中和石油株式会社 さま

新規事業の開発で
多角化を推進し
グループシナジーを発揮へ

ポイント

  1. 主力事業の閉鎖統合を
    「前向きな一手」として推進
  2. 経営理念にのっとり
    業領域を拡大
  3. 各事業がシナジーを発揮する
    グループ経営体制を構築

お話を伺った人

中和石油 
代表取締役社長 杉澤 謙次郎氏

ガソリンスタンドの閉鎖統合を「前向きな一手」として推進

先代である杉澤達史氏(杉澤謙次郎氏の父)が急逝された2015年、3代目として経営のバトンを継承してから事業の多角化を推進してきました。

杉澤: 創業以来70年余り、ガソリンスタンド経営のエネルギー事業が中核事業でした。ただ、若者の車離れや国の脱ガソリン車政策などでガソリンスタンド市場は縮小し、赤字が続く店舗も抱えていました。

当社のこれからを直視した時、不採算店舗の整理は避けられません。同時に、成長市場で新たな経営の柱を育てる必要もあると考えました。その2つの課題解決に向け、人材育成研修でご縁のあったタナベ経営にお手伝いをいただこうと考えました。

不採算店舗の閉鎖統合は苦渋の決断でした。

杉澤: 全国石油協会副会長、および北海道石油業協同組合連合会会長も務めた先代は、「絶対に、店は閉めない」がポリシーでした。手を尽くしても赤字から脱却できない店舗が現実としてあり、ハードルは高かったですね。

タナベ経営には社外から客観的な視点に立ち、経営のプロフェッショナルとして「現状打破の一手として、閉鎖統合は必要なこと」との提案をいただきました。また、私がトップダウンで断行するよりも、「経営幹部のみなさんで『これ以上、赤字店舗は出さない』との思いを共有し、一緒に解決策を導き出していく方が良い」ともアドバイスをいただきました。その後、幹部社員とともに中期経営計画を策定し、赤字店舗の閉鎖を前向きなアプローチの1つに位置付けることに成功しました。社内の理解も得やすくなり、決断後はスムーズに進めることができました。

社員を巻き込んだ中期経営計画の策定により、エネルギー事業の新たな可能性を見出すことができました。

杉澤: 縮小と言っても、ガソリンスタンド市場はすぐにはなくなりません。そこで、石油元売り大手のエネオスグループが新たに打ち出した、完全セルフ形式でサービス品質も定型化するガソリンスタンド経営「エネジェット」ブランドに既存店舗のビジネスモデルを転換しました。顧客満足とコストオペレーションのバランスが良く、利益も出せると判断したからです。数千万円規模の新規投資が必要でしたが、積極的に採用し成果に結び付いています。

先代のポリシーは「北海道に貢献する産業であり続けたい」という思いからきており、それは私も同じです。赤字にしっかり向き合うことで今できることに気付き、次の成長につなげるための一歩を踏み出すことができました。

「海外で育てて、国内に供給する」独自の人材活用の仕組みを事業化

ガソリンスタンド事業は、電気・水素など次世代エネルギーの供給インフラとしても注目を集めていますが、それ以上に可能性を追い求めたのが事業の多角化です。

杉澤: ガソリンもそうですが、エネルギー事業は元売りの看板とビジネスモデルの上で「いくらで仕入れて、いくらで売るか」しか工夫できず、自助努力に限界があります。自らの手で未来を切り拓くためには、事業領域を越えて多角化し、経営の柱を増やしていかなければいけません。また、世の中の環境は、リーマンショックや災害、現状のコロナ禍など、我々が予想もつかない変化が起きています。それに柔軟に対応できる企業になるべく、事業の多角化を進めています。

ただ、新規事業開発は未知への挑戦です。自社で情報を集めて「何をするか」を検討しつつ、「どのように事業化するか」は、ノウハウが豊富なタナベ経営と二人三脚で進めていきました。

その1つが外国人労働者の人材派遣事業です。「海外で人材を育て、国内に供給する」という前例のない挑戦でした。

杉澤: 当社は10年前から積極的に外国人人材の研修受入や採用を推進し、現在は全社員の1割を占めます。自社で募集から教育、採用までを一貫して手掛けることで、その仕組みとノウハウを確立してきました。それを、人材不足に悩む国内企業に役立つ事業に育てていこうと考え、AHGP(Asia Human Gateway Project)を始動しました。

具体的には、2019年1月にベトナム・ハノイに日本語学校を設立。生徒には日本語から学び始めてもらい、個性や能力を見極めながら育成しています。海外の学校づくりから始めて日本に人材を送り込む事業モデルは、タナベ経営からヒントを得て一緒に実現しました。

ベトナム・ハノイの日本語学校

ベトナム・ハノイの日本語学校。生徒は日本で働くために語学や専門知識を学ぶ

働き手不足による社会課題の解決にもつながると期待が高まっています。

杉澤: ベトナム人の大学生をインターンで受け入れる採用トライアルも行っています。優秀な人材と日本企業がマッチングしやすく、どちらも負担やリスクが少ないのが特徴で、確保だけでなく定着にも結び付いています。北海道だけでなく、全国から人材確保の相談をいただき、大手企業をはじめ採用事例は増え続けています。

