らぎ」を引き出しているところほど顧客の支持を集めているように思います。私たちコンサルタントはビジネスドクターであり、コンサルティングファームは会社の病院。ですから、ホスピタリティーに対する考え方に非常に共感します。

 

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KCJ GROUP
代表取締役社長兼CEO 住谷 栄之資氏

1943年和歌山県生まれ、大阪府出身。1965年慶應義塾大学商学部卒業後、藤田観光に入社。新規事業開発部でホテルレストラン事業に携わったのち、WDIに入社し取締役外食担当に就任。2000年代表取締役社長に就任。退任後、2004年キッズシティージャパン(現KCJ GROUP)を設立。2006年10月東京・豊洲に「キッザニア東京」、2009年3月兵庫・甲子園に「キッザニア甲子園」をオープン。著書に『キッザニア流! 体験のすすめ』(ポプラ社)。

 

 

 

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