株式会社オーレック さま

株式会社オーレック

超顧客志向で
「世の中に役立つものを誰よりも先に創る」

ポイント

  1. ジュニアボードを導入し、次世代の全社最適視点を養う
  2. 「オーレックアカデミー」で体系的に人材を育成
  3. 若手人材を中心とした新規事業プロジェクト

お話を伺った人

オーレック 
代表取締役社長 今村 健二氏

オーレック 
経営総合部部長 関 雅文氏

自走式草刈機の国内シェア40%超

オーレックは、自走式小型草刈機において国内シェア40%超を占めるトップメーカーです。まずは創業の経緯やこれまでの事業展開についてお聞かせください。

今村: 創業は1948年で、2018年に70周年を迎えたところです。父・隆起は戦後のモノ不足の時代に手作りで農業機械の製造を始め、1957年に株式会社化。その後は歯車をメインとする機械製品や耕運機、草刈機へシフトしました。特にチームコンサルティング対談草刈機については、他社に先駆けて業界初の製品を次々と世に送り出し、トップシェアを築くことができました。

業界初の製品開発を生み出す秘訣はあるのでしょうか?

今村: お客さまのクレームに謙虚に耳を傾けることです。私は入社後に営業担当だったため、お客さまの不満や声を直接お聞きする機会が多く、既存の草刈機では対応できない分野が多くあると気付きました。例えば水田の畔は、機械では通れない細い道の斜面と平面を同時に刈らないといけません。そこで、狭い所でも使える二面あぜ草刈機「ウイングモアー」を開発したところ、累計20万台を超えるヒット商品に成長。果樹園向けの乗用草刈機「ラビットモアー」も業界初でした。それまでは当社も操縦者が機械の後ろを歩いていく手押し式が主流でしたが、腰をかがめて作業しなければならない上、刈った草やほこりが後方に立つ操縦者の方に飛んでくるというデメリットがありました。そこで、車高の低いゴーカート式の草刈機を開発。座ったまま草刈りができ、作業部は自分が乗っている車体の下なのでほこりを吸う心配もありません。お客さまから「遊び感覚で草刈りができる」と好評を得ました。

ユーザー目線の問題点が把握できるのは、現場を大事にされているからに他なりません。現場でしか見えてこない意見やニーズは数多くあります。

今村: おっしゃる通りです。乗用草刈機を発売した年、全国のお客さまの元を回りました。不具合などをお聞きして製品に反映するためでしたが、福島県のある農家を訪れた時のこと、「今までで一番の親孝行の機械」と褒めていただきました。その方は、中学生の息子さんに週末に草刈りを手伝うように言っておくと、土曜日の朝早くから息子さんの姿が見えなくなっていたとのこと。草刈りは大変な作業ですから、親に見つからないうちに出掛けてしまうわけです。仕方なく、少しでも楽に草が刈れるように当社の乗用草刈機を購入し、「さあ、草刈りをしよう」と納屋に行くと草刈機がない。辺りを探すと、なんと息子さんが草を刈ってくれていたそうです。さらに、「息子が『面白いから、これからずっと草刈りをする』と言ってくれた」と、大変喜ばれていました。この時、仕事の本当のやりがいとはお客さまに喜んでいただくことであり、そのためにものづくりをしていると、あらためて痛感しました。

お客さまの視点に立った斬新な製品開発がオーレックの成功要因であることは間違いありません。今村社長が売上高を「貢献高」と呼ばれるのも、お客さまへの貢献が売り上げにつながるとのお考えからでしょうか。

今村: 売り上げを目標にすると、どうしても無理に売るケースが出てきます。ですが、そういった売り方は長続きしませんよ。お客さまに喜んでいただく製品、世の中の役に立つ事業でないと続きません。言い換えれば、世の中に貢献した分が売上高になる。その金額だから貢献高。ずいぶん前から使っており、社内の共通言語になっています。

今村 健二氏

オーレック 代表取締役社長 今村 健二氏
1952年福岡県久留米市生まれ。明治大学工学部機械科卒。半年間の米国留学を経て、1976年、父が創業した大橋農機株式会社(現・株式会社オーレック)に入社し営業部にて東日本を開拓。1988年、社長に就任し社名を変更。独創的な製品づくりで社長就任当時30億円だった売上高を現在の136億円へ成長させた。座右の銘は「百見は一感に如かず」。

体系的に人材育成するオーレックアカデミー

次世代経営者を育成するジュニアボードを導入されています。1年目は計画を作ってプレゼンテーションを行い、一部の提案は中長期計画に組み込んでいただきました。2年目に当たる今期は計画を実行する段階に入っていますが、社内や人材の変化を感じていますか?

