人事コンサルティング事例
企業内大学(アカデミー)

環境配慮型の工法開発でナンバーワンを目指す
コンクリートコーリング × タナベ経営

コンクリートコーリング株式会社

コンクリートコーリングは、高速道路をはじめとするさまざまな社会インフラのリニューアルを支える、コンクリート撤去・除去のエキスパート企業だ。「腕自慢の技術屋の集まり」から「経営理念を体現する組織」へと改革を推し進める同社の成長戦略を聞いた。

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コンクリート撤去・除去のリーディングカンパニー

コンクリート撤去・除去のリーディングカンパニー

コンクリートコーリング 代表取締役社長 藤尾 浩太氏 コンクリートコーリング 代表取締役社長
藤尾 浩太氏

「社員と家族のしあわせを実現する」ことを目指し、2012年に代表取締役に就任。大胆な社内改革、特許の取得などにより業績の回復、自己資本比率の大幅な改善を実現。
2016年から5年連続、決算賞与で社員にその利益を還元している。
仕事、家族、ゴルフが何より大事。日本コンクリート切断穿孔業協会理事。
森田高度成長期に建造されたコンクリート構造物が次々に老朽化する中、コンクリート撤去・除去のリーディングカンパニーであるコンクリートコーリングは業績を伸ばしておられます。まずは企業概要についてお聞かせください。

藤尾当社はダムや橋、トンネル、鉄道、高速道路、発電所、製鉄所、水処理施設、上下水道などの社会インフラを構成するコンクリートの切断や穿孔(穴を開けること)を行う専門工事会社です。1978年に設立し、西日本全域を営業エリアとしています。お客さまはゼネコンが主体。営業から技術提案、施工まで一貫して自社で実施できる体制が評価され、多くのお客さまから信頼を獲得しています。

成熟化した都市では、騒音、振動、粉じん、排水などを極力発生させない環境に配慮した工法が求められます。当社はダイヤモンドの刃が付いた小型機械を使い、営業中の百貨店のビルからコンクリートを撤去した実績があります。

また、ウォータージェット工法という超高圧の水を使ってさまざまなコンクリートを除去する工事も行っています。この工法は1cm2当たり2.4tもの水圧が掛かり危険を伴うため、万全な安全対策が求められます。

当社は安全に対する妥協を一切許さず、理解しやすい安全マニュアルの作成や安全作業をチェックするパトロールをはじめ、協力業者も参加する安全大会、各現場の進捗状況や「ヒヤリハット」を報告する定期的な会議などを行っています。

安全性の追求と同時に、技術開発も積極的に推進。グループ会社を介して現場ニーズに合わせた機械加工を行うだけでなく、お客さまの要望に応える新工法の開発にも取り組み、大手建設会社と共同開発した特許も所有しています。

経営課題を洗い出し社内改革を一気に推進

コンクリートコーリング 経営統括室長 中元 美緒氏 コンクリートコーリング 経営統括室長
中元 美緒氏

関西学院大学経済学部卒。2013年入社。経営統括室長就任後は、持ち前の実行力と既成概念にとらわれない創造性を生かし、DX含め業務改善を強力に推進。経営と社員の待遇バランスを常に考え、会社の風土を変化させている立役者。秘書検定1級と建設業経理士1級を独学で取得。現在は中小企業診断士合格を目指して勉強中。
森田タナベ経営とのお付き合いは2017年から始まりました。その背景にはどのような事情があったのですか。

藤尾当社は今期の反省と次期の計画を話し合う経営総合会議を開いています。2017年の経営総合会議には経営統括室長の中元が女性社員として初参加し、「中小企業のための内部統制の向上にかかるチェックリスト」を提出しました。

これは「当社が今どういう状態にあるのか」を評価するものですが、当社は145点中51点。私は社長を継承して5年が経過し、多少業務に慣れた時期だったので、自分の不行き届きを指摘されたようで非常に恥ずかしい思いをしました。

当時、私は今後の成長戦略を模索しており、さまざまな書籍に目を通していました。その中にタナベ経営のコンサルティングを高く評価したものがあったことがお付き合いのきっかけになりました。

タナベ経営との付き合いが始まると当社の問題点が次々に洗い出され、まるで人間ドックに入ったような感じでした。この3年間、経営理念と中期ビジョンの策定、社内アカデミーの創設、人事制度とウェブサイトのリニューアル、ジュニアボードの実施に取り組む中、「社内の雰囲気が変わってきた」と感じています。

透明性の高い人事制度即戦力化を図るアカデミー

タナベ経営 経営コンサルティング本部 本部長代理 森田 裕介 タナベ経営 経営コンサルティング本部
本部長代理 森田 裕介

大手アパレルSPA企業での経験を生かし、小売業の事業戦略構築、出店戦略、店舗改革を得意とする。理論だけでなく、現場の意見に基づく戦略構築から実行まで、顧客と一体となった実践的なコンサルティングを展開。「お客さまに喜んでいただけるまで妥協しない」をモットーに、業績向上を図っている。
森田経営理念と中期ビジョンの策定をお手伝いするところからスタートしました。

