人事コンサルティング事例
ジュニアボード

変化の技術で成長を続ける200年企業
石塚硝子株式会社×タナベ経営

石塚硝子株式会社

1819(文政2)年創業の石塚硝子。
祖業であるガラス容器を追究し続ける一方、ビジネス領域の拡大と技術領域の拡大を図り、
東・名証1部上場の総合容器メーカーとして飛躍を遂げている。
危機感をばねに進化を続ける超長寿企業の戦略を伺った。

SCROLL

多様な素材で社会を支える総合容器メーカー

ガラス製品の加工技術も秀逸。写真は樹脂コーティングを施したびん。
小ロットでの生産も可能

石塚硝子 代表取締役社長1997年石塚硝子入社。2004年に取締役兼執行役員ガラスびんカンパニー社長に就任。2009年に常務取締役、2011年取締役副社長営業部門・管理部門管掌を経て2013年より代表取締役社長。モットーは「誰が正しいかではなく、何が正しいかである」。 長尾 石塚硝子は2016年11月に、創業から198年目を迎えられますね。

石塚 1819年に初代・石塚岩三郎がガラス細工を始めて以降、一貫してガラスの製造に携わってきました。1961年には私の祖父に当たる正信が、岩倉工場を新設してガラス食器へ本格参入。同じ頃、ガラス容器事業は牛乳びんを中心に食品・飲料分野で成長を遂げました。

その後、お客さまのニーズに合わせて紙パックやプラスチック容器などへと事業を広げて現在に至っています。

長尾 祖業はガラス容器ですね。そこから時代のニーズに合わせ、容器をキーワードに技術領域を変えていき、また、ガラスの機能性に着目してビジネスモデル領域を拡大されています。現在の各事業の構成比は、どのようになっていますか?

石塚 売上高は734億1400万円(連結、2016年3月期)。内訳は、ガラスびん関連が約26%、ガラス食器などハウスウエア関連が約22%、紙容器関連が約11%、プラスチック容器が約33%、その他の抗菌剤やIH・ガスコンロ用のトッププレートなどが約8%を占めています。

長尾 ガラス以外の容器の比率が6割強に上りますね。

石塚ガラス以外の素材を扱っていることが当社の強みです。現在は食品や飲料関連のお客さまがほとんどですが、国内の人口減少が進む中、特定業種への依存度が高いままでは事業を維持できません。容器関連では、より幅広い業種を開拓していきたいと考えています。

長尾「容器」をキーワードに新たな領域拡大を進める一方、ガラスの機能価値についても追究されていますね。

石塚ガラスは組成を変えることで、さまざまな機能を持たせることができます。現在、容器以外の製品では抗菌剤などがあります。今後はガラスびんやガラス食器で培った技術を生かしながら、より収益性の高い事業開発を目指しています。将来的には容器以外の売上比率をもっと高めたいと考えています。

長尾約200年の歴史を振り返ると、事業を新しく生み出すイノベーションの連続だったことが分かります。それを成し遂げた組織風土に敬意を表します。

組織は本質的には「変化を好まない」もの。その中でこれだけの「変化と成長」を実現してきたのは、常に危機感が高く、柔軟な組織風土があってこそです。石塚社長には、この社風を継続進化させていかなければならないという使命があると思います。

中期経営計画を策定し組織改革に着手

プラスチック容器、ガラス製品、紙容器など
さまざまな容器を製造する

タナベ経営 取締役副社長
長尾 吉邦
タナベ経営に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年に常務取締役、13年に専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアント先の特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。
長尾2016年度からスタートした中期経営計画『Next Stage ISHIZUKA 84』の骨子についてお聞かせください。

石塚基本方針は3つあります。1つ目は、収益性の向上です。営業利益率3%を安定的に確保する企業体質づくりを目指しています。2つ目が有利子負債の削減。毎年10億円程度削減し、3年間で30億円削減する計画です。そして3つ目は、グループを横断した機能強化。カンパニーやグループ会社という組織の枠を超えた、横断的なプロジェクトを進めています。

長尾為替や原油価格の変動リスクなどがある中、安定して営業利益率3%を確保できれば体質転換にもつながります。2つ目に挙げた有利子負債の削減は設備投資が中心ですね。設備投資の考え方をお聞かせください。

