丸木医科器械株式会社 さま

某国立大学 某国立大学医学部附属病院にある、東北初の「多軸床置式ハイブリッド手術室」。医療機器から工事までの全てを丸木医科器械がパッケージで手掛けた

中期経営計画の策定で、
東北ナンバーワンの
医療機器商社へ

ポイント

  1. 中期経営計画を策定したことをきっかけに、経営品質と人材力が向上
  2. 経営品質向上のため「丸木マネジメントスクール」を開講
  3. 社員自らキャリアコースを選び、一人一人に合った活躍を支援

お話を伺った人

丸木医科器械 
代表取締役会長 浅若 博敬氏

丸木医科器械 
代表取締役社長 渡辺 津賀雄氏

医療関係者が信頼を置く東北No.1の医療機器卸

丸木医科器械は2015年に創業50周年を迎えられました。まずは、その創業の経緯からお聞かせください。

浅若: もとは1781年創業の丸木商店(現マルキ)の医療器械部門でしたが、佐藤三郎が1965年に分離独立させて宮城県仙台市で創業しました。

現在の売上高は315億円(2018年4月期)、従業員数はパート社員を含めると300名を超えます。

事業としては、病院向けの医療機器や備品、消耗品、患者の体内に埋め込むインプラントのような高度な器材まで全般的に取り扱うほか、病院の手術室やICU(集中治療室)の建築工事も行っています。主力分野は時代とともに変遷していますが、現在は整形外科、脳神経外科をはじめとする外科部門を得意としており、手術室やICU向けの機器などハイケアな部分で高い評価をいただいています。

東北ナンバーワンの医療機器卸へと成長されるまでには、さまざまなご苦労があったのではないでしょうか。

浅若: 医療機器ビジネスの特徴は、人に付くこと。どの分野であっても営業担当者の手腕は試されますが、とりわけ医療機器は医師や技師と営業担当者との間に信頼関係があって初めて注文が生まれます。私が入社した35年前は、今よりも個々の営業担当者の能力に頼る傾向が強く残っており、営業担当者が顧客を抱えて独立するケースが頻繁に発生。そのたびに売上高が落ちたり、人が入れ替わったりするため組織運営は難しさが増していました。そうした状況を変えるきっかけとなったのが、中期経営計画の策定でした。「組織販売への転換」を掲げて、新卒者採用や人材育成に取り組んでいく中で定着率が上がり、組織が安定していきました。

社是とミッションには、「最新の情報と質の高いサービスの提供」「地域医療の発展への貢献」「お客様の抱える問題点の解決」「流通の革新へのチャレンジ」が掲げられています。どのような思いを込められたのでしょうか?

浅若: 根本にあるのは、地域医療への貢献です。そのために不可欠なのが、単に仕入れて販売するというビジネスモデルからの進化と、ソリューションの提供。ミッションには流通革新への挑戦と、ノウハウや経験に基づくソリューションの提供で病院経営をサポートできる会社でありたいという思いを込めています。

浅若 博敬氏

丸木医科器械 代表取締役会長 浅若 博敬氏

「任せて安心」と思っていただくために

浅若会長は「技術なき商社は滅ぶ」というメッセージを発信されていますが、商社に必要とされる技術とはどのようなものなのでしょうか?

浅若: 簡単に言えば、営業担当者の知的武装のこと。医療機器の営業担当者には高い専門性が求められます。医師からの医療分野や機械に関する質問・要望などにきちんと対応できる知識、経験を「技術」と捉えています。

技術の中でも当社が重点を置くのが、常に適正な状態で機器を使用できるようサポートすることです。機器の調子が少しでも悪ければ、まずは営業担当者が駆け付けて不具合を確認。その上で社内のメンテナンス部門が修理・調整を行うか、メーカーへ対応を要請するかを判断します。1次対応からメーカーに任せる商社もありますが、日頃から付き合いのある担当者がすぐに駆け付けて対応する方が、安心していただけますね。

最初からメーカーに任せてしまう方が、商売としては手離れが良くて楽なはず。最近は、AIも組み込まれるなどメンテナンスには高い専門性が求められるため、対応するのは簡単なことではありません。

