vol.20 年輪経営でじっくり育む「いい会社」
みんなが幸せになるために会社は存在する
伊那食品工業 塚越 寛氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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2017年8月号

家庭用寒天「かんてんぱぱ」で知られる伊那食品工業は、国内寒天市場のシェア8割を占めるファーストコールカンパニー。
創業以来48期連続増収増益という驚異的な実績を持つ同社だが、その本質は社員のハピネス(幸せ)を追求する独自の経営哲学にある。混迷の時代に会社はどうあるべきか ――。
「売上高や利益は企業存続の手段にすぎない」と言い切る取締役会長の塚越寛氏に伺った。

 

社員のハピネスの総和こそ企業価値

 

若松 ここ「かんてんぱぱガーデン」は心が落ち着くような、素敵な場所ですね。この対談前にガーデン内の「そば処栃の木」に昼食で立ち寄ったのですが、予約も何もしていなかったのに「タナベ経営さんですね」とスタッフの方に声を掛けていただきました。

 

塚越 今回の対談のことをどこかで聞いたのでしょう。当社は社員に対して秘密をつくらず、何でもオープンにしています。会社は一枚岩になることが大事。そのためにはコミュニケーションです。私たちは社員旅行を毎年実施しており、1年おきに海外に行くのもそのためです。特に、2018年は創業60周年ですから、ヨーロッパへ行こうと計画しています。

 

若松 ヨーロッパ旅行は社員の皆さんにとっても良い記念になりますね。塚越会長は日頃から「社員を幸せにするために会社がある」と明言されています。

 

塚越 社員を大切にすると、目に見えて社内の雰囲気が良くなります。それがモチベーションにつながることを、これまでの経験から確信しています。今でこそ採用に苦労しなくなりましたが、創業からしばらくは人手不足が深刻でした。社員の定着率も低かったため、少しでも長く働いてもらえるように職場環境の改善に取り組んできました。常に、「どうやったら社員が楽になるか」「働きやすくなるか」という視点で、社員のためにお金を使う。こうした会社の姿勢が伝わるとモチベーションは上がりますし、環境改善は自分のことですから社員も真剣に考える。考える習慣が身に付いてより良い提案が出るようになる。そうして会社が少しずつ良くなっていくのです。

 

若松 社員が成長した分だけ企業が成長する、ということですね。しかし、昨今は売上高や利益だけで企業の成長や良さを測ろうとする風潮が強くなっているように感じます。

 

塚越 そうした考え方はあまりに短絡的だと思います。売上高を成長と捉えると、「自分だけが儲かればいい」となってしまう。利益についても、払うべきものを払わなければ会社の利益は増えますが、それでは周囲は豊かになりません。使うべきところに全部使った後に残ったものが利益です。だから私はいつも「利益はウンチ」だと言っています。人間は、排せつするために食べているわけではありませんね。もちろん、利益は大事です。利益がないと会社は経営できませんから。

 

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木漏れ日の美しい「かんてんぱぱガーデン」

 

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