石塚必要な設備投資は行いますが、判断基準については見直す必要があります。これまでは、利益が出る事業であれば積極的に設備投資を行ってきました。しかし、有利子負債を減らすには、投資する際に事業内容をより厳しく精査しなければなりません。今後は、回収期間や利益率などに焦点を当てて判断を下すことが必要です。

長尾投資回収計画のスピード化を図るわけですね。3つ目の指針、組織についてはカンパニー制を導入されています。

石塚各カンパニーで利益を出していく縦割りの組織です。縦割り組織はメリットが多い半面、横の連携が取りづらいデメリットもありました。3年かけてカンパニー間の連携を強化し、グループとして強い会社を目指していきます。カンパニー間の連携が深まれば、利益率の改善にもつながると見込んでいます。

長尾グローバル展開についてはどのようなスタンスですか?

石塚良いご縁があり、2014年に高級洋食器メーカーの鳴海製陶を子会社化しました。ボーンチャイナは全世界がマーケット。NARUMIブランドについては、今期から米国市場へ進出するための情報収集を行っています。また、抗菌剤は欧州やアジア地域を中心に輸出が拡大しており、今後は生活水準が高まっている東南アジアなど新興国での成長を見込んでいます。

ジュニアボードを通し部門を超えた交流が活発化

タナベ経営 執行役員
経営コンサルティング本部
中部本部長 槇本 康範
戦略立案・企業再建の分野を中心に、中部地区における数多くの有力企業コンサルティングで実績を残す。特に、製造業の戦略策定、事業展開においては独自のノウハウを持ち、新市場の開発・開拓で多くの成果を上げている。
槇本中期経営計画は各カンパニーの中心メンバーによるジュニアボードで策定されました。研修には、石塚社長も必ず参加していらっしゃいました。策定する上で意識されたことはありますか?

石塚まず会社の現状を説明した上で、営業利益率3%を確保する必要性を訴えました。危機感が浸透したことで、有利子負債の削減(3年間で30億円削減、10年後に100億円削減)や、ガラスの機能に注目した新事業開発という目標を共有することができました。

槇本メンバーは、各カンパニーのナンバー2クラスの人材で構成されていました。

石塚カンパニーを担っていくメンバーたちですから、大きな期待を寄せていました。自ら策定した中期経営計画ですから、計画の実行に責任を持つことにもつながります。

また、メンバーは皆、年齢が50歳前と同世代だったことや、私の年齢(51歳)とも近かったこと、ガラスびん事業の歴史を共有していたメンバーも多くいたこともあり、コミュニケーションは円滑でした。

槇本横のつながりができたことも、大きな収穫でした。

石塚メンバー自身もそう話しています。他のカンパニー事業を詳しく知ることができたことや、所属カンパニー以外の社員とつながりができたことは、社員にとって大きな財産となりました。合宿研修でしたから、夜は皆で大いに酒を飲んだことも含めて、良い研修でした。

長尾何回か研修でアドバイスしましたが、結束力が強くなりましたね。最初に利益率改善にミッションを絞っていたことも成功のポイントだったといえます。

石塚最初に「営業利益率3%」を明言したことで、やるべきことが明確になりました。業務も忙しい中で膨大な宿題もありましたが、会社の将来を真剣に考える良い経験になったと思います。その分、ジュニアボード研修の最後には感極まりました。

経営企画部の役割は社長の思い伝える伝道師

石塚硝子 取締役 兼 執行役員
管理本部長 兼
経営企画部長 兼 内部統制担当
畔柳 博史 氏
2012年石塚硝子入社、同年に執行役員経営企画部長。2013年、取締役兼執行役員経営企画部長就任。2014年より現職。
種戸中期経営計画を遂行する上で、経営企画部が重要な役割を果たしています。同部のミッションについてお聞かせください。

畔柳一言集約すると「伝道師」ですね。中期経営計画を達成するには、会社の方針や社長の考えを社内で共有することが大切です。しかし、社長1人で全社員に直接伝えることは難しいですから、経営企画部の役割としては、社長が伝えたいことを、社長に代わって社員に伝えていくことが最大のミッションだと考えています。

石塚私1人で全社員に伝えるのには限界がありますから、これを同じ思想で広げていくのが経営企画部ですね。

種戸中期経営計画の一環である、カンパニー間を横断するクロス・ファンクショナル・プロジェクトの考え方は、全社員に浸透していますか?