「観光と食」の領域で「できることから始めて育てる」

新たな事業領域を切り拓く上で大切にする理念が、「生活に密着した『まちをつくる企業』」です。

杉澤: 「地域の発展に貢献できる事業」という意味を込めています。ですので、手掛けてきた新規事業は全て必然的な選択になっています。また、最近の事例で言うと2019年、北海道にある老舗の花屋・彩生堂が、後継者不足で事業承継難に陥っていたため、支援策として買収しました。

これからの北海道で成長を遂げる産業は「観光と食」です。観光の領域ではホテル事業を立ち上げ、札幌市と函館市、ニセコ町に3つのホテルを開業しました。不動産事業で培ったノウハウを生かして建物をつくり、運営は東急ホテルと提携しています。運営パートナーと連携することで初期投資を抑えることができ、当社も安定的に賃貸収入が得られるので互いにメリットがあります。ビルメンテナンス事業は、消毒作業で地域の発展に貢献しています。これらは、現状のコロナ禍でも順調に収益貢献するような事業になってきています。

もう1つの食の領域では2020年、北海道ミルク工房をグループに迎え入れ、アイスクリームの製造・販売をスタートしました。

杉澤: 先行してウェブの楽天市場にアイスクリーム専門のECショップ「北からの贈り物」を立ち上げました。きっかけは、経営難だった北海道内の食品メーカーの経営支援に乗り出したことですが、方針の違いもあり自社で事業化する方向へと舵を切り直しました。中和石油や北海道ミルク工房の社名は表に出さず、「北からの贈り物」ブランドの認知度を高めるための施策に注力しました。ECショップ販売の強化や販路拡大は、タナベ経営のマーケティング本部に支援を受けており、2カ月ほどで楽天市場の売り上げを20倍に引き上げていただきました。

また、当社にはものづくり機能がなかったので、東雁来に立ち上げた新工場の製造設備や生産性向上もタナベ経営の食品専門のコンサルタントにサポートいただき、販売・生産計画の立案にも参画してもらっています。幅広く対応いただけるのは、心強いですね。

ウェブだけでなく、自社ガソリンスタンドの一角にリアル店舗を4店舗出店しています。これまでにないマッチングですね。

杉澤: アイスクリームをどこで売るか考えた時、新たな場所を探すよりも、まずはいまある場所からと考えました。それが自社のガソリンスタンドでした。また、「東急ステイ函館朝市 灯の湯」にもアイスクリーム販売店舗をオープンして好評を得たことで、同ホテルチェーンからさらなる出店依頼を受け、関東への出店を進めています。さらに、ANAグループのグルメギフトカタログにも採用されるなど、商機を拡大しています。できることから始めて大きく育てる、良い取り組みになっています。

「金雪カップアイス」(左)、「タルトアイス(右)」

「金雪カップアイス」(左)、「タルトアイス(右)」。ほかにも、こだわりの北海道の食材を使ったアイスクリームが製造・販売されている

事業の分社化で「任せる経営」「シナジー」の実現を目指す

事業の多角化は持続的な経営方針です。その姿を実現し、支えていく人材の育成にも力を入れています。

杉澤: 以前、タナベ経営から「全社を見渡してマネジメントできる人材が育っていない」と、指摘を受けました。確かにその通りだったため、今では「幹部候補生スクール」「経営戦略セミナー」といったタナベ経営の研修・セミナーに年間20人以上が参加するなど、全社一丸となってマネジメント力を育てています。将来的には、分社化した事業の経営を担う存在になってもらいたいと考えています。

グループの新たな人事・給与制度もタナベ経営に相談しました。事業・職種別に給与水準が異なりますし、それぞれの良さを失わずやるべきことも明確になる、メリハリのある新制度へと進化させているところです。

ガソリンスタンドやホテルでアイスクリームの販売が実現したように、今後は各事業がシナジーを発揮するグループ経営もビジョンに描いています。

杉澤: 2020度からグループ経営会議を開始しました。日本に5つ、ベトナムに3つのグループ会社が一堂に会して業績や資金繰り、事業計画やビジョンを共有しています。権限移譲を進め、本当の意味で「任せる経営」にしていくことも狙いです。

その先には、ホールディングスの設立を見据えています。すでにグループの本社機能や経営管理などの間接部門をベトナムに移管するなど、できることから始めています。人件費は半分以下になり、海外で暮らせば収入も増え生活レベルも向上します。リモートワークも定着し始めていますし、日本でしかできないこと以外は全て海外移管していきたいですね。

シェアードサービス化だけで終わらない海外移管は、先例の少ないロールモデルとなっていきます。

杉澤: 「だからこそやるべき」という思いをタナベ経営と共有しています。人材派遣事業もホテル事業も、コロナ禍で厳しい戦いを強いられています。それでも、ガソリンスタンド経営のエネルギー事業1本から着実に多角化が進んでいることが確かな成果だと感じています。これから、グループ全体の収益は着実に改善していますよ。

新事業の種が芽吹き、花を咲かせて実が成るまで。北海道だからできることや、既存の枠組みに捉われないことへの挑戦は、これからも続きます。本日はありがとうございました。

プロフィール

会社名 中和石油グループ(中和石油株式会社)
URL https://www.chuwa.ne.jp/
所在地 北海道札幌市中央区南4条西9-1008
設立 1954年
従業員数 315名(グループ計、2021年9月現在)

※ 掲載している内容は2021年8月当時のものです。