今村: 若い世代の経営者意識をどう高めるかについては、常に意識してきました。ジュニアボードは、次世代幹部の育成と若い世代のアウトプットを経営に活用できる一石二鳥の仕組みと思い導入を決めました。効果としては、メンバーの意識の変化を実感しています。社員の視点はこれまで担当業務に偏りがちでしたが、ジュニアボードを通して会社全体を見る視点が養われています。例えば、決算書のベースを理解したことで、メンバーは決算書を見て会社で起こっている事象や今後の展開へひもづけられるようになってきました。

オーレックは300名以上いるスタッフ全員が正社員ですね。人をとても大切にされており、人材育成にも力を注いでおられます。体系的な教育の中核を担うのが「オーレックアカデミー」ですが、アカデミーにおいて最も大事にされている点をお聞かせください。

今村: 創業理念は、「世の中に役立つものを誰よりも先に創る」。これが業界初の製品開発を生み出し、お客さまに喜んでいただいた結果が貢献高となり、会社を成長させてきました。逆を言えば、他社と同じものを作っていては価格競争に陥り、尻すぼみになっていくということ。ここはオーレックアカデミーの根幹となる考え方です。ただ、口で言うのは簡単ですが、実行するのは難しい。なぜなら、製品開発は何百もの失敗の上にようやく成り立つものですが、人間は本能的に失敗を避けようとします。それでも、お客さまの困り事の解決や満足のために、あえて挑戦する社員を育てていかないとお客さまに貢献できません。当社が目指すのは「超顧客志向」。今の時代、顧客志向はどの企業でも掲げていますが、同業者がやっているのと同程度で満足しているのは業界志向です。それに対し、お客さまの声に謙虚に耳を傾けるのが超顧客志向。超顧客志向でないと良い製品は開発できないことを、私自身の経験を踏まえてアカデミーで伝えています。

超顧客志向に意識を変えるプログラムとは、どのようなものでしょうか?

今村: 例えば、農業体験ですね。私も含め、昔は社員の大半が農家の子だったので、農家の状況や気持ちがよく分かりました。しかし、今では入社する社員で農家の子がほとんどいないので、農家にご協力をいただいて育ててもらっています。

オーレックアカデミーやジュニアボードへの参加条件はあるのでしょうか?

関: アカデミーにはさまざまな階層、部署の人材を選んでおり、これまでに約80名が受講済みです。その中から、ジュニアボードや新規開発プロジェクト、教育委員会などのメンバーを選び、次の段階に進んでもらっています。教育委員会は社内の教育の仕組みを考える委員会であり、教える側になってもらいます。実際に教えてみると、考えが整理されたり、新たな気づきがあったりと良い影響が出ていますよ。

上司や人事の指示ではなく、実際に受講したメンバーからの推薦なら本人のモチベーションも上がるでしょうし、アカデミーを必要とする人材を選べる点からも非常に良い仕組みです。

関 雅文氏

オーレック 経営総合部部長 関 雅文氏
1974年福岡県福岡市生まれ。久留米工業高等専門学校機械工学科卒。1995年入社。営業部にて2010 年岡山営業所所長、2013年福岡営業所所長を経て2015年より現職。2016年のブランドリニューアルを手掛け、コーポレートブランディングの他、広報、採用、教育など経営戦略部門を担う。

4つのセグメントで新規事業を推進

新規事業については10年以上前から取り組んでおられます。きっかけや苦労した点、狙いなどについてお聞かせください。

今村: 1988年に社名を大橋農機からオーレックに変更し、私が代表取締役社長に就任しました。ちょうど創業から40年を迎え、創業者からは「業態を変えてもよい」と言われていましたが、それまでの強みを生かして草刈機事業を強化し、安全・安心な農作業の実現に貢献する道を目指しました。ただ、いつかは農業周辺で新規事業を立ち上げ、貢献できるフィールドを広げたいとも考えていました。社長就任からしばらくは本業で手いっぱいでしたが、15年目を過ぎたころから新規事業をスタート。第1号として青汁の販売を事業化しました。現在までに種なしスイカ花粉や畜産消臭システム、IT、健康食品と、事業を広げています。

農業の周辺産業は多岐にわたりますが、進出分野はどのように決めているのでしょうか?

