vol.18 物流価値で小売業の商流を変える流通革命
– 低温食品物流の
 ファーストコールカンパニーへ挑む –
丸和運輸機関 和佐見 勝氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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2017年6月号

 

丸和運輸機関 代表取締役社長 和佐見 勝氏(左)と、タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(右)

丸和運輸機関 代表取締役社長 和佐見 勝氏(左)と、タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(右)

 

「桃太郎便」のブランドで全国展開する丸和運輸機関は、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)の先駆者としてマツモトキヨシやイトーヨーカ堂をはじめ、数々の企業の経営効率化に貢献してきた。他社が手掛けていないホワイトスペースの創造によって物流ビジネスの可能性を大きく広げてきた同社が、次なる成長マーケットとして注力するのが低温食品物流事業だ。同市場のスケールは3400億円とも推定される。トラック1台から創業し、年商603億円、従業員数約1万名(パート含む)の東証1部上場企業へと育て上げた代表取締役社長の和佐見勝氏に、事業戦略と展望を伺った。

 

低温食品物流でナンバーワン企業を目指す

 

若松 タナベ経営との長いご縁に感謝します。丸和運輸機関は、企業の物流を丸ごと請け負う3PL事業を強みに事業を拡大。2015年には東証1部上場を果たすなど、強固な経営基盤を築いていらっしゃいます。

 

和佐見 今、当社が選択集中している事業が「低温食品物流」です。国内の市場規模は、スーパーマーケットとコープ(生活協同組合)を合わせておよそ17兆円。そのうち仕入れ費用は2分の1、つまり8.5兆円です。われわれが狙う物流費はその約4%ですから、市場規模はおよそ3400億円となる。その市場においてシェア50%を目指しています。

 

若松 現在も保冷・保温物流はありますが、常温物流というのが実情です。そこに一歩踏み込んで、低温食品物流を手掛けるわけですね。

 

和佐見 日本は少子高齢社会です。高齢化するほど人は食に「おいしさ」を求めるもの。おいしさの命は「鮮度」であり、それには「温度管理」が不可欠です。きちんと温度管理された商品を売ることで、「このお店の商品は鮮度が良い」とお客さまから言っていただけるような新たな小売業モデルになっていただくこと。おいしさをお客さまに届けるロジスティクスの構築が、われわれの役割だと考えています。

 

若松 スーパーマーケット(SM)にとっても鮮度の良さは大きな競争優位性になります。顧客課題を解決する付加価値の高い物流サービスです。

 

和佐見 一般的に「物流はコスト」と言われますが、私は「物流は価値」だと言っています。当社は小売業に特化した3PL事業を得意としていますが、他社との最大の違いは商流の提案ができること。物流だけではメリットは限られますが、商流に着眼することでより大きな価値をお客さまに提供できます。例えば、年商1000億円のスーパーマーケットであれば仕入れ額は500億円、物流費は20億円となる。この時、物流費を10%削減しても2億円ですが、仕入れ額を2%削減できれば、10億円のコストダウンにつながる。1%ロスをなくせば5億円となる。商流に着眼すれば、物流よりも大きなコストダウンが可能になります。

 

若松 物流の仕組みで物流コストそのものを効率化する提案に加えて、商流を変える提案力が他社との違いになっていますね。商流ビジネスへ着眼された点が良い意味での業界の非常識戦略です。

 

和佐見 2001年にRCC(整理回収機構)から依頼され、福島県のあるスーパーマーケットチェーンの再建に取り組みました。今の会社と業種は違いますが、私自身は運送業を始める前に青果店を営んでいた経験があります。再建期限は5年間。人をリストラしないで立て直すという条件でした。普通なら不採算店の閉鎖から着手するところですが、市場や卸の中間マージンを減らすために、青果物を産地から直接仕入れる方法でコスト消滅に取り組みました。これが商流改革です。

 

さらに、物流センターを建てて自社物流(卸売の物流から切り替えたシステム)に切り替えたことで、商品が物流センターを通過する際に発生するセンターフィーも省けました。1%ですが大きかったですよ。ここから本格的な立て直しに向けて、現在のネットスーパーの原型となる宅配「ピンポーン便」をスタート。再建への道筋をつくりました。この商流から仕組みを変えて、コスト消滅を実現した経験が、現在の低温食品物流の原点となっています。

 

若松 一連の再建策は、物流ソリューションからしか発想できないでしょう。私自身も流通業の再建を多く手掛けてきましたが、物流と商流の断層を結び付けて収益力を高めていく発想は、分業をしている小売り企業のテキストにはないはずです。

 

 

 

 

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