北ガスジェネックスさま

LPガス事業で
北海道の発展を支える
IT化と訪問型サービスで
地域の課題解決企業へ

ポイント

  1. アカデミーの導入で技術力・人材力を向上
  2. 動画コンテンツが採用活動・若手社員教育とベストマッチ
  3. 人材力を磨き、顧客とより深い信頼関係を構築

お話を伺った人

北ガスジェネックス 
代表取締役会長 杉岡 正三氏

※ 取材時は代表取締役社長

北ガスジェネックス 
総務企画室 上金 奈々恵氏

北ガスジェネックス 
リビング営業部ホームライフグループ主任 
佐藤 志歩氏

北ガスジェネックス 
保安サービス部設備技術グループ主任 
森 彰吾氏

北ガスジェネックス 
総務企画室課長 橘 喜勝氏

LPガスの供給で地域住民の生活を支える

社会貢献型会員制サービス「ブランケットメンバーズ」

社会貢献型会員制サービス「ブランケットメンバーズ」。顧客との付き合いを深め、一人一人の暮らしに合ったサービスを追求している


北ガスジェネックスは、LPガスや灯油の供給を通して北海道の社会インフラの一端を担ってこられました。まずは創業の経緯についてお聞かせいただけますか。

杉岡: 当社の設立は1967年。都市ガス事業を担う北ガスグループのLPガス事業会社としてスタートしました。当時の札幌市は、住宅地が次々と造成され、それに伴って広い範囲でガスを供給する必要がありました。

当時、都市ガスの敷設工事には時間がかかりました。当社は、離れて造成された住宅地にLPガスを先行供給する役割を担いながら、都市ガスと共に成長を続けてきました。現在は札幌圏を中心に約7万8000世帯にガスを供給しています。

2017年に設立50周年を迎えられました。売上高が80億円を超える地域の優良企業へと成長されましたが、秘訣はどこにあるのでしょうか?

杉岡: 創業から一貫して変わらないのは、地域のお客さまと深いつながりを持ちたいという姿勢です。都市と商圏が重複しているため、都市ガスの敷設が進めば契約件数が減少に転じることは避けられません。都市ガスの供給が行き届いた今、数こそピーク時と比べて減少しているものの、中身は大きく変化しています。

例えば、工場や店舗などの事業用の増加や、ここ10年間で家庭用のガス暖房やガスマイホーム発電機が普及したことで供給量は拡大。きめ細かくお客さまに対応してきたことによって、それぞれの暮らしに合った使い方を他社に先んじて提案してきた結果が今につながっていると思います。

札幌北24条モデルハウス 株式会社土屋ホーム タナベコンサルティングのコンサルティング導入事例

北ガスジェネックス 代表取締役会長 杉岡 正三氏
1956年生まれ、北海道恵庭市出身。1979年弘前大学人文学部経済学科卒。1979年北海道ガス入社後、情報システム、天然ガス転換、経営企画などに従事。2006年執行役員(札幌支店長)、2007年取締役・常務執行役員(営業副本部長)。2014年北ガスジェネックス代表取締役社長。同年日本コミュニティガス協会北海道支部長、2017年エネルギーサプライ代表取締役社長。

お客さまに寄り添うブランケットメンバーズ

地域住民を対象とする料理教室の開催や、社会貢献型会員サービス「ブランケットメンバーズ」をスタートされるなど、ここ数年はお客さまとより深い関係を築かれているように感じます。

杉岡: 料理教室は北海道文教大学の学生が講師を務めています。学生にとっては社会勉強になりますし、地域の方には学生との交流や憩いの場として喜んでいただいています。また、同大学と千野米穀店の協力を得て「ガス炊きで美味しい北海道産特選ブレンド米『おりひめ』『ひこぼし』」を開発。イベントやホームページでの通販などで販売していますが、非常に好評です。

一方、ブランケットメンバーズはアプリを使った会員組織で、PCやスマートフォンから簡単に、ガスの利用状況の確認や各種点検の予約などができるサービスを提供したり、お得なクーポンを発行したりしています。

また、有料会員を対象に、暮らしの困り事に社員が直接訪問して解決する「くらし“ホッ”とサービス」を展開。会員からは水回りや灯油のトラブル、家具の移動や電球の交換、庭木の手入れやリフォームなど、あらゆる暮らしの相談が寄せられます。社員がお宅を訪問し、その場で解決できる場合もありますし、中には専門業者を紹介する場合もありますが、困ったときに一番に相談できる存在になりたいという思いでサービスをつくりました。

特に高齢世帯や1人暮らしの方にとってはありがたいサービスです。相談に乗るだけでも安心されるでしょう。
ただ、従来のガス事業とは領域が異なる印象があります。このようなサービスをつくった目的はどこにあるのでしょうか?