藤尾経営理念の策定については、タナベ経営から「社長1人で考えて決めたものを社員に押し付けるよりも、次世代の幹部候補を交えて討議し、明確にした方が良い」とのアドバイスを受け、将来の幹部候補を選定して作業を進めました。また、中期ビジョンの策定も、幹部候補を中心とした「中期ビジョン策定委員会」を立ち上げて進行しました。

松本中期ビジョンの策定後、人事制度もリニューアルされました。新しい人事制度への思いをお聞かせください。

藤尾人事制度の再構築は、常に人員が不足している建設業界において不可欠な取り組みです。当社にも人事制度はありましたが、女性は男性よりも低い賃金体系が設定されているなど時代に合わない部分がありました。そこで、社員満足度を向上させて社内を活気付け、退職者を減らそうと人事制度の改革に着手したのです。

松本改革のポイントを教えてください。

藤尾新しい人事制度ではルールを明確にして透明性を高め、どの方向に向かって努力すればキャリアアップできるのかを明確にしました。5つの職種ごとに6等級から1等級の考課表を用意し、絶対評価で考課すると宣言。

こだわったのは仕事だけでなく「人間性」も高めてほしいという点で、等級が上がるほど経営理念に基づいた思考や行動ができて部下や後輩の見本になることを求めています。互いに尊重し合える職場をつくって社員が辞めない会社にしたいからです。

念願だった「社員を適正に処遇できる仕組み」は出来上がったと自負しています。今後は正しい考課ができるような考課者研修を定期的に行う計画です。

松本新たな人材育成機関として開設された「CCC(コンクリートコーリングカンパニー)アカデミー」の内容をお聞かせください。

中元CCCアカデミーを設立した目的は、人材の早期戦力化の推進です。これまでは新人を現場に送り出して先輩社員から仕事を教わるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)スタイルで、一人前になるのに5年くらいかかりました。

一方、CCCアカデミーはDVD受講型・集合型・実技型・外部研修型の4つのスタイルの教育を施し、3年で一人前に成長することを目指します。実際、アカデミー1期生は入社1年で現場へ1人で出られるようになり、成長の速さに驚いています。

松本今後、取り組むべき課題は何ですか。

中元多様な社員に向けたカリキュラムを充実させることです。特に既存社員へのカリキュラムはまだ作成段階で、「仕事に対する姿勢」や「新人を受け入れるための上司・先輩社員としての在り方」などは社外講師によるDVDでの教育が中心。いずれはDVDに頼らず、CCCアカデミーの受講者が自発的に社内講師に立候補していくような"善循環"を確立したいと考えています。

松本アカデミーで成長した社員が講師になって「学び合い、教え合う」ラーニングカルチャーを実現させていただきたいと思います。

中期ビジョンの目標を1年前倒しで達成

タナベ経営 経営コンサルティング本部 本部長代理 松本 宗家 タナベ経営 経営コンサルティング本部
本部長代理 松本 宗家

クライアントの立場に立った現場優先のコンサルティングを実践。組織戦略や評価連動型人材育成システムの構築など、人材に携わるコンサルティングに定評がある。「企業は人なり」をクライアント企業とともに体現することに心血を注いでいる。中小企業診断士。
西村中期ビジョンで取り組まれているテーマを教えてください。

藤尾既存事業の強化として「営業強化」「施工能力アップ」「人材育成」「業務効率化」をテーマに掲げ、それぞれにリーダーを置いて意欲的に取り組んでいます。

営業強化としてはチーム営業体制やウェブサイトのリニューアルを行いました。チーム営業体制を敷いたのは、営業担当者が退職してしまうと顧客も離れてしまうという苦い経験からです。ベテランと新人がチームを組んで目標を設定し、たとえ1人が抜けてもフォローできる体制にしました。

また、ウェブサイトをリニューアルすることで「数を打てば当たる」営業スタイルから、「当社の工法に興味があるお客さまに注力する」効率の良い営業スタイルへの転換を促進。今後は営業アシスタントが「インサイドセールス」を行えるような体制にしたいと考えています。

施工能力アップは「仕事はあるのにこなせる人がいない」という状況を解消するための取り組みです。継続的に新入社員を採用し、CCCアカデミーで早期戦力化を進めます。長らく85名前後だった社員数が、2021年4月には106名になる予定です。

業務効率化は、中元が中心となってIT化を推進しています。

中元営業担当者が顧客情報を共有できるようなグループウエアの導入、業務内容に適合した販売管理ソフトの構築、働き方改革に合わせたクラウド型タイムカードの導入、社用スマートフォンの内線化、ビジネスチャットの導入などを実施しました。ビジネスチャットは社員同士のコミュニケーションをアップさせるのにとても効果的で、以前よりも組織の一体感が出てきたと感じています。また、業績優秀な営業担当の行動を営業担当者全員の行動基準にしてもらうため、営業のモデリングにも着手しました。

