100年企業に学ぶハナマルキの成長戦略
Vol.28 ハナマルキ × タナベ経営

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2018年1月号

 

他社にない商品を作るそれが生き残る道

 

長尾 私は年間1000人近くの経営者と会いますが、経営者の危機感が強い会社ほど成長している印象を受けます。ハナマルキは約100年分の決算書を残しているところから、数字に非常にシビアな体質だと感じます。バランスシート(貸借対照表)には経営者の性格がにじみ出るものですが、拝見したところ総資本回転率が高いですね。効率的な経営を心掛けていらっしゃる証しです。

 

花岡 私以上に、父は非常に合理的な考え方を持っていました。死線をさまよった経験がそうさせたのかもしれませんが、自宅には必要最低限のモノしかありませんでしたし、工場に不要なモノが置かれていたりするととても嫌がりました。父ほどではありませんが、私もそうした性格を受け継いでいます。

 

長尾 その結果、健全な経営を続けていらっしゃいます。特にみそ汁は日本人のソウルフードですから、人口が減少してもみその需要がなくなることはないでしょう。そうした安定した商品を扱いながら危機感を持つ姿勢からは、花岡社長の強い責任感が伝わってきます。

 

花岡 売り上げは安定していますが、みそ市場は1982年の57万tをピークに出荷量が減り続け、今では40万tまで落ち込みました。ずっとデフレの中で経営してきましたから、不安は尽きません。

 

長尾 みそ市場の縮小が続く中、商品開発にはどのようなコンセプトで取り組まれているのでしょうか?

 

花岡 「他社にない商品をいかに作るか」。これが生き残りの第一条件です。例えば、30年ほど前から取り組んでいる大豆たんぱくシートは、用途が製菓材料などに広がり年々伸びている商品です。また、2012年に発売した『液体塩こうじ』は塩こうじを搾ったもので他社にはないオリジナリティーの高い商品であり、日本と米国で特許を取得しています。ほかにも、液体塩こうじと同じく甘酒を圧搾した『透きとおった甘酒』という新商品も発売しました。数量限定販売ですが、他社と差別化できる商品です。

 

結局、他社と同類のものを作れば価格競争に陥ることは避けられません。オリジナリティーの高い、ハナマルキらしい商品をいかに開発していくか。それしか会社を存続させていくすべはないように思います。

 

小山田 国立循環器病研究センター(国循)とのコラボレーションで商品化された「かるしおシリーズ」も差別化できる商品であり、ブランドも確立しつつある有望分野といえますね。

 

平田 健康志向が高まる中、減塩に対するニーズは高まっています。しかし、「減塩だからおいしくなくても仕方ない」では商品として販売できません。当社は既存商品と比べて塩分を30%カットした減塩みそを2015年に発売しましたが、その際、国循が実施する「かるしお認定」※2に挑戦し、認定されました。マーケティングの際の差別化要因となりましたし、シリーズ化することでブランド化にもつながっています。

 

小山田 2015年にテレビCMやWeb動画で放映された、子役が「ハナマルキの歌」を熱唱するプロモーションビデオも話題になりましたね。

 

平田 その「かるしおシリーズ」の新しいCMとして制作したもので、宣伝効率を高めるために「話題になるCM」を目指しました。

 

「おみそならハナマルキ」のサウンドロゴを使った歌を作ったわけですが、歌の上手な女の子の起用もあいまってネット上でも話題になりました。

 

「おみそならハナマルキ」のサウンドロゴは、2017年に特許庁より音商標として認可いただきました。今後、このブランド資産をさらに昇華させていきたいと考えています。

 

小山田 新しい価値を生み出し続ける上で鍵を握るのが人材育成です。社員教育に対する考えをお聞かせください。

 

花岡 人の成長において、若いうちに他部門を経験することが非常に大事です。ずっと同じ環境にいては新しい発想は生まれませんし、新しいことに対して腰が重くなってしまいます。そのため、技術職や営業として採用しても、まずは他部門へ配属して教育します。技術職採用の社員は初めに営業に出しますし、営業採用の社員は3カ月間、工場で研修を行います。そういった経験を積むことが成果につながると感じています。

 

平田 私は5年前に中途入社しましたが、2カ月間みそ工場で研修を受けました。モノ作りの現場は初めての経験で非常に勉強になりました。これまで知らなかった世界を見ることができ、マーケティングにおいてプラスになっています。

 

※2 循環器病予防を目的に塩を軽く使い、おいしさを引き出す減塩の新しい考え方を広めるための認定制度

 

渋谷の人気クレープ店とコラボレーションするなど、プロモーションも多彩に展開(左)。右は2017年秋の新商品。『トマみそ汁』など独創的な商品開発に力を入れる

渋谷の人気クレープ店とコラボレーションするなど、プロモーションも多彩に展開(左)。右は2017年秋の新商品。『トマみそ汁』など独創的な商品開発に力を入れる

 

 

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