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人事コンサルティング事例
企業内大学(アカデミー)

企業内大学導入事例
~経営理念を浸透させ「より魅力的な人財」へ

株式会社サンクゼール

社員の定着率を高める対策として企業内大学をテストスタートした株式会社サンクゼール。
結果は想像をはるかに超え、全社的な教育体系として長く導入していただくことに。
「働き方への支援すると、生産性は必ず上がります」と話すのは、成功の鍵を握った!?タナベ経営のコンサルティング担当者。

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フランスの田舎のような美しい風景が広がる「サンクゼールの丘」。
併設のワイナリーレストランやカフェでは地元食材を使った料理やワインが楽しめる

フランスの農村に憧れ独自の世界観を確立

サンクゼール 代表取締役社長
久世 良三氏
1950年生まれ、東京都出身。1972年慶應義塾大学経済学部卒業後、ダイエー、久世(業務用食材卸会社)を経て1975年斑尾高原でペンション経営を開始。1982年斑尾高原農場(現・サンクゼール)設立。
長尾サンクゼールは長野県飯綱町に本社・工場を置き、ジャムやワイン、パスタソース、ジェラート、ドーナツなどを生産するとともに、自社製造のワインやグロサリー(一般食品・生活雑貨)などを販売する「St.Cousair」、全国各地からおいしい物を集めて販売する「久世福商店」などを全国展開し、食品業界を代表するSPAとなっておられます。2019年には創業40周年を迎えられますが、事業の軌跡をお聞かせください。

久世 良三(以降、良三)
スキーが好きで子どもの頃から長野県をよく訪れていました。大学卒業後、大手スーパーマーケットと外食産業専門商社を経て、1975年、斑尾高原にスキー客向けのペンションを開業。オープン2日目に知り合ったのが、妻(久世まゆみ氏)です。お客さまにスキーを無料で教えたり、雪の中で立ち往生したお客さまのクルマを救助したり、夜はみんなで歓談したりするうちに口コミで評判が広がり、シーズン中は常に満杯の状態が続きました。思い返すと、ペンションは究極のホスピタリティー産業だと思います。斑尾高原の観光協会の部長も務め、スキー大会やジャズフェスティバルの企画・運営などに携わり、多忙な日々を送っていました。

しかし、繁忙期は睡眠もろくに取れない状況が続く半面、オフシーズンには収入が途絶えるといった過酷な環境に妻が耐えられなくなり、とうとう家を出てしまったのです。なんとか戻ってきてほしいと伝えると、ペンションをやめるなら戻る、と言われました。

そこで、ペンションの朝食に出して大好評だった妻の手作りジャムを商品化し、商品開発は妻、営業と配送は私という役割分担で、ペンション経営と並行しながら新事業をスタート。味も良く新鮮ながら、形が悪いため安く売られているりんごとわずかな砂糖で作った甘さ控えめのジャムは、世の中の健康志向に合致したヒット商品になりました。「素材本来の味わいを生かした、家族の健康を思うやさしい原材料を使う」という、サンクゼールのモノづくりの姿勢は当時から変わることはありません。そして、1982年にペンション経営をやめて、斑尾高原農場(現・サンクゼール)を設立しました。

長尾今は「モノ余り、コト不足」といわれ、コトを売らないといけない時代です。久世社長はメーカー経営からスタートしたのではなく、ペンション経営が事業の原点にあるから、「顧客価値創造企業」へと成長できたのでしょうね。

良三当初はペンション経営で培ったノウハウを生かしてメーカーとして成長していこうとしました。しかし、資本力のある優れた先発メーカーが多々ある中、最後発のメーカーが同じ土俵で戦ったのでは消耗戦になってしまう。そこで、私が感動したヨーロッパの風景をお客さまに伝えてブランディングすることにしたのです。

長尾それはどこの風景ですか?

良三フランスのボルドー、ブルゴーニュ、ノルマンディー地方です。ジャムの販売が軌道に乗った頃、新婚旅行を兼ねて妻と訪れました。美しく広大なりんご畑の中には、牛が自由に歩き回り、シードル(りんごの発泡酒)やカルバドス(りんごのブランデー)の醸造所と農家が点在していました。そのような6次産業的な方向性を含めた農村の姿に対する憧れから、"Country Comfort"(田舎の豊かさ、心地よさ)というコンセプトが生まれます。そうやって、大手とは違う土俵で勝負するようになりました。ある意味、後発で資本力も乏しい"弱者"ゆえの知恵ともいえるでしょうね(笑)。こうして自ら育てた原料を自社工場で加工して商品を生み出し、それを直営店のSt.Cousairで販売するSPA業態を確立しました。

