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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2022.03.18

角弘:ボトムアップ経営へ変革。新人事制度で「やれば報われる」組織へ

 

ポイント


1 ボトムアップ経営推進に向け、新人事制度を策定
2 社員のモチベーションと自主性を高める評価基準
3 社長・幹部の意識改革にタナベ経営セミナー活用

 

 

お話を伺った人


角弘 代表取締役社長 船越 秀彦氏

 

 

 

 

 

ボトムアップ経営へ転換し、社員一人一人の能力を生かす

 

—— 創業140周年(2023年)を目前に控えた2020年、船越社長は社長に就任されました。就任時の抱負や、抱えていた課題についてお聞かせください。

 

船越:当社では、「明治維新で困窮する津軽藩の武士を救う事業を興し、農機具を安く農家に提供して、地域の発展に寄与する」という創業の精神が、いまに受け継がれています。事業フィールドは青森から東北5県に拡大し、「鐵」を中心とするモノづくりを原点に、建設・土木資材、燃料、機能性新素材・プロテオグリカン(PG)など、多角的な総合商社へと発展を遂げています。

 

そんな当社では、前社長が長年、経営のかじ取りを担ってきました。強いリーダーシップのもと、PGなどの新事業を立ち上げて軌道に乗せる一方、経営幹部や社員が主体的に何かをするという意識は薄れていました。

 

そうした中で私自身、組織経営の弱さと人材の育ちにくい体質を変えていくことが、今後の成長を見据えた上で不可欠と感じていました。

 

—— こうした課題は、業績にも影響を与えていたようです。

 

船越:直近の10年間、売上と社員数は減少し、さらに一人当たり生産性は低迷を続けていました。当社は総合商社であり、ビジネス上のスケールメリットは重要です。しかしそれ以上に、一人当たりの生産性が落ち込んでいたことに対し、危機感がありました。

 

低迷の最大の理由は、仕事の成果が適正に評価されず、社員の努力や貢献が報われないために、モチベーションや改善意欲が低下していたこと。評価の対象や基準が不透明で、社員が「やっても評価されない」「気に入られないと昇進できない」と感じてしまうと、当然、やる気は沸いてこないものです。

 

そうではなく、本来は能力のある社員一人一人に、高いモチベーションを持ち、思う存分パフォーマンスを発揮してほしい。そのために、適正な評価と処遇、やりがいの得られる経営体質を根づかせたい。そうした考えのもと、社長による強力なトップダウンではなく、社員の考えや意見を生かすボトムアップの経営へ舵を切ることを決めました。

 

また、当社は「人にやさしく暮らしに深く」という精神を掲げています。お客様や地域の方々とはもちろんですが、社員同士でもお互いにコミュニケーションを取り、そこで生まれるいろいろな意見の中からより良いものを選び、前進すればよいと考えています。

 

 

「鐵」を中心とするモノづくりを原点に、建設・土木資材、燃料、機能性新素材・プロテオグリカン(PG)など多角的な総合商社へ発展

 

 

キーワードは「自己改革」

 

—— 船越社長が社長に就任され、初めて掲げた経営方針が「自己改革」です。

 

船越:当社は毎年、経営方針を四字熟語に一言集約しています。

 

「自己改革」は、一人一人が自分の考えを持って仕事を進め、それぞれの能力を発揮していこうという思いを込めた経営方針です。

 

社員の自己改革や自発性を促す、また、若い社員にも希望をもって働いてもらうために、新しい人事制度の構築に着手しました。長年続いた年功序列型の人事フレーム(等級制度)、職種や階層などにかかわらず、ゼロベースで見直す改革です。

 

 

業務の現状に応じた評価基準で「やれば報われる」組織へ

 

—— 人事制度構築プロジェクト(PJ)では、人事制度の方向性や求める人材像を「人事ポリシー」として定め、見える化しました。

 

船越:3つの大切な要素を人事ポリシーとしてまとめ、明確にしています。創業以来の「人にやさしく暮らしに深く」の精神を継承する「価値観」、与えられた仕事ではなく、能動的に考えて自分で仕事をつくる「行動様式」、そして、自分の内部に変化をつくる「思考特性」の3つです。

 

特に重視するのは「行動様式」です。一人一人がさまざまなコミュニケーションを通して協力し工夫を重ねながら、自分の意思と結果にこだわること。それが意識と行動を変える「自己改革」につながります。

 

—— 求める社員像が明確だと、社員が働く上で判断基準を持てますね。新人事制度のポイントを伺いたいと思いますが、まずはこれまでの人事制度の課題についてお聞かせください。

 

船越:これまでは業種、職種、階層の区分なく、全社で同じフォーマットの考課表を使用していました。ですが当然ながら、職種や階層によって求められる業務や評価項目は異なります。業務の現状と評価項目がマッチしていないと、社員は何が評価されているかわからず、評価する側も差をつけられません。現状にそぐわない評価制度の状況に、PJメンバーも危機感を抱いていました。

 

加えて、等級に関する詳細の定義はなく、等級ごとに求められる役割や責任・能力・成果は不明確でしたし、ビジョンや方針と評価項目の連動性も乏しい状況でした。

 

—— 新人事制度のポイントをお聞かせください。

 

船越:新人事制度では、定量面、定性面の評価項目を業種・職種・階層ごとに詳細に定め、社員に見える化しています。

 

また、考課表についてはグレードを10等級、評価項目を「業績・成果」「能力(責任・業務)」「情意(態度)」の3要素に分け、それぞれの要素で詳細な評価項目を作り、業務の現状に応じた評価基準で「やれば報われる」人事評価制度にしました。

 

定量的な評価項目は、個人・拠点の売り上げ達成率、利益達成率などで、サポート業務も全社の達成率に準じて評価することにしました。ただ、売上や利益への貢献ももちろん重要ですが、自主性、自己改革を重視するため、定性的な評価項目の比重を高めにしています。また、階層によって求めるパフォーマンスが異なりますから、評価項目の配点を変えています。

 

実務部隊をどれだけ評価し、どれだけ報いることができるか。また、何をどうすれば、どのように評価され、どんな処遇(給与)につながるのか。多様な人材とその能力を適正に処遇して、納得感のある評価制度にすることを重視しています。

 

グレードを10等級、評価項目を3要素に分け、それぞれ詳細な評価項目を作成。業務の現状に応じた評価基準で「やれば報われる」人事評価制度にした

 

 

 

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