あなたの会社には数字が"読める"人材はどれだけいますか?財務諸表の効果的な勉強法をご紹介
- 資本政策・財務戦略
世の中ではよく数字が得意な人のことを「数字が"読める"人」と呼びます。
では、企業において「数字が読める人材」とは一体どういった人材なのでしょうか。筆者は「数字が読める人材」を「財務諸表を見て違和感を覚えられる人材」と定義します。単に財務の知識や会計の実務経験があるだけではなく、財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)から外部環境の変化や経営判断の変化に気付けられる人材だと言えます。
逆に言うと、財務諸表を読めるということは、どういった経営判断をして現場において何をすれば財務諸表の数字がどう変化するのかが分かります。つまり、数字を起点に将来打つべき手を考えることができるのです。
しかし、筆者がクライアント企業様の経営者や管理職の方々とディスカッションをしていると「実務での数字には苦手意識がある」「財務諸表を見たことがない」「売上・粗利は知っているがそれ以外は知らない」というような方々が少なからずいらっしゃいます。
そのため今回は財務諸表の効果的な勉強方法について解説します。
財務諸表の効果的な勉強法①
財務三表を一体的に理解する
筆者が考える財務諸表に苦手意識がある人の共通点は、全体の内容を理解する前に部分から勉強を始める点だと考えます。限界利益とは何か、損益分岐点操業度とは何か、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)とは何かを学ぶ前に、まずは、財務三表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)とは何かを学ぶことが近道であり、苦手意識を生じさせないポイントだと考えます。さらには、貸借対照表と損益計算書とキャッシュフロー計算書を一体的に理解することがポイントになります。財務三表には繋がり(ストーリー)があります。自分が起業をしてビジネスを始めることをイメージすると分かりやすいと思います。
(1)ビジネスを始めるにはまずはお金が必要です。自分が元々持っているお金(純資産)だけでは足りない場合は他からお金を借ります(負債)。[BSの右側はお金の"調達"を表す]
(2)集めたお金でビジネスに必要なモノを揃えます(資産)。[BSの左側はお金の"運用"を表す]
(3)揃えたモノを活用して売上を上げ(売上高)、売上を上げるために発生したコストを差し引き(売上原価、販管費など)、最終的に利益が上がります(当期純利益)。
(4)そしてその利益は自分のお金(純資産)になります。
(1)~(4)を繰り返すことが経営活動であり、その経営活動が貸借対照表と損益計算書に表れているのです。キャッシュフロー計算書は経営活動における現金に焦点を当て、その流れを表したものになります。
これを理解すると「総資産経常利益率=売上高経常利益率×総資産回転率」の意味が分かるのではないでしょうか。
タナベコンサルティングにて作成
財務諸表の効果的な勉強法②
森を見て木を見て葉を見る
財務諸表を一体的に理解することができたら、次はその中身を見ていきましょう。ここでのポイントも「全体から部分を見ること」になります。つまりは「木を見て森を見ず」ではなく「森を見て木を見て葉を見る」ことが重要になります。貸借対照表で言うと、森は「貸借対照表全体の情報」、木は「貸借対照表における金額が大きく(寄与度が大きく)、また、趨勢比較をしたときに数値が大きく変化している箇所」、葉は「その箇所に関する数値」になります。
例えば、
(1)今期の貸借対照表を前期と比較(=森)した際に数値が大きく変化(低下)していたのが自己資本比率(=木)であった。
(2)自己資本比率を因数分解すると「自己資本比率=自己資本÷総資本(自己資本と他人資本の合計)」であるため、自己資本(=葉)と他人資本(=葉)の金額を見ると、他人資本はそれほど変わらないが自己資本が大きく減少していることが分かった。
といったことです。
自己資本比率が低下している原因が自己資本の減少ということが分かれば、次に自己資本の中身を見て、仮に利益剰余金が減少している(=当期純利益が赤字)のであれば、次に赤字の原因を探るために損益計算書を見ます。
このように、森を見て木を見て葉を見る流れで時間をかけて「なぜなぜ(原因)分析」を繰り返し、一番の課題点やその真因を突き止めます。これがいわゆる経営分析です。
財務諸表の効果的な勉強法③
数字と経営活動をリンクさせる
「数字が読める」とは「どういった経営判断をして現場において何をすれば財務諸表の数字がどう変化するのかが分かる」と言いました。
そこを目指すためにまずは、財務諸表の数字から外部環境の変化や経営判断の変化を読み取ることが重要になります。損益計算書の売上高が減少傾向にあるということはマーケットがシュリンクしているのではないか、競合企業が増えているのではないか、貸借対照表の固定資産が増加しているということは投資を行い新たな手を打とうとしたのではないかと、数字と経営活動をリンクさせて考えることが「数字が"読める"人材」への大きな一歩となります。
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