プラス思考で互いの違いを認め合う社風

サンクゼール 代表取締役専務
久世 良太氏
1977年生まれ、長野県出身。電気通信大学大学院電子工学専攻修了後、2002年セイコーエプソン入社。2005年サンクゼール入社、2008年取締役。2009年信州大学経営大学院イノベーション・マネジメント専攻(MBA)修了、2012年サンクゼール代表取締役専務。2013年斑尾高原農場代表取締役就任。
長尾企業目的、大切にする価値観、企業としての在り方、品質方針、品質目標を明確に定めて、全社員が共有していることも特長の一つですね。

良三ジャムの販売を始めた頃は、無名だったので何度も訪問しないと買ってもらえなかったり、支払いをしてもらえなかったりと苦労しました。その体験を生かし、「サンクゼールの大切にする価値観」では「相手を尊重し差別をしない広い心で、自分にしてもらいたいことをまず相手にする心を大切にする」としています。

長尾今風に言うと「ダイバーシティー&インクルージョン」ですね。

良三ヨーロッパでは互いの違いを認め合い、誇りを持って田舎で暮らす人が多いという印象があります。少なくともサンクゼールの中では、「あなたのことはOKだから、わたしのこともOKと思って」といったプラス思考でいろんな人を受け入れてほしいですね。

長尾世界観を提供する会社には、商品づくり、店づくり、品ぞろえ、物流、資金、利益などの総合力が求められます。久世社長の周りに多彩な人たちが集まらないと、ここまで成長できなかったのではないでしょうか。今では力強い右腕となられた専務が入社したのはいつ頃ですか。

久世良太(以降、良太)
13年前です。28歳の時に入社しました。

良三銀行を担当してもらったので、大変なことが多かったと思います。事業リポートを毎月作成して銀行に提出するなど、良い時も悪い時も愚直なほど真面目な姿勢で当社への信頼度を高めてくれました。よくやってくれたと感謝しています。

良太就職情報会社の「就職したい企業ランキング」では、この5年ほど長野県のベスト3に入っています。また、中途採用でも優秀な人材を獲得できるようになりました。社長は絶えず夢を語るタイプなので、それに共感を覚えた人が入社していると思います。トップの考え方を聞いて未来に対する可能性を感じてくれるのでしょう。

現在の社長は自分で全部やろうとせず、みんなに任せるようにしているので、社員は自己裁量で自由闊達に活動しています。昔は自分で握りしめているところが多かったそうですが(笑)。

良三この年になると自分の限界が分かるし、優秀な人ほど任せた方が素晴らしい仕事をすることも学びました。会社が苦しい時期に学んだのは、人は本音でぶつかって助けを求めるとちゃんと応えてくれること。見えを張って仕事を任せないと、優秀な人は自分に存在価値がないと思ってしまうと気付きました。

米国オレゴン州に生産拠点ECと連動しファン獲得

添加物を使わず、昔ながらの製法で作る『トラディショナルリッチジャム』。
オレゴン州近辺で収穫される果実を使用し、オレゴンの工場で製造
日本中、世界中の美味を取りそろえたフードマーケット
「THE GROCERY & WINE」

タナベ経営 取締役副社長
長尾 吉邦
タナベ経営に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、13年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアント先の特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。
小山田独創的な商品開発とその店舗展開を生み出しているマーケティング、多彩なブランド展開の考え方をお聞かせください。

良太St.Cousairは自社製造のワインやグロサリーを扱いながらライフスタイルを提案するメインブランドで、2017年には東京・銀座エリア最大の商業施設「GINZA SIX」に旗艦店を出店しました。

また、2013年には「ザ・ジャパニーズ・グルメストア」をコンセプトに日本各地の食の名品を取りそろえたセレクトショップ、「久世福商店」をオープン。現在、これらの店舗数は140近くになりました。さらに新業態として2017年、バイヤーが世界中からお客さま目線でセレクトしたおいしい商品を販売する「THE GROCERY & WINE」(ザ・グロサリーアンドワイン)をオープンさせました。

良三共通しているのはデベロッパーに対する人脈づくりと、自社開発した店舗管理システム・情報システムがインフラになっていること。共通のプラットフォームの上にSt.Cousairがあって、それを発展させた久世福商店、THE GROCERY & WINEがあるという構成です。

小山田2017年には米国オレゴン州に生産拠点を設けました。

良三飯綱町の工場の生産能力が限界に近づいたので、自然環境、良質の農産物、優れた人材などに恵まれたオレゴン州に進出し、サンクゼールオレゴンオーチャーズを設立しました。ここで生産した『飲むお酢』『トラディショナルリッチジャム』などが現在St.Cousairや久世福商店に並んでいます。また、海外に生産拠点を持ったことで、世界各国への販路拡大も進みそうです。