森田中期ビジョンには「46期に売上高40億円、営業利益率12%以上」を掲げ、1年前倒しで目標を達成しました。中期経営計画の最終年を2022年に控えた今期は「人材強化期」の最終年。強化した人材と共に、2年後、どれだけ数字を上積みできるか楽しみですね。

ウェブを意欲的に活用し新卒人材を確保

タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長代理 チーフコンサルタント 西村 直人 タナベ経営 経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント 西村 直人

「人は変わる、変えられる」を信条に人事制度構築や人材育成の仕組みづくりなど、人事全般のコンサルティング活動を展開中。また、人材育成面では、経営者から新入社員までのプログラムの設計から運営で幅広く活躍。特に、幹部~若手クラスの人材育成のノウハウには定評がある。
西村直近ではホームページもリニューアルされました。その背景および内容についてお聞かせください。

中元 最近は求職者が事前にウェブサイトで会社を研究し、ふるいに掛けているような気がします。当社の以前のホームページは私が6年前に作成したもので、社員の笑顔の写真を多数載せるなどの工夫によって「求職者の質が変わった」という実感がありました。そろそろ更新すべきだと考え、タナベ経営と一緒に1年かけてリニューアルしました。

当社は安全第一に徹した施工を行い、その取り組みは業界トップクラスだと自負しています。さらに、2019年には国際コンペティション「ダイヤモンドアワード」で最優秀賞を受賞しています。こうした当社の優秀性や取引先からの評価、保有する特許内容をホームページに盛り込み、営業強化へつなげています。また、採用ページには多くの若手社員に登場してもらい、生き生きとしたイメージを打ち出しました。ホームページのリニューアルを通して、当社のブランディングに寄与できたと感じています。

西村ホームページのリニューアルは採用強化にもつながっています。採用の状況をお聞かせください。

中元建設業は危険・きつい・汚いというイメージがあり、人材不足に常に悩まされています。当社も2017年には採用ゼロとなり、ベトナムから技能実習生をスカウトしました。こうした苦しい状況で、大学の新卒者を初めて採用するために立ち上げたのが採用委員会です。初期は試行錯誤の連続でしたが、1次面接から社長が参加して志願者全員に会うシステムにすると、採用が順調に進むようになりました。

2020年はコロナの影響で新卒採用が危ぶまれましたが、早い段階からZoomでの会社説明会や1次面接に切り替えたおかげで、予定していた採用枠を達成できました。Zoomでの面接で何よりも驚いたのが、北海道在住の人を採用できたこと。「ITを使えば、地方に出向かなくてよい時代になった」と思いました。

追い風の吹く業界で"別格"とされる存在へ

森田最後にコンクリートコーリングが目指す姿と今後の事業展望をお聞かせください。

藤尾当社の経営理念は「コンクリート撤去・除去の課題解決を使命とし、安全・誠実・技術を追求することで幸せな社会の発展に貢献します」です。社員みんなが経営理念を体現して課題解決のできる人になり、社会の発展に貢献できる技術を磨いていく----。そのような社員たちが尊敬し合える職場で、幸せに働けるのが理想です。以前は「腕自慢の技術屋の集まり」といったイメージでしたが、最近は「組織としてまとまってきているな」と感じています。

今後20年にわたる高速道路のリニューアルなどで、業界には追い風が吹いています。こうした良好な事業環境の中で、価格競争に陥ることのない"別格"として選ばれる存在になりたいと思います。そのために「環境配慮型の工法開発でナンバーワン」になることを掲げ、採用や教育に力を注いできました。レベルアップした人材がリーダーになって、現場で気付いた開発のヒントを自由に発言できる社風をつくってもらいたい。新工法や新規事業の提案などがあれば、私も積極的に応援していきたいと思っています。

遅ればせながら、当社は2020年から完全週休2日制を実現しました。社員には付加価値の高い仕事を追求する一方で、プライベートも充実してもらい、そこで得た新たな気付きを仕事に生かしてもらう"善循環"になるよう、積極的に支援していきます。そして「この事業を通じて、私たちに関わる人たちが幸せになる」ことを、これからもずっと追い求めていきます。

森田その道のりを切り開くパートナーとして、ぜひ、ご一緒させてください。本日はありがとうございました。

会社プロフィール

会社名
コンクリートコーリング株式会社
所在地
大阪府大阪市都島区毛馬町5-15-24
設立
1978年
代表者
代表取締役社長 藤尾 浩太
売上高
30億円(2020年8月期)
従業員数
95名(2020年8月現在)

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業 66
  • 200 業種
  • 17,000 社以上