浅若: 「任せた方が楽」という意見もありましたが、それは危険な発想だと思いますね。お客さまにきちんと向き合う主体性がないと信頼していただけません。当然、営業担当者のメンテナンス技術や知識も問われますが、「任せて安心」と思っていただくためには不可欠な部分だと考えています。

渡辺: 東北は広いですから、メーカーだけでは十分に対応できないケースが出てきます。当社は東北であれば福島以外の県に拠点を持っていますから、迅速な対応が可能。メーカーの機能を代行できるぐらいのレベルでないと、お客さまのニーズに応えていくことは難しいでしょう。特に医療機器は、売りっ放しではリピートオーダーにつながりませんから、メンテナンスに注力していく必要があります。

渡辺 津賀雄氏

丸木医科器械 代表取締役社長 渡辺 津賀雄氏

ソリューション提供で地域医療の課題に挑戦

医療機器商社の中には、積極的なM&A(合併・買収)によって規模を拡大する動きが見受けられます。業界の動向や課題については、どのようにご覧になっているのでしょうか?

渡辺: 合従連衡は進むでしょうが、M&Aにはしっかりとした目的が必要です。短期的に見れば、事業承継やキャッシュフローなどの問題解決につながるものの、相手の企業文化などを十分に検討しておかないと、スピンアウトする人材が次々と出てしまい、営業力を弱める結果につながりかねません。当社でもM&Aを行っていますが、経済合理性だけでなく互いの企業文化や合併の目的を重視して決断しています。

東北で初めてSPD(院内物流管理システム)事業に着手し、共同仕入れ会社(日本メディカルアライアンス)への出資など、積極的な事業展開をされてきました。今後のビジネスモデルや事業戦略について構想をお聞かせください。

渡辺: 卸にとって共同仕入れは価格メリットにつながりますし、メーカー側にとってはまとまった受注を確保できる。双方にとってメリットが大きい仕組みだと考えています。こうした価格への対応はもちろんですが、一方で地域医療が抱える課題にも対応していかないといけません。

今後は専門性の柱を増やしてお客さまのニーズに応えながら、消耗品などについては物流の効率化を図り、医療機関の価格や納品管理に対する要望に応えていくバランス感覚が大事になります。当社が提供するソリューションを、お客さまが求めるソリューションといかに一致させていくか。ここが今後の事業戦略のポイントになると考えています。

地域包括ケアシステムへの対応など医療制度が大きく変わりつつある中、これまでとは違ったソリューションを求められるケースが増えてくるでしょう。

渡辺: 今年度から第6次中期経営計画をスタートしました。喫緊の課題としては、団塊の世代が全て後期高齢者(75歳以上)となる「2025年問題」への対応が急がれます。ポイントになるのは、地域で医療を完結するために当社はどう関わっていくべきか。ここには、行政の方針や診療報酬改定などさまざまな要素が関連するため、世の中の動向を注視しながら2025年には東北地区で、お客さまから一番に丸木医科器械の名前が挙がるくらいの圧倒的なシェアナンバーワンを目指していきます。

人材育成の要となる丸木マネジメントスクール

浅若会長は、社長時代に「丸木マネジメントスクール」を開講されました。会長となった現在も講師を務められるなど、教育に対して並々ならぬ情熱をお持ちです。

浅若: 当社の財産は人。経営品質を向上させるには良い人材と良い仕組みが必要ですが、仕組みを作るのは人ですから、結局は人材育成に尽きます。社員教育によって社員のモチベーションが上がれば定着率は高くなり、利益を社員にきちんと還元していけばもっと頑張ろうと思ってくれます。その結果として業績が付いてくるというのが私の考え方。目先の売り上げにばかり目を奪われていては、“会社の質”は向上しません。

東北地区において丸木医科器械は、就職を希望する大学生に大変人気がありますね。新卒採用で心掛けていることはありますか?

浅若: おかげさまで、東北においては各機関が発表する就職希望企業ランキングで上位に入ることが増えています。新卒者の採用に関しては、学生の気持ちが分かる若い年代の社員を専任で置き、大学の会社説明会や各地で開催される合同会社説明会への参加を中心に取り組んでいます。

新卒者の採用を15年ほど続けてきた結果、最近は入社した社員の後輩が入ってきてくれる良い循環が生まれています。

専門性の高い人材が数多く活躍されていますが、人材を生かせる特別な人事制度があるのでしょうか?