杉岡: エネルギー業界は日本の人口増加とともに成長してきましたが、すでに北海道の人口は頭打ちの状況です。これからは人口減少と高齢社会に適したサービスの提供が、ますます重要になるでしょう。

ここ数年、エネルギー業界ではライバル間の競争が激しくなっていますが、新規契約の奪い合いを続けても価格競争に陥って互いに体力を消耗するだけです。この状況を乗り越えるには、発想の転換によって新たな価値を提供していくことが不可欠。単にガスを売るのではなく、付加価値を付けることが大事だと考えました。お客さまの生活におけるエネルギー利用に貢献することが価値と定義しています。

設立50周年を前に自社の将来を考えるプロジェクトチームが立ち上がり、「これからはお客さま一人一人の暮らしに合わせた十人十色のサービスが大事になる」という意見が社員から出たタイミングでもありました。お客さまに合ったサービスを開発するには、お客さまとより深いお付き合いをすることが大切。まずは「お客さまに寄り添うサービスをつくろう」となり、ブランケットメンバーズが誕生しました。

アカデミーの導入で技術力・人材力を向上へ

通常のガスの定期点検では、お客さまとのコミュニケーションは限られています。くらし“ホッ”とサービスであれば、お客さまのライフスタイルや困り事などを詳しく知ることができます。このサービスは専門部署をつくって対応されているのでしょうか?

杉岡: “二足のわらじ”と称して全社員が担当します。当番制で内勤の社員も制服を着てお客さまを訪問するので、普段と違う経験ができ、良い刺激になっているようです。

トラブルを解決してお客さまが喜ばれている姿を見たり、「ありがとう」という言葉を掛けられたりすればうれしいものです。同サービスを通して、お客さまを訪問することに対する心のハードルは、ずいぶん低くなったように感じています。

今のところ有料会員は150名ほどで高齢者の割合が高く、無料会員は約2600名で、年齢や家族構成はより幅広くなります。今後は子育て世代や単身世帯など、年齢や家族構成に合わせたサービスを増やしていこうと考えています。

ブランケットメンバーズが成功したポイントの一つは、全社員が同じ水準のサービスを提供できる点にあります。サービス開始を前に、「考働リーダー」を指名するとともに、作業手順や技術を標準化した教育ツールである「アカデミー」を構築し、社員が自主的に学びやすい環境を整備されました。

杉岡: タナベコンサルティングとは2016年からお付き合いがあり、アカデミーの導入時も協力いただきました。これまでガス業界は、マニュアルがなく先輩の技術を現場で見て学ぶことが多かったように感じますが、タナベコンサルティングからの提案もあって各作業をチームコンサルティング対談10分程度の動画にまとめてアカデミーにアップし、社員がウェブ上で閲覧できる仕組みを構築しました。

当初の目的は、くらし“ホッ”とサービスのための訓練でした。ですが、あらゆる業務を可視化したことで、技術の継承という意味でも大きな成果があったと思います。また、所属する部署以外の仕事についても理解を深める良いきっかけになっています。今後、コンテンツの充実に大きな期待を寄せています。

アカデミー動画の一例。講師は先輩社員が務め、現場での作業を分かりやすく解説

アカデミー動画の一例。講師は先輩社員が務め、現場での作業を分かりやすく解説

ブラッシュアップを続け人材の早期戦力化目指す

私はさまざまな企業のアカデミー導入に携わっていますが、北ガスジェネックスの場合、アカデミーメンバーが非常に積極的に取り組まれていました。動画に登場する講師も全て社員が担当されています。

大変だったことや印象に残っていることはありますか?

