vol.22 伝統と革新でメード・イン・ジャパンのサービスを世界へ
帝国ホテル 定保 英弥氏 × タナベ経営 若松 孝彦

2 / 3ページ

1604_100nenmidashi

2017年12月号

 
201712_02
 

期待以上の価値を提供しようとすることで
人材は成長していくものです

 

体験から学び、現場力を高め帝国ホテルクオリティーを磨く

 

若松 2013年に社長に就任されてから4年たちましたが、マネジメント上ではどのようなことを大事にされていますか。

 

定保 社長就任後も4年ほど東京総支配人を兼任していました。そのころは、朝はまずレストランを回ってお客さまにお会いしてから打ち合わせなどを行い、その後、チェックアウトされたお客さまのお見送りやチェックインされるお客さまへのごあいさつという毎日でした。ホテルのマネジメントとグループ全体の経営では立ち位置が変わりますが、兼任時代は総支配人として現場に重点を置いていました。私共の本業はホテル業ですから、サービスを尽くしてお客さまにご満足いただくことが最も大事なこと。ファンづくりの最前線に立つ総支配人という立場で経営に携われたことは、良い面が多かったと思います。今でも現場に顔を出したり、営業担当者と同行したりするなどして現場の声を聞くように心掛けています。

 

若松 私は多くの経営者とディスカッションしますが、現場を軽視したり、現場から外れたりする経営者はいません。「現場が大事」と声をそろえて言われます。人材育成においても、基本となるのはやはり「現場力」です。

 

定保 私自身、入社してすぐにベルマンや客室の清掃、調理など、さまざまな現場を経験しました。研修期間は1年半ほどありましたが、最後の数カ月は長野県にある上高地帝国ホテルで徹底的に接客の基本とオペレーションを叩き込まれたことで、ホテル全体の運営を理解できるようになりました。現在も、総合職の新入社員は上高地帝国ホテルで研修をした後、レストランなどで現場研修を行っています。誰がどのような形でホテルを支えているのか、自分の目で見る、体感することが大切だと考えています。

 

若松 あらゆる現場を経験する。これが、総合力につながっているように感じます。どの現場のスタッフも「帝国ホテルブランド」を背負っているわけですが、社員教育において特に重視している点はありますか。

 

定保 東京総支配人時代から、「当たり前のことを当たり前にやる」基本プレーの徹底を大事にしてきました。スポーツ選手も基礎ができている人ほど成績を残しますし、長い期間活躍できる。仕事も同じだと思います。ホテルマンとしての技術は必要ですが、それ以前に社会人としての基本を身に付けることが大事。そこで、「挨拶、清潔、身だしなみ、感謝、気配り、謙虚、知識、創意、挑戦」という9つの実行テーマを掲げて徹底しています。社員教育については「人材育成部」という専門の部署を設置し、階層別・職種別の研修を定期的に行っています。

 

若松 人材育成部の設置がヒューマンウエアに対する帝国ホテルの姿勢が表れています。ホテルというビジネスは欧米から導入されたものですが、人材を磨くことでメード・イン・ジャパンのホテルとしてブランド価値を高めています。日本品質のサービスを追求した結果、さまざまなサービスが(帝国ホテルから)全国に広がっていますね。

 

定保 レストランのバイキング(ビュッフェ)形式、ホテル内ランドリー、ホテルウエディング、ショッピングアーケード、ホテルハイヤーなどは帝国ホテルから始まりました。

 

若松 日本のホテルサービスのパイオニアです。時代が必要とするサービスを日本に合う形で実現してこられました。大事なのはメード・イン・ジャパンの在り方を追求すること。どこに軸足を置いてビジネスを拡大させるかを考える上で、帝国ホテルから学ぶべき点が多くあります。

 

201712_03

帝国ホテル東京のメインロビー。 季節ごとに変わる装花が 訪れる人の目を楽しませている

1 2 3