浅若: 当社のキャリアパスは複線型です。例えば、営業ならば管理職を目指すコースと専門性を極めるコースを選ぶことが可能です。階級は6段階あり、専門性の高い営業担当者の最上位は「マイスター」、次いで管理職と同じ等級に当たる「営業エキスパート」と続きます。

人のマネジメントが得意でなくても、称賛に値する仕事をやり遂げる人材は会社の宝です。例えば、2016年に完成した某国立大学医学部附属病院のハイブリッド手術室(複数の診療科目の手術が可能)は、高額なビッグプロジェクトでした。当社が医療機械から工事までの全てをパッケージとして提供しましたが、完成に至るまでには医療機器メーカーや建築事務所、大学の各診療科などとの複雑な折衝や調整が不可欠で、営業担当者には高度な専門性とスキルが求められました。中心となって同プロジェクトを成功させた社員は、その高い功績から当社初のマイスターに昇進。社内でとても尊敬される存在です。

渡辺: 営業スキルは秀でていても、人の管理が苦手な社員もいます。そういった人材の高い専門性もまた、社内でリスペクトされないといけません。現場が好きな人材を無理やり管理職にすることは、本人のためになりませんし、会社のためにもならないと思います。

ただし、エキスパートには責任も伴います。自分の持つ専門性に見合った成果が求められますから、管理職とは違う厳しさがあります。

先人の思いと経営の要諦を伝える『一燈を提げて』発行

浅若会長は「社史」と「社員研修のテキスト」を兼ねた『一燈を提げて』を制作・発行されました。タナベコンサルティングもその制作に携わらせていただきましたが、社史に込めた思いをお聞かせください。

浅若: 創業者である佐藤は、30周年で社史を作成しようと資料を集めていましたが、当時はかないませんでした。それもあって私は社長就任時から、きちんと会社の歴史や事業についてまとめたいという思いを持っていました。ただ、これまでの歴史を並べるだけの社史ではなく、先人がやってきたことや、経営ノウハウを社員研修で伝えられるような内容にしたいと考えました。

タイトルは「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うることなかれ。ただ一燈を頼め」という、江戸時代の儒学者・佐藤一斎の有名な言葉から拝借しました。私はたまたま社長として50周年を迎えましたが、先輩の教えや後輩のサポートがあったからこそのことですし、今日があるのも多くの社員のおかげです。彼らの教えや経験を糧に、この先も60年、70年、80年と会社を続けていってもらいたいという気持ちを社史に込めています。

創業の精神や時代に合わせてどう転換したか、どう価値判断したかは会社の貴重な財産です。後世に伝えてこそ生きてきます。それらを引き継ぎながら、今後はどのような会社を目指していかれるか。今後の目標をお聞かせください。

渡辺: 地域医療のパートナーとして、患者さまを第一に考え、医師をサポートしていくことが私どものミッションです。時代が変化する中、どのようにサポートすべきかを常に追求しながら、この先もお客さまに貢献する会社であり続けたいと考えています。また、これまでと同様に地チームコンサルティング対談域密着の会社として奨学金制度や地域文化振興などを通して地域社会に貢献していきたい。そして、何より会社の財産は人。社員にとって働きがいのある会社、働きやすい会社、家族に誇れる会社として100年企業を目指していきたいと考えています。

高度な専門性を持った社員と一緒に、より良い地域医療の実現に貢献されていくことを心より祈念しております。本日はありがとうございました。

丸木医科器械株式会社

社史であり、社員研修テキストでもある『一燈を提げて』。同社のこれまでの成長の歴史と経営ノウハウがつづられている

プロフィール

会社名 丸木医科器械株式会社
URL https://maruki-ms.co.jp/
所在地 宮城県仙台市太白区西中田3-20-7
設立 1965年
売上高 345億円(2020年4月期)
従業員数 272名(2020年4月現在)

※ 掲載している内容は2019年4月当時のものです。