Vol.19 八清 × タナベ経営

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2017年4月号

 

新築に近づけるのではなく経年美を生かす発想

 

西村 一般的に、建売住宅の中心となる客層は30~40代。賃貸から脱出して家を買う人たちで、最低限の住居と駐車のスペースがあれば良いといったニーズですよね。一方で、京町家の場合、(建売住宅にはない)京町家の価値や良さを感じていただける方々が客層になり、ファミリー層から年配の方々まで、幅広い世代がいらっしゃいます。

 

 古さや歴史の詰まった京町家に魅力を感じている層がターゲット、ということでしょうか?

 

西村 そうですね。建売住宅とは真逆で、京町家の場合、歴史=物語は付加価値になります。歴史がある方が家の付加価値は高く、知識が増えるほどその付加価値が分かってきて興味も深まります。われわれよりも、お客さまの方が詳しいこともありますよ(笑)。

とはいえ、車を置く場所がない、風呂が古い、食器洗浄機が付いていないなど、現代人にとっては不便に感じるところも多いはず。そこで2005年、モデルハウスをつくり、実際にお客さまのニーズを聞く機会を設けました。

 

山本 テストマーケティング期間を設けられたのですね。

 

西村 そうです。このときつかんだニーズを生かして、改善するところと残すところを決めていきました。例えば、古い柱や梁、壁はそのままの方が町家の良さを生かせるので、残すようにしています。

改装する際、私たちは新築を目指すわけではありません。経年すれば、確かにきずがついたり反ってきたりしますが、半面、味わいや美しさが深まり、価値が高まるという「経年美」の考え方を大切にしています。古い良さを生かしつつも、最新の水回り設備などニーズに応じて取り入れることで、現代にマッチする京町家を作り出しています。

 

山本 古いからダメではなく、古いから良いという価値観へうまく転換されています。

 

西村 性能や新しさといった、他社と同じ土俵で勝負をしないことです。例えば、新築の家は断熱効果を高めるためにペアガラスや二重ガラスを使いますが、京町家は無垢材を使うので反りやひずみができて隙間風が入ってきます。アルミサッシを入れると気密性は高まりますが、京町家の風情を損ねてしまいます。

 

山本 「脱スペック競争」と言えますね。機能性を追求する競争にはあえて乗らないという発想は斬新ですし、ある意味とてもぜいたくです。

 

西村 乗らないというか、乗れないというか(笑)。当社が求めるのは性能の高さではなく、味わいや個性のあるもの。この方針を支持してくれる客層は少数かもしれませんが、確実に存在します。そもそも快適な新築ではないのに、なぜ人々が町家を選ぶかというと、そこに性能の高さを求める訳ではなく、町家特有の味わいや個性に強烈な魅力を感じるからです。

 

山本 料理で例えると、八清が提供するのは、最大公約数的な「大衆料理」ではなく、こだわりの「一品料理」。こだわりの強い層へ向け、こだわりのものを提供するビジネスは今の時代にマッチしています。“10人中2人に響く”マーケット。ただし、その2 割で断トツのポジションを確立することが大事です。また、金融機関から再建築不可物件への融資を取り付けたのも西村社長です。

 

西村 そもそも、再建築不可物件に金融機関が融資をしないのは、「(建築基準法上)建て替えができない」という考えからです。しかし、京町家は建築基準法の施行前に建てられた家屋で、違法な物件ではありません。さらに、京都になくてはならない京町家にファイナンスを付けることは、金融界にとっても社会貢献になると説得しました。こうした活動が実を結び、京町家の用途は今では賃貸住宅の『京貸家』やシェアハウスの『京だんらん』、さらに宿泊施設の『京宿家』などへ広がっています。

 

個性を生かしながら、生き生き働ける環境が整う

個性を生かしながら、生き生き働ける環境が整う

 

 

タナベ経営 コンサルティング戦略本部 副本部長 山本 剛史

タナベ経営 コンサルティング戦略本部 副本部長
山本 剛史 企業の潜在能力を引き出すことを得意とする経営コンサルタント。事業戦略を業種・業態ではなく事業ドメインから捉え、企業の固有技術から顧客を再設定して事業モデル革新を行うことに定評がある。現場分散型の住宅・建築・物流事業や、多店舗展開型の小売・外食事業などで生産性を改善する実績を上げている。神戸大学大学院卒。

 

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