小山田これからの事業展開や中期経営計画をお聞かせください。

良太3つの柱を考えています。1つ目は直営店、2つ目はFC事業で、今後も年間15店舗くらいは出店する計画です。その中で、既存のお客さまとのつながりをもっと深くしたいと思います。その一環として、久世福商店イオンモール堺鉄砲町店(大阪府堺市)では「LINE@」(ラインアット)というSNSのツールを活用して6000人のお客さまとつながりを持ち、来店を促す情報を提供し、売り上げを伸ばしています。それを全店で展開するために、EC事業を3つ目の柱として力を入れていく方針です。

小山田EC事業について具体的な説明をお願いします。

良太当社の商品は、どれもこだわりを持って丁寧に作られています。その生産現場を含めたコンテンツを充実させ、レシピや使い方も紹介したいですね。1店舗当たり5000人のお客さまへ発信し、3年くらいかけてお客さまから"コアなファン"になってもらうのです。当社の通販サイトに、コアなファンの方々のコミュニティーサイト機能を付けて、レシピを共有できたり商品開発の座談会に参加できたりする形にすると、もっと当社を愛してもらえると思います。

長尾世界観を分かった上でファンになった人は、親子3代続くファンになるかもしれません。100年企業に向けた第一歩になりますね。

サンクゼールアカデミーで「より魅力的な人財」育成

タナベ経営 経営コンサルティング本部
部長 チーフコンサルタント
小山田 眞哉
開拓、製品開発による事業戦略構築に定評があり、食品メーカーの垂直統合戦略など、多くの中堅・中小企業の未来を共に創ってきた。人事・営業・財務・購買・生産などの経営管理機能のコンサルティングも手掛け、多くのクライアント先を成長に導いている。特に食品ビジネスを中心としたコンサルティングにはタナベ経営随一の実績を持つ。
長尾人材育成に関する取り組みをお聞かせください。

良太社内教育研修制度として「サンクゼールアカデミー」を始めました。もともとは社員の定着率を高める対策としてスタートしたのですが、それを全社的な教育体系としてリニューアルしました。

経営理念、大切にする価値観を十分に理解し、自分自身に落とし込み実践していく強い決意を持った人、豊かな人間性を持ったコミュニケーション能力の高い人たちを「より魅力的な人財」へと導くための学びの場としています。

具体的には、人財育成のための多彩なカリキュラム、コミュニケーションの場としての各種イベントや親睦会、互いにたたえ合う表彰制度、育児や介護と仕事の両立などの悩みを気軽に相談できるバックアップ・相談・支援制度があります。

長尾働き方へのアプローチをしっかり支援すると、生産性は必ず上がります。年商30億円を超えた時点から、広報と採用教育に関わる人事セクションを充実させるか否かで成長に大きな差が出ます。サンクゼールは2年前に広報部を設け、人材の採用教育にも力を入れておられます。優れた情報システムもお持ちですから、さらなる成長が期待できます。

良三米国でも優秀な人材を獲得できたので、オレゴンの拠点をできるだけ早く現地化したいと考えています。それが多様な価値観を共有しながら事業を行うモデルになるからです。

良太日本中どこでも「サンクゼールなら間違いない」といわれるような確固たるブランドを築きたいですね。地道に商いを続けて情報を発信していけば、おのずとそうなると思います。

長尾時代にマッチした世界観、人を引き付ける企業の姿勢や理念、専務への事業の継承。この3つが成長の鍵を握っていると思います。事業継承はうまく進んでいる印象を受けますが、いかがですか?

良太一定の距離感を持って、良好な信頼関係を維持できていると思います。

長尾事業継承も万全ですね。ペンション時代に培った「みんなが喜ぶことを創造する」姿勢こそが、サンクゼールの事業の原点ではないでしょうか。これからもまだ見ぬ世界観を顧客に提供して喜ばせてください。本日はありがとうございました。

会社プロフィール

会社名
株式会社サンクゼール
所在地
〒389-1201 長野県上水内郡飯綱町芋川1260
TEL
026-253-7002(代)
創業
1979年
資本金
1億円
売上高
97億円(2018年3月期)※グループ全体
従業員数
826名(パート・アルバイト含む、2017年12月末現在)
事業内容
ジャム・ワイン・その他食品の製造販売、ワイナリー・レストラン・売店等の直営およびフランチャイズ展開
URL
http://www.stcousair.co.jp/

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業 66
  • 200 業種
  • 17,000 社以上