石塚それは、これからというところですね。

畔柳メンバーの選定やテーマについて、やや戸惑いを持っている社員もいました。一方的に説明するだけでなく、社員の意見を聴いたり質問に答えたりする双方向のコミュニケーションが大切です。そうした積み重ねによって理解が深まりました。

現在は11のチームがありますが、今後テーマが増減することもあると思います。3年後の中期経営計画の実現に向けて、まずは3カ月後の目標を立てて実施しています。

畔柳メンバーの選定やテーマについて、やや戸惑いを持っている社員もいました。一方的に説明するだけでなく、社員の意見を聴いたり質問に答えたりする双方向のコミュニケーションが大切です。そうした積み重ねによって理解が深まりました。

長尾成果の出るところから取り組むことが、成功するための重要なポイント。また、インナーブランディング、つまり社内へのPRは重要です。

さらに、プロジェクトに参加する動機付けは、賞与といった金銭的な報酬よりも、評価に軸を置くとうまく回ることが多いですね。本来の役割(業務)に加え、横軸の役割も頑張れる人が評価されるという空気を社内に浸透させる方が成果は高まります。

畔柳当社では年1回、利益への貢献度が高い個人やチームに「社長賞」が贈られます。賞状と賞金が授与されるのですが、賞金よりも受賞自体を重んじる社風がありますから、クロス・ファンクショナル・プロジェクトについても社長直轄のプロジェクトとして評価されますので、参加したい社員が増えていくことを期待しています。

長尾プロジェクトへの参加や貢献度、成果などを評価していくことは、石塚硝子がよりイノベーティブになる素地づくりにもつながると思います。

種戸人材育成という側面もありますね。

石塚その通りです。所属するカンパニー以外の事業の勉強にもなりますから、管理職に必要な能力を培う実践の場になればよいと思います。

長く続けるために常に危機感を持つ

タナベ経営 経営コンサルティング本部
副本部長 種戸 則文
事業戦略・マーケティング戦略構築を得意とし、ビジョン構築からマネジメントシステムづくりまで、幅広い分野でのコンサルティングを展開。現場第一主義での真摯なコンサルティングで、多くのクライアントから高い信頼を得ている。
長尾今期からスタートした中期経営計画の達成と同時に、創業200年を迎えられます。

石塚3年後の2019年が創業200周年です。良い形で200年を迎え、新たな中期経営計画をスタートできるように、グループ一丸となって取り組んでいきます。

長尾200年を超え、さらに300年を目指す企業として、未来のビジョンをお聞かせください。

石塚会社を長く続けていくことが大事です。クロス・ファンクショナル・プロジェクトの活動も含めて、「ガラス事業を超える」新事業の開発には力を入れていきたいですね。しかし、すぐに開発できるものではありませんから、これには3年から10年という時間をかけてじっくり取り組んでいく必要があります。

長尾石塚社長はまさに200年企業の経営者です。いかに変化させていくかを常に考えています。同時に、「変化=破壊」ではないことを、200年という長い歴史からよくご存じです。

石塚環境は変化します。環境適応業であることが不可欠だったわけです。300周年を迎えるときにどのような事業を行っているか分かりませんが、社員がやりがいを持って働いている会社であることが私の願いです。

長尾石塚硝子は、変化しながら歴史を築かれている。「変化する意思」「変化する技術」によって、300年企業へと事業をつなげていかれることを祈念しております。本日はありがとうございました。

■ 経営理念
1. "信用第一"に心がけ、グループ企業内外の信頼を得る。
2. "企業は人なり"の理念で、人材の育成に努める。
3. "最高の品質"を求め、絶えず新技術を開発する。
4. "革新と創造"に満ちた永続的発展を続け、社会に貢献する。

会社プロフィール

会社名
石塚硝子株式会社
所在地
〒482-8510 愛知県岩倉市川井町1880
TEL
0587-37-2111
創業
1819年
資本金
59億1100万円
売上高
734億1400万円(連結、2016年3月期)
従業員数
2231名(連結、2016年3月現在)
事業内容
ガラスびん・ガラス食器・紙容器・プラスチック容器・セラミックス製品の製造販売
URL
http://www.ishizuka.co.jp/

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業 66
  • 200 業種
  • 17,000 社以上