森: カリキュラムをつくる上で、現場の声を直接聞いたことは貴重な体験でした。そこで出た課題などを、今後の教育に生かしていければと思います。

例えば、ガス工事には配管やボーリング調査など多くの工程があるため、時には手順を忘れてしまったり、抜けてしまったりということも起こり得ます。社員が少しでも不安を感じたときに、その場で確認できるような形にできれば、より良いツールになると考えています。

佐藤: きちんと準備をしていても、実際に現場に出ると分からないことが出てきます。ガス機器であればメーカーから提供される動画を確認していますが、普段の作業や業務についても同じように確認できると便利です。

新人社員ほど、忙しそうにしている先輩には聞きづらいもの。質問する前に動画で手順や内容を確認できれば分からない点が整理できますし、答える側も答えやすくなります。私自身、後輩からの質問に答えられないこともありますが、そんなときに、一緒に動画を見ながら学べるツールになると良いと思います。

訓練に加えて、確認のためのツールとなれば、幅広い場面での活用が期待できます。コンテンツの作成に若手メンバーを加えるなど、使いやすさ、分かりやすさを特に重視されていました。

上金: 私は保安の動画作成に参加させていただきました。私自身は現場の知識がほとんどありませんが、作成に当たっては、担当者から頂いた資料を素人の視点でかみ砕き、新入社員や内勤社員も理解できる内容になるように心掛けました。

動画であれば、初心者でも現場をイメージしやすい点は良いと思います。ただ、これで終わりではなく、使った感想や改良点を出し合うことで、より良いツールにしていきたいと思っています。

橘: 採用活動においても、動画を流すと学生の興味が一気に高まることを肌で感じています。若い世代は普段から動画に接しているため、アカデミーの仕組みは若手社員の教育・育成に非常にマッチしていると思います。

いつでも、どこでも学べるのがこの仕組みの良いところ。「3年で一人前」が従来の慣習でしたが、主体的により多くのことを吸収してもらい、2年でしっかりと仕事ができる社員に成長できるツールとして期待しています。

ガス炊きで美味しい北海道産特選ブレンド米

北海道文教大学、千野米穀店との産学連携プロジェクトで生まれた「ガス炊きで美味しい北海道産特選ブレンド米」

毎日の生活の中にこそチャンスは転がっている

エネルギー業界は、往々にして官僚的な組織になりがちです。しかし、杉岡はフットワークが軽く、発想も非常に柔軟です。それが会社の活力を高める一つの要因ではないかと感じています。

杉岡: 私はシステム畑を通ってきたため、何か問題があれば、「どう解決するか」「別の方法はないか」と考える癖が身に付いています。

どのような仕事であっても、お客さまに喜んでいただくのが最も大事。アカデミーを導入したのは、お客さまから「いいね」「すごいね」と言っていただける人材を育てたいからです。仕事のモチベーションを最も高めるのは、お客さまからの感謝や励ましの声です。お客さまに喜んでいただくことで社員のやる気が上がり、社員が主体的に学ぶようになるとサービスの質が上がり、さらにお客さまに喜んでいただける。このような好循環が生まれれば、社会環境が大きく変化したとしてもお客さまに選んでいただける会社になるはずです。アカデミーはそのための有効なツールになり得ます。

私もシステムエンジニア出身ですから非常に共感します。時代の変化を乗り越えるには、さまざまなアプローチを試して課題を解決する習慣が欠かせません。

杉岡: 常に時代の変化に合った形をつくることが重要です。具体的に言えば、すぐに駆け付けるという寄り添い型のサービスと、究極のデジタル活用型サービスの両方を持つ会社になることだと私は考えています。業務用はIT による合理化でお客さまにメリットを提供する一方、家庭用ではヒューマンスキルを生かした対面の寄り添ったサービスをご提供していく。

ただ、1社で提供できる範囲は限られているため、賛同いただけるところがあれば、一緒にサービスを展開していくことも一つの方法だと考えています。

仲間が増えれば、より多くのお客さまに喜んでいただけます。そのためにも既存の枠にとらわれない柔軟な発想で、お客さまや事業を見直す必要があります。

杉岡: おっしゃる通りです。例えば、あらゆる分野でサブスクリプションが広がっていますが、エネルギーサービスに導入することで、新規顧客の開拓につながる可能性は十分にあります。

チャンスは日常生活の中に転がっていますが、毎日の生活にアンテナを張り、商売のタネを探し続けている人だけがチャンスに気付けます。変化の兆しを見逃さない人材をいかに育てるか。アカデミーが、その有効なツールになると期待しています。

業種の垣根がガラガラと音を立てて崩れています。お客さまが求めるコトをいかにデザインしていくかに、企業の未来がかかっていると言っても過言ではありません。北ガスジェネックスが変化を捉え、時代の先鞭をつけていかれることを祈念しております。本日はありがとうございました。

プロフィール

会社名 北ガスジェネックス株式会社
URL https://www.kg-genex.co.jp/
所在地 北海道札幌市東区伏古8条2-7-1
設立 1967年
従業員数 180名
(2019年4月現在)

※ 掲載している内容は2019年11月当時のものです。