今村: 全体を4つのセグメントに分けて進めています。1つ目は“食”。有機栽培を支援する機械開発や、生産・加工・販売までを視野に入れた6次化の支援です。2つ目が“環境”。これは畜産消臭システム「Dr.MIST」です。事業としては初期段階ですが、畜産の糞尿による環境汚染を改善し、畜産農家の経営改善を支援したいと考えています。3つ目が“IT”。家庭菜園向けポータルサイト「菜園ナビ」には2万人のお客さまにご登録いただいており、家庭菜園を営む方や農家の方にもご利用いただいています。4つ目が“健康”。青汁などの健康食品やその素材を使った美容石けんなどを製造販売しています。

新規事業については、若手人材を中心とした6カ月コースの新規事業プロジェクトをスタートされています。成果について、どのようにお感じでしょうか?

今村: メンバーにとっても初めての経験ですから、すぐに事業化したり、アウトプットすることは難しいでしょう。ですが、考え続けることに期待しています。やはり、ベースは超顧客志向。アイデアを出して終わりではなく、顧客を巻き込んで試してみるなど、実際に行動につなげていくことに大いに期待しています。インターネットには情報があふれていますが、実体験に基づく事業こそ本物です。聞いたり、調べて得た情報をうのみにするのではなく、それが本当なのか実際に自分で体験してみる。そうした行動力が新規事業には大事だと思います。

関: 新規事業プロジェクトで興味深かったのは、ソフトをテーマとするアイデアが多かったこと。当社はものづくり企業ですが、ソフト面の発想が出てきたのはオーレックアカデミーで培った力が生かされていると思いましたし、今後の可能性を感じました。アカデミーでは発想力の強化に力を入れていますから。ただ、アイデアをどう肉付けしていくかが重要です。アカデミーで学ぶ数値管理も生かしながら、今後はアイデアと数字を結び付けて具体化してほしいと期待しています。

株式会社オーレック タナベコンサルティングのコンサルティング導入事例

ショールーム機能を備えたブランド発信拠点「OREC green lab」を全国に展開。製品の展示だけでなく、農業や食に関するイベントやセミナー、交流会を開催(左)“食”“環境”“IT”“健康”の4つのセグメントで新規事業を展開(写真右は『薩摩の濃緑青汁』)

太平洋周辺エリアで海外事業を展開

2016年に掲げた「草と共に生きる」というブランドコンセプトに込められた思いについて、お聞かせください。

今村: 安全・安心な農産物づくりを支援し、持続可能な社会に貢献する企業という気持ちを込めています。「安全・安心な農業」とは、例えば有機栽培や草生栽培ですね。環境や健康といった事業分野も全て、このコンセプトに基づいています。

草とうまく付き合いながら安全・安心な農産物を支援するオーレックの事業を的確に表しつつ、より幅広い展開が期待できる良いコンセプトですね。今後はどのような展開を目指しているのでしょうか?

今村: デジタル化や無人化など、農業機械は転換期を迎えています。そういった流れに対応しながら既存事業を超えるトランスフォーメーションを目指すことになるでしょう。国内は新規事業を広げていきます。また海外は農園規模の違いから、農業機械よりも緑化機械の需要が高く、特に雑草分野では、プロのガーデナーが使う機械として重宝されています。一方で、シャンパーニュやボルドーなどの高級ワイン産地のぶどう園では、その地域の栽培条件に合わせて開発した機械が広まっており、ブランドも浸透してきました。今後はさらに活躍できるフィールドを広げられると期待しています。

ヨーロッパ以外の海外展開についてはいかがでしょうか?

今村: 太平洋周辺の開拓に注力していきます。現在は海外向けが貢献高(売上高)の2割を占めていますが、エリアを拡大することでさらに伸ばせると思います。アジアにも進出済みですが、いまだに雑草などを燃やしてしまう地域も少なくありません。ただ、環境意識も高まっており、経済成長に伴って草刈機の需要は拡大すると予測しています。また、ニュージーランドやオーストラリアも開拓中です。農業機械以外の新規事業についても、国内の成功事例の海外展開は十分にあり得ます。

これまで培った高い技術力と超顧客志向の両輪で社会に貢献するオーレックが、ますますご活躍されることを祈念しております。本日はありがとうございました。

プロフィール

会社名 株式会社オーレック
URL https://www.orec-jp.com/
所在地 福岡県八女郡広川町日吉548-22
創業 1948年
従業員数 359名(2020年6月現在)

※ 掲載している内容は2019